1. むかしの みりんは あまかったの?
1. 昔のみりんは、お酒として飲まれていた
1. 『本朝食鑑』のみりんは、焼酎に近い飲み物だった
むかしの みりんは、あまくて めずらしい おさけとして、みぶんの たかい ひとたちに のまれていたそうです。
では、どれくらい あまかったのでしょう。むかしの ほんに のっている つくりかたから、あとの ひとが けいさんした ものが あります。ある ほんの みりんは、あまさが 100 のうち 1 ほど。ほとんど しょうちゅうに ちかい あじだった という けいさんです。
いまの みりんは、100 のうち 45 ほど あまい ものです。いまの みりんと、むかしの みりんは、おなじ なまえでも ずいぶん ちがう ものだったようです。ただし これは けいさんで、ほんとうの あじを のんだ ひとは いません。
では、いまの みりんには、なにが はいっているのでしょう。
みりんは、戦国時代から安土桃山時代の文書に出てきます。甘くて珍しい酒として、公家・武家・寺院など上の身分の人の間で贈り物になり、飲まれていたそうです[1]。料理の味つけではなく、飲むお酒だったのです。
では、どれくらい甘かったのでしょうか。国税庁の資料は、古い書物の製法から後の人が糖分を推定しています。『本朝食鑑』(1697年)のみりんは、糖分がわずか1%ほどで、かすかに甘みを感じる焼酎のようなものでした。『日本山海名産図会』(1799年)の製法だと約30%と推定されています。現在の本みりんの43〜47%よりは、どちらも薄い数字です[1]。いずれも製法からの推定で、実際に飲んで測った値ではありません。
流山(千葉県)では、1814年に堀切紋次郎が「万上味淋」を開発したと紹介されています。澄んだ色の白みりんは甘くて飲みやすく、女性にも人気の飲み物だったそうです。のちに調味料として発展しました[9]。
では、いまのみりんには何が入っているのでしょうか。
みりんが文書に現れるのは戦国〜安土桃山時代で、当時は甘い珍しい酒として、公家・武家・寺院などの上層階級が贈答や飲用に使った。ところが糖分は、後の時代に古書の製法から推定された値を並べると、思ったより低い。『本朝食鑑』(1697年)の本みりんは糖分1%ほどで、わずかに甘みのある焼酎のようなものとされ、『日本山海名産図会』(1799年)の製法では約30%と推定されている。現在の本みりんが43〜47%であることと比べると、江戸時代の「みりん」は、今のみりんとかなり別の味だったことになる[1]。ただし、これらはいずれも製法の記述にもとづく推定であり、断定はできない。
江戸後期の『守貞漫稿』には、関東でウナギの蒲焼きやそばつゆにみりんが使われたとあり、飲む酒から料理の材料への動きはすでに始まっていた[1]。流山では1814年に堀切紋次郎が「万上味淋」を開発し、澄んだ色の白みりんは甘くて飲みやすいため、女性にも人気のある飲用酒だったという。それがのちに調味料として発展した[9]。
では、台所の主役に変わるまでに、みりんの中身と値段には何が起きたのか。現在の成分から見ていく。
2. いまの みりんは、なにが はいっているの?
2. 本みりんの45%は糖、アルコールは14%ほど
2. 本みりんの成分と、1962年の酒税引き下げ
いまの ほんみりんは、ほとんどが あまい ものです。あまさの もとに なる とうが 100 のうち 45 ほど。おさけの せいぶんの アルコールは、14 ほどです。
この アルコールは、しょうちゅうなどから きた ものです。みりんの なかで あらたに つくられた ものでは ありません。
とうの 8わりほどは ブドウとうです。のこりは、ブドウとうが ふたつ つながった ものなどです。
むかしは たかい おさけだったので、うちの りょうりには あまり つかわれませんでした。ところが 1962ねんに おさけの ぜいきんが さがり、そのあと、うちでも つかわれるように なったと いいます。
では、あまい みりんを なべで にると、なにが おきるのでしょう。
現在の本みりんは、糖分が45%前後、アルコール分が14%ほどです。このアルコールは原料の焼酎(またはアルコール)に由来し、もろみの中で発酵して生まれたものではありません[1]。糖の約8割はグルコース(ブドウ糖)で、残りはマルトースなどの二糖類だと、宝酒造の資料にあります[2]。
みりんが家庭に広がったのは、意外と最近です。明治以降も値段が高く、家庭料理ではほとんど使われませんでした。転機は1962年(昭和37年)で、本みりんの酒税が1キロリットルあたり14万円から67,700円へと大きく下がりました。その後、昭和40年以降に調味料として成長し、家庭でも使われるようになったと国税庁の資料は述べています[1]。
糖が半分近い液体を煮詰めると、鍋の中では何が起きるのでしょうか。
現在の本みりんは、糖分が45%前後、アルコール分が14%ほどである。このアルコールは原料の焼酎またはアルコールに由来し、もろみの中でのアルコール発酵は起こらない[1]。糖の約8割はグルコースで、残りはマルトースやイソマルトースなどの二糖類だと、メーカーの宝酒造は説明している[2]。
この甘い液体が家庭に入りこむまでには、時間がかかった。明治以降も高価で、家庭料理にはほとんど使われなかったためである。変化は、1962年(昭和37年)の酒税引き下げで起きた。本みりんの税が1キロリットルあたり14万円から67,700円へ、およそ半分に下がり、昭和40年以降に調味料として成長して、家庭でも使われるようになった[1]。同じ「みりん」でも、江戸では飲む酒、昭和後期には家庭の調味料と、立場が入れかわったことになる。
では、糖が半分近い液体を鍋で煮詰めると、なぜ味が濃くなり、照りが出るのか。まず「煮詰める」ことから確かめる。
3. にづめると、なぜ あじが こくなるの?
