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ここにあるのは、だれかが実際に調べ、考え、作ってきたことを集めたメモです。気になったら、ページの下の「参考にした情報源」から、もとの本や記事、それを生み出した人たちに、直接ふれてみてください。このメモには書ききれないおもしろさが、そこにあります。

うつぼは、よるの うみで なにを たべて いるの?

ウツボの胃には何が入っていたのか:館山湾348匹のうち214匹は空だった

ウツボの胃には何が入っているのか:館山湾・口永良部島・カリブ海の調査を並べて読む

分野:生きもの

たてやまわんで つかまえた うつぼを 348ひき しらべたら、おなかが からっぽの うつぼが 214ひきも いました。ごはんを まいにち たっぷり たべて いる わけでは ないようです。

では、たべて いたものは なんでしょう。この ページを よむと、うつぼの ごはんが、おおきさや しゅるい、てんきで かわる ことが わかります。

東京湾の入り口にある館山湾で、わなに入ったウツボ348匹の胃を調べた研究があります。そのうち214匹は、胃が空でした。夜の海で獲物をねらう肉食魚でも、毎晩たっぷり食べているとは限らないようです。

では、食べていたのは何だったのか。同じウツボのなかまでも、食べ物は同じなのか。この記事を読むと、ウツボの食べ物が種類・体の大きさ・天気によって変わることが分かります。

館山湾(千葉県)でわなにかかったウツボ348匹のうち、214匹は胃が空だった[3]。夜行性の肉食魚が、毎晩獲物でおなかを満たしているわけではない。それなら、残りの胃には何が入っていたのか。それは種類や大きさ、海の状態によって変わるのか。

この記事では、日本の2つの海とカリブ海の胃内容物調査を並べ、「ウツボは何を食べるのか」という問いに、一つの答えではなく条件つきの答えが返ってくることが分かる。

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1. よるの いわばで、なにを さがして いるの?

1. 夜の岩場で、ウツボは何をねらうのか

1. 昼は岩のすきま、夜は狩り:辞典と図鑑が書くウツボの食べ物

うつぼは、ひるまは いわの すきまに かくれて いる ことが おおいです。よるに なると、でてきて えものを さがす さかなです。

ずかんには、こざかな、えび、かに、たこなどを たべると かいて あります。まずは、これが うつぼの ごはんの おおまかな すがたです。

たこは、うつぼを つかまえる かごの えさにも いいと いわれます。ただ、えさに いい ことが、いちばんの すきな ものと いう こととは かぎりません。

ウツボは昼のあいだ、岸に近い岩礁のすきまにひそんでいることが多く、夜になると動き出す魚です。百科事典や図鑑は、小魚、エビ・カニの仲間、タコの仲間を襲って食べる肉食魚と説明しています[1][2]。

ウツボを捕るための網籠では、タコが餌として効果的とされます[1]。ただ、よく釣れる餌が、いちばんの好物だとは言えません。

辞典の説明は、おおまかな見取り図です。では、実際に胃の中を開けてみたら、何が入っていたのでしょうか。

図鑑類は、ウツボを昼は岸近くの岩礁に潜み、夜に小魚・エビ・カニ・タコなどを襲う貪食な肉食魚と説明する[1][2]。ウツボ籠で捕る際にはタコが餌として効果的だという記述もある[1]。ただし、餌として効くことは好物の証拠にはならない。獲物の誘引と、自然の海で実際に何を食べているかは別の問いである。

辞典の記述は網羅的だが、「どれをどれだけ食べるのか」には答えない。それに答えられるのは、捕まえた個体の胃を開いて中身を数える胃内容物調査である。以下ではその結果を3つ見る。

2. たてやまわんでは、おなかが からっぽの うつぼが おおかった

2. 館山湾の調査では、胃が空のウツボが6割を超えた

2. 館山湾:348匹中214匹が空胃、残りには魚が多かった

ちばけんの たてやまわんで、わなに はいった うつぼの おなかを しらべた けんきゅうが あります。348ひきの うち、214ひきは おなかが からでした。わりあいに すると、6わりを こえます。

