1. 親は、ヒナの 声を 聞いて 見つけます
1. 巣がないのに、なぜ見つけられるのか
1. 巣のない営巣地での再会 ── 答えは声にある
コウテイペンギンの 親は、ヒナの 声で ヒナを 見分けると いわれて います[7]。
この ペンギンは、巣を つくりません。目じるしに なる ものが ないので、見た 目では なく、声が 目じるしに なります。
ヒナだけが あつまる ばしょは、クレイシ(保育所)と よばれます。親が 海から もどると、なん千羽もの 中でも、親と ヒナは おたがいを 見つけると いいます[6]。
では、声で 見分けるって、どういう ことでしょう。つぎの 章で 見て みましょう。
2. 声は、ふたつの 音が かさなって できて います
2. 「ふたつの音」の重なりが、名前の代わりになる
2. 二つの音の重なりと、再生実験
コウテイペンギンの 声は、ふたつの 音が かさなって 出て います。ふたつが 重なると、ゆれる ような ひびき(うなり)に なります。この ひびきの かたちが、ペンギン 一羽ずつで ちがうと 考えられて います[8]。
これを たしかめる 実験が あります。録音した 声から、ふたつの 音の かたほうだけを 消して、ペンギンに 聞かせました。すると、かたほうの 音を 消した 声には、おとなの ペンギンも ヒナも、反応しませんでした[8]。
ふたつの 音が そろって、はじめて 「あの 子の 声だ」と 分かる のかも しれません。ただし、これは 一つの 研究の 話です。
たとえば、友だちを 呼ぶとき、名前だけでなく 声の ひびきも 手がかりに なります。ペンギンの 場合は、その ひびきが ふたつの 音で できて いる のです。ただし、人の 声と 同じ ではありません。
声は二つの音でできている
コウテイペンギンの声は、二つの音が重なってできています。重なると、うなりのような響きが生まれ、そのパターンが個体を見分ける手がかりになる、とする研究があります[8]。
片方を消すと、気づかない
研究者は、録音した声を加工して、片方の音だけを消した声を作りました。それを聞かせると、成鳥もヒナも、二つの音がそろった声には反応し、片方を消した声には反応しなかったと報告されています[8]。
親子は、声の中の二つの音の組み合わせで、お互いを呼び分けているらしい、ということです。これは一つの研究の報告で、すべての場面に当てはまるとまでは言えません。
声の聞き分けは、ほかのペンギンでも
別の種類では、オウサマペンギンのヒナが、ほかの鳥の声がまじる群れの中で、親の声を聞き分けると報告されています[9]。コウテイペンギンの研究とは別の種の話なので、結果をそのまま重ねないようにします。
声の識別を調べた再生実験では、コウテイペンギンの声が二つの音(二つの声)の重なりによって「うなり」を作り、そのパターンが個体識別に使われると報告されている[8]。録音を加工して片方の音を消すと、成鳥もヒナも反応しなくなった。つまり、二つの音がそろっていることが、識別の条件になっているとみられる。
ただし、ここで使った資料は論文の要約を確認したもので、実験の条件や数値までは本記事では書かない。「こういう実験がある」と受け止めておくのが安全だろう。
声による識別は他種でも調べられている。オウサマペンギンのヒナは、他の鳥の声が大きく混ざる群れの中でも親の声を聞き分けたとする研究がある[9]。ただし、これはコウテイとは別種の研究である。種をまたいで同じ仕組みだと決めつけることはできない。
3. ヒナが うまれる まえ、オスは 食べずに たまごを まもります
3. 親子が出会う前、オスは冬の間、食べずに卵を守る
3. 絶食するオス ── 卵の保温と体重の変化
コウテイペンギンは、1つの つがいが たまごを 1こだけ うみます。巣は ありません。オスが たまごを 両足の 上に のせて あたためます[1]。
そのあいだ、メスは 海へ 食べものを とりに いきます。メスが もどるまで、やく 2か月。オスは その あいだ、なにも 食べずに たまごを あたため つづけます[1]。
たまごが かえるまでは、65日から 75日と いわれます[2]。オスが 食べない 期間は、ぜんぶで やく 4か月。115日という 見つもりが よく 使われますが、資料に よって、すこし ちがいます[2][3]。
夏に 脂肪を ためて おいて、それで しのぐと されます[2]。体重は やく 4わり へる と いう 話も あります。へいきんで 38キロが 23キロに なる 計算です[3]。
では、メスが もどる 前に、ヒナが かえって しまったら?
