1. 20ねんは、どこから ぬかれて いくの?
1. 20年は、「取った日」ではなく「出願した日」から減っていく
1. 起算点は登録日ではなく出願日である
ある 人が、あたらしい どうぐを 思いついて、特許を ねがい でる ことを、出願と いいます。
とっきょの 20ねんは、この 出願の 日から かぞえます[1]。とっきょが みとめられた 日からでは ありません。
みとめられるまでには、しらべる 時間が かかります。その あいだにも、20ねんの とけいは すすんで います。
20ねんは、とても ながく 見えます。でも、まちの 時間も ふくめて 数えるので、とっきょを もって いる 人が じっさいに 使える 時間は、すこし みじかく なります。
発明した人が、まず役所に出す
新しい発明を思いついた人は、特許庁に「この発明に特許をください」と申し込みます。これが出願です。日本の特許権は、その出願の日から20年で終わると、特許法で決められています[1]。
ここで気をつけたいのは、数え始めが「特許が認められた日(登録の日)」ではないことです。審査には時間がかかりますが、その間も20年の時計は進みます[1]。特許が認められたあとに残る期間は、審査にかかった時間のぶんだけ短くなります。
20年が長いのか短いのかは、人によって感じ方が違うかもしれません。ただ、発明者の利益と、その発明が世の中の産業の発展に役立つ利益のつりあいをとるために、この長さが定められている、と説明されています[2]。
2. 20ねんの あいだ、はつめいの ひみつは まもられるの?
2. 発明は、1年半で公開される ── 独占と引き換えに
2. 出願から1年6か月で公開される ── 公開の代償としての独占
じつは、ひみつには なりません。出願してから 1ねん 6か月たつと、はつめいの 中みが、みんなに 見える ように なります[3]。
この 紙を「公開特許こうほう」と いいます。インターネットの 「J-PlatPat」と いう ところで、だれでも 見られます[3]。
はつめいを みんなに 見せる かわりに、きまった 間だけ、その 人が ひとりじめして 使える。これが、とっきょの かんがえかたです[4]。
そして 20ねんが すぎると、その はつめいは、だれでも 自由に 使えるように なります[5]。
見せる代わりに、独占できる
特許は、「発明を公開する代わりに、一定の期間、その発明を独占的に使える権利を国が与える」ものと説明されます[4]。
実際、出願の内容は、出願日から1年6か月がたったあとに「公開特許公報」として公開されます。この公報はJ-PlatPatで誰でも見られます[3]。
期限が切れると、誰でも使える
特許の期間が終わると、その発明は誰でも自由に使えるようになる、と説明されています[5]。公開されていた発明が、期限のあとは、みんなが使える知識として残るということです。
発明者にとっては、自分の工夫を見せることが条件になっています。この取引は、いつごろから、どんな理由で考えられたのでしょうか。
特許制度は、発明の公開の代償として、一定期間、その発明を独占的に実施できる権利(特許権)を国が付与するものと説明される(公開代償説)[4]。この考え方に対応して、出願内容は、出願日から1年6か月を過ぎると「公開特許公報」で公開され、J-PlatPatで誰でも閲覧できる[3]。登録されるかどうかの結論より前に、内容が先に公開される点が重要である。
期間が満了すると、その発明は誰でも自由に使用できるようになる(パブリックドメイン)[5]。つまり発明者は、20年の独占を得る代わりに、発明の中身を世の中に差し出す。そして期限が切れたあと、その知識は社会の側に残る。
この「公開と独占の交換」は、いつ生まれたのか。
3. この やくそくは、いつ できたの?
