1. はなの めは、いつ できるの?
1. 来年の花は、いつ用意されるのか
1. 花芽の形成 ── 収穫期の夏に、翌年の花が決まる
なつの おわりごろ、ももの えだに、はなに なる ちいさな めが できると いわれます[1]。この めは、そのまま ふゆを こして、つぎの はるに さきます。
ももの みを たべて いる まさに その ころ、きは らいねんの はなの じゅんびを して いるのです。
ただし この じきは、ひとつの しりょうに かかれて いる ことです。「なつごろ」と おぼえて おきましょう。
では、ふゆの あいだ、きは なにを して いるのでしょう。
桃の花芽は、その年の7月ごろまでにのびた枝に、8月ごろつくられるといわれます[1]。つまり、来年の花は、今年の夏のうちに用意されています。実を食べる季節と、次の花の準備が重なっているのです。
花芽ができる時期は、品種や地域で前後します。ここでは「夏ごろ」と見ておきましょう。大事なのは、花芽が冬の前にできていて、そのまま寒い季節を越すという順番です。
では、葉を落とした冬の間、木の中では何が起きているのでしょうか。
モモの花芽は、前年の7月ごろまでに伸びた1年枝に8月ごろ形成され、翌年に開花するとされる[1]。花芽ができる時期は、品種や地域で前後する。ここでは「夏ごろ」と捉える。
この順番には意味がある。咲く花の元になるものは、咲く半年以上前の夏の枝についている。収穫の夏と翌春の開花は、1本の木の中でつながっている。
では、いったんできた花芽は、いつ、何をきっかけに咲くのか。
2. ふゆの さむさは、ももの はなに なにを するの?
2. 冬の寒さは、桃の花に何をするのか
2. 休眠と低温要求量 ── 寒い時間がたまると、開花へ向かう
くだものの きは、はっぱを おとしてから はなが さくまで、ねむって いるように すごします。ねむりから さめて さくには、ある ていどの さむい じかんが いると いわれます[2]。
さむい じかんを、きが ちょきんばこに すこしずつ ためて いくと おもって みましょう。いっぱいに なると、はなが さく ほうへ すすみます。ただし ほんとうに ちょきんばこが ある わけでは ありません。
ためる ひつような りょうは、くだものに よって ちがいます。うめが いちばん すくなく、つぎに もも、りんごの じゅんに おおく なります[2]。
くまもとけんの しけんでは、7.2どいかの じかんを たしたとき、ももの「あかつき」は 800じかんほど、「はくほう」は 1200じかんほど いると ほうこくされました[3]。1200じかんは、まる 1日 ずっと さむいと して 50日ぶんです。じっさいの ふゆは 昼と 夜で ちがうので、もっと ながい あいだ かかります。
この かずは、くまもとけんの しけんの あたいで、ぜんこくで おなじとは かぎりません。
さむさを ためた はなは、はるに さきます。
落葉してから開花するまでの果樹は、休眠という、ねむったような状態にあります。一定の時間、低い温度にあうと、花の準備は開花へ向かうと説明されます[2]。ここで必要な低温の量を「低温要求量」といい、ウメがいちばん少なく、モモ、リンゴの順に多くなります。
桃の中でも、品種で違います。熊本県の研究では、7.2℃以下だった時間を足していくと、「あかつき」は約800時間、「日川白鳳」は約900時間、「白鳳」は約1200時間が目安と報告されています[3]。1200時間は、ずっと7.2℃以下だった場合の50日分です。実際の冬は昼と夜で気温が違うので、日数でいえばもっと長くかかります。
これは熊本県の試験の値で、全国どこでも同じ数字とは限りません。品種を選ぶことは、その土地の冬の寒さに合わせることでもある、と読めます。
落葉後から開花までの果樹は休眠しており、一定時間の低温にさらされると開花へ向かう[2]。この低温要求量は樹種で異なり、ウメ、モモ、リンゴの順に大きくなる。つまり、同じ「寒さに反応する」仕組みでも、必要量はウメが最も小さい。
モモの内部でも差がある。熊本県の研究は、自発休眠の完了に必要な低温(7.2℃以下の積算時間)を、「あかつき」約800時間、「日川白鳳」約900時間、「白鳳」約1200時間と報告した[3]。1日中7.2℃以下と仮定すれば、800時間は約33日、1200時間は50日に当たる。実際には昼夜で気温が違うため、これより長くかかる。
この数字は熊本県での試験の値であり、産地や年で変わりうる。ここから言えるのは、品種を選ぶことが、その土地の冬の寒さに合わせることでもある、という点までだ。
3. さいた はなを、ひとは どうして へらすの?
