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ここにあるのは、だれかが実際に調べ、考え、作ってきたことを集めたメモです。気になったら、ページの下の「参考にした情報源」から、もとの本や記事、それを生み出した人たちに、直接ふれてみてください。このメモには書ききれないおもしろさが、そこにあります。

犬の 目には、どんな 色が うつるの? ── ねこも いっしょに

犬は白黒の世界にいるのか ── プードルが鼻で答えた「二色」の景色

犬・猫の二色型色覚 ── 錐体2種類の証拠と、暗さ・動きに強い目の設計

分野:生きもの

犬は 白と くろの 世界に いる、と 聞いた ことは ありませんか。ところが、ある けんきゅうでは、犬は 色を ヒントに えらんだ、と ほうこくされました。

では、犬や ねこの 目には、赤や 青は どう うつるのでしょう。プードルが はなで へんじを した じっけんを たどると、その ようすが すこし わかります。

犬の目は白黒しか映さない、とよく言われます。ところが2013年の実験では、明るさと色がちがう選択肢を出されたとき、8匹の犬が明るさより色を手がかりに選んだと報告されています[4]。

では、犬や猫には、実際にどんな色が見えているのでしょうか。トイプードルが鼻で答えた実験と、猫の「見分けられない色」の実験から、二色の景色と、色以外に強い目の作りが分かります。

犬は白黒しか見えないという通説に対し、2013年の選択実験では、未訓練の犬8匹が明るさより色を手がかりにした[4]。一方、犬の網膜の錐体は2種類しかなく、感度のピークは約429nmと555nmで、二色型色覚とされる[1]。

では、その二色型はどう確かめられ、猫ではどうか。行動実験と神経の証拠、そして色以外の視覚(暗所感度・視力・ちらつき)まで合わせると、犬猫の目の設計が分かる。ただし対象が少ない実験も多く、限界も併せて読む。

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1. 草の上の 赤い ボールは、見えにくい?

1. 草の上の赤いボールは、犬に目立たないかもしれない

1. 「赤と緑」の区別の弱さ ── 草上の赤いボール問題

こうえんで、赤い ボールを 草の 上に ころがします。犬は すぐ 見つけると 思いますよね。

でも、ある はなしでは、犬は 赤と みどりの ちがいが にがてで、草の 上の 赤い ボールは 目だちにくい かもしれない、と いわれます[3]。犬は 色の ほかに、うごきや かたち、光の はんしゃも つかって さがす かもしれません。

ただし、犬に 色が どう 見えるか、本人に 聞く ことは できません。だから、どうやって たしかめたのかが 気に なります。

公園で、赤いボールを草の上に投げます。犬なら、すぐに見つけそうです。ところが、犬は青や黄は見分けられても、赤と緑は見分けにくいと説明されることがあり、草の上では、赤いボールが目立ちにくいことがあります[3]。

この説明では、犬は色だけでなく、動きや形、光の反射も手がかりにしているかもしれない、と述べられています[3]。「赤が見えない」のではなく、「赤と緑の区別が苦手」という言い方が近いようです。

とはいえ、犬に「何色に見える?」と聞くことはできません。では、研究者はどうやって、犬の見える色を調べたのでしょうか。

草の上の赤いボールは、犬には目立ちにくいかもしれない。犬は青と黄は見分けられるが赤と緑は見分けにくい、という科学解説があり、犬は動き・形・光の反射で探している可能性も指摘される[3]。

ここで注意したいのは、これは「赤が見えない」という主張ではなく、赤と緑の区別が苦手という主張であることだ。しかも、犬に見え方を尋ねられない以上、色名を当てはめるのは人間の推測にとどまる。では、その推測の土台になる実験はどう行われたのか。

