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ここにあるのは、だれかが実際に調べ、考え、作ってきたことを集めたメモです。気になったら、ページの下の「参考にした情報源」から、もとの本や記事、それを生み出した人たちに、直接ふれてみてください。このメモには書ききれないおもしろさが、そこにあります。

ぎゅうにゅうに レモンの しるを 入れると、どうして トロリと かたまるの?

牛乳にレモン汁を入れるとなぜ固まるのか ── 同じ酸っぱさのクエン酸水では固まらなかった実験から

牛乳の酸凝固とレモン汁 ── カゼインミセルの等電点(pH4.6)と、酸の量が効くという高校の課題研究

分野:自然

ぎゅうにゅうに レモンの しるを 入れて まぜると、トロリと して きます。のみものが、ヨーグルトに 少し にて きます。

ところが、レモンと 同じ くらい すっぱい 水を 入れても、かたまらない ことが ある そうです。なにが ちがうのでしょうか。ぎゅうにゅうの 中の 小さな つぶの はなしから 見て いきます。

牛乳にレモン汁を混ぜると、トロリと固まってきます。酸で牛乳が固まることは知られています[3]。ところが、石川県の高校生の課題研究では、レモン汁と同じ酸の強さ(pH2.5)にそろえたクエン酸の水溶液を入れても、牛乳は固まりませんでした[8]。

レモン汁の酸の中心はクエン酸なのに、どういうことでしょうか。牛乳の中の粒の話から、酸の「強さ」と「量」のちがいまで、順に見ていきます。

牛乳のたんぱく質の約80%はカゼインで、pH4.6付近で凝集して沈殿する[2]。レモン汁の主な有機酸もクエン酸だが[7]、石川県立七尾高校の課題研究では、pH2.5のレモン汁は牛乳を凝集させ、同じpH2.5のクエン酸水溶液は凝集させなかった[8]。

なぜ、同じpHで結果が分かれたのか。カゼインミセルの電気的な性質(等電点)と、加えた酸の物質量という2つの軸で整理し、出典を示す。

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1. ぎゅうにゅうに レモンを 入れると どうなるの?

1. まず、台所で起きていること

1. レモンラッシー風ドリンクの作り方と、その説明

ある 会社の しょくいくの ページでは、ぎゅうにゅう 120ミリリットルに、レモンの しる 大さじ 1ぱいを 入れる つくりかたが のって います[1]。ゆっくり まぜると、とちゅうから トロリと して きます。

ページには、「すっぱい ものが 入ると、ぎゅうにゅうの たんぱくしつが くっつきあう」と せつめいが あります[1]。

では、その「たんぱくしつ」は、ぎゅうにゅうの 中で ふだん どう なって いるのでしょうか。

食品会社の食育ページに、牛乳120mlにレモン果汁大さじ1(15ml)と砂糖を混ぜる「レモンラッシー風ドリンク」があります。ゆっくりかき混ぜていると、トロリとしてきたところで完成です[1]。ここでは砂糖ではなく、レモン汁を加えたときの変化に注目します。

ページには、牛乳のたんぱく質は酸性になると固まる性質があり、レモンの酸でたんぱく質がくっつきあう、と説明があります[1]。

牛乳のたんぱく質は、ふだん、どんな姿で牛乳の中にいるのでしょうか。

食品会社の食育ページは、牛乳120mlにレモン果汁15ml(大さじ1)と砂糖小さじ1〜2を混ぜ、ゆっくりかき混ぜてトロリとしたら終わる「レモンラッシー風ドリンク」を紹介している。説明は、牛乳のたんぱく質が酸性で固まる性質を使い、レモンの酸でたんぱく質同士がくっつく、というものだ[1]。ここでは砂糖ではなく、レモン汁を加えたときの変化に注目する。

酢やほかの果汁でも起こると説明する資料もある[6]。この記事では、これが分子のレベルでどう説明されるかを、専門機関の資料から確かめる。

2. ぎゅうにゅうの 中の 小さな つぶ

2. 牛乳の中には「カゼインの粒」が浮いている

2. カゼインとカゼインミセル ── 牛乳中のたんぱく質の約80%

ぎゅうにゅうの たんぱくしつの 8わりくらいは、「カゼイン」と いう ものです[2]。カゼインは、目には 見えない 小さな つぶに なって、ぎゅうにゅうの 中に たくさん ういて います[3]。

つぶは、電気の 力で おたがいを おしあって、くっつかないように して いると せつめい されます[4]。

じしゃくの 同じ きょくを ちかづけると、おしあいますよね。あれに にて います。ただし ほんとうは じしゃくでは なく、電気の 力の はなしです。

牛乳のたんぱく質のおよそ80%はカゼインで、残りの約20%はホエイ(乳清)たんぱく質です[2]。カゼインは、カゼインミセルという粒の形で、牛乳の中にたくさん浮いています。目には見えません[3]。大きさは資料によって幅があり、およそ数十〜数百ナノメートルとされます[3]。

