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1まいの レンズで、とおくも ちかくも 見える? めの なかに いれる ふしぎな レンズ

1枚のレンズで遠くも近くも見える? 白内障の手術で選べる多焦点眼内レンズ

多焦点眼内レンズ ── 光を分けて複数の距離にピントを作る一方、夜の光が輪に見えるハローが起きやすくなる

分野:技術

めの なかに いれる レンズの なかには、1まいで とおくと ちかくの りょうほうに ピントを あわせる ものが あります。

どうして そんな ことが できるのでしょうか。じつは、レンズが ひかりを いくつかに わけて いるのです。そのかわり、よるの あかりが わに 見えることも あります。この きじでは、その しくみと、えらぶ ときの かんがえかたが わかります。

白内障の手術では、濁った水晶体を人工のレンズに取りかえます。そのレンズの中には、1枚で遠くにも近くにもピントを作るものがあります。

どうして1枚で、2か所以上にピントが合うのでしょうか。しくみは「光を分ける」ことで、代わりに夜の街灯が輪に見えやすくなることもあります。この記事では、そのしくみと得意・不得意、日本での費用の考え方が分かります。

多焦点眼内レンズは、光を分けて複数の距離にピントを作る一方、ハローが起きやすくなるという交換条件を持つ。白内障手術で水晶体のかわりに入れるこのレンズは、1枚で遠方と近方など複数の距離にピントを作る。それを可能にしているのは、入ってくる光を複数の焦点に分けるという設計である[2]。

ところが、光を分けることは副作用と表裏一体で、Cochraneレビューは、ハロー(光の輪)の起きやすさが単焦点の約3.5倍と報告している[1]。この記事では、なぜ光を分けるとそうなるのか、得られる利点とどう釣り合うのか、日本での費用の扱いまでが分かる。

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1. しゅじゅつの あと、しんぶんを よむ とき どうなる?

1. 手術のあと、新聞を読むときの眼鏡はどうなる?

1. 単焦点レンズでは、ピントは1か所にしか合わない

めの なかには、水晶体すいしょうたいという レンズが あります。はくないしょうは、この レンズが にごって、よく 見えなくなる びょうきです。

そこで 手術しゅじゅつで、にごった レンズを とって、かわりの レンズを いれます。ふつうの レンズは、ピントが あう ところが 1つだけです。とおくに あわせると、ちかくの もじを 見る ときは めがねが ひつようになることが あります。

では、1まいで ちかくにも とおくにも あわせられる レンズは、あるのでしょうか。

白内障は、目の中でレンズの役目をしている水晶体が濁って、見えにくくなる病気です。手術では、濁った水晶体を取り出して、代わりに眼内レンズという人工のレンズを入れます。

よく使われる単焦点のレンズは、ピントが合う距離が1か所だけです。遠くに合わせれば、近くの文字を読むときには眼鏡が必要になることがあります。

では、1枚のレンズで、遠くにも近くにもピントを作ることはできるのでしょうか。それをねらったのが多焦点眼内レンズです。

白内障は、水晶体が濁って光の通りが悪くなる状態で、手術では水晶体を取り除き、代わりに眼内レンズを入れる。一般的な単焦点眼内レンズは、焦点が1つだけで、ピントの合う距離が1か所に決まる。たとえば遠方に合わせた場合、手元の文字を読むには眼鏡で補う場面が出てくる。

その点を変えようとして作られたのが、複数の距離にピントを作る多焦点眼内レンズである。多焦点の発想は、1949年にハロルド・リドリーが世界で初めて眼内レンズを入れた手術[3]から数えて、約40年後に実用の形になった。では、1枚のレンズで複数の焦点を作るとはどういうことか。

2. 1まいで 2かしょに ピントを あわせる、ひみつは?

2. 1枚で2か所にピントを作る、光を分けるしくみ

2. 光を複数の焦点に配分する ── 屈折型と回折型

ひみつは、ひかりを わける ことです。レンズに はいって きた ひかりの いちぶを とおくの ピントへ、のこりを ちかくの ピントへ あつめます[2]。

ひかりを わける やりかたは、おもに 2しゅるいです。レンズの めんを いくつかの ところに わける やりかたと、レンズの ひょうめんに ほった とても こまかい だんさを つかう やりかたです。どちらも、ひかりを いくつかの ピントに わける ための くふうです。