3. 咲いた花や小さな実を、人はなぜ減らすのか
3. 開花と摘蕾・摘果 ── 数を減らして、残した実を大きくする
ももの はなは、はっぱが でる まえに さきます[5]。やまなしけんの しけんじょうでは、ふつうの としの さきはじめが 4がつの はじめごろです。ただし、その としの きおんで 2しゅうかんほど ずれる ことが あります[4]。
さいた はなが みに なる ために、ひとが てつだう こともあります。ももは たいてい じぶんの はなこで みが なりますが、はなこが ふじゅうぶんな ひんしゅも あり、そのときは ひとが はなこを つけます[6]。
みが できはじめたら、こんどは かずを へらします。はなの つぼみ、ちいさな み、すこし おおきく なった みと、なんども すこしずつ へらします[7]。
はっぱが つくった えいようが、みに おくられるからです。みを へらして のこした みに えいようを あつめると、おおきな みに なりやすいと いわれます[8]。
桃の花は、葉が出る前に咲きます[5]。山梨県果樹試験場(標高440m)の「白鳳」の開花始めは、平年で4月2日、盛りは4月9日です。ただし令和5〜7年の盛りは、4月1日〜13日と約2週間ばらつきました[4]。
桃の多くは自分の花粉で実をつけますが、白桃、浅間白桃、川中島白桃など、花粉が不完全な品種もあります。確実に実らせるには人の手による受粉が必要とされています[6]。
実がつき始めると、今度は数を減らします。つぼみのうちに減らす摘蕾、小さな実を減らす予備摘果、仕上げの摘果と、何回にも分けて行います[7]。自然に落ちる実も多く、開花後30日ほどで落ち着きます[1]。
なぜ減らすのでしょうか。葉でつくった養分が実に送られるので、実を減らして残した実に集めると、大きくなりやすいからです。1つの実に何枚の葉が要るかの目安は、資料によって25〜30枚から80〜100枚まで開きがあります[1][8]。品種や産地で変わるので、1つの数字には決められません。
モモは葉に先立って開花する[5]。山梨県果樹試験場(標高440m)の「白鳳」では、開花始めの平年値が4月2日、盛りの平年値が4月9日だが、令和5〜7年の盛りは4月1日〜13日と、約12日の幅があった[4]。地域や標高でもずれるため、開花期は「4月上旬ごろ」程度の目安にとどまる。
結実の面では、多くの品種が自家結実性だが、白桃・浅間白桃・川中島白桃など花粉が不完全な品種があり、確実に着果させるには人工受粉が必要とされる[6]。
着果後は数を減らす。開花前の摘蕾、予備摘果、仕上げ摘果と段階的に行う[7]。生理的な落果は開花後約30日で終わる[1]ため、木が自然に落とす分と、人が調節する分が重なっている。
理由は、葉でつくられた同化養分が果実に分配されるためで、着果数を絞れば1果あたりの供給が増える。山梨県の成果では、1果あたりの葉の枚数(葉果比)を80〜100枚にすると、60枚程度にする慣行より果実重が増す傾向があった[8]。一方、栽培解説では25〜30枚とする記述もある[1]。目安は資料や品種で大きく違い、単一の値には決められない。確かなのは、葉の数に対して実を絞るほど、1つあたりの養分が増えるという向きまでだ。
4. みの なかで、たねの からが かたまる あいだは?
