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ここにあるのは、だれかが実際に調べ、考え、作ってきたことを集めたメモです。気になったら、ページの下の「参考にした情報源」から、もとの本や記事、それを生み出した人たちに、直接ふれてみてください。このメモには書ききれないおもしろさが、そこにあります。

こうていペンギンは、いきが ほとんど なくなっても もぐるの?

気嚢の酸素がほとんど残らない浮上 ── コウテイペンギンはなぜ息を止めて長く潜れるのか

コウテイペンギンは、酸素をどう蓄えて使うのか ── 心拍とヘモグロビンの働き

分野:生きもの

こうていペンギンが うみから あがってくる すこし まえ、はいに つながる ふくろの さんそが、とても すくなく なって いる ことが あります。ひとなら きを うしなうほど ひくい、と いわれる あたいです[8]。

それでも ペンギンは もぐり、もどって きます。どうして なのでしょう。この きじを よむと、さんそを どこに しまい、どう つかうのかが わかります。

73回の潜水を調べた研究では、浮上の最後に、肺につながる袋(気嚢)の酸素が、人なら意識を失うほど低くなる例がありました[8]。測った潜水のうち、4割ほどです[7]。

息を止めたまま、そこまで酸素を使っても、ペンギンは水面にもどってきます。どうなっているのでしょうか。この記事を読むと、酸素のしまい場所、心臓の動かし方、血液の性質の3つから、その理由が分かります。

コウテイペンギンの潜水を73回記録した研究では、浮上の最後の15秒間に測った気嚢の酸素分圧の42%が20 mmHg未満だった[7]。ここから、潜水終了時の気嚢の酸素割合は4%未満と計算されている[7]。Science Newsは、この水準を人なら意識を失うほどの低さと紹介している[8]。

では、なぜ酸素がそこまで減っても潜水が成り立つのか。この記事を読むと、酸素貯蔵の内訳、徐脈による酸素の配分、ヘモグロビンの酸素親和性とボーア効果の3点から、その答えと、まだ言い切れない部分が分かる。

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1. どのくらい もぐるの?

1. ふつうの潜水と、記録の潜水は何がちがうのか

1. 100〜200 m・3〜6分が標準 ── 記録は例外である

こうていペンギンは、500メートルより ふかく もぐった きろくが あります[2]。ビルの たかさより ずっと ふかい ところです。

でも、これは とくべつな ばあいです。オーストラリアの なんきょく きょくの せつめいでは、ふつうの せんすいは 100〜200メートルで、じかんは へいきんで 3〜6ぷんです[1]。

それでも、3〜6ぷん、いきを とめたままです。この あいだ、さんそは どう なって いるのでしょう。

コウテイペンギンは、深さ500 m超、23分超の潜水をする鳥として知られています[2]。ただ、これは記録の話です。オーストラリア南極局の解説(2014年更新)では、ふつうの潜水は100〜200 mで、平均3〜6分です。同じ解説には、記録は565 m、22分の潜水が2回と書かれています[1]。論文には23分超という記録も紹介されていて、資料によって少し差があります。

深い潜水ほど、めったにないことです。500 m超や20分以上は、ふつうの潜水とは別に考えます。

とはいえ、ふつうの3〜6分でも、ペンギンはずっと息を止めています。その間、体の酸素はどこにあるのでしょうか。

コウテイペンギンは、深さ500 m超、23分超の潜水をする鳥として知られる[2]。ただし、この値は極端な事例である。オーストラリア南極局(AAD)の解説(2014年更新)は、潜水の大半は100〜200 mで、平均の潜水時間は3〜6分とし、最深は565 m、22分の潜水は2回あるとしている[1]。23分超という論文の記述とは数値に差があり、記録値を「ふつうの深さ」と読んではいけない。

資料ごとに数値に幅があるため、この記事では「500 m超」「20分前後」程度の丸めた言い方を使う。では、平均3〜6分の息こらえの間、酸素はどこにどれだけ蓄えられているのか。

2. さんそは、からだの どこに あるの?