のこりの 134ひきの おなかには、さかな、たこの なかま、かにの なかま、ゴカイの なかまが はいって いました。いちばん おおかったのは さかなです。

くさふぐのように どくの ある さかなを たべて いた うつぼも いたそうです。

館山湾では、わなで捕ったウツボ348匹の胃の中身が調べられました。214匹は胃が空で、割合にすると約61%です。残る134匹の胃には、硬い骨をもつ魚、タコ・イカの仲間、カニなどの甲殻類、ゴカイの仲間が入っていました。主に魚を食べる肉食性と報告されています[3]。

クサフグのように毒(テトロドトキシン)をもつ魚も、食べられていました。ここで気をつけたいのは、「ウツボが毒をためている」とまでは、この研究の要旨からは言えないことです。分かっているのは、毒のある魚も獲物に入っていたという点までです。

胃が空の割合が高かったのは、わなに入るために餌を探していた個体が多かったせいかもしれません。毎晩たくさん食べている魚ではない、と決めてしまうのは早すぎます。研究では、胃の中身が消化される速さに季節の差があり、繁殖する時期としない時期では、えさをとる活動が違うと考えられました[3]。

東京湾口部の館山湾で、わなで捕獲したウツボ348個体の胃内容物を調べた研究がある。214個体は胃が空であり、割合は約61%に当たる。残る134個体の餌は、硬骨魚類・頭足類・甲殻類・多毛類で、全体として魚類を主に食べる肉食性と結論づけられた。クサフグなどテトロドトキシンをもつ魚も捕食されていたが、要旨が述べるのは捕食の事実と、生態系への影響の可能性までである[3]。

空胃が6割という数字は、そのまま「ウツボは食事の頻度が低い」とは読めない。わなには餌を探して動く空腹の個体が入りやすい可能性があり、採集方法が結果をゆがめうるからだ。一方で同研究は、胃内容物の消化速度に季節変動があり、繁殖期と非繁殖期で摂餌活動が異なると考察している[3]。胃が空かどうかも、季節によって意味が変わるということになる。

3. おなじ うみの うつぼ14しゅるいは、おなじ ものを たべるの?

3. 同じ磯のウツボ科14種は、同じものを食べていたのか

3. 口永良部島:同じ磯の14種でも、中心の餌はカニだった

かごしまけんの くちのえらぶじまという しまの いそで、うつぼの なかまを 14しゅるい しらべた けんきゅうが あります。みんな にくを たべる さかなでした。

おなかの なかみは、かに、えび、シャコ、うに、まきがい、さかな など いろいろ でした。なかでも、あさい いわばの かにが いちばん たいせつな ごはんでした。

うつぼと いえば さかなを たべる イメージが ありますが、この いそでは かにが しゅやくだった のです。

鹿児島県の口永良部島の磯では、ウツボ科の仲間14種の胃の中身が調べられました。すべて肉食で、胃にはカニ類、エビ類、シャコ類、ヨコエビ類、巻貝、ウニ、魚類が入っていました。浅い岩礁にすむトゲアシガニなどのカニ類が、いちばん重要な餌だったといいます[4]。

館山湾では魚が主、こちらではカニが主。同じウツボのなかまでも、場所と種類によって、食べ物の中心は違っていました。ここで注意したいのは、この14種は南の海にすむ仲間の合計であり、日本で「ウツボ」と呼ばれる種だけの結果ではないことです。

では、同じ種の中なら、食べ物は同じなのでしょうか。

鹿児島県口永良部島の磯で行われた調査は、ウツボ科14種の胃内容物を扱う。いずれも肉食で、餌はカニ類・エビ類・シャコ類・ヨコエビ類・巻貝類・ウニ類・魚類に及び、浅い岩礁のカニ類(トゲアシガニなど)が最も重要な餌だった[4]。館山湾が魚中心だったのに対し、こちらはカニ中心という対照になる。

ただし比較には条件がつく。口永良部島の値は熱帯性の14種を合わせたもので、日本で一般にウツボと呼ばれる種(Gymnothorax kidako)だけの数字ではない。また調査地の環境(浅い岩礁か、湾か)や採集方法も違う。カニ中心か魚中心かは、種の性質と生息環境が重なった結果であり、どちらが原因かは、この資料だけでは分けられない。

種を固定して見たらどうか。同じ調査には、体の大きさで餌が変わるという結果もある。

4. ちいさい うつぼと おおきい うつぼは、おなじ ものを たべるの?