4. 実の中で核が石のように固まる間、果肉はどうなるのか
4. 硬核期 ── 二重S字の成長曲線の「ゆるむ期間」
ももの みの まんなかには、かたい「かく」が あります。かくの なかに、たねが ひとつ はいって います[5]。
この かくは、はじめから かたい わけでは ありません。みが そだつ とちゅうで、いしのように かたく なって いきます[9]。
かたく なって いる あいだ、かにくの そだちは ゆっくりに なります[9]。ひとやすみして から、また おおきく なって じゅくします。
この じきを「こうかくき」と いいます。にほんの しりょうでは、かくが われたり、みが おちたり しやすい じきと されます[10]。さんちでは、かくを いろで そめて、かたさを しらべる ところも あります。
ひにちは、ひんしゅや としで ちがいます。いつ ふくろを かけて、いつ とるのでしょう。
桃の実の真ん中には、硬い核があり、その中に種が1個入っています[5]。この核は、最初から硬いわけではありません。成長の途中で、内果皮が木のように固まって石のようになります[9]。
この間、果肉の成長はゆっくりになります。桃のような核果類は、「急に大きくなる→核が固まる間はゆるむ→また大きくなって熟す」と、二重のS字を描くように大きくなります[9]。実は休んでいるのではなく、中で種を守る殻をつくる時間です。
日本の栽培資料では、この硬核期は果実の肥大が一時ゆるやかになり、核が割れたり、生理的な落果が起きやすい時期とされます[10]。産地によっては、核を染めて硬さを段階で調べ、時期を判定しています。
この期間が何日かは、品種や年で違い、日本の資料から一つの日数は決められません。では、やがて熟すまでに、どのくらいかかるのでしょうか。
モモなどの核果類の果実肥大は、急速な肥大(第I期)、内果皮が木質化して核になる硬核期(第II期)、再肥大して成熟する第III期という二重S字型を示す[9]。第II期は、核が最大の乾物重に達するまでの間、果肉の成長が遅くなる。
モモの果実は核の中に種子を1個もつため[5]、この期間は「種を守る構造を先につくる」時間と読める。果肉の肥大はゆるむが、果実全体が止まるわけではなく、そのあと再び大きくなって熟す。
日本の栽培現場では、この時期を管理の目安にする。岡山県などの資料は、硬核期を果実肥大が一時ゆるやかになり、核割れや生理的落果が起きやすい時期と位置づけ、核を染色して硬さを段階で調べ、硬核指数1を開始の目安として判定する資料もある[10]。
ただし、硬核期の日数や満開後の時期は品種・年で異なる。固定値で説明できる資料は、今回の範囲にはない。核が固まった実は、そのあと熟すまでにどれくらいの時間を要するのか。
5. ふくろを かけた あと、いつ じゅくすの?
5. 袋をかけられた桃は、満開から何日で熟すのか
5. 袋かけと成熟 ── 満開から約100〜120日という幅
みを へらした あと、ひとは ふくろを かけます。びょうきや、かわの あれを ふせぐ ためです[11]。じきは さんちで ちがいます。
しゅうかくの 3〜5にち まえに ふくろを はずして、いろを つける ところも あります[1]。
さいてから とれるまでの にっすうは、ひんしゅで ちがいます。ながのけんの 2025ねんの しりょうでは、「はくほう」が 100にち、「かわなかじまはくとう」が 121にちでした[12]。
4がつの はじめに さいて 100にちなら、7がつの なかごろです。121にちなら、8がつの はじめごろです。これは さんすうで けいさんした めやすです。
はるに さいた ころの あたたかさでも、にっすうが ちがいます。さいてから 50にちほどの あいだの きおんが たかいと、はやく じゅくすと いわれます[12]。
やまなしけんだけでも、とれる じきは 6がつの なかごろから 9がつの はじめまで つづきます[13]。
摘果のあと、実に袋をかけます。病気や果皮の荒れを防ぐためで、時期は産地や病気対策によって違います。愛知県の資料では、黒星病対策として5月下旬までに終えるとされています[11]。収穫の3〜5日前に袋をはずして、色づけする産地もあります[1]。
満開から収穫の始まりまでの日数は、長野県の2025年の資料で、「白鳳」が100日、「あかつき」が101日、「なつっこ」が110日、「川中島白桃」が121日でした[12]。同じ「桃」でも、3週間のちがいがあります。
計算してみます。4月上旬に咲いて100日なら7月中旬、121日なら8月上旬ごろです。ただし年や産地で変わる目安です。満開後およそ50日間の気温が高いほど、成熟までの日数が短くなる関係があると報告されています[12]。
山梨県の中だけでも、収穫は6月中旬の「ちよひめ」から9月上旬の「幸茜」まで続きます[13]。品種を組み合わせることで、桃の季節が長くなっています。
摘果後に行う袋かけは、せん孔細菌病・黒星病などの病害や果皮の荒れを防ぐ作業だ。時期は産地で異なり、福井県は生理落果の終了を確かめた満開60日後を目安とするのに対し、愛知県は黒星病対策として5月下旬までに終える[11]。収穫の3〜5日前に袋を外して着色させる産地もある[1]。病害の種類や気候で、袋を掛ける理由と時期が変わるわけだ。
満開から収穫始めまでの日数は、長野県2025年の資料で、「白鳳」100日、「あかつき」101日、「なつっこ」110日、「川中島白桃」121日である[12]。最大差は21日で、3週間に相当する。開花が4月上旬なら、計算上の収穫は7月中旬〜8月上旬になり、「7〜8月に熟す」という一般的な記述[5]と合う。
この日数は固定ではない。満開後約50日間の平均気温が高いほど成熟日数が短くなる関係が示されている[12]。寒さで目ざめ、暖かさで進む、という両側の気温が1年のリズムを決めていると読める。