2. 犬に「どれが ちがう?」と きく やりかた

2. 犬に「どれが違う?」と聞く方法

2. 行動実験による色覚の測定 ── 3つの円盤と、鼻での応答

けんきゅうしゃの ニーツさんは、自分の トイプードルの「レティナ」を、1年かん、毎日 けんきゅうしつに つれて いったと 話して います[2]。

やり方は こうです。ひかる 円ばんが 3つ あります。その うち、ほかと ちがって 見える 1つを はなで おすと、ごほうびが もらえます。

レティナが まちがえた 色の くみあわせは、「見分けられない」しるしに なります。まちがえなかった くみあわせは、「見分けられる」しるしです。

この やり方で、犬が 見分けられる 色を すこしずつ しらべて いきました。

実験をしたのは、アメリカの研究者ニーツです。本人の談によると、自分の飼っていたトイプードル「レティナ」を、1年間、週に7日、研究室へ連れていったそうです[2]。

やり方は、こうです。光る円盤が3つあり、そのうち1つだけ色がちがいます。ちがう円盤を鼻で押すと正解で、ごほうびがもらえます[2]。

もし犬が、ある2つの色を同じに見ているなら、どれがちがうのか分からず、正解は当てずっぽうになります。逆に、いつも正しく押せるなら、その2つは別の色に見えている、と考えられます。

ただし、この話は、ニーツ本人の談を紹介した記事です。実験の詳しい数字は、次の章の論文で確かめました。

色覚の行動実験は、見分けの成否から逆に見え方を推定する。ニーツは、自分のトイプードル「レティナ」を1年間、週7日研究室に連れていき、3つの光る円盤のうち他と異なるものを鼻で押すと正解になる訓練を行ったと語っている[2]。

二つの色が同じに見えているなら、正解は偶然に近づく。そのため、どの組み合わせで正答率が落ちるかを探せば、犬が区別できない色の範囲が見えてくる。ただし、このエピソードは本人談を紹介した報道で、実験の数値は論文で確かめる必要がある。

3. 犬の 目は 2しゅるい。それでも 色は つかう

3. 犬の目は「二色型」── それでも色を手がかりにする

3. 犬の錐体は2種類 ── 429nmと555nm、そして色を手がかりにできる2013年の実験

ニーツさんたちの けんきゅうでは、犬の 目には、色を かんじる 「すいたい」という 細ぼうが 2しゅるいだけ ある、と わかりました[1]。

人は 3しゅるいです。だから 犬は、青と 黄色は 見分けやすく、赤と みどりは にがて、と かんがえられて います[1][3]。

では、犬は 色を あまり つかわないのでしょうか。2013ねんの じっけんでは、明るさと 色の ちがう えらぶ ものを 出すと、8ひきの 犬は 明るさより 色を ヒントに えらびました[4]。

ざっし『ディスカバー』は、はんぶんの 犬は 10かい ぜんぶ 色で えらんだ、と つたえました[5]。ただし、これは 屋外の 光の なかでの 1つの じっけんです。

錐体は2種類

ニーツらの1989年の論文は、犬の網膜に、色を感じる錐体の種類が2つあることを示しました。感度のピークは、およそ429nmと555nmです[1]。人には3種類あるので、犬は二色型色覚とされます。

青紫に近い光と、黄緑に近い光を受け持つ2種類、という読み方ができます。そのため、青と黄の区別は得意でも、赤と緑の区別は苦手になると考えられています[1][3]。

色を手がかりにできることを示す実験

では、犬は色をほとんど使わないのでしょうか。2013年の論文では、明るさも色もちがう選択肢のなかで、訓練を受けていない犬8匹が、明るさより色を手がかりに選びました[4]。

雑誌『ディスカバー』は、半数の犬は10回すべてで色で選んだと伝えています[5]。ただしこれは、自然光の下の選択課題です。「いつも色を使う」という意味ではありません[4]。

犬の網膜には錐体の視物質が2種類あり、感度のピークは約429nmと555nmと計算された。人の3種類に対し、犬は二色型色覚と結論されている[1]。VINの解説も、犬は赤緑色盲の人に似た見え方だとしている[8]。錐体の2種類の視物質が青紫側と黄緑側にあるから、青と黄は分けやすく、赤と緑は分けにくい、と読める。

一方、犬は色を使わず明るさで選ぶという見方に対しては、2013年の実験がある。訓練なしの犬8匹が、明るさと色度が両方異なる刺激の選択で、明るさより色を手がかりにした[4]。報道は、半数の犬は10回すべてで色で選んだとする[5]。ただしこの数字は報道の紹介にとどまる。しかも実験条件は自然光下の選択課題で、犬が日常でいつも色を使う証拠にはならない[4]。

4. ねこにも、見分けられない 色が ある?

