1. 花は たくさん さくのに、みは すこし
1. 数万個の花のうち、実になるのは2%未満
1. 咲いた花の98%以上が実にならない
はるに なると、オレンジの 木は いっせいに しろい 花を さかせます。おおきく そだった 木には、とても たくさんの 花が つきます[1]。
ところが、みに なって とれるのは、花の 2%より すくないのです。100この 花が あっても、みは 2こに とどきません。1まん この 花なら、みは 200こより すくなく なります。
のこりの 花は、どう なるのでしょう。さいた あとに おちたり、ちいさな みの まま おちたり、とる まえに おちたり します。
1本の木に、花は数万個
春のオレンジの木は、一斉に白い花を咲かせます。大きく育った木には、数えきれないほどたくさんの花がつきます。1本の木が花で白くなる景色を思うと、秋の木にオレンジ色の実が鈴なりになっている姿が目に浮かびます。
ところが、フロリダの果樹栽培の解説によると、収穫できる実になるのは花の2%未満です[1]。100個の花があっても実は2個に届かず、1万個の花なら200個より少なくなります。
落ちるのは、いつか
花が散った直後に落ちるもの、小さな実になってから落ちるもの、収穫の前に落ちるものがあります。小さな実がまとめて落ちる時期は「6月落果」と呼ばれますが、名前に反して、フロリダでは天気しだいで4月下旬から5月に起こるとされています[1]。
では、木の中では何が起きて、これほど多くの実が落ちるのでしょうか。
2. おちて いく みは、木を まもって いる
2. 落ちる実は、木の蓄えを守っているとされる
2. 実どうしの養分の奪い合いと、収穫量の調整
大きな おべんとうを ひとつ、たくさんの 人で わけると、だれも おなかが いっぱいに なりません。木の 中でも、すこし にた ことが おきて います。
みどうしは、木が つくった あまい えいようを とりあいます。よわい みは えいようが たりなくて、おちて しまいます[1]。
そうして みの かずが へる ので、木は たくわえを つかいきらずに すみます。ただし 木が かんがえて えらんで いるわけでは なく、そう なって いる、という せつめいです。
実どうしの、栄養の取り合い
実は、木が葉で作った糖などの養分を使って育ちます。木が作る養分には限りがあります。実がたくさん育つ時期には、養分が十分に届かない実が落ちることがあります[1]。
この落ち方には、役目があると説明されています。実の数が減ることで、木は蓄えを使い切らずにすむと説明されています。ただし、木が「どの実を残すか」を考えて選んでいるわけではなく、そういう仕組みになっているということです。
落ちた実は、むだではない
落ちる実がたくさんあることは、この木では当たり前の育ち方として説明されています。
では、木に残った実は、いつオレンジ色になるのでしょうか。
落果の理由として、フロリダの資料は炭水化物の不足を挙げる。実どうしが糖を取り合うため、弱い実は養分が足りずに落ち、木が実の数を調整して蓄えを使い切らないようにしている、という説明である[1]。ただし、木が実を選ぶという擬人的な読み方は避け、「そうした仕組みがはたらく」と受け取るのが適切である。
この説明に従えば、2%未満という割合は、木の失敗ではなく、花を多めに咲かせて実の数を絞る仕組みの結果として読める。品種・樹齢・気象による違いまでは、この資料からは読み取れない。
では、残った実は、どのように熟して色づくのか。
3. オレンジ色に なるのは、夜が つめたく なってから
3. 皮がオレンジ色になるのは、夜が冷えてから
3. 果皮の色づきと、中身の熟度は別に進む
みの かわは、はじめは みどり色です。みどりの もとが こわれて、だいだい色や きいろの いろが できると、オレンジ色に なります[2]。
それを はやめるのは、夜の つめたさです。夜の きおんが 13度より ひくく なると、いろづきが すすむと いわれます。
だから、あたたかい 夜が つづく ところでは、中が ちゃんと うれても、かわは みどりの ままの ことが あります。みどりでも、たべごろの ことが あるのです。
色を変えるのは、夜の気温