3. 煮詰めると、水が減って、温度が上がる
3. 煮詰めるとき、沸点とシロップの状態は何を意味するか
にづめると、なべの なかの みずが じょうはつして、へって いきます。あまさや しおけは のこるので、のこった しるは こく なります。
みずに とけた ものが あると、ふっとうする おんども すこし あがります。ただし、あがる はばは ほんの すこし です。
さとうの しるを にづめて いくと、とろとろの シロップに なります。さらに おんどが あがると、あめの ような かたまりに かわって いきます。
では、この とろとろが、ツヤと どう つながるのでしょう。
煮詰めると味が濃くなるのは、水が蒸発して減る一方、砂糖や塩のように蒸発しにくいものは鍋に残るからです。
水に糖のような蒸発しにくい物質が溶けていると、沸点が上がります(沸点上昇)。薄い溶液なら、上がり幅は1℃にも届かない小さなものです[6]。煮詰めて濃くなった煮汁の温度には、この計算をそのまま当てはめられません。
砂糖に水を加えて煮詰めると、温度の上昇とともに状態が変わり、シロップ状から飴状へ進みます。砂糖は水を抱え込む性質(吸湿・保水性)もあります[4]。高校の実習の報告では、砂糖液を110℃ほどで撹拌すると再結晶して白い衣になり、140℃を超えたときは飴の状態になって結晶には戻らなかったそうです[5]。
煮詰めた汁のとろみは、この「温度と糖の濃さ」の変化から来ています。では、みりんのツヤはどこから来るのでしょうか。
煮詰めると味が濃くなるのは、水が蒸発して減る一方、糖や塩のように蒸発しにくいものが鍋に残るためである。もう一つの変化が、温度の上昇だ。水に不揮発性の物質が溶けると沸点が上がる(沸点上昇)[6]。薄い溶液なら上がり幅は1℃にも届かず、濃くなった煮汁の温度にそのまま使える式ではない。
では、砂糖が濃くなるほどどうなるのか。農林水産省の資料は、砂糖に水を加えて煮詰めると温度の上昇とともにシロップ状から飴状へ変わること、砂糖には水を抱え込む吸湿・保水性があることを述べている[4]。高校の実習の報告には、シロップを110℃ほどで撹拌すると再結晶して白い衣になり、140℃を超えたときは飴の状態になって結晶には戻らなかったとある[5]。つまり、糖の濃さと温度は一緒に動き、煮詰めた汁の状態は、その途中のどこかにある。
ここまでは、砂糖でも本みりんでも変わらない話である。本みりんの糖には、どんな特徴があるのか。つやを調べた実験を見る。
4. みりんの ツヤは、じっけんで たしかめられた?