足の上の卵
各つがいが産む卵は1個です。コウテイペンギンは巣を作らず、オスが両足の上に卵をのせて抱きます。メスが海へ餌を取りに行く約2か月のあいだ、オスは何も食べずに卵を温め続けます[1]。
どれくらい食べないのか
卵がかえるまでは65〜75日とされ、オスが食べない期間は全部で約4か月、115日という見積もりが広く使われています[2]。別の資料は約120日と書いており、数え方で幅があります[3]。夏のあいだにためた脂肪でしのぐとされます[2]。
体重は平均で約38kgから約23kgへ、約4割減るとする話があります。15kgは38kgの約39%で、約4割という言い方に合います。別の資料は45〜50%と書いていて、数字には幅があります[3]。
では、メスの帰りが間に合わないうちに、ヒナがかえったらどうするのでしょうか。
各つがいが産む卵は1個で、巣はなく、オスが両足の上で抱卵する。メスが海へ餌を取りに行く約2か月のあいだ、オスは何も食べずに卵を温め続ける[1]。ここで言う約2か月は、メスの留守の期間であり、オスの絶食の全体ではない。
卵が孵化するまでは65〜75日とされ、オスの絶食は約4か月である。115日という見積もりが広く使われているが、別の資料は約120日としており、日数には幅がある[2][3]。65日と115日は別のものを測った数字で、前者は抱卵、後者は絶食を指す。そのあいだを、夏のうちに蓄えた脂肪でしのぐとされる[2]。
この間に失う体重は、平均で約38kgから約23kgへ、約4割(15kg÷38kg≒39%)との話が紹介されている。別の資料は45〜50%と書き、幅がある[3]。いずれも観察対象や数え方に左右されるため、1つの数字を絶対視しないほうがよい。では、メスの帰りが孵化に間に合わなかったとき、ヒナは何を食べるのだろうか。
4. メスが おそいとき、オスは 体の 中から 食べものを 出します
4. 食べずに過ごしたオスが、ヒナに「食道のミルク」をあげる
4. 食道の分泌物による給餌と、両親の分担
メスの 帰りが ヒナの たんじょうに 間に あわない とき、オスは しょくどうの 中の 組織が はがれて できた、ミルクの ような ものを ヒナに あげると いわれます[4]。脂肪が とても 多いと されます[4]。
ただし、はとが 出す 「ミルク」と 同じ ものでは ありません。そして、あげられる 期間も みじかい ようです。
メスが 帰ってくると、メスも ヒナに 食べものを あげます。食べた ものを 口から もどして あげるのです。ヒナが 親の くちばしを つつくと、半分 こなれた 食べものが 出て きます[5]。
ヒナが かえった あとは、オスと メスが 世話を わけあいます。たまごを あたためるのは オスだけですが、ヒナの 世話は 二羽で します[5]。
食道の分泌物
メスの帰りがヒナの孵化に間に合わないとき、オスは食道の組織がはがれてできる凝乳(カード)のようなものをヒナに与えるといいます。脂肪とたんぱく質が非常に多いとされます[4]。
これは鳩が出す「ミルク」と同じ仕組みではなく、食道の組織の分泌物です。与えられる期間は短いとされるので、メスの帰りまでのつなぎと読むのが無理のないところです。
メスが戻ったら
メスが海から戻ると、メスもヒナに餌を与えます。食べた物を吐き戻して与える方法で、ヒナがくちばしをつつくと、半ば消化した餌を親が出すとされます[5]。吐き戻しの細かい様子は、二次的な資料にもとづく部分が多い点に注意が要ります。
卵を抱くのはオスだけですが、ヒナがかえったあとは、両親が世話を分担します[5]。
5. ヒナが 大きく なると、親は 二羽とも 海へ 行きます
5. ヒナが大きくなると、両親とも海へ行き、ヒナは保育所で待つ
5. 両親そろっての採餌と、クレイシの役割
ヒナが 大きく なると、お母さんも お父さんも 海へ 食べものを とりに いきます。9月ごろは、二羽そろって 行かないと 間に あわないほど、ヒナは いつも おなかを すかせて います[2]。
12月の はじめには、ヒナは 親と ほとんど 同じ 大きさに なり、羽毛が 生えて きます[2]。
親が るすの あいだ、ヒナは クレイシに あつまって 待ちます。100羽より 多く 集まる ことも あります。ときどき、おとなの ペンギンが 数羽、見守って います[7]。
むかしは 「みんなで 世話を する 保育所だ」と 考えられた こともありました。けれど、その 見方は、あとの 研究で 見なおされて います[7]。親が 世話を するのは、自分の ヒナです。だから 親は、なん千羽の 中から、自分の ヒナを 声で 見つけなければ ならない のです。
9月ごろ、二羽とも餌を取りに行く