2. 酸素は、体の3か所にしまわれている

2. 酸素貯蔵は呼吸系・血液・筋肉の3か所 ── 総量はむしろ少ない

ペンギンは、さんそを 三つの ばしょに しまって いると 考えられて います。はいと ふくろ、ち、きんにくです[3]。

ペンギンの からだの 1キログラムあたりに すると、ぜんぶで 68ミリリットルほどと みつもられて います。ほとんど、三つが おなじくらいです[3]。

ゾウアザラシは 94ミリリットルで、ペンギンより おおいのです[3]。それでも ペンギンは ながく もぐります。つかいかたに ひみつが ありそうです。

ペンギンの酸素は、体の中の3か所にあります。肺と気嚢などの呼吸系、血液、筋肉です。体重1 kgあたりの総量は約68 mlと推定され、内訳は血液31%、筋肉36%、呼吸系33%です[3]。

意外なのは、総量が多いわけではないことです。同じ報告で、ゾウアザラシは94 ml、カリフォルニアアシカは55 mlとされています[3]。ペンギンの特ちょうは、呼吸系の割合が大きい点で、ゾウアザラシでは4%とされる値より、ずっと大きい割合です[3]。

蓄えが特別に多くないのなら、鍵は使い方にありそうです。その中心が、心臓です。

コウテイペンギンの全身の酸素貯蔵は、約68 ml O₂/kg体重と推定されている。同じ論文の推定では、ゾウアザラシが94、カリフォルニアアシカが55 ml O₂/kgである[3]。ペンギンの貯蔵量は、ゾウアザラシに及ばない。

内訳は、血液31%、筋肉36%、呼吸系33%と推定される(論文中の別箇所の値による)[3]。このうち呼吸系の割合が大きいことが目立ち、ゾウアザラシの4%と比べると差が大きい[3]。総量が少なめで、しかも呼吸系に偏っているなら、貯蔵の大きさだけでは長い潜水を説明できない。そこで注目されるのが、酸素の使い方を決める心拍である。

3. しんぞうを ゆっくりに すると どうなるの?

3. 心臓をゆっくり動かすと、酸素はどう使われるのか

3. 徐脈による酸素の配分 ── 心拍と筋肉のミオグロビン

ペンギンは、もぐって いる あいだ、しんぞうの うごきを とても ゆっくりに します。ふだんは 1ぷんに 70かいほどですが、ふかい ところでは 5〜10かいまで さがる ことが あります[4]。

ある 18ぷんの せんすいでは、5ふんかん、1ぷんに 6かいしか うごかなかった れいが あります[5]。

ゆっくりに すると、さんその つかいかたが かわります。ちと はいの さんそは のこり、きんにくは、じぶんの なかの さんそを つかいます[6]。

コウテイペンギンの心拍は、安静時でおよそ1分に70回です。ところが潜水の底では、5〜10回ほどまで下がることがあります[4]。スクリップス海洋研究所の発表には、18分の潜水のうち5分間、1分に6回まで下がった例があります[5]。潜る前には、200〜240回ほどまで上がることもあるそうです[4]。

心拍の数字は、個体や潜水の深さで変わります。浅く短い潜水では安静時に近く、深い潜水の深い区間で大きく下がる、と報告されています[9]。

心拍を落とすと、酸素の消費が減り、呼吸系と血液の酸素が残ります。筋肉は血液から切り離され、筋肉のたんぱく質ミオグロビンにくっついた、自前の酸素に頼ります[6]。心拍の調節は、潜水の力を決める仕組みの中心にあると、論文に書かれています[4]。

心拍の調節は、潜水能力を決める生理過程の中心にある[4]。コウテイペンギンの安静時心拍は約70拍/分で、潜水の底では5〜10拍/分まで下がり、潜水前には200〜240拍/分まで上がることがある[4]。デジタル心電計を初めてペンギンに使ったスクリップスの記録では、18分の潜水のうち5分間、1分あたり6拍だった例がある[5]。

ただし、数値は測定法・個体・区間で異なる。別の研究では、潜水中の心拍の中央値は64拍/分(安静56拍/分)で、潜水時間が長いほど低い。浅く短い潜水では安静時付近にとどまる[9]。70拍と56拍は別の測定で、安静時の値が条件によって違うことを示す。「最低で1分に数回〜10回ほど」が安全な言い方である。

では、心拍を落とす利点は何か。消費が減ることに加え、呼吸系と血液の酸素が温存され、筋肉は隔離されて自身のミオグロビン結合酸素に頼る、という整理が報告されている[6]。この「配分」の結果、血液中の酸素は潜水の大部分で保たれ、使い果たされるのは終盤になる。

4. おわりごろ、ふくろの さんそは ほとんど なくなるの?