実の皮は、はじめは緑色です。緑の色のもとであるクロロフィルが分解され、橙色や黄色の色素(カロテノイド)が作られると、オレンジ色に変わります[2]。
この変化は、夜の気温がおよそ13℃(55°F)を下回ると進みやすくなると、フロリダの解説に書かれています。涼しい夜が来ることが、色づきの合図の一つになるわけです。
日本の温州みかんでも、同じ色素の入れかわりで皮が色づくことが、静岡大学の研究で確かめられています[7]。
緑のまま、食べごろになる
暖かい夜が続く熱帯などでは、中身が十分に熟しても、皮が緑のままのオレンジがあります。外の色と中の熟度は別々に進み、緑でも食べごろのことがあるのです[2]。春に暖かい夜がもどると、いったん色づいた皮が緑に戻る「再緑化」も起こります。
ただし、熱帯のオレンジがすべて緑になるわけではなく、品種や条件によって変わります。
こうして実が熟したとき、そのオレンジが、どんな木から来たのかが、もう一つの問いになります。
果皮の色づきは、葉緑素クロロフィルの分解と、カロテノイドの合成という二つの過程で進む。フロリダの資料では、夜温が約55°F(約13℃)を下回ると色の変化が誘導されるとされる[2]。つまり、色を変えるきっかけは日数や果実の大きさではなく、夜が冷えることである。
そのため、暖かい夜が続く熱帯域では、中身が十分に熟しても皮が緑のまま残ることがある。同じ資料は、果皮の色は内部の成熟度や品質とほとんど関係がないと述べ、春に暖かい夜が戻って再緑化する例にも触れている[2]。ただし、熱帯のオレンジがみな緑になるわけではなく、品種と気象条件で変わる。
日本の温州みかんについても、静岡大学の研究が、果皮でクロロフィルが分解しカロテノイドが蓄積することで着色が促進されると報告し、とくに緑が残る果実で効果が大きかったとしている[7]。この研究の対象はみかんでオレンジではないため、閾値の温度はオレンジの値をそのまま当てはめないほうがよい。
こうして実が熟して色づく。では、種のない品種は、どうやって増やすのか。
5. オレンジの おやは、ザボンと みかんの なかま
5. オレンジの親は、ザボンとみかんの仲間
5. ゲノム解析が示すオレンジの交雑起源
いま たべて いる オレンジ(スイートオレンジ)は、ザボンと みかんの なかまを かけあわせて できた 木だと いわれます[4]。
ゲノムを しらべた けんきゅうでは、ザボンが 4わり、みかんの なかまが 6わりほどと みつもられました。この わりあいは、しらべた けっかの 数字です。
ふるさとは、インドの アッサムの あたりを まん中にした、アジアの みなみ東だと いわれます[9]。
ゲノム解析が示した「交配の子」
スイートオレンジは、ザボン(ブンタン)とみかんの仲間(マンダリン)の交配でできた雑種です。2018年にNature誌に載ったゲノム解析では、祖先の割合は約42%がザボン、約58%がみかん類と見積もられたと、Wikipediaが紹介しています[4]。これは解析上の割合で、固定の事実ではありません。論文そのものは、ザボンの血がみかん類に広く混ざっていることを述べています[5]。
同じ研究は、ミカン属が中新世後期(数百万年前より前)に東南アジアで急速に分かれたと指摘しています。みかん類にはザボンの血が広く混ざっていて、果実の大きさや酸味と関係しうるとも述べています[5]。
ふるさとと、2000年以上の歴史
原産地は、インドのアッサムを中心とする東南アジアのあたりと説明されています[9]。中国へは早くから伝わり、スイートオレンジには2000年以上の歴史があるとされます。
スイートオレンジ(Citrus × sinensis)は、ザボンとマンダリン(みかん類)の交配によって生じた雑種で、ゲノム解析では祖先の割合が約42%がザボン、58%がマンダリンと見積もられた[4]。ただし、この比率は2018年のNature論文の解析結果をWikipediaが紹介したもので、論文の要旨とは別の二次資料の数字なので、「解析では約」と受け取る。
同論文の要旨は、ミカン属が中新世後期に東南アジアでの急速な放散を経て多様化したと述べる。マンダリン類にはザボンの混入が広く見られ、果実の大きさ・酸味との相関が示唆されると続く[5]。つまり、オレンジの大きさや酸味は、祖先の組み合わせの影響を受けうる。