ヒナがある程度育つと、両親とも海へ餌を取りに行くようになります。9月ごろには、両親がそろって餌を集めに行かないと間に合わないほど、ヒナはいつも腹をすかせています[2]。12月初めには、ヒナは親とほぼ同じ大きさになり、羽毛が生えてきます[2]。
クレイシは「みんなで子育て」ではない
親が留守のあいだ、ヒナは保育所に集まります。ときどき数羽のおとなが見守ることもあります[7]。一時は、親がみんなでヒナを世話する共同保育だという見方もありました。のちの研究でその見方は見直されています[7]。
親が餌を運んで世話をするのは、自分のヒナです。だから、戻った親は何千羽の中から、自分のヒナを探し出さなければなりません。第1章の答えは、ここにつながります。
ヒナがある程度育つと、両親とも海へ餌を取りに行くようになる。9月ごろには、片親だけでは餌が足りず、両親がそろって採餌に出ないと間に合わないほど、ヒナはいつも空腹である。12月初めには、ヒナは親とほぼ同じ大きさになり、羽毛が生えてくる[2]。
このとき、ヒナは営巣地のクレイシに集まって親の帰りを待つ。クレイシ期のヒナは100羽以上の集団になることがあり、ときどき数羽のおとなが見守る[7]。かつてはこれを親全員で世話をする共同保育とみる見方もあったが、のちの研究で見直されている[7]。親が餌を運ぶ相手は自分のヒナだけなので、クレイシから自分のヒナを選び出す声の識別が必要になる。第1・2章で見た声の仕組みは、ここで役に立つ。
クレイシに入る日齢や巣立ちの月は、今回の資料からは具体的に書けない。月や日数を決めつけないほうがよい。
6. まだ 分かって いない ことも あります
6. 夜の海へ出るオス、声の識別 ── まだ研究が続くこと
6. 研究が続いている点 ── 絶食中の採餌の可能性と数値の幅
オスは ずっと 食べて いない はず、と 思われて いました。ところが、一部の オスは、食べて いない あいだにも、夜の 海で 食べものを とって いるかも しれない、という 研究が あります。1998年の 冬に、4わの ペンギンに 衛星から 場所が 分かる 目じるしを つけた 話です[10]。
ただし、食べて いる ところを 見た わけでは ありません。目じるしを つけた 鳥が、たまごを あたためる オスだったとも かぎりません[10]。「食べて いる」と 言い きる 前の、「そうかも しれない」の ところです。
声の 聞き分けも、まだ 研究が 続いて います。ペンギンは、どうやって 何千羽の 声の 中から、自分の ヒナの 声だけを 選べるのか。まだ、分からないことが 多いのです。
夜の海で食べているかもしれない
オスの一部は、絶食のあいだに夜の海で餌を取っているのかもしれない、とする研究があります。1998年の冬、ケープワシントンで衛星タグを付けた4羽の動きから、その可能性が示されました[10]。
ただし、餌を食べる場面を直接見たわけではなく、タグを付けた鳥が繁殖中のオスとは限りません。「食べている」と言い切れる段階ではありません[10]。
数字には幅がある
絶食の日数は、115日、約120日、約4か月と、資料で幅があります。体重の減り方も、約4割とする話と、45〜50%とする資料があります[2][3]。数え方や調べた年・場所で変わりうるため、本記事は幅を残しています。
声の識別の研究
声の識別は、ほかのペンギンでも研究されています[9]。何千羽もの声の中から、自分の親やヒナの声だけを選ぶ仕組みは、まだ調べる余地があります。
絶食中のオスについては、一部が夜の海で餌を取っている可能性が示されている。ケープワシントンで1998年の冬、衛星タグを付けた4羽の記録にもとづく[10]。ただし、餌を取る場面は直接観察されておらず、タグの鳥が繁殖オスとは限らない。可能性が示された段階にとどまる。
また、日数や体重減少の数値にも幅がある。絶食は115日(見積もり)、約120日、約4か月と資料により異なり、体重減少は約4割とする話と45〜50%とする資料がある[2][3]。観察の年・場所・測り方によって違うことを念頭に、1つの値で言い切らない読み方が必要である。
声の識別も、コウテイペンギンでは再生実験の要約を確認した段階である[8]。オウサマペンギンなど他種の研究との比較には、原典に当たることが欠かせない。
声あてあそびと、もっと 読める ところ
声あてあそびと、原典の読み方
声の識別をめぐる原典への入口
おうちの 人に たのんで、声あてを して みましょう。目を とじて、後ろから 「あー」と だけ 言って もらいます。だれか 分かるでしょうか。つぎは、ふたりに ちがう 言葉を 同時に 言って もらいます。どちらが 何と 言ったか 聞き取れるか、ひとりの ときと くらべて みましょう。