3. 1474年のヴェネツィアが決めた、「まねをしない」約束
3. 1474年ヴェネツィア特許法 ── 最長10年の禁止と、その前文
むかしの イタリアに、ヴェネツィアと いう まちが ありました。1474ねん3がつ19にちに、「あたらしい どうぐを つくった 人の ゆるしなしに、まねして つくっては いけない」と いう きまりが できたと いわれます[6]。
まねを してはいけない 年すうは、さいだい 10ねんでした。つくった 人は、やくしょに とどけでる ことが ひつようでした[6]。
この きまりの はじめには、「すぐれた はつめいを しても、ほかの 人に まねされたら、えられる ものが なくなる。だから どくせんを ゆるして、はつめいする 人に あたまを はたらかせて もらおう」と いう ことが 書かれて いたそうです[6]。
10年の「まねしてはいけない」
1474年3月19日、ヴェネツィアで特許法と呼ばれる決まりができました。新しくて巧みな装置を作った人の許可なしに、他の人がそれをまねして作ることを、最長10年間禁じるというものです[6]。作者は役所に届け出る必要がありました。
前文に書かれた考え方
この決まりの前文は、すぐれた発明をしても、他人にまねされればその成果が得られなくなる、と述べます。そこで独占を与え、発明者が頭をはたらかせるよう促す、という趣旨でした[6]。
発明を守って、発明する人を応援する。500年以上前の考え方が、いまの特許の考え方につながっているようにも見えます。では、いまの20年は、いつ、どうやって決まったのでしょうか。
1474年3月19日のヴェネツィア特許法は、新しく巧妙な装置の作者の同意と許可なく、それを模倣して作ることを最長10年間禁じた。作者は役所への届け出を要した[6]。
前文の趣旨は、すぐれた発明をしても他人に模倣されれば成果が得られなくなるので、独占を与えて発明者が「頭をはたらかせる」ことを促す、というものだった[6]。つまり、発明への動機づけという目的は、制度の初期から意識されていたことになる。これは、先の「公開の代償」とは別の説明の角度であり、制度の目的が重なって語られている点に注意したい。
ただし、1474年の法と現行の特許制度が直接つながっているかどうかは、この資料の範囲では言えない。「最長10年」と「出願から20年」は、数え方も出発点も違う。現行の20年は、どう決まったのだろうか。
4. 日本の とっきょの きげんは、むかし ちがったの?
4. 日本の特許は、むかし「公告から15年」だった
4. 1995年7月1日 ── 公告後15年から出願後20年へ
じつは、むかしの 日本の とっきょは、しらべが おわって、みんなに しらせた 日から 15ねんでした[7]。
ただし、出願の 日から 20ねんを こえては いけない、とも きまって いました[7]。
これが 1995ねん7がつ1にちから、「出願の 日から 20ねん」に かわりました[7]。せかいの やくそくに あわせた かいせい、と せつめいされます[8]。
公告から15年、ただし出願から20年まで
1995年7月1日より前の日本の特許は、存続期間が「出願公告の日から15年。ただし、出願の日から20年を超えない」でした[7]。出願公告は、審査を通った内容が広く知らされることです。
1995年7月1日、これが「出願の日から20年」へ変わりました[7]。国際的な約束(TRIPS協定)に合わせた改正とされています[8]。
「20年」は世界共通の最低ライン
TRIPS協定は1995年1月1日に発効しました。その33条は、特許の保護期間が、出願日から20年がたつ前に終わってはならない、と定めています[8]。
つまり20年は「これより短くしてはいけない」最低ラインです。上限を決める決まりではありません[8]。
1995年7月1日より前、日本の特許権の存続期間は、出願公告の日から15年、ただし出願日から20年を超えない、とされていた。つまり、審査が長引いて公告が遅れても、出願から20年を超えて続くことはない設計だった[7]。これが1995年7月1日に「出願日から20年」へ改められた。国際的な約束(TRIPS協定)に合わせた改正とされる[7][8]。
TRIPS協定は1995年1月1日に発効し、33条は、特許の保護期間が出願日から20年を経過する前に終了してはならないと定める[8]。したがってこの20年は下限(最低限の保護期間)であって、期間の上限を一律に定める規定ではない[8]。
なお、施行日の表記には資料によって揺れがある。ここでは1995年7月1日の変更だけを取り上げ、その前後の中間的な改正には立ち入らない。
ところが、これでも一部の発明では、20年がまるまる使えない事情が出てくる。薬だ。
5. くすりの とっきょが きれると、どう なるの?
