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うちゅうの とくべつな ばしょは、だれの もの?

静止軌道は、だれのものなのか

静止軌道は、だれのものなのか

分野:宇宙・天文

ちきゅうの まわりには、いつも おなじ ばしょに とまって いるように 見える、とくべつな みちが 一本だけ ある。

1990年、じんこう 10万人ほどの ちいさな 島の 国が、その みちの 16か所を「うちの ものだ」と 申しこんで、せかいを おどろかせた。

地球のまわりには、地上から見るといつも同じ場所にとどまって見える、たった一つの特別な軌道がある。

1990年、人口10万人ほどの小さな島国トンガが、その軌道の16か所を申請し、世界を驚かせた。

地球のまわりには、地上から見るといつも同じ場所に静止しているように見える、たった一つの特別な軌道がある。1990年、人口10万人ほどの島国トンガは、この軌道の16か所を申請し、衛星を1機も持たないまま世界を驚かせた。

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1. とくべつな ばしょに ある えいせいは、いつも おなじ ところに 見える

1. 静止軌道にある衛星は、いつも空の同じ場所に見える

1. 静止軌道の衛星は、地球の自転と同じ速さで回るため空の同じ場所にとどまる

赤道の 上、高さ やく3万6000キロメートルの ところを、地球が 1回 まわる ときと おなじ はやさで まわる みちが ある。この みちを まわる えいせいは、地上から 見ると、いつも おなじ ばしょに とまって いるように 見える[1]。だから、テレビや つうしんの アンテナは、いちど むきを あわせれば、うごかす ひつようが ない。

赤道の上、高さおよそ3万6000キロメートルのところを、地球が1回転するのと同じ速さでまわる軌道がある。この軌道をまわる衛星は、地上から見ると、いつも空の同じ場所にとどまって見える[1]。だから、テレビや通信のアンテナは、一度向きを合わせれば動かす必要がない。

赤道上空、高度およそ35786キロメートルの円軌道を、地球の自転周期(約24時間)と同じ周期で公転する軌道を「静止軌道」と呼ぶ。この軌道上の衛星は地上から見て空の一点に静止しているように見えるため、パラボラアンテナは一度向きを合わせれば動かす必要がなく、テレビ放送・通信・気象観測に広く使われている[1]

2. とくべつな ばしょには、おける えいせいの 数に かぎりが ある

2. 静止軌道には、衛星を並べられる数に上限がある

2. 静止軌道は電波の干渉を避けるための間隔規定があり、有限な資源とされる

この とくべつな みちは、赤道の まわりを ぐるっと 1しゅうする、わのような 形を して いる。えいせいどうしが 近すぎると、でんぱが まじって じゃまを して しまう。だから、すこし はなして おく ひつようが ある[2]。もし 1つの みちに、すこしずつ あいだを あけて おくと したら、わ ぜんぶで おける えいせいは 180こぐらいに なる[2]。かぎりの ある、にんきの ちゅうしゃじょうのような ものだ(ただし ほんとうは、いまは ぎじゅつが すすんで、おなじ ばしょに ふくすうの えいせいが おける ことも ある)。

この特別な軌道は、赤道のまわりをぐるっと1周する、輪のような形をしている。衛星どうしが近すぎると、電波がまざって干渉してしまう。だから、経度でいくらかの間隔を空けておく必要がある[2]。かつては経度2〜3度おきに1機という目安が使われ、単純に計算すると輪全体でおよそ180か所ほどしか場所がないことになる[2]。かぎりのある、人気の駐車場のようなものだ(ただし本当は、いまは技術が進んで、同じ場所に複数の衛星を運用できることもある)。

静止軌道はリング状の1本の軌道であり、衛星どうしが近すぎると電波干渉が起こる。かつては経度2〜3度の間隔が目安とされ、単純計算では360度の軌道にせいぜい120〜180機程度しか配置できないことになる。この物理的制約から、国連宇宙空間平和利用委員会(UNCOPUOS)は静止軌道を「限られた自然資源」と位置づけ、ITU憲章第44条もこれを確認している[2]。実際には周波数帯を分けることで同じ経度に複数の衛星を運用できるようになっており、静止軌道上の衛星数は1984年の193機から2017年には1098機にまで増えている[2]

