1. つめの さきは、いつ つくられた ものなの?
1. 切り落とす爪の先は、半年前に作られた部分
1. 爪を作る細胞は根元にあり、新しい爪を先へ押し出す
つめは、ゆびの さきっぽで のびて いるように みえます。でも、つくって いる ばしょは、さきっぽでは ありません。
ゆびの つけねの、ひふの したに かくれた ところです。ここを「つめぼ」と いいます。ここで あたらしい つめが うまれて、まえへ まえへと おしだされて いきます。
おとなの てのつめは、1にち およそ 0.1ミリメートル のびます。コピー用紙 1まいぶんの あつさ くらいです。1か月 たつと、およそ 3ミリメートルです。
つめの つけねから さきまで とどくのに、てのつめで はんとし ぐらい かかる と いわれます。つまり、いま きる つめの さきは、はんとし まえの つめなのです。
ただし、これは へいきんです。げんきな ひとでも、のびる はやさは ひとに よって ずいぶん ちがいます。
爪は指の先端で伸びているように見えますが、作られている場所は先端ではありません。皮膚の下に隠れた付け根の部分、爪母が、爪の成長が始まるところです[2]。ここで新しくできた爪が前へ押し出されて、指先へ向かって伸びていきます[1]。
速さは、成人の手の爪で平均しておよそ1日0.1mm、1か月に約3mmとされます[1]。0.1mmは、コピー用紙1枚ぶんほどの厚さです。1日ではほとんど気づけない動きですが、毎日休まず続くので、1か月で定規の目盛り3つ分になります。
この速さで、手の爪が根元から先端まで入れかわるのに約6か月、足の爪では12〜18か月かかるという説明があります[3]。1か月3mmの半年ぶんは約18mmで、爪の長さをふだんの爪と見比べると、だいたい合う計算です。つまり、爪切りで落としている先端は、半年ほど前に作られた部分だということになります。
ただし、0.1mmは平均で、決まった値ではありません。健康な人でも、1か月に1.8mm未満の人から4.5mmを超える人までいて、個人差が大きいと報告されています[1]。
爪は、見かけ上は指先で伸びているが、細胞が作られるのは先端ではなく付け根である。皮膚の下にある爪母が「爪の成長が始まるところ」で、ここで作られた爪甲(ケラチンというタンパク質でできた硬い板)が前方へ押し出される[2][1]。
したがって、爪母で新しい爪が作られる速さが、爪の伸びる速さに関わる。成人の手の爪の平均は約0.1mm/日(約3mm/月)で、これは固定値ではなく、健康な人でも月1.8mm未満から4.5mm超まで幅がある[1]。0.1mm/日で半年(約180日)なら約18mmとなり、手の爪の長さのおおよそのスケールと合う。実際に、手の爪が全体として生え変わるのに約6か月、足の爪で12〜18か月という値が報告されている。足の爪の伸びは、手の爪の3分の1〜半分の速さとされる[3]。ただし出典によって「6〜12か月」とする記述もあり、手の爪の入れかわりの期間には幅がある[5]。
ここから、爪の先端は「その人が半年ほど前に作った部分」だと読める。切ったあとに伸びた長さなら、平均の速さを使って経過時間の目安を計算できる(個人差があるので概算である)。この見方は、この記事のあとの章で、自分の爪で確かめる手順につなげる。
2. どうして つめは、やすまずに のびるの?