ただし、わけた ぶん、1つの ピントに あつまる ひかりは すくなく なります[2]。ここが、あとで 出てくる ふしぎな 見え方に つながります。

多焦点眼内レンズは、入ってきた光を、遠く用と近く用などに分けて、複数の距離にピントを作ります[2]。

分け方は大きく2つあります。レンズの面をいくつかの領域に分けて、領域ごとに遠く用・近く用にする屈折型と、光の回折という性質を使い、表面に刻んだ同心円状の細かい段差で光を分ける回折型です。

ただし、光を分けるということは、1つの焦点に集まる光が単焦点より少なくなるということでもあります[2]。見えなくなるわけではありませんが、光の配分は、あとで出てくる見え方の癖の原因になります。

多焦点眼内レンズの基本は、入射光を遠方用・近方用などの焦点に配分することである。方式は、レンズ面を屈折力の異なる領域に分ける屈折型と、同心円状の微細な段差による光の回折を利用する回折型に大別される[2]。

配分の結果、1つの焦点に集まる光は単焦点より少なくなる。これは焦点ごとの配分の話で、像が見えなくなるのではない。ただし、コントラスト感度の低下やハローといった見え方の癖と結びついていることが、専門誌の解説でも指摘されている[2]。回折型の段差の物理的な詳細は、ここでは立ち入らない。

では、その代償を払ってまで得られる利点は、どのくらいあるのか。

3. めがねは、ほんとうに いらなく なるの?

3. 眼鏡は本当に要らなくなるのか ── 研究の結果

3. 眼鏡依存は減るのか ── Cochraneレビューの結果

おおくの けんきゅうを あつめて くらべた ほうこくが あります。たすう ピントの レンズと ふつうの レンズを くらべた ほうこくでは、たすう ピントの レンズを いれた ひとは、ちかくが 見えやすく、めがねを つかう ことが すくなく なるかもしれません[1]。

とおくの 見え方は、ふつうの レンズと かわりませんでした。

でも、「ぜったい めがねが いらない」とは いえません。しらべた けっかの たしかさは、あまり たかくは ないと されています。

多焦点と単焦点を比べた研究を集めたCochraneレビューでは、多焦点のほうが近くの視力がよくなりやすく、眼鏡に頼る度合いが減る可能性があると報告されています。眼鏡依存のリスク比は0.63で、単焦点群より低い値でしたが、この結果の確実性は低いと評価されています[1]。

遠くの視力は、単焦点とほとんど変わりませんでした(確実性は中程度)。

つまり、多焦点なら眼鏡が要らなくなる、と言い切れるわけではありません。

多焦点と単焦点を比べたCochraneレビュー(CD003169)では、多焦点群で眼鏡への依存が少なくなる可能性が示された(リスク比0.63、確実性は低い)。近方視力は多焦点で良くなりやすく、遠方視力は両者で差がなかった(確実性は中程度)[1]。

リスク比0.63は、眼鏡を使う割合が単焦点群の約63%になるという意味で、単焦点群より低い値である。ただし確実性が低いため、「眼鏡が不要になる」とは言えない。

そのうえ、同じレビューは別の結果も報告している。

4. よるの まちの あかりが、わに 見える?

4. 夜の街灯が輪に見える ── ハローとグレア

4. ハロー・グレアの増加 ── 利点を上回るかは個人差

おなじ ほうこくでは、まぶしさや ひかりの わが、ふつうの レンズより おおく 出ると いう けっかも ありました[1]。

よるの がいとうの まわりに わが 見える ことを「ハロー」、まぶしく かんじる ことを「グレア」と よびます。

ハローが おきる わりあいは、ふつうの レンズの 3ばい ぐらいでした。ただし、ぜんいんに おきる わけでは ありません。

この ふべんさと、めがねが へる べんりさの どちらが おおきいかは、ひとに よって ちがう と まとめられて います。

同じレビューは、不快な光の見え方がより多く、より気になりやすいことも報告しています[1]。夜の街灯や車のライトのまわりに輪が見えることをハロー、まぶしく感じることをグレアといいます。

ハローの起きやすさは、単焦点の約3.5倍でした。これは起きやすさを比べた数字で、全員に起きるという意味ではありません。

眼鏡が減る便利さが、この見え方の癖を上回るかどうかは、人によって違うと結論づけられています。夜に車を運転する人と、手元の細かい作業が多い人とでは、大切にしたいものが違うからです。

同じレビューは、ハロー・グレアなどの不快な視覚現象が多焦点で多く、より煩わしいと報告し、ハローの起きやすさは約3.5倍だった[1]。この倍率は発生率の比で、全例に生じるわけではない。

前章のとおり、光を複数の焦点に分ければ焦点ごとの光は減り、専門誌の解説でも、コントラスト感度の低下やハローが光の分割に伴う現象として挙げられている[2]。

レビューは、近方視力と眼鏡依存の改善が、この副作用を上回るかどうかは人によって異なると結論づけている[1]。夜間運転が多い人と近業が多い人では、評価が分かれるのは自然だろう。

では、光の分け方を変えれば、この副作用は減らせるのか。

5. わが 見えにくい レンズは つくれる?