4. 浮上の終わりに、気嚢の酸素はどこまで減るのか

4. 気嚢の酸素は終盤にほぼ尽きる ── 潜水の半数超が有酸素潜水限界を超える

ペンギンが ふくろの さんそを はかった けんきゅうが あります。73かいの せんすいを しらべました。あがる おわりの 15びょうに はかった ふくろの さんそのうち、42パーセントが、ひとなら きを うしなうほど ひくい あたいでした[7]。

ふくろに のこった さんその わりあいは、4パーセント より すくなく なった、と けいさんされて います[7]。

きんにくで さんそが たりなくなる めやすの じかんは、5.6ぷんと されて います。この けんきゅうでは、せんすいの 半ぶんより おおくが、それより ながかったのです[7]。

スタッカードらは、気嚢の酸素分圧を73回の潜水で記録しました。浮上の最後の15秒で測った値のうち、42%が20 mmHg未満でした。ここから、潜水の終わりの気嚢の酸素の割合は、4%未満と計算されています[7]。ふつうの空気は約21%なので、ほとんど使い切られた状態です。

20 mmHgを下回る水準は、人なら意識を失うほどの低さだと、Science Newsは紹介しています[8]。

この研究では、潜水の55%が、筋肉の中で乳酸がたまり始める目安の時間(有酸素潜水限界、5.6分)より長いものでした[7]。つまり、この研究では、潜水の終わりに気嚢の酸素がとても低くなる例が記録されています。それでも浮上できるのは、酸素を運ぶ血液にどんな特徴があるからでしょうか。

Stockardら(2005)は、73回の潜水で気嚢の酸素分圧を記録した。浮上の最後の15秒間の値の42%が20 mmHg未満で、潜水終了時の気嚢の酸素割合は4%未満と計算された[7]。大気中の酸素は約21%なので、貯蔵の大半が使われたことになる。Science Newsはこの水準を、人なら意識を失うほどと紹介している[8]。

同じ研究で、潜水の55%が、先行研究の有酸素潜水限界(ADL、5.6分)より長かった[7]。ADLは、息こらえ中に乳酸が蓄積し始める目安の時間である。つまり、ペンギンは酸素の貯蔵を終盤まで使い切るような潜り方を、日常的にしていることになる。

だが、酸素分圧がここまで低い状態で、組織への酸素供給が保たれるのか。その鍵になるのが、血液中でそれを運ぶヘモグロビンの性質である。

5. ちの なかの はこぶ ものは ちがうの?

5. 酸素をつかまえる力が強い血液が、浮上を支える

5. ヘモグロビンの酸素親和性 ── P50とボーア効果

ちの なかには、さんそを はこぶ ヘモグロビンと いう ものが あります。こうていペンギンの ヘモグロビンは、さんそを つかまえる ちからが つよいのです。

さんそが すくなく なっても、さんそを とりこみやすい、と かんがえられて います[2]。たかい そらを とぶ とりと にて いると いわれます[2]。

もぐって いる あいだ、ちの さんそは ずっと ほぼ いっぱいの まま、あがる さいごの ところで やっと へります[2]。

血液の中で酸素を運ぶのは、ヘモグロビンです。コウテイペンギンのヘモグロビンは、酸素と結びつく力が強いことが分かっています。その強さを表すP50という値は28 mmHgで、鳥の多くの44〜52 mmHgより低くなっています。P50は、小さいほど酸素を強くつかまえる値です。そのため、酸素が少ない血液でも、酸素を取りこみやすくなります。高い空を飛ぶインドガンや、他のペンギンとも似た性質です[2]。

この性質が実際に役に立っていそうなことを、潜水中の測定が示します。動脈血の酸素飽和度は、潜水の大部分でほぼ100%に保たれ、最後の浮上まで大きく下がりません。一方、静脈血の酸素は、長い潜水ほどほぼ使い切られます[2]。

ペンギン6種を比べた研究でも、潜らない近縁の鳥より、潜る鳥のほうが酸素と結びつきやすい方向に進化したと報告されています[10]。

コウテイペンギンの血液は、ヘモグロビンの酸素親和性が高い(P50=28 mmHg、pH7.5)。多くの鳥の値(44〜52 mmHg)より低く、P50が小さいほど親和性が強い。これにより、低い血液酸素分圧でも多くの酸素を結合した状態を保てる。高地を飛ぶインドガンや他のペンギンとも似た性質である[2]。潜水中は、動脈血の酸素飽和度が潜水の大部分でほぼ100%に保たれ、最終浮上段階まで有意に低下しない。一方、静脈血の酸素は、長い潜水ほどほぼ使い切られる[2]。

ペンギン6種を比べた研究では、酸素親和性が高くなる方向への進化が報告されている。コウテイ、オウサマ、アデリー、ヒゲ、ジェンツー、マゼランの6種の比較では、潜らない近縁の鳥より酸素親和性が高くなる方向に進化し、ボーア効果(酸性になると酸素を手放しやすくなる性質)も強まった[10]。ただしこの6種の全血P50は30.4〜38.1 torrで、コウテイ単独の28とは別の測定である。