粒がばらばらに浮いていられるのは、粒どうしが電気的に反発しあっているからだと説明されます[4]。同じ極の磁石を近づけると押し合うのに少し似ています。ただし、本当は磁石ではなく電気の力の話です。

ここに酸が入ると、この反発はどうなるのでしょうか。

牛乳のたんぱく質のうち、約80%がカゼイン、約20%がホエイ(乳清)たんぱく質である[2]。カゼインはカゼインミセルという粒子(コロイド粒子)として牛乳中に分散している[3]。大きさは出典によって30〜600nm、40〜600nmなど幅があり、単一の値は決めない[3]。

ミセルは、リン酸カルシウムがサブミセルをつなぎとめた集合体だとされる[4]。ミセルどうしが集まらずに分散していられるのは、粒の表面の電荷による反発が働くためと説明される[4]。

3. すっぱく なると、つぶが くっつく

3. 酸が入ると、反発が弱まってくっつく

3. 等電点(pH4.6)── 反発が消えるとミセルは集まる

ぎゅうにゅうに すっぱい ものを 入れると、つぶの 電気の かたよりが なくなって いきます。おしあう 力が よわく なり、つぶが くっつきます[4]。

かたまるのは、すっぱさが ある 強さに なった ころです。この 強さは 「pH(ピーエイチ)」と いう 数で あらわし、カゼインでは 4.6 の ときと いわれます[2]。ふつうの ぎゅうにゅうは 6.5〜6.7くらいです[5]。すっぱく なるほど 数は 小さく なります。

ヨーグルトも 同じです。にゅうさんきんが ぎゅうにゅうの あまさの もとから にゅうさんを 作り、ぎゅうにゅうが すっぱく なって かたまります[5]。ヨーグルトの かたい ところが、カゼインです。

酸を加えて牛乳のpH(酸性・アルカリ性の度合いを表す数)を下げていくと、カゼインの粒は、電気的な偏りがほぼなくなるpH4.6で、いちばんくっつきやすくなります。このpHを等電点といい、ゼータ電位(粒の電気の目安)がほぼゼロになり、沈殿が観察されると報告されています[4]。牛乳のpHはふつう6.5〜6.7ほどで[5]、そこから4.6に近づくと固まります。

ヨーグルトも同じ仕組みです。乳酸菌が牛乳の乳糖から乳酸を作るとpHが下がり、等電点に近づいて固まります[5]。固まった部分がカゼインです。

なお、pH5.5以下になるとカゼインの粒はいったんバラバラの小さな集合体に分解し、そのあと等電点の近くで再び集まると説明されています[4]。単純に溶けるのではありません。

カゼインの等電点はpH4.6で、このpHでゼータ電位がほぼゼロとなり、沈殿が観察される[4]。Jミルクも、牛乳に酸を加えてpH4.6にすると、カゼインが白色の凝集物として沈殿すると説明する[2]。

牛乳のpHは6.5〜6.7程度で、ヨーグルトでは乳酸菌が乳糖を資化して乳酸を作るためpHが下がり、4.6付近で酸凝固する[5]。

pHが約5.5以下になるとリン酸カルシウムが溶け出し、ミセルは約20nmの小さな集合体に分解する。凝固はそれで終わるのではなく、等電点付近で電荷の反発がなくなって再び集合する過程を含む、と整理できる[4]。ただしこの点は、講演資料の記述にもとづく整理である。

4. 同じ すっぱさなのに、かたまらない?

4. 同じpHのクエン酸水では固まらなかった

4. 七尾高校の課題研究 ── pH2.5のレモン汁と各種の酸

レモンの しるの すっぱさの 中心は、クエンさんです[7]。それなら、クエンさんの 水を 入れても、かたまる はずです。

石川県の 高校生が、これを しらべました。レモンの しると、同じ すっぱさの 強さ(pH2.5)に そろえた クエンさんの 水を、ぎゅうにゅうに 入れて くらべたのです[8]。

すると、レモンの しるでは かたまり、クエンさんの 水では かたまりませんでした。すっぱさの 強さは 同じなのに、ふしぎです。

レモン果汁の有機酸は100gあたり6.7gで、そのうちクエン酸が6.5gを占めます[7]。酸の中心がクエン酸なら、クエン酸水溶液でも固まりそうです。

石川県立七尾高校の課題研究では、牛乳30.0gに、pH2.5にそろえた酸3.15mLを加えて比べました。レモン汁と酢酸は凝集しましたが、同じpH2.5のクエン酸、塩酸、硫酸は凝集しませんでした[8]。