3. せきどうの くにぐには、とくべつな ばしょを「じぶんの もの」だと 言った ことが ある

3. 赤道の国々は、静止軌道を自分たちの領土だと主張したことがある

3. 1976年、赤道直下の8か国は静止軌道を自国領土だと主張した

1976年、赤道の 上に ある 8つの 国(ブラジルや インドネシアなど)は、コロンビアの ボゴタと いう 町で 集まり、「自分たちの 国の 上の 空に ある、この とくべつな みちは、自分たちの 土地の 一部だ」と いう せんげんを 出した[3]。でも この しゅちょうは、せかいの ほかの 国からは みとめて もらえず、やがて たち消えに なった[3]

1976年、赤道の上にある8つの国(ブラジル、コロンビア、コンゴ、エクアドル、インドネシア、ケニア、ウガンダ、当時のザイール)は、コロンビアの首都ボゴタに集まり、「自分たちの国の真上にある、この特別な軌道は、自分たちの領土の一部だ」という宣言を出した[3]。しかしこの主張は、宇宙は特定の国のものにできないと定めた1967年の宇宙条約に反するとされ、世界のほかの国からは認めてもらえず、やがて立ち消えになった[3]

1976年12月3日、赤道直下に位置するブラジル、コロンビア、コンゴ、エクアドル、インドネシア、ケニア、ウガンダ、ザイール(現コンゴ民主共和国)の8か国は、コロンビアの首都ボゴタで会合を開き、「自国領土の直上にある静止軌道の部分は、天然資源として自国が管理すべきだ」とする「ボゴタ宣言」を採択した[3]。しかしこの主張は、宇宙空間はいかなる国家の主権にも属さないと定めた1967年の宇宙条約(外宇宙条約)に反するとみなされ、国際的な支持を得られないまま、事実上放棄されるに至った[3]。静止軌道の利用調整は、現在も国際電気通信連合(ITU)が担っている[3]

4. せかいの きまりでは、はやく もうしこんだ 国が ゆうせんに なる

4. 国際機関は、先に申請した国を優先するルールで軌道を割り当てている

4. ITUは先願主義を原則としつつ、発展途上国への配慮も憲章に定めている

けっきょく、とくべつな みちを つかう ための でんぱの つかいかたを、国どうしで ちょうせいする やくわりは、こくさいでんきつうしんれんごう(ITU)と いう こくれんの きかんが して いる。ルールは「はやく もうしこんだ 国が ゆうせんに なる」と いう、じゅんばんの きまりだ[4]。でも これだと、おかねや ぎじゅつの ある 国ばかりが さきに もうしこんで しまう。だから ITUの きそくには、まだ えいせいを もって いない 国のためにも 場しょを のこして おこう、と いう 考えかたも 書かれて いる[4]

結局、特別な軌道を使うための電波の使い方を、国どうしで調整する役割は、国際電気通信連合(ITU)という国連の機関がしている。ルールは「先に申請した国が優先される」という、順番のきまりだ[4]。でもこれだと、お金や技術のある国ばかりが先に申請してしまう。だからITUの規則には、まだ衛星を持っていない発展途上国のためにも場所を残しておこう、という考え方も書かれている[4]

静止軌道の利用にかかわる周波数の通報・調整は、国連の専門機関である国際電気通信連合(ITU)が担い、原則として「先に申請した者が優先される(先願主義)」という方式で行われている[4]。しかしこの方式では、資金力・技術力のある先進国が有利な位置を先取りしやすいという批判があり、ITU憲章第44条は、発展途上国および赤道諸国の特別なニーズへの配慮を定めている[4]

5. ちいさな 島の 国が、16この とくべつな ばしょを もうしこんだ

5. 小さな島国トンガは、16個もの軌道スロットを申請した

5. 人口10万人ほどのトンガは、衛星を持たないまま16の軌道スロットを申請した

1990年、たいへいようの 小さな 島の 国「トンガ」は、この きまりを つかって、16この とくべつな ばしょを ITUに もうしこんだ。トンガには、自分の えいせいは 1つも なかった[5]。この やりかたを かんがえたのは、トンガに やとわれた アメリカ人の コンサルタントだった[5]。おおくの 国が「そんなに たくさん、つかいもしないのに もうしこむなんて」と おこった。話し合いの すえ、トンガは 1991年に まず 6この ばしょを みとめられ、さいごには 9この ばしょを 手に 入れた[5]。トンガは その 場しょを、じっさいに えいせいを 打ち上げたい かいしゃに、お金を もらって かして あげた[5]