2. 髪は休むのに、爪はなぜ休まないのか
2. 爪母の細胞分裂は止まらず、爪は約196層の板になる
かみの けは、のびる じきと、やすむ じきを くりかえします。つめは ちがいます。つめを つくる ところは、さいぼうを ふやす しごとを やすみません。だから つめは、いつも すこしずつ のびて います。
つめの いたは、さいぼうが うすく たくさん かさなって できて います。かさなりの かずは、へいきんで 196そう ぐらいと いわれます。ひとや ゆびで ちがう かずです。
この さいぼうは、できあがると しんで しまった さいぼうです。だから つめを きっても いたく ありません。
つけねの ところに ある しろい はんげつの かたちは、できたての つめです。みずを おおく ふくんで いるので、しろく みえると いわれます。
髪の毛は、伸びる時期と休む時期をくり返します。ところが爪は、休みません。爪母の細胞は分裂を止めず、爪は絶え間なく作られる点が、髪の毛とのちがいとして説明されます[1]。
こうしてできる爪の板は、平均で約196層の細胞が重なったものです[1]。厚さの平均は女性で0.5mm、男性で0.6mmで、爪母の幅(長さ)が長いほど、板は厚くなるとされます[1]。コピー用紙5〜6枚ぶんの厚みの中に、細胞の層がぎっしり重なっているわけです。196層は平均で、人や指によって変わります。
爪の板になった細胞は、すでに死んだ細胞の集まりで、切っても痛みを感じません[5]。痛みがないのは、爪の先の板が、生きて感覚を伝える部分とはちがうからです。
爪の根元に見える白い半月形の部分(爪半月)は、できたての爪です。角質になりきっておらず水分が多いため、白く見えると説明されます[5]。爪の成長が目に見える場所のひとつです。
では、爪はなぜ止まらないのか。髪の毛は、成長期と休止期をくり返す周期的な成長をするのに対し、爪母の細胞分裂は連続的で、爪は絶えず形成される。この対比は、Baswanらの総説(2017)にも明記されている[1]。止まらずに作られるからこそ、爪の長さは時間の経過を反映する。
爪甲は、平均して約196層の細胞が重なった構造をもつ。平均の厚さは女性0.5mm、男性0.6mmで、厚さは爪母の長さによって決まる[1]。この2つの平均をそのまま割ると、1層あたりおよそ0.0026mmとなる。ただし、層数と厚さは別々の測定の平均であり、あくまで桁を知るための概算である。
この層をなす細胞は、角質化した死細胞である。爪甲は死んだ細胞の集合体で、切っても痛みを感じない。根元の爪半月は、できたての爪が角質化しきっておらず、水分が多いために白く見える部分と説明される[5]。なお、爪半月の大きさは健康状態の目安にならない、という記述も同じ資料にある。
3. てと あしでは、どれくらい のびる はやさが ちがうの?
3. 足の爪の伸びは、手の爪の約半分
3. 22人の測定では、手の爪は足の爪の約2倍の速さで伸びた
てのつめは よく きるのに、あしの つめは あまり きらない、と おもった ことは ないでしょうか。
アメリカで、わかい おとな 22にんの つめを はかった けんきゅうが あります。1か月に のびたのは、てのつめが 3.47ミリメートル、あしの つめが 1.62ミリメートル でした。てのつめは、あしの つめの 2ばい ぐらい はやく のびて いました。
あしの つめが つけねから さきまで とどくのは、1ねん いじょう かかると いわれます。
こどもは おとなより はやく のびると いわれます。からだが さかんに はたらいて いるからです。としを とると、のびる はやさは ゆっくりに なって いきます。
手の爪は頻繁に切るのに、足の爪はそれほど切らない、と感じた人も多いでしょう。その感覚は、測った数字とも合っています。
アメリカの健康な若い成人22人の爪を測った研究では、1か月に伸びる長さは、手の爪が平均3.47mm、足の爪が1.62mmでした。手の爪は足の爪の約2倍の速さです[4]。別の資料でも、足の爪は手の爪の3分の1〜半分の速さで、足の爪が全部生え変わるには12〜18か月かかるとされています[3]。
伸びる速さは、年齢でも変わるとされます。子どもは新陳代謝が活発で大人より早く伸び、年を重ねると速さは下がるといわれます[5]。ただし、これは一般的な傾向の説明で、一人ひとりの速さを決めつけるものではありません。
手と足では、伸びる速さはどれほど違うのか。Yaemsiriら(2010)は、米国の健康な若い成人22人を対象に、爪の伸びる速さを測定した。平均は、手の爪が3.47mm/月、足の爪が1.62mm/月で、手の爪は足の爪の約2倍の速さだった。指ごとの比較では、小指の爪は手の他の指より遅く、足の親指の爪は他の足指より速かったとされる[4]。ただしこれは22人の小さな調査で、抄録による確認であり、結果は一般化できる範囲に限りがある。
別の総説(Eplasty, 2014)は、足の爪の伸びを手の爪の3分の1〜半分とし、足の爪が全体として再生するには12〜18か月かかるとする[3]。上の測定値の比(3.47/1.62 ≒ 2.1)は「半分」に近く、概ね矛盾しない。足の爪が遅い理由は、これらの資料では説明されていないため、ここでは断定しない。
年齢と季節の影響は、辞典の記述にとどまる。小児は新陳代謝が活発なため成人より早く伸び、冬季より夏季のほうが早く伸びるとされ、加齢とともに速さは低下する[5]。こうした差の数値は、この資料には示されていない。したがって、「自分の爪が平均より遅い」ことは、優劣や異常を意味しない。
4. そもそも、つめは なぜ ゆびの さきに あるの?