4. 実験で、猫が見分けられなかった色

4. 猫の中性点 ── 505nmだけ見分けられない

ねこは どうでしょう。2ひきの ねこで しらべた じっけんが あります[6]。

ねこは ほとんどの 色の ちがいを 見分けましたが、みどりと 青の あいだの ある 光だけは、見分けられませんでした[6]。この 見分けられない 色を、「ちゅうせいてん」と よびます。

この 2ひきの ねこも、犬と おなじような 色の 見分け方を する、と 考えられました[6]。

ただし、調べた ねこは 2ひきだけです。ねこ ぜんぶが そうだ、とは いえません。

猫はどうでしょう。2016年の実験では、猫2匹に単色の光を見せて、見分けられるかを調べました。2匹とも、456〜497nmと510〜524nmの光は見分けましたが、505nmの光だけは見分けられませんでした[6]。

ある1点だけ、見分けられなくなる場所を「中性点」と呼びます。二色型の目には、この中性点がある、と考えられています。この結果から、猫も二色型で、人の赤緑色覚異常に近いタイプとされました[6]。

猫の脳の研究にも、手がかりがあります。2013年の論文は、猫の脳に、2種類の錐体から入力を受ける「青オン細胞」があり、青と黄の対比を扱う仕組みが霊長類と似ている、と述べています[7]。

とはいえ、行動実験の対象は2匹です。VINの解説も、猫の色を見る力は「限られている」とし、刺激が大きく、色の差が大きいときに検出できる程度だとしています[8]。「猫は色が見える」と「猫はよく見える」は、別の話です。

猫では、単色光を用いた中性点検査がある。2匹の猫は、456〜497nmと510〜524nmの光は見分けたが、505nmだけは見分けられなかった[6]。二色型の目は、ある波長で2種類の錐体の反応の比が白色と同じになり、そこで色の差が消える。この中性点の存在が、二色型で人の赤緑色覚異常に近い型という根拠になった。

神経側の証拠もある。猫の外側膝状体には、短波長錐体(S)と中・長波長錐体(ML)から入力を受ける青オン細胞があり、青と黄の対比を扱う点が霊長類と似る[7]。行動実験(2匹)と神経の証拠は方向が一致するが、対象が少ないので、猫全体の性質として言い切らない。また、猫の色を見る力は限られ、刺激が大きく色の差が大きいときに検出できる、と獣医向け資料は述べる[8]。

5. 色より、くらさと うごきに つよい 目

5. 色の代わりに手に入れたもの ── 暗さ・動き・ちらつき

5. 色以外の視覚 ── 暗所感度・視力・フリッカー検出

色の ちがいが にがてでも、ねこの 目には とくいな ことが あります。

ねこの 目は、くらい ところで 光を つかまえる 細ぼうが おおく、光を はねかえす 板も あります。この おかげで、光を かんじられる いちばん うすい 明るさが、人の 7ぶんの 1ほどです[8]。ただし、まっくらでも 見える わけでは ありません。

いっぽう、細かい ものを 見る ちからは、人より よわいと されます。人が 見分けられる 細かさを 見るには、犬は ずっと 近づく ひつようが あります[8]。

犬は、人より はやい ちらつきを 見分けられる ことが あると いわれます[8]。

暗さに強い猫の目

猫の網膜には、暗いところではたらく桿体が多くあります。光を感じられる最小の明るさは、人の最大7分の1です。眼底の反射層(タペタム)は、人の眼底より最大130倍多く光を返します[8]。犬にも似た仕組みがありますが、猫ほど強くありません[8]。

「7分の1」は、光を感じ取れる最小の明るさです。真っ暗闇でも見える、という意味ではありません。

細かさとちらつき

視力は、犬が約20/75、猫が20/100〜20/200とされています。犬の場合は、人が約23メートル先から見分けられる細かさを、約6メートルまで近づかないと見分けられない、という意味です[8]。この表記を、単純に「人の何分の1」とは言い換えられません。

一方、犬は70〜80Hzを超えるちらつきも検出でき、60Hzのテレビは点滅して見える可能性があります[8]。色が二色でも、動きや暗さでは人より得意なことがあるようです。

色の弱さは、暗所感度と動きの検出という別の強みとセットで読むのが自然だ。猫は桿体が多く、光検出の最小閾値が人の最大7分の1、タペタムは人の眼底より最大130倍の光を反射する。犬にも同様の適応はあるが、猫ほど強くない[8]。閾値の7分の1は、真っ暗でも見える意味ではない。