1990年、太平洋の小さな島国トンガは、このルールを使って、16個もの軌道スロットをITUに申請した。トンガには、自分の衛星は1つもなかった[5]。この作戦を考えたのは、トンガに雇われたアメリカ人のコンサルタント、マット・ニルソンだった[5]。多くの国が「使いもしないのに、そんなにたくさん申請するなんて」と反発した。話し合いの末、トンガは1991年にまず6個のスロットを認められ、最終的には9個のスロットを手に入れた[5]。トンガはそのスロットを、実際に衛星を打ち上げたい会社に、お金をもらって貸し出した[5]

1990年、人口10万人ほどの太平洋の島国トンガは、ITUの規則を利用して16か所もの静止軌道スロットを一度に申請した。当時のトンガに衛星を打ち上げる計画はなく、この戦略を立案したのはトンガが雇ったアメリカ人コンサルタント、マット・ニルソンだった[5]。既存の衛星運用国からは「使う予定のない資源を囲い込む行為だ」という強い反発が起こったが、交渉の結果ITUは1991年3月に6スロットを承認し、トンガは最終的に東経14.0度から257.0度まで9か所のスロットを取得した[5]。トンガはこれらのスロットを、1か所あたり年間およそ200万ドルという計画額で、実際に衛星を運用したい通信会社にリースする側にまわった[5]

6.「ほんとうに つかうのか」を たしかめる あたらしい きまりが できた

6. 「本物の計画があるか」を確かめる新しいルールがつくられた

6. 「ペーパー衛星」問題を受け、実際の計画を示す情報の提出を求める手続きが導入された

トンガの やりかたの あと、おなじように「じっさいには つかわないのに、場しょだけ おさえて おく」もうしこみが ふえて しまった。こういう、紙の 上だけに ある えいせいは「ペーパー えいせい」と よばれる[6]。そこで ITUは、「ほんとうに えいせいを 作る 会社と けいやくしたか」「打ち上げる ロケットは 決まって いるか」を しめす しょるいを 出させる ルールを 作った。しめせなければ、もうしこみは 取り消される[6]

トンガのやり方のあと、同じように「実際には使わないのに、場所だけおさえておく」申し込みが増えてしまった。こういう、紙の上だけにある衛星は「ペーパー衛星」と呼ばれる[6]。そこでITUは、「本当に衛星を作る会社と契約したか」「打ち上げるロケットは決まっているか」を示す書類を出させるルールを作った。示せなければ、申し込みは取り消される[6]

トンガの事例をきっかけに、実際に運用する意図のないまま軌道スロットを申請し囲い込む「ペーパー衛星」問題が各国で相次いだ[6]。これを受けてITUは、衛星製造業者名・契約上の納入予定日・打ち上げ業者名・契約上の打ち上げ予定日などの情報を各国の行政当局が認証したうえで提出させる「デュー・デリジェンス(administrative due diligence)」手続きを定めた決議49号を採択した[6]。所定の情報を提出できない申請は、国際周波数登録原簿(MIFR)から削除される[6]。この決議とは別に、ITUは2009年にも未使用の周波数割り当ての削除を各国に求めており、調査対象となった衛星ネットワークのうち45%にあたる145件が実際に削除されている[6]

パラボラアンテナは、どこを 見て いるの?