5. 光の分け方を工夫して、輪を減らせるのか

5. 3焦点型・EDOF型 ── 光の配分の工夫

ひかりの わけかたを くふうした レンズが、いろいろ つくられて います。

とおくと ちかくの あいだの ちゅうくらいの きょりにも ピントを つくる 3つの ピントの レンズが あります。ピントの はんいを ながく のばして、とおくから ちゅうくらいを 見やすく する レンズも あります[4]。

この はんいを のばす タイプは、ちかくを 見る ちからは ひかえめですが、わや まぶしさは おきにくい と いわれます。

むかしの ことを すこし ふりかえると、めの なかに レンズを いれる しゅじゅつは、1949ねんに リドリーという いしゃが はじめて おこないました[3]。たすう ピントの レンズが 出てきたのは、1980ねんだい の おわりです[2]。

光の分け方の工夫として、遠く・中間・近くの3つに焦点を作る3焦点型、焦点が連続して伸びる型、ピントの合う範囲を伸ばして遠くから中間を見やすくする焦点深度拡張(EDOF)型などが作られました[4]。

EDOF型は、近くを見るための足し算が小さい代わりに、ハローやグレアが起きにくいレンズとして開発されたと紹介されています。見え方の範囲と癖のどちらを重く見るかで、選ぶレンズが変わってきます。

眼内レンズそのものの歴史は、1949年11月29日、ハロルド・リドリーがロンドンの病院で、世界で初めて眼内レンズを入れたことに始まります[3]。リドリーの考えは、長いあいだ学会で冷たく迎えられ、受け入れられたのは1970年代後半でした。多焦点のレンズが現れたのは1980年代後半で、1986年に英国で屈折型が、1987年に米国の企業から回折型が発売されています[2]。

副作用を抑えるため、光の配分に工夫を加えたレンズが開発されてきた。遠・中間・近の3焦点型、焦点が連続的に伸びる型、焦点深度拡張(EDOF)型などである。EDOF型は近方の加入度が小さいが、ハロー・グレアが起きにくいとされる[4]。近くをどこまで見たいかと、見え方の癖をどこまで許せるかは、トレードオフの関係にある。

この系統の出発点は、1949年11月29日のリドリーによる世界初の眼内レンズ移植である[3]。材料のアクリルは、目に刺さった風防の破片が炎症を起こしにくかった観察に着想を得たとされるが、リドリー自身はこの逸話が新聞向けに誇張された面があると述べており、実際には医療用に製造した材料が使われた[3]。

リドリーの考えが学会に認められたのは1970年代後半で、多焦点が登場したのは1980年代後半、屈折型が1986年、回折型が1987年である[2]。

6. にほんでは、おかねは どう なるの?

6. 日本では、費用はどう扱われるのか

6. 選定療養 ── 手術は保険、レンズの差額は自己負担

にほんでは、2020ねんの 4がつから、めがねを へらす ことを ねらった たすう ピントの レンズを つかう しゅじゅつは、「せんていりょうよう」という きまりの たいしょうに なりました[5]。

しゅじゅつの ぶぶんは、ふつうの ほけんが つかえます。ふつうの レンズとの ねだんの ちがいの ぶんだけは、じぶんで はらいます[5]。

その ねだんは、びょういんごとに ちがい、かた目で すうじゅうまん円 ぐらいの ところが あります[6]。

どの レンズが いいかは、ひとに よって ちがいます。しゅじゅつの まえに、おいしゃさんと よく はなして きめます。

日本では、2020年(令和2年)4月から、術後の眼鏡の使用を減らすことをねらった多焦点眼内レンズを使う白内障手術が、厚生労働省の定める選定療養の対象になりました[5]。

手術そのものには医療保険が使えます。通常のレンズとの差額の部分だけが、全額自己負担になる仕組みです[5]。

差額は病院ごとに決まります。ある病院が2026年に掲示した案内では、3焦点レンズで片眼およそ25万円ですが、病院や時期によって幅があり、数十万円がひとつの目安です[6]。