視力は犬が約20/75、猫が20/100〜20/200とされる[8]。20/75は、人が75フィート(約23メートル)で見分ける細かさを、犬は20フィート(約6メートル)まで近づかないと見分けられない、という視力表の表記だ。ただし、この換算を「人の何分の1」と単純化することはできない。また犬は70〜80Hz超のちらつきを検出でき、60Hzのテレビは点滅して見える可能性がある[8]。

ここまで挙げた数字はVINの獣医向けの解説によるもので、二次資料だ。個体差や測定条件の違いは反映されていない。

6. かいぬしさんに おすすめの みかた

6. 犬や猫の目で考える、身近な観察

6. 出口 ── 観察のしかたと、資料の読みどころ

犬や ねこを かって いる 人は、おもちゃを 見つける ようすを、そっと 見て みましょう。色を かえた おもちゃを 同じ 場所に おいて、犬が どう さがすか 見てみましょう。1ぴきの ようすだけでは、色を ヒントに したかは わかりません。

ただし、犬は においも つかいます。おもちゃは、口に入らない大きさのものを えらびましょう。

もっと 知りたい人は、犬や ねこの 目の ことが のっている ほんや ずかんを、おうちの 人と さがして みましょう。

犬や猫を飼っている人は、青と黄、あるいは赤と緑のおもちゃを、草の上や床に置いて、どちらを先に見つけるかをそっと見守ってみてください。犬はにおいも使うので、1匹の様子から結論は出せません。おもちゃは、飲み込まない大きさのものを選びます。

犬の視覚を総合した2018年のレビューは、犬がどう見ているかの理解は認知研究に必要なのに、まだ十分でないと述べます[9]。まだ分かっていないことが多い分野です。

もっと読みたくなったら、ニーツらの論文[1]や、猫の中性点の論文[6]を開いてみてください。

観察するなら、色をそろえたおもちゃ(飲み込めない大きさ)を草地に置き、犬が先に見つけるものを記録してみる。ただし犬は嗅覚も使うため、1匹の観察から色の効果は言えない。

資料を読むなら、犬の錐体は原論文[1]、色を手がかりに選ぶ実験は2013年の論文[4]、猫の中性点は[6]、脳の側の証拠は[7]、犬の視覚全体の課題は2018年のレビュー[9]が読める。犬が「どう見ているか」の理解はまだ十分でない、とレビューは述べている。

しらべた もとの じょうほう

参考にした情報源

参考にした情報源と、その使い方

出典について:論文の要旨、獣医向けの解説、科学雑誌の記事を使った。何に使ったかは、それぞれの項目の最後に書いている。

  1. Neitz, Geist & Jacobs (1989) "Color vision in the dog", Visual Neuroscience 3(2). https://www.cambridge.org/core/product/5A30E35A384D10B6A2B46B01C896D3D5 (犬の錐体が2種類であることについて)
  2. Laughing Squid "Color Blindness in Dogs". https://laughingsquid.com/color-blindness-in-dogs/ (ニーツ本人の談による、プードルの訓練の紹介。二次資料)
  3. Scientific American "What Colors Do Dogs See?". https://www.scientificamerican.com/article/what-colors-do-dogs-see (青と黄、赤と緑の見分けと、赤いボールの話について。二次資料)
  4. Kasparson, Badridze & Maximov (2013) "Colour cues proved to be more informative for dogs than brightness", Proceedings of the Royal Society B. Europe PMC の検索結果 (犬が色を手がかりにした実験について)
  5. Discover "Dogs See the World in Living Color". https://discovermagazine.com/planet-earth/dogs-see-the-world-in-living-color (2013年の実験の割合の報道。二次資料)
  6. Clark & Clark (2016) "Neutral point testing of color vision in the domestic cat", Experimental Eye Research 153. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/27720709/ (猫の中性点について)
  7. Buzás et al. (2013) J Neurosci 33(4). https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/23345221/ (猫の脳の青オン細胞について)
  8. Veterinary Information Network "Vision in Animals – What do Dogs and Cats See?". https://www.vin.com/doc/?id=3844144 (暗所感度・視力・ちらつきの数字について。獣医向けの解説で二次資料)
  9. Byosiere et al. (2018) "What do dogs (Canis familiaris) see?", Psychonomic Bulletin & Review. Europe PMC の検索結果 (犬の視覚研究のまとめについて)

なおした ところ

更新履歴

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