4. 小豆の蜜煮の実験で、本みりんがいちばんつやを出した
4. 小豆蜜煮の実験で報告された、本みりんの照り・艶
みりんの ツヤに ついて、あずきを あまく にる じっけんが あります。さとうだけで にた あずきや、さきに アルコールを とばした みりんで にた あずきなどと くらべました。
けっかは、ほんみりんで にた あずきが、いちばん ツヤが ありました。ただ、これは あずきの にものでの はなしです。ぜんぶの りょうりで おなじとは かぎりません。それに、この けんきゅうは、みりんを つくる かいしゃの ひとが おこないました。
かいしゃは、みりんの とうが たべものの ひょうめんに まくを つくり、ツヤを だすと せつめいします。まくが ひかりを はねかえす しくみは、まだ はっきり していません。
では、あずきの じっけんでは、ほかに なにが わかったのでしょう。
日本調理科学会誌に載った、小豆の蜜煮を比べた実験があります(2004年)。研究したのは宝酒造の人たちです。砂糖や、煮切ったみりんなど、いくつかの条件と比べたところ、本みりんを使った小豆蜜煮が、照り・艶を付ける効果がいちばん高かったと報告されています[3]。メーカーの研究で、小豆の蜜煮での結果なので、すべての料理に当てはまるとは言えません。
みりんの糖類が食材の表面に膜を作って、照りやつやを出すと、メーカーは説明しています[2]。ただし、膜が光を反射する物理的な仕組みを実験で確かめたデータは、今回の資料にはありません。膜が光を反射する仕組みは、メーカーの説明として読んでおきましょう。
この研究には、もう一つ見どころがありました。糖とアルコールで、柔らかさへの働きが逆だったのです。
みりんのつやを調べた研究に、小豆の蜜煮を比較したものがある。日本調理科学会誌(2004年)の報告で、本みりんを使った小豆蜜煮が、ほかの条件と比べて最も照り・艶を付ける効果が高かった[3]。ただし、研究者は宝酒造(みりんの製造会社)の所属であり、比較条件は砂糖や煮切りみりんなどだった。結果は小豆蜜煮のもので、全ての料理に当てはまる、と読むのは行きすぎである。
では、つやの理由は何か。メーカーは、みりんの糖類が食材の表面に膜を作り、てりやつやを出すと説明する[2]。膜が光を反射して照りになる、という物理的な説明は、メーカーの説明にとどまる。「膜が作る」という説明は、メーカー側の解釈として読むのが妥当だ。
同じ実験では、見落としやすいもう一つの結果が出ている。糖とアルコールで、煮崩れへの働きが逆だった。
5. さとうと アルコールは、なにを しているの?
5. 糖は煮崩れを防ぎ、アルコールは柔らかくする
5. 糖とエタノールの働きの逆向きと、加熱時の香り
おなじ じっけんで、もう ひとつ わかりました。さとうは、あずきが くずれるのを ふせぎます。アルコールは、あずきを やわらかく します。
ほんみりんには、どちらも はいっています。だから、やわらかさを たもちながら、くずれにくく できると かんがえられています。
みりんの とうには、においにも かかわる はたらきが あります。しょうゆに みりんと さとうを くわえて ねつを くわえると、においの せいぶんの かずが ふえたという けんきゅうも あります。
では、アルコールを にて とばす ことには、どんな いみが あるのでしょう。
6. みりんを さきに にきるのは なぜ?
6. 煮切りは、アルコールを飛ばすひと手間
6. 煮切りの目的と、必要な場面・不要な場面
「にきる」とは、みりんや おさけを あたためて、アルコールを とばす ことです。あたためる じかんは レシピに よって ちがい、アルコールが ぜんぶ なくなる ほしょうも ありません。
いったい、なぜ そんな ことを するのでしょう。アルコールは、さかなや おにくの においを おさえて、あじを しみこみやすく する はたらきが あるとされます。でも、あたためない あえものや たれでは、アルコールの かおりが のこって しまいます。だから、あらかじめ にきります。
にきるか どうかは、りょうりや レシピに よって かわります。
煮切りは、みりんや酒を加熱して、アルコール分を蒸発させることです。加熱の時間はレシピによって違い、アルコールが完全に消える保証もありません。
なぜ、わざわざ飛ばすのでしょうか。本みりんのアルコール(14%前後)は、魚や肉の臭みを抑え、味がしみ込みやすくする働きがあるとされます[7]。一方で、和え物やたれのように火を通さない料理では、アルコールの風味がそのまま残ります。そのため、先に煮切るとされています[7]。煮切るかどうかは、料理やレシピに応じて決めます。
九重味淋は、半量まで煮詰めてアルコールを飛ばした「みりんシロップ」を製品にしています[8]。
みりんの照りは、家でも見られるでしょうか。
煮切りとは、みりんや酒を加熱してアルコール分を蒸発させる手順である。加熱の時間はレシピによって違い、アルコールが完全に消える保証もない。
煮切りの目的の一つは、加熱しない料理にアルコールの風味を残さないことだ。本みりんのアルコール(14%前後)は、魚や肉の臭みを抑え、味がしみ込みやすくするとされる。そのため加熱しない和え物やたれでは、先に煮切る、と説明される[7]。すべての料理で必要というわけではなく、料理やレシピに応じて使い分ける。