牛乳を90℃まで加熱しても、常温との違いは大きくなかったと報告されています[8]。温度を変えても、答えは出なかったことになります。

石川県立七尾高校の課題研究「レモン汁による牛乳タンパク質の凝集」は、牛乳30.0g(pH7.02)に、pH2.5にそろえた酸3.15mLを加え、凝集物の有無を調べた。結果は、レモン汁と酢酸で凝集あり、クエン酸・塩酸・硫酸で凝集なしだった[8]。

レモン果汁(生)の有機酸は100gあたり6.7gで、うちクエン酸が6.5g、リンゴ酸が0.2gとされる[7]。主な酸がクエン酸であるレモン汁と、同pHのクエン酸水溶液とで結果が分かれた点が、この研究の出発点になっている。

牛乳を90℃まで加熱しても、常温と比べて凝集の有無に大きな違いは見られなかった[8]。なお、この研究は高校の課題研究(4ページ)であり、査読つきの学術論文ではない。ここでは「この実験ではそうなった」という範囲で扱い、一般法則とは言わない。

5. ちがいは、すっぱい ものの 「りょう」

5. 効いていたのは酸の「量」だった

5. 緩衝作用と酸の物質量 ── モル濃度は約40倍

この 高校生たちは、レモンの しるに 入って いる すっぱい ものの 「りょう」に 目を つけました[8]。

バケツの 水面の 高さが 同じでも、バケツが 大きい ほど、水は たくさん 入って います。すっぱさの 強さが 同じでも、すっぱい ものの りょうが ちがう ことが ある、と いう 見かたです。ただし ほんとうの ものは、水では ありません。

しらべると、レモンの しるの ほうが クエンさんの 水より やく 40ばい、すっぱい ものが 入って いました。クエンさんの 水も、りょうを ふやすと ぎゅうにゅうを かためました[8]。

この けんきゅうでは、レモンの しるに すっぱい ものが 多く 入って いて、すっぱさを たもつ はたらきも ある ためでは ないか、と かんがえて います[8]。

高校生たちは、加えた酸の量に目をつけました。pH2.5のレモン汁は、同じpHのクエン酸水溶液より、酸の濃度(モル濃度)が約40倍高かったと書かれています(3.2×10⁻¹と9.0×10⁻³ mol/L。計算すると約36倍です)[8]。同じ体積なら、濃度が高いほど加わる酸の量も多くなります。

そこで、加える酸の量を増やしました。体積を31.5mLに増やしたり、pHを1.0まで下げたりすると、クエン酸・塩酸・硫酸でも牛乳は凝集しました。レモン汁の成分表と同じ量のクエン酸を入れたpH2.5の緩衝液でも、凝集しました[8]。

緩衝液とは、酸を加えてもpHが変わりにくい液のことです。同じpHでも、含まれる酸の量やpHを保つ働きは、液によって違うことがあります。この研究は「レモン汁が緩衝液になっていて、酸の量が多いから」と結論しています[8]。

凝集物の形がレモン汁と緩衝液で違った理由は、研究では今後の課題とされています。

七尾高校の研究は、レモン汁のモル濃度がpH2.5のクエン酸水溶液より大きい(3.2×10⁻¹ mol/L対9.0×10⁻³ mol/L。原文は「約40倍」、比を計算すると約36倍)ことに着目し、これはレモン汁が緩衝液として働くためと考えた[8]。

この仮説は、次の実験で支えられている。加える酸の物質量を増やす(体積を31.5mLにする、またはpH1.0にする)と、クエン酸・塩酸・硫酸でも牛乳は凝集した。さらに、レモン汁の成分表示と同量のクエン酸を含むpH2.5の緩衝液でも凝集した[8]。結論は、「レモン汁が緩衝液になっており、酸の量が多いため凝集する」である。

未解明の点も残る。凝集物の形がレモン汁と緩衝液で異なる原因は、この研究でも今後の課題とされている[8]。

6. チーズの かたまりかたは、ちがう

6. チーズは「酸」ではなく「酵素」で固める

6. 牛乳の酸凝固とレンネット凝固の違い ── κ-カゼインの分解

チーズを つくる ときも、ぎゅうにゅうを かためます。でも、やり方が ちがいます。

チーズでは、「レンネット」と いう、かたまらせる 力を もつ ものを 入れます。これが つぶの ひょうめんを 少し きりとり、つぶ どうしが くっつくように します[5]。すっぱさで おしあう 力を へらす レモンとは、しくみが ちがいます。