4. 小さなウツボと大きなウツボは、食べ物が違う

4. 体長100mm未満の幼魚はヨコエビ、大型個体はカニと魚

くちのえらぶじまの けんきゅうでは、うつぼの おおきさでも ごはんが ちがって いました。

おおきな うつぼは、かにや さかなを よく たべて いました。からだの ながさが 10センチ みまんの ちいさな うつぼは、ヨコエビという ちいさな いきものを おもに たべて いました。

ちいさい うちは ちいさな えもの、おおきく なると おおきな えもの。ちいさな うつぼは ちいさな えもの、おおきな うつぼは かにや さかなを たべて いました。

口永良部島の調査では、体の大きさによる違いも見つかっています。ウツボ属の大きな個体は、主にカニ類と魚類を食べていました。体長10cm(100mm)未満の幼魚は、ヨコエビ類を中心に食べていました[4]。

ヨコエビは、海藻や岩の上などにいる体長がせいぜい数ミリから数センチの小さな生き物です。口が小さい幼魚にも飲みこめる大きさの獲物から始めて、成長するにつれて、カニや魚へ移っていくと考えられます。ただし、この「口の大きさ」の説明は、研究の要旨が書いている理由ではなく、読み手の想像です。

では、同じ海にすむ別の種どうしでは、食べ物はどれくらい違うのでしょうか。

口永良部島の調査では、大型のウツボ属個体は主にカニ類と魚類を、全長100mm未満の幼魚は主にヨコエビ類を食べていた[4]。体の大きさに応じて餌が切りかわる、いわゆる成長に伴う食性の変化である。

この資料の要旨が示すのは、大きさと餌の対応までである。口の大きさや泳ぐ力が理由かどうかは、要旨からは分からない。だが少なくとも、「ウツボの餌はカニと魚」という答えは、体長10cm前後より大きい個体について言えることであり、幼魚の食卓まで含めた答えではない。

5. なかまでも、かに ばかりの うつぼと、さかな ばかりの うつぼが いる?

5. カリブ海のウツボ2種:カニの専門家と魚の専門家、そして荒れた夜

5. ベリーズのサンゴ礁:種ごとの専門化と、天気による餌の切りかえ

カリブ海の サンゴの うみでは、うつぼの なかま 2しゅるいが しらべられました。

ひとつは、ちいさな かにを おもに たべます。もうひとつは、さかなを おもに たべます。おなじ うみで、おなじ よるに かつやくして いても、ごはんは ちがいました。

てんきでも ちがいました。うみが あれた よるは さかなを たべる ことが ふえ、おだやかな よるは かにを たべる ことが ふえたそうです。

おなかが からっぽだった わりあいは、かにを たべる しゅが 39%、さかなを たべる しゅが 70% でした。

中米ベリーズのサンゴ礁では、ウツボ科の2種の胃の中身が調べられました。一方の種は小さなカニに、もう一方の種は魚に、食べ物がかたよっていました。胃が空だった割合は、カニを食べる種で約39%、魚を食べる種で約70%でした。どちらの種も、主に夜に活動していました[5]。

天気と餌の種類にも関連が報告されています。2種とも、荒れた夜には魚を食べる量が増え、穏やかな夜にはカニを食べる量が増えたと報告されています[5]。

日本のウツボの結果ではなく、カリブ海の2種の結果です。それでも、「ウツボの食べ物は一つではない」ことを、種と天気の2つの角度から示してくれます。

カリブ海ベリーズのサンゴ礁での調査は、ウツボ科2種(Gymnothorax moringa と G. vicinus)の食性を比べた。前者は小型のカニに、後者は魚に特化していた。胃が空の割合は前者で約39%、後者で約70%と大きく異なり、両種とも活動は主に夜だった[5]。