4. 爪はなぜ指先にあるのか:祖先の「かぎ爪」から平らな爪へ
4. 爪の役割と起源:かぎ爪から平爪への移りかわりは単純ではない
つめは、ゆびの さきを まもって います。ものを つまんだり、かゆい ところを かいたり する ときにも やくに たちます。ゆびの さきの かんじを たすけて いる、とも いわれます。
ただし、つめが あると かならず さわった かんじが よく なる、とは いえません。しっかりした けんきゅうは まだ すすんでいる ところです。
つめの むかしの すがたは、どうだったのでしょう。5600まんねん いじょう まえの、アメリカの ワイオミングしゅうで みつかった かせきが あります。さるの なかまの そせんは、たいらな つめと いっしょに、からだを きれいに する ための かぎづめも のこして いました。
かぎづめから たいらな つめに かわった みちのりは、おもって いたより ふくざつ だった ようです。つめが なぜ うまれたのかは、まだ きまって いません。
爪は何のためにあるのでしょうか。資料では、指先を守る、指先の感覚(触覚)を助ける、ものをつまむなどの細かい作業をしやすくする、かゆいところをかく、といった働きが挙げられています[3][1]。
「指の腹が物を押す力を、爪が裏から受け止めるので細かい作業ができる」という説明も広く見られます。ただし、これを直接確かめた研究はまだ十分とはいえず、「爪があれば触覚が必ずよくなる」と言い切ることはできません。
爪の起源も、まだ決着していません。5600万年以上前の、米国ワイオミング州の化石の研究では、最古級の霊長類の祖先が、平らな爪とともに、毛づくろい用のかぎ爪も残していたと報告されています[6]。かぎ爪から平らな爪への移り変わりは、それまで思われていたより複雑だったようです。なぜ平らな爪が生まれたのかについては、木に登ったり、跳んだり、枝をつかんだりする動きに合わせて変わったのではないか、という仮説があり、まだ確定していません。
爪の働きは、資料では指先の触覚、体温調節、保護にかかわるものとされ、物をつまむ・かく動作を助けると説明される[3][1]。ただし、「指の腹が受ける力を爪が裏から支える(カウンタープレッシャー)ので細かな作業がしやすい」という広く見られる説明は、査読論文での直接の検証が見当たらない。予備的な学部生研究では、爪を水に浸してやわらかくすると、力の感じ方が変わったという報告があるが、これは査読論文ではない。そのため、本稿では「爪が触覚を助けるとされる」にとどめる。
起源についても、決着はない。Boyerら(2018)は、5600万年以上前のワイオミング州の化石を報告し、最古級の霊長類の祖先が、平爪とともに毛づくろい用のかぎ爪(グルーミングクロー)も残していたことを示した[6]。これは、かぎ爪から平爪へ「一直線に移った」という単純な図式への修正を促す。平爪の起源については、登る・跳ぶ・つかむといった動きへの適応という仮説があるが、確定はしていない。
爪を作る細胞のしくみは詳しく調べられている。爪が今の形になった理由や、触覚をどれほど助けるかは、まだ研究が続いている。
5. じぶんの つめで、1か月を はかって みよう
5. 自分の爪を「時間のものさし」にしてみる
5. 自分の爪で、0.1mm/日を検算する
つめを きった ひを おぼえて おいて、あとで どれくらい のびたか はかって みましょう。
- おとなの いる ところで、つめきりで つめを きります。きる のは つめきりだけです。
- きった ひを、ノートに かいて おきます。
- 2しゅうかん たったら、つめの さきの しろい ところの ながさを じょうぎで はかります。1しゅうかんで 0.7ミリメートルぐらいなので、2しゅうかんで 1.4ミリメートルぐらいです。
- 1か月 たったら、もういちど はかります。3ミリメートル ぐらいに なって いるでしょうか。
ひとに よって、はやい ことも おそい ことも あります。はやいから よい、おそいから わるい、という ことは ありません。
もし あしの つめも はかれたら、てのつめと くらべて みましょう。あしの つめは、1か月で 1.5ミリメートル ぐらいと いわれます。