山梨県内でも収穫は6月中旬の「ちよひめ」から9月上旬の「幸茜」まで続き[13]、同県は昭和41年に桃の生産量で日本一になった[13]。品種の組み合わせが、出荷期間そのものを広げている。
6. ももの たねを、てに とって みよう
6. 食べたあとの核と、売り場のラベルから確かめる
6. 核と産地ラベルで、1年の長さを確かめる
きょう できること
ももを たべた あと、かくを あらって、よく 見て みましょう。わると あぶないので、わりません。かたさを さわって たしかめて、かたちを えに かいて みます。
でかけて できること
おみせで ももを えらぶとき、ひんしゅの なまえと さんちを 見て みましょう。ひんしゅが ちがうと、さく ひから とれる ひまでの にっすうも ちがうと いわれます。
こうしきの じょうほう
したの しゅってんに、けんの しけんじょうの しりょうが あります。
今日できること
食べ終えた桃の核を洗って、形と表面を観察します。割ると危ないので、割らずに外側だけを見ます。かたさ、深いみぞの様子、色をスケッチして、「これが成長の途中で石のように固まった部分だ」と思いながら見てみます。
出かけてできること
売り場で桃の品種名と産地を見て、長野県の資料にある収穫日数と比べてみます。「白鳳」と「川中島白桃」のように品種が違うものを並べると、咲いてから熟すまでの日数の違いを、自分の計算で予想できます。
公式情報
山梨県・長野県・熊本県の果樹試験場のページには、開花日や収穫期予測が載っています。年ごとの数字を見ると、気温と日数の関係が見えてきます。
今日できること
食べ終えた果実の核を洗って観察し、形・表面・硬さを記録する。割るのは危険なので、外側だけを見る。
出かけてできること
売り場で品種名と産地を控え、長野県の資料にある満開から収穫までの日数(白鳳100日、川中島白桃121日)を比べる。その日数をもとに、開花時期も計算してみる。結果が産地の開花日と合うかは、自分で試験場の公開データと比べて確かめられる。
公式情報・原典
山梨県果樹試験場の開花日ページ、長野県の収穫期予測資料、熊本県の低温要求量の研究資料は、いずれも自治体が公開している。二重S字型の成長は、核果類を扱った総説論文(英語)で説明されている。
しらべた もとの じょうほう
参考にした情報源
参考にした情報源と、その使い方
花芽・休眠・開花・摘果・硬核期・収穫日数は、県の試験場・自治体の資料と総説論文などを突き合わせて書いた。数字は資料に書かれた範囲だけを使い、品種や年で変わるものは幅で示した。計算した日付は目安である。
- 園芸ネット「桃の栽培方法」 https://www.engei.net/guides/detail?guide=764 (花芽がつく時期・生理落果・袋の取りはずし)
- テレメール「果樹の休眠を探る」 https://telemail.jp/shingaku/academics-research/lecture/g010865 (休眠と低温要求量)
- 熊本県 果樹研究資料 https://www.pref.kumamoto.jp/uploaded/attachment/5755.pdf (品種ごとの低温要求量)
- 山梨県果樹試験場「モモ開花日」 https://www.pref.yamanashi.jp/kajushiken/momokaika.html (開花日の平年値と年ごとの幅)
- 日本大百科全書「モモ」(コトバンク) https://kotobank.jp/word/%E3%83%A2%E3%83%A2-176800 (開花・果実・核・収穫期)
- NHK出版 みんなの趣味の園芸「モモ」 https://www.shuminoengei.jp/m-pc/a-page_p_detail/target_plant_code-1001 (受粉)
- 山梨県の栽培資料(モモの摘蕾・摘果) https://www.pref.yamanashi.jp/documents/79558/h29houkoku05.pdf (段階的な摘果)
- 山梨県「モモの大玉生産」資料 https://www.pref.yamanashi.jp/documents/94294/15momooodama.pdf (葉果比と果実重)
- Stone Fruits: Growth and Metabolism(総説・PMC) https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC7546786/ (核果類の二重S字型成長と硬核期)
- 岡山県の栽培資料(硬核期) https://www.pref.okayama.jp/uploaded/life/778042_7231691_misc.pdf (硬核期の見分け方)
- 愛知県の栽培資料(袋かけ) https://www.pref.aichi.jp/uploaded/attachment/629754.pdf (袋かけの目的と時期)
- 長野県果樹試験場「ももの収穫期予測」2025 https://www.pref.nagano.lg.jp/kajushiken/chosa/teirei/documents/momosyuukakuyosoku2025.pdf (満開から収穫までの日数と気温)
- 山梨県「おいしい未来 もも」 https://www.pref.yamanashi.jp/oishii-mirai/nochikusanbutsu/momo.html (収穫期の広がり・生産量)
なおした ところ
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