この調査では天気と餌の種類の関連も報告されている。論文の要約によれば、荒れた夜には両種で魚の消費が増え、穏やかな夜にはカニの消費が増えた[5]。海が荒れると砂や岩の上のカニが見つけにくくなる、などの理由が考えられるが、要約からはそこまで読み取れない。

注意点は2つある。1つは、これがカリブ海の2種の結果であり、日本のウツボには当てはめられないこと。もう1つは、空胃の割合が39%と70%で大きく違うのが、種の食べ方の違い(待ち伏せ型か探索型か)なのか、採集方法の違いなのかが、この結果だけでは分けられないことだ。

6. こんど うつぼを みたら、なにを きにする?

6. 水族館や図鑑で、ウツボの「ごはん」を探してみる

6. 一つの答えを疑うために:資料の読み方と次の問い

ウツボの ごはんは、さかなだけでも、かにだけでも ありませんでした。おおきさや しゅるい、うみの ようすで かわりました。

すいぞくかんに いく ことが あれば、おなじ すいそうに いる うつぼを みて、いつ えさを あげるのか、なにを あげるのかを、かかりの ひとに きいて みましょう。えさの なまえが、ずかんの せつめいと おなじか ちがうか、くらべられます。

とても くらい ばしょや あぶない いわばは、おとなと いっしょでも、ちかづかないように しましょう。

ウツボの食べ物は、辞典の一行では書ききれません。魚・カニ・タコと言っても、場所や種類、体の大きさ、季節、天気で変わります。

水族館に行く機会があれば、ウツボの水槽の前に、餌の種類や与える時間が書いてないか探してみてください。表示があれば、図鑑の「魚、エビ、カニ、タコなど」という説明と比べます。なければ、図鑑の説明から何を食べていそうかを考えてみます。どちらでも、図鑑の一行が何をまとめた言葉なのかが見えてきます。

調べ方の次の一歩として、論文の題名で「食性」「胃内容物」という言葉を探すと、魚や貝など他の生き物でも同じような研究が見つかります。日本語で読める要旨も多くあります。

3つの調査は、方法も海も種も違う。そのため、どれか一つの数字を「ウツボの食べ物」とは呼べない。館山湾は魚中心、口永良部島はカニ中心、ベリーズは種ごとにカニと魚に分かれた。共通するのは、ウツボ類がカニ・魚・タコの仲間などを食べる肉食魚であること、そして中心の餌が条件で入れかわることだ。

読み方の練習として、文献を検索するときは「食性」「胃内容物」「摂餌」などの語を使うと、日本語の要旨がある論文が見つかる。J-STAGEや大学の機関リポジトリなどで公開されている。館山湾の論文は魚類学雑誌71巻1号に載った[3]。

残る問いは、日本のウツボについて、季節ごとの内訳や大きさ別の詳しい数値が、どの程度分かっているかだ。上の論文の本文には、今回読めなかった表がある。気になる読者は、原典に当たってほしい。

しらべた もとの じょうほう

参考にした情報源

参考にした情報源と、その使い方

胃の中身の数字と研究の結論は、出典欄の論文の要旨にもとづきます。

  1. コトバンク「ウツボ」(世界大百科事典・日本大百科全書・図鑑NEO) https://kotobank.jp/word/ウツボ-34935 (夜行性・食べ物・餌にタコが効果的という記述)
  2. Honda 釣り 魚図鑑「ウツボ」 https://www.honda.co.jp/fishing/picture-book/utsubo/ (ウツボの食べ物の一般的な説明)
  3. 小林ほか 2024「東京湾湾口部館山湾におけるウツボの食性とその季節変動」魚類学雑誌71(1):121-128 https://fra.repo.nii.ac.jp/records/2008607 (館山湾での胃内容物と季節差)
  4. 行平ほか 1994 広島大学生物生産学部紀要33(2):159-166 https://hiroshima.repo.nii.ac.jp/records/2023840 (口永良部島のウツボ科14種の食べ物と体の大きさによる違い)
  5. Young & Winn 2003, Copeia 2003(1):44-55 論文ページ(BioOne) (ベリーズでの2種の食性と天気の影響。英語の資料)

なおした ところ

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