原産は、インドのアッサムを中心とする東南アジア一帯とされる[9]。中国には早くから伝わり、スイートオレンジには2000年以上の歴史があるとされる。名前は、サンスクリット語のナガルンガがヒンディー語のナルンジー、アラビア語のナルンジを経たものと説明される。ただし、起源地の範囲は資料によって「中国南部・インド北東部・ミャンマー」とされることもあり、このあたり、とぼかすのが妥当である。
6. ネーブルを きって、たねを さがして みよう
6. 切ったオレンジの断面で、種をさがす
6. 断面の観察と、原典の探し方
おうちの 人と いっしょに、ネーブルを きって みましょう。ほうちょうは おとなに つかって もらいます。
たねは あるでしょうか。つぎに、ふつうの オレンジや みかんの なかまを きって、たねの かずを くらべます。ネーブルが たねを つくらない ことを、じぶんの 目で たしかめられます。
断面を切って、種を数える
ネーブルを買ったら、家の人に切ってもらって、断面に種があるか見てみてください。次に、別の種類のオレンジやみかん類を切り、種の数をくらべます。第4章のとおり、ネーブルは種ができにくい品種なので、ほかの品種との違いが見つかるはずです。
家にあるネーブルと、別のかんきつ(普通のオレンジやみかん類)を切り、断面の種の数を比べる。ネーブルは種ができにくい品種なので、ほかより少ないはずである。
種が少ないネーブルは、種をまいても同じ木にならないため接ぎ木で増える。一方、種のあるかんきつは、種から育てると親と同じ実になるとは限らない。見比べた断面から、増やし方がなぜ違うのかを考えてみるとよい。日本の栽培時期は、農研機構や県の資料が手がかりになる。
しらべた もとの じょうほう
参考にした情報源
参考にした情報源と、その使い方
本文は、ここにある資料の内容を、自分の言葉で言いかえたものです。数値や年は資料によって細部が異なることがあります。
- Citrus Industry, Fruit Drop of Citrus in Summer Months https://citrusindustry.net/2020/06/10/fruit-drop-of-citrus-in-summer-months/ (花から実になる割合と落果)
- Citrus Industry, Obtaining Optimal Peel Color of Fresh Florida Citrus https://citrusindustry.net/2020/09/21/obtaining-optimal-peel-color-of-fresh-florida-citrus/ (皮の色づきと夜の気温)
- UC Riverside Citrus Variety Collection, Washington Navel https://citrusvariety.ucr.edu/crc1241B (ネーブルの来歴と種なし)
- Wikipedia, Orange (fruit) https://en.wikipedia.org/wiki/Orange_(fruit) (交配起源と接ぎ木)
- Wu et al. 2018, Nature 554:311-316 (要旨, HAL収録) https://hal.inrae.fr/hal-02629341 (カンキツの多様化とザボンの混入)
- 静岡大学 令和3年度研究成果 https://project-kenkyu.shizuoka.ac.jp/wordpress/wp-content/uploads/r2_6.pdf (温州みかんの色づき)
- UC Riverside, 珠心胚の解説 https://iocv.ucr.edu/media/371/download (珠心胚と台木)
- コトバンク「オレンジ」 https://kotobank.jp/word/%E3%82%AA%E3%83%AC%E3%83%B3%E3%82%B8-455533 (原産地と歴史)
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