チーズづくりでも牛乳を固めますが、しくみは違います。レンネット(凝乳酵素)が、粒の表面にあるκ-カゼインという部分を分解します。すると粒どうしがくっつきやすくなり、固まります[5]。

酸で電気的な反発を弱めて固めるレモン汁やヨーグルトとは、別の方法です[5]。同じ「牛乳が固まる」でも、入口は複数あります。

チーズ製造のレンネット凝固では、レンネットがカゼインミセル表面のκ-カゼイン(カッパカゼイン)を分解し、ミセルどうしが会合して凝乳(ぎょうにゅう)する[5]。

酸凝固が、pHを等電点に近づけて電荷の反発を弱める過程であるのに対し、レンネット凝固は、ミセル表面を酵素で変える過程である。凝固の入口は複数ある、と整理できる[5]。

自分でも しらべて みたく なったら

自分でも調べてみたくなったら

自分でも調べてみたくなったら

今日 できる こと おうちの 人と いっしょに、レモンの しるを 入れる 量りょうを かえて、ぎゅうにゅうが トロリと する ところを 見て みましょう。ちいさな コップに ぎゅうにゅう 120ミリリットルを 入れ、レモンの しるを 小さじ 1、2、3と 少しずつ ふやします。トロリと しはじめるのは 何ばいめか、見て みます。火は 使いません。ぎゅうにゅうで アレルギーの ある 人は、やらないで ください。

もっと 知りたい とき しょくいくの ページや、大学の 先生の 話を 読んで みましょう。すっぱさの 強さと りょうが 分けて かんがえられる ことに 気づくと、ほかの ものにも 目が いきます。

今日できること 家の人といっしょに、牛乳にレモン汁を入れる量を変えて、固まり始めるところを観察してみましょう。コップに牛乳120mlを入れ、レモン汁を小さじ1、2、3と少しずつ足して、ゆっくり混ぜます。トロリとしてくる量は、レモン汁の種類や牛乳の温度で変わるかもしれません。同じ条件で2回試すと、比べやすくなります。火は使いません。牛乳アレルギーのある人は、行わないでください。

調べ方の入口 高校の課題研究のように、酸の種類を変えて比べる発想は、家でも真似できます。ただし、酢とレモン汁は「酸の強さ」ではなく「入れる量」で比べると、この記事の話とつながります。食育ページや乳業協会のQ&Aも、読みやすい資料です。

今日できること 牛乳120mlに、レモン汁を小さじ1、2、3と段階的に足し、固まり始める量を記録する。条件(温度、混ぜ方、かき混ぜる時間)をそろえ、複数回繰り返すと、量と凝集の関係が見える。火は使わない。牛乳アレルギーがある場合は行わない。

資料を読むなら 七尾高校の課題研究[8]の原文で、実験条件と結果の表を確かめたい。カゼインミセルの構造は、酪農総合研究所の講演資料[4]や、齋藤忠夫「チーズ造りと塩類のマリアージュ」[5]が手がかりになる。

しらべた もとの じょうほう

参考にした情報源

参考にした情報源と、その使い方

本文で使った資料。実験の一例は、この記事の本文の範囲で読んでください。

  1. 明治の食育「レモンラッシー風ドリンク」 https://www.meiji.co.jp/meiji-shokuiku/homework/experiment/lassie/ (家庭での作り方と、酸でたんぱく質が固まる説明)
  2. Jミルク「牛乳のたんぱく質」 https://www.j-milk.jp/findnew/chapter2/0404.html (カゼインの割合とpH4.6での沈殿)
  3. 日本乳業協会「乳と乳製品のQ&A」 https://nyukyou.jp/dairyqa/2107_050_285/ (カゼインミセルと酸による凝集)
  4. 酪農総合研究所シンポジウム(講演1) https://www.rakusouken.net/symposium/session/120203/lecture-1.html (等電点、ミセルの構造と分解)
  5. 齋藤忠夫「チーズ造りと塩類のマリアージュ」(塩科学研究財団) https://www.saltscience.or.jp/images/2023/07/2017_1-saito.pdf (ヨーグルトの酸凝固、レンネット凝固)
  6. 日本分析化学専門学校「なるほど化学実験室」 https://www.bunseki.ac.jp/naruhodo/experiment/pop.php?id=176 (酢や果汁でも起こるという説明)
  7. 文部科学省 食品成分データベース「レモン 果汁 生」 https://fooddb.mext.go.jp/details/details.pl?ITEM_NO=7_07156_7&MODE=9 (レモン果汁の有機酸の量)
  8. 石川県立七尾高校 課題研究「レモン汁による牛乳タンパク質の凝集」 https://cms.ishikawa-c.ed.jp/nanaoh/file/2567 (同じpHで結果が分かれた実験と酸の量)

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