ペンギンの 声は、ふたつの 音が かさなって できて います。それでも 親と ヒナは 聞き分けます。人の 場合と くらべて みると、ふしぎさが 分かります。
ペンギンの ことを もっと 知りたい 人は、環境省の 南極の ホームページを 読んで みて ください。
今日できること:家の人に協力してもらい、目を閉じて、後ろから「あー」とだけ言ってもらって、誰の声か当ててみてください。次は、二人にちがう言葉を同時に言ってもらい、どちらが何と言ったか聞き取れるかを試します。声が重なると、聞き分けにくくなるか。ペンギンは二つの音が重なった声から個体を見分けるので、人の場合と比べると、その難しさが想像できます。
公式情報:コウテイペンギンの繁殖の流れは、環境省の南極のペンギンのページ(日本語)で読めます。
しらべた もとの じょうほう
参考にした情報源
参考にした情報源と、その使い方
出典について:環境省・オーストラリア南極局などの公的機関の資料と、解説記事・論文の要約を使った。何に使ったかは、各項目の最後に書いている。
- 環境省 南極のペンギン紹介記事。https://www.env.go.jp/nature/nankyoku/message/article49/080218.html (卵を足の上で温めるオスと、メスの留守の期間について)
- Australian Antarctic Division: Breeding cycle. https://www.antarctica.gov.au/about-antarctica/animals/penguins/emperor-penguin/breeding-cycle/ (孵化までの日数、絶食の期間、ヒナの成長の時期について)
- EarthSky: Emperor penguins are good dads. https://earthsky.org/biodiversity/male-penguin-eggs (絶食中の体重の減り方について)
- Open University OpenLearn: Penguins. https://www.open.edu/openlearn/nature-environment/natural-history/animals-the-extremes-polar-biology/content-section-3.2 (オスが食道の組織から作る餌について)
- Australian Antarctic Division: Emperor penguin. https://www.antarctica.gov.au/about-antarctica/animals/penguins/emperor-penguin/ (ヒナがかえったあとの両親の分担について)
- 環境省 南極のペンギン暮らし。https://www.env.go.jp/nature/nankyoku/kankyohogo/nankyoku_kids/hakase/kagaku/penguin_kurashi.html (クレイシと、親子が見つけ合うことについて)
- Britannica: penguin. https://britannica.com/EBchecked/topic/449815/penguin (鳴き声による見分けと、クレイシの様子について)
- Aubin & Jouventin: Penguins use the two-voice system to recognize each other. Proc. R. Soc. Lond. B 267: 1081-1087 (2000). HAL: https://hal.archives-ouvertes.fr/hal-02555352 (二つの音による声の識別と再生実験の要約について)
- Aubin & Jouventin (1998): Cocktail-party effect in king penguin colonies. Proc. R. Soc. Lond. B 265: 1665-1673. https://doi.org/10.1098/rspb.1998.0486 (別の種での声の聞き分けについて)
- Popular Science: Emperor penguins fast snack. https://www.popsci.com/emperor-penguins-fast-snack/ (絶食中のオスが夜の海で餌を取る可能性について)
なおした ところ
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