九重味淋は、半量まで煮詰めてアルコールを飛ばしたものを「みりんシロップ」として売っている[8]。こうして並べると、みりんは「飲むお酒」から、糖が照りと香りを作り、アルコールが臭みを抑える調味料へと役割を変えてきた。煮詰める・煮切るという手順は、その二つの働きを、料理に合わせて使い分けるための工夫だと読める。
7. うちの みりんを みくらべてみよう
7. 台所の棚で、みりんのラベルを読みくらべる
7. ラベルで確かめる「本みりん」と「みりん風調味料」の差
おうちに みりんが あったら、おとなに ことわって、ラベルを みてみましょう。「ほんみりん」と かいてあるでしょうか。それとも「みりんふうちょうみりょう」でしょうか。
ほんみりんは、アルコールが 14 ほど はいった おさけの なかまです。みりんふうちょうみりょうは、アルコールが 1 より すくなく、みずあめなどを まぜて つくります。じぶんの うちの みりんが どちらか、さがしてみてください。
たれを にる ときは、かならず おとなと いっしょに やってください。
家に「みりん」があったら、ラベルを見てみてください。「本みりん」と書いてあるものと、「みりん風調味料」と書いてあるものがあります。
国税庁の資料によると、みりん風調味料はアルコール分が1%未満で、水あめ、米こうじ、うま味調味料などをブレンドして作ります。酒税法上の酒類ではありません[1]。本みりんは糖分が45%前後、アルコール分14%ほどです。アルコール分や原材料欄を見比べると、同じ「みりん」の名前でも種類が違うことが分かります。
照り焼きなどで煮詰めるときには、必ず大人と一緒に、火の近くで目を離さずに行ってください。
家の台所にあるみりんのラベルを、原材料欄とアルコール分の表示から読み比べてみるとよい。国税庁の資料によれば、みりん風調味料はアルコール分が1%未満で、水あめ、米こうじ、うま味調味料などをブレンドして作る。酒税法上の酒類ではない[1]。一方、本みりんはアルコール分が14%ほどあり、糖分は45%前後と国税庁の資料にある。アルコール分や原材料欄を見比べると、同じ「みりん」でも種類が違うことが分かる。
次に調べるなら、国税庁の「本みりんの歴史」の資料(出典欄[1]のリンク)が、江戸の文献ごとの糖分の推定を扱っている。小豆蜜煮の原報告(出典欄[3])は、砂糖・煮切りみりん・本みりんの比較条件を確かめられる。本文の「照りが糖の膜によるのか」という点は、物理的な裏付けが今回の資料にはない。どんな実験をすれば確かめられるかを考えてみるのも、よい出発点になる。
しらべた もとの じょうほう
参考にした情報源
参考にした情報源と、その使い方
本文で使った資料です。みりんの歴史は国税庁の資料、実験結果は日本調理科学会誌の論文、煮切りの目安は料理サイトやメーカーの公表資料を使いました。
- 国税庁 酒類の歴史資料「本みりんの歴史」 https://www.nta.go.jp/taxes/sake/koujikin/pdf/0021012-102_05.pdf (みりんの歴史・成分・酒税)
- 宝酒造 調味料の知識(本みりんの成分) https://chomiryo.takarashuzo.co.jp/knowledge/detail/108 (糖の種類・照りのメーカー説明)
- 日本調理科学会誌 37(4)「本みりんによる小豆蜜煮の煮崩れ防止効果」(2004年) https://www.jstage.jst.go.jp/article/cookeryscience1995/37/4/37_375/_article/-char/ja/ (照り・煮崩れの実験)
- 農林水産省 aff 砂糖の調理上の働き https://www.maff.go.jp/j/pr/aff/1611/spe1_05.html (砂糖を煮詰めたときの変化)
- 愛知県立一宮高校SSH報告「砂糖の調理性」 https://ichinomiya-h.aichi-c.ed.jp/ssh/h23sshhoukokupdf/B.2.3satounocyourisei.pdf (シロップの温度と状態)
- コトバンク「沸点上昇」 https://kotobank.jp/word/沸点上昇 (沸点上昇の例)
- マカロニ みりん解説記事 https://macaro-ni.jp/25183 (アルコールの働きと煮切りの目安)
- @Press 九重味淋のリリース https://www.atpress.ne.jp/news/607868 (みりんシロップ)
- まるちば 流山の紹介 https://maruchiba.jp/gourmet/feature/detail_185.html (流山の万上味淋)
- 日本調理科学会誌 48(4) 加熱における醤油調味液の香気成分の変化 https://www.jstage.jst.go.jp/article/cookeryscience/48/4/48_249/_article/-char/ja/ (加熱時の香り)
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