爪の伸びる速さが平均0.1mm/日なら、爪の先の長さは、平均の速さを目安にすると「爪を切ってからの日数」のおよその見当がつきます。自分の爪で、この計算がどれくらい合うか確かめられます。
- 爪切りで爪を切り(大人のいるところで、刃物は爪切りだけを使います)、切った日をノートに書く。
- 2週間後に、指の肉の先から爪の先までの長さを定規で測る。0.1mm/日なら、約1.4mmです。
- 1か月後にもう一度測る。平均なら約3mmです。同じ指の、同じところを測ると、ずれが少なくなります。
平均より短くても長くても、そのまま「その人の速さ」です。1か月に1.8mm未満から4.5mm超まで、健康な人でも幅があります[1]。
足の爪も同じように測れれば、手の爪との比べ方が分かります。足の爪の伸びは手の爪の半分ほどなので、1か月で1.5mm前後の見当になります。
爪の長さと時間の関係は、家庭でも検算できる。爪切りで切った日を記録し、一定の間隔で、指の肉の先端から爪の先端までの長さを定規で測る(刃物は爪切りに限り、保護者の目の届くところで行う)。
平均の0.1mm/日なら、2週間で約1.4mm、1か月で約3mmとなる[1]。測定値がこれを下回っても上回っても、健康な人の範囲(月1.8mm未満〜4.5mm超)の中にありうる。同じ指、同じ位置で測ることが、ずれを減らす条件になる。
足の爪も測れば、手の爪との比(Yaemsiriらの22人では約2.1倍)と比べられる[4]。もっと詳しく知りたいなら、出典欄の総説(Baswanら, 2017)と、医学辞典の「爪」の項が入り口になる。
しらべた もとの じょうほう
参考にした情報源
参考にした情報源と、その使い方
爪の成長・構造・速さは、総説と医学系の資料で確かめ、くらしの言葉への言いかえは自分で行った。
- Baswan S, et al. "Understanding the formidable nail barrier: A review of the nail microstructure, composition and diseases." Mycoses 60(5):284-295 (2017). https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC5383514 (爪母・196層・厚さ・速さの平均と幅・髪との比較)
- MSDマニュアル家庭版「爪の病気の概要」 https://www.msdmanuals.com/ja-jp/home/17-皮膚の病気/爪の病気/爪の病気の概要 (爪母の場所と爪甲の材料)
- Eplasty 2014「Nail anatomy and physiology」関連記事 https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC4093773/ (足の爪の速さ・再生期間・爪の働き)
- Yaemsiri S, et al. "Growth rate of human fingernails and toenails in healthy American young adults." J Eur Acad Dermatol Venereol 24(4):420-3 (2010). https://www.ebi.ac.uk/europepmc/webservices/rest/search?query=EXT_ID:19744178&resultType=core&format=json (22人の手足の爪の速さ。抄録で確認)
- 看護roo!「用語辞典:爪」 http://www.kango-roo.com/word/20736/ (死んだ細胞・爪半月・年齢と季節)
- R&D World「Fossils show ancient primates had grooming claws as well as nails」 https://www.rdworldonline.com/fossils-show-ancient-primates-had-grooming-claws-as-well-as-nails/ (かぎ爪と平爪の化石の報道。原著は Boyer et al. 2018, J Hum Evol)
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