輪が見えにくいかどうか、近くをどれくらい見たいか、費用をかけるかどうか。自分の生活に合わせて、医師とよく話して決めることが前提になっています。

日本では、令和2年(2020年)4月から、術後の眼鏡装用率の軽減を目的とする多焦点眼内レンズを用いた白内障手術が、厚生労働省の定める選定療養の対象になった[5]。選定療養は、保険診療と保険外の部分を併用できる枠組みで、手術そのものは医療保険が使え、レンズの差額分が全額自己負担となる。「保険がきかない」のではない点に注意が必要である。

差額は病院が独自に設定する。ある病院が2026年に掲示した3焦点レンズの案内では片眼で約25万円であり、別の病院は約30万円、さらに高い額を示すところもあるなど、数十万円規模の幅がある[6]。金額は病院・時期で変わるため、受ける前の確認が前提になる。

以上をまとめると、多焦点眼内レンズは、光を分けることで近くの見やすさと眼鏡の減少を狙う一方、ハロー・グレアの起きやすさを伴う。眼鏡を減らせる可能性とハロー・グレアの起きやすさのどちらを重く見るかは人による。自分の生活に合わせて、医師と相談して選ぶ必要がある。

自分でも しらべて みたく なったら

自分でも調べてみたくなったら

自分でも調べてみたくなったら

今日できること

ゆびを 1ぽん、かおの まえに たてます。そして、ゆびと、とおくの かんばんを、かわるがわる 見て みましょう。ゆびに あわせると とおくが ぼやけ、とおくに あわせると ゆびが ぼやけませんか。ふつうの 目は、おなじ ときに 2かしょには ピントが あいにくいのです。

しらべるなら

くわしい ことは、ピントを あわせる しくみの きじが あります。おうちの ひとと いっしょに、よんで みてください。

今日できること

人さし指を顔の前に立て、指と遠くの看板を交互に見てみましょう。指に合わせると遠くがぼやけ、遠くに合わせると指がぼやけます。目は、同じ瞬間に2か所へピントを合わせるのが苦手だと体で分かります。

読んでみるなら

目のピント合わせのしくみは、老眼とピント合わせのしくみの記事に書いてあります。白内障手術と眼内レンズの歴史は、白内障手術と眼内レンズの記事が詳しいです。

公式情報

出典に挙げた、病院の患者さん向けの案内を読むと、自分が受ける場合の費用や説明の流れが分かります。

今日できること

指を顔の前に立て、遠方の看板と交互に見て、片方にしかピントが合わないことを確かめる。近くと遠くで、ピントの合い方が変わるのが分かるはずだ。

資料を読むなら

出典に挙げた病院の患者向けPDFでは、日本語で選定療養の説明や差額の掲示を読める。効果と副作用の元になったCochraneレビューの要旨は英語だが、結果の項目をたどれる。関連する記事にピント合わせの記事と白内障手術と眼内レンズの記事がある。

しらべた もとの じょうほう

参考にした情報源

参考にした情報源と、その使い方

効果と副作用はCochraneレビューを軸に、方式の説明は専門誌の解説、歴史はリドリーの伝記論文、費用は病院の案内で確かめた。差額の金額は病院・時期で変わる。

  1. Cochrane Review CD003169「Multifocal versus monofocal intraocular lenses after cataract extraction」 https://www.cochrane.org/CD003169/EYES_multifocal-versus-monofocal-intraocular-lenses-after-cataract-extraction (眼鏡依存・ハロー・グレアの結果)
  2. CRSToday Europe「Multifocality Over the Years」(2011) https://crstodayeurope.com/articles/2011-mar/multifocality-over-the-years/ (光を分けるしくみ・多焦点の登場)
  3. Apple DJ, Sims J. Survey of Ophthalmology 40:279-292 (1996) https://rayner.com/global/wp-content/uploads/sites/21/2021/12/Invention_of_the_IOL.pdf (リドリーと最初の眼内レンズ)
  4. 荒井宏幸「臨床眼科」78巻11号(2024)要旨 http://imis.igaku-shoin.co.jp/contents/journal/03705579/78/11/1410215329/ (3焦点型・EDOF型)
  5. 日本大学医学部附属板橋病院 患者向け案内 https://www.itabashi.med.nihon-u.ac.jp/document/outline/information/multifocal_lens_2026.pdf (選定療養の対象になった時期・自己負担の範囲)
  6. 藤沢市民病院 多焦点眼内レンズの案内 https://fujisawacity-hosp.jp/data/media/fujisawa-hospital/page/diseases/cataract/multifocal_iol_2026_1.pdf (差額の金額の例)

なおした ところ

更新履歴

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