5. 薬は、売れない時間を「5年」までのばせる ── そして期限後のジェネリック
5. 医薬品の延長登録とジェネリック ── 承認待ちの期間はどう扱われるか
あたらしい くすりは、くにの 承認を もらわないと、売れません。その まつ あいだも、20ねんの とけいは すすんで います。
そこで、くすりなどの ばあいは、おねがいを だすと、とっきょの きげんを さいだい 5ねんまで のばせる ことが あります[2]。ただし じどうでは ありません。
それでも 20ねんが おわると、おなじ ききめの くすりを、ほかの 会しゃも つくれます。これが「ジェネリック」です。
ジェネリックは、あたらしい くすりと おなじ ききめだと くにが みとめた くすりです。つくる のに かかる 研究の おかねが すくなくてすむので、ねだんが やすく なります[9]。
承認を待つあいだ、時計は止まらない
薬や農薬は、国の承認を受けるまで、特許の発明を実際に使って売ることができません。その期間は特許の時計だけが進んでしまいます。そこで、申請して認められれば、特許の期間を最長5年まで延ばせる「延長登録」の仕組みがあります[2]。自動ではなく、申請が必要で、すべての特許が対象でもありません。
薬は、承認までに10年以上かかることがあり、独占して売れるのは承認後の約10年ほどになる、ともいわれます[10]。これは一般的な目安で、実際は薬ごとに違います。
期限のあとに現れるジェネリック
特許が切れたあと、ほかの会社が同じ成分の薬を作れるようになります。それが後発医薬品(ジェネリック)です。厚生労働省は、先発医薬品と治療学的に同等だと承認された薬で、研究開発の費用が低く抑えられるため薬価が安い、と説明しています[9]。
2024年時点で、後発医薬品がある薬のうち、使用された数量の約88.8%が後発医薬品だったとされます[9]。10回のうち9回近くです。ただし、これは「後発品がある薬」の中での割合で、すべての薬の割合ではありません。
医薬品や農薬は、国の承認を受けるまで特許発明を実施できない期間が生じる。その間も存続期間は進むため、承認を待った期間があるときは、延長登録によって最長5年まで特許期間を延ばせる[2]。ただし延長は自動ではなく、出願が必要で、対象はすべての特許ではない[2]。
この制度の背景として、承認までに10年以上かかることがあり、独占的に販売できるのは承認後の約10年ほどになる、との指摘がある[10]。ただしこれは一般的な目安で、個々の薬で異なり、一律には言えない。
特許が満了すると、他社が同じ有効成分の薬を作れるようになり、後発医薬品(ジェネリック)が現れる。厚生労働省によれば、後発医薬品は先発医薬品と治療学的に同等として承認された薬で、研究開発に要する費用が一般に低く抑えられるため薬価が安い[9]。2024年時点で、後発医薬品がある薬の使用数量に占める後発品の割合は約88.8%である。これは「後発品がある薬」の中の数量割合であって、全医薬品に占める割合ではない点に注意する[9]。
公開と引き換えの20年、そして期限後には誰でも使える知識になる。これが、特許の一本線である。
6. みの まわりで、とっきょを さがして みよう
6. 家の中で「特許」の文字を探してみる
6. 出口 ── 特許の文字を探す、公報を読む
おうちの 中の せいひんや せつめいしょに、「特許」と いう 字が 書いて ないか、さがして みましょう。見つからなくても だいじょうぶです。
もし 見つかったら、いつごろ 出願された ものか、おうちの 人と 話して みても いいですね。出願から 20ねんたつと、その はつめいは だれでも 使えるように なります。
あたらしい くすりと ジェネリックの ちがいは、おうちの 人に きいて みましょう。くわしい ことは、厚生労働省の ホームページに あります[9]。
しらべた もとの じょうほう
参考にした情報源
参考にした情報源と、その使い方
出典について:特許の期間・公開・延長に関する解説資料、国の資料(厚生労働省)、国際協定やヴェネツィア特許法の解説を使った。法律の条文そのものではなく、解説資料をもとにしている部分がある。何に使ったかは、それぞれの項目の最後に書いている。
- 特許法の存続期間に関する解説(Article67)。https://www.ne.jp/asahi/nara/phoenix/Article67.htm (存続期間が出願の日から20年であることについて。二次資料)
- Monolith Law Office「Patent Duration」。https://monolith.law/en/general-corporate/patent-right-duration-extension-registration (20年の趣旨と、医薬品などの延長登録について。二次資料)
- 特許出願公開制度の解説(keiyaku-watch)。https://keiyaku-watch.jp/media/hourei/tokkyo-syutsugankoukaiseido/ (出願から1年6か月後に公開特許公報が出ることについて。二次資料)
- Wikipedia「特許権」。https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%89%B9%E8%A8%B1%E6%A8%A9 (公開の代償としての独占という考え方について。二次資料)
- 日本医科大学TLO資料。https://tlo.nms.ac.jp/wp-content/uploads/2023/06/2_12.pdf (期間満了後は誰でも自由に使えることについて。二次資料)
- Wikipedia「Venetian Patent Statute」。https://en.wikipedia.org/wiki/Venetian_Patent_Statute (1474年の法の内容と前文の趣旨について。二次資料・英語)
- Guide to Japanese Patents(ptrca.org)。https://ptrca.org/files/Guide_Japan_Patents.pdf (1995年7月1日より前の存続期間について。二次資料・英語)
- Wikipedia「Term of patent」。https://en.wikipedia.org/wiki/Term_of_patent (TRIPS協定33条と20年の最低ラインについて。二次資料・英語)
- 厚生労働省「後発医薬品について」。https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/kouhatu-iyaku/index.html (ジェネリックの説明と2024年時点の使用数量の割合について)
- ニッセイ基礎研究所の資料。https://www.nli-research.co.jp/files/topics/58029_ext_18_0.pdf?site=nli (薬の独占期間の一般的な目安について。目安であり、薬ごとに異なる)
なおした ところ
更新履歴
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