親和性が高いだけなら、組織で酸素を手放しにくくなるはずである。そこで大きなボーア効果が役に立つと考えられている。2025年掲載の論文は、血液のpHと強いボーア効果が、浮上の終盤と、息こらえから呼吸への移行期にとくに重要だとしている[11]。酸素を肺でしっかり受け取り、組織で渡す、という両立の仕組みである。

自分でも しらべて みたく なったら

自分でも調べてみたくなったら

自分でも調べてみたくなったら

今日できること

おうちの ひとと いっしょに、手くびの みゃくを 1ぷんかん かぞえます。つぎに、その ばで 30びょう あしぶみを して、もう いちど はかります。からだの じょうたいで、しんぞうの うごきが かわる ことが わかります。

おうちでできること

かみに ペンギンの えを かいて、もぐって いる じかんと、うかびあがる じかんを、いろで ぬりわけて みましょう。

出かけてできること

すいぞくかんに いく ことが あれば、ペンギンが もぐってから、うかびあがるまでの じかんを、とけいで はかって みましょう。

こうしきの じょうほう

ペンギンが どんな ところを もぐるのかは、どうぶつに きかいを つけて うみを しらべる はなしも よんで みてください。

今日できること

座ったまま、手首の脈を1分数えます。次に、その場で30秒足ぶみをして、もう一度数えます。体の状態で心臓の動きが変わることを、自分の体で確かめられます。無理のない範囲で、保護者といっしょに行ってください。

出かけてできること

水族館のペンギンが一度潜ってから浮かんでくるまでを、時計ではかってみましょう。何度かはかって、潜る時間が毎回同じかどうか、くらべてみましょう。

公式情報

ペンギンの潜水を記録する方法は、動物に機械をつけて海を見る方法の記事にまとめてあります。この記事の数字を元の論文で確かめたいときは、出典欄のリンクから読めます。

今日できること

座位で手首の脈を1分間数え、30秒の足ぶみのあとにもう一度数える。心拍が状況で変わることを自分の体で確かめられる。体調に問題がないときに、保護者といっしょに行う。

出かけてできること

水族館でペンギンが潜ってから浮上するまでの時間を、時計で計る。何度か計って、潜る時間が毎回同じか比べてみる。

資料を読むなら

心拍と酸素の話は、Ponganis(2021)とMeir & Ponganis(2009)の2本が入り口になる。潜水を記録する方法は、バイオロギングの記事にある。ヘモグロビンの進化は、出典欄の[10]の論文が詳しい。

しらべた もとの じょうほう

参考にした情報源

参考にした情報源と、その使い方

数値は、豪州南極局の解説と、潜水生理を調べた論文(Meir & Ponganis、Stockardら、Ponganisほか)から使った。心拍や潜水の数値は、調べ方や個体で変わるため、およその値で書いた。

  1. Australian Antarctic Division「How deep can they dive?」 https://www.antarctica.gov.au/about-antarctica/animals/penguins/emperor-penguin/how-deep-can-they-dive/ (ふつうの潜水と記録)
  2. Meir & Ponganis (2009) J Exp Biol 212:1169 https://www.duckdna.org/syllabi/diving/readings/wk4/Meir-Ponganis-2009-JEB.pdf (潜水の深さ・ヘモグロビンの性質・動脈血の酸素)
  3. Time Domains of Hypoxia Adaptation, Front Physiol (2019) https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC6558045 (酸素貯蔵の総量と内訳)
  4. Ponganis (2021) Front Physiol https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC8369151 (心拍の記録)
  5. Scripps Institution of Oceanography, Research Highlight https://scripps.ucsd.edu/news/research-highlight-beat-goes-on%C3%A2%E2%82%AC%C2%A6-barely (18分の潜水中の心拍の例)
  6. University of Bristol news (2013) https://www.bristol.ac.uk/news/2013/9702.html (心拍と酸素の配分)
  7. Stockard et al. (2005) J Exp Biol https://europepmc.org/article/MED/16043602 (気嚢の酸素と有酸素潜水限界)
  8. Science News「Cool Birds」 https://www.sciencenews.org/article/cool-birds (人にたとえた紹介)
  9. Meir et al. (2008) J Exp Biol 211:1169 https://cob.silverchair.com/jeb/article-pdf/211/8/1169/1410834/1169.pdf (潜水中の心拍の変わり方)
  10. Evolved increases in Hb-O2 affinity and the Bohr effect in penguins https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC8020755/ (ペンギン6種の比較)
  11. Blood pH, hemoglobin function and oxygen transport throughout the dive cycle of emperor penguins https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC12669838/ (浮上終盤のボーア効果)

なおした ところ

更新履歴

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