パラボラアンテナが向いている先

パラボラアンテナが向いている先

いえや ちかくの たてものに ある、まるい さらのような「パラボラアンテナ」に 目を むけて みると、どれも にた ような むきを して いる ことに 気づくかもしれない。それは、空の おなじ とくべつな ばしょに ある えいせいを 見て いるからだ。

家や近くの建物にある、丸い皿のような「パラボラアンテナ」に注目してみると、どれも似たような向きをそろえていることに気づくかもしれない。それは、空の同じ特別な場所にある衛星を指しているからだ。

住んでいる地域のパラボラアンテナ(衛星放送用のBS・CSアンテナなど)の向きを見比べてみると、多くが同じ方角・同じ角度をそろえていることに気づくはずだ。それぞれが、空の決まった一点に静止している衛星を指し示しているからである。

しらべた ところ

参考にした情報源

参考にした情報源

  1. フリー百科事典『ウィキペディア』「静止衛星」。 https://ja.wikipedia.org/wiki/静止衛星 (静止衛星が赤道上空高度約35786キロメートルの円軌道を地球の自転周期と同じ周期で公転し、地上から見て空の一点に静止して見えることはウィキペディア「静止衛星」による)
  2. "Paper Satellites and the Free Use of Outer Space"(NYU Law GlobaLex)。 https://www.nyulawglobal.org/globalex/paper_satellites_free_use_outer_space1.html (衛星間の間隔がかつて経度2〜3度を目安とされ、単純計算では360度の軌道に120〜180機程度しか配置できないこと、UNCOPUOSが静止軌道を限られた自然資源と位置づけITU憲章第44条もこれを確認していること、静止軌道上の衛星数が1984年の193機から2017年には1098機に増えたことは同記事による)
  3. "Bogota Declaration"(英語版ウィキペディア)、JAXA「宇宙法データベース」第1回赤道諸国会合宣言(1976年12月3日採択)。 https://en.wikipedia.org/wiki/Bogota_Declaration https://www.jaxa.jp/library/space_law/chapter_2/2-2-1-2_j.html (1976年12月3日、ブラジル・コロンビア・コンゴ・エクアドル・インドネシア・ケニア・ウガンダ・ザイールの8か国がコロンビアのボゴタで採択した宣言で、自国領土直上の静止軌道部分を天然資源として自国が管理すべきと主張したこと、この主張が1967年宇宙条約に反するとみなされ国際的支持を得られず事実上放棄されたことは両出典による)
  4. "Paper Satellites and the Free Use of Outer Space"(NYU Law GlobaLex)。 https://www.nyulawglobal.org/globalex/paper_satellites_free_use_outer_space1.html (静止軌道の利用にかかわる周波数の通報・調整をITUが担い先願主義(first-come-first-served)で行っていること、ITU憲章第44条が発展途上国・赤道諸国の特別なニーズへの配慮を定めていることは同記事による)
  5. "Tongasat"(英語版ウィキペディア)、"Space law, the Kingdom of Tonga and the late-comer problem"(Centre for International Law, National University of Singapore)。 https://en.wikipedia.org/wiki/Tongasat https://cil.nus.edu.sg/blogs/space-law-the-kingdom-of-tonga-and-the-late-comer-problem/ (1990年にトンガが自国衛星を持たないまま16の静止軌道スロットを申請したこと、立案者がアメリカ人コンサルタントのマット・ニルソンであったこと、1991年3月にITUが6スロットを承認し最終的にトンガが東経14.0度〜257.0度の9スロットを取得したこと、リース料が年間およそ200万ドルとされたことは両出典による)
  6. "Paper Satellites and the Free Use of Outer Space"(NYU Law GlobaLex)、国際電気通信連合(ITU) "Resolution 49 (Rev.WRC-07) - Administrative due diligence"。 https://www.nyulawglobal.org/globalex/paper_satellites_free_use_outer_space1.html https://www.itu.int/en/ITU-R/space/plans/Pages/Res49.aspx (トンガの事例をきっかけに「ペーパー衛星」問題が各国で相次いだこと、ITUが衛星製造業者名・契約納入日・打ち上げ業者名・契約打ち上げ日などの情報を行政当局が認証して提出させるデュー・デリジェンス手続き(決議49号)を定めたこと、所定の情報を提出できない申請がMIFRから削除されることは両出典による。ITUが2009年にも未使用の周波数割り当ての削除を各国に求め、調査対象の45%にあたる145件の衛星ネットワークが削除されたことはGlobaLexによる。これは決議49の手続きとは別のITUの取り組みである)

なおした ところ

更新履歴

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