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ここにあるのは、だれかが実際に調べ、考え、作ってきたことを集めたメモです。気になったら、ページの下の「参考にした情報源」から、もとの本や記事、それを生み出した人たちに、直接ふれてみてください。このメモには書ききれないおもしろさが、そこにあります。

くらい はこの なかでも、マツの め は みどりなのに、まめの め は しろいのは どうして?

真っ暗な箱の中でも、マツの芽は緑になるのに、豆の芽は白くなるのはなぜか

マツの芽生えが暗所でも緑になれるのはなぜか:光を使わない酵素DPORと、種や温度による差

分野:自然

くらい はこの なかで そだてると、まめの め は しろく なります。ところが、マツの め は、ひかりが ぜんぜん なくても、みどりいろに なれる ことが あると いわれて います。

おなじ しょくぶつなのに、どうして ちがうのでしょう。この ページを よむと、みどりを つくる しくみの ちがいと、マツでも いつも みどりとは かぎらない わけが わかります。

真っ暗な箱の中で、豆の芽は白く、ひょろっと伸びます。ところがマツの芽生えは、光がまったく届かなくても、緑色のクロロフィルを作れると報告されています[1]。

同じ植物なのに、なぜ豆は白くなり、マツは緑になれるのでしょうか。この記事を読むと、緑を作る最後の段階で使う酵素のちがいと、マツでも条件しだいで緑にならないことがある理由が分かります。

暗所で育てたエンドウの芽生えは黄白色になるが、マツの芽生えなどの裸子植物は、暗所でも緑化できる[1]。クロマツの子葉は、発芽のあいだ完全な暗黒でもクロロフィルを合成すると報告されている[2]。では、光を必要としない道すじは、被子植物のものと何がちがうのか。

この記事を読むと、プロトクロロフィリドを還元する2種類の酵素の使い分け、子葉と針葉でのちがい、種や温度で緑の度合いが変わる点が分かる。

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1. まっくらな はこの なかで、マツの め は どうなるの?

1. 暗い箱に入れた豆とマツは、どちらが緑になるのか

1. 暗所で緑になる植物と、ならない植物がある

まめの たねを、ひかりの 入らない はこの なかで そだてると、め は しろっぽく、ひょろひょろと のびます。みどりいろの もとに なる クロロフィルを、ひかりが ないと つくれないからです。

ところが、マツの なかまは ちがいます。マツの め は、はこの なかの まっくらな ところでも、みどりいろの クロロフィルを つくれる ことが あると、けんきゅうで しらべられて います。

クロマツと いう マツの め の ふたば(子葉しよう)は、めが 出る あいだ、ひかりが ぜんぜん なくても クロロフィルを つくったと ほうこく されて います。ただし、あかるい ところで そだてた ものより、すこし すくなめです。

豆の種を、光の入らない箱の中で育てるとどうなるでしょうか。芽は黄白色で、ひょろ長くなります。緑色のもとになるクロロフィルを、光がないと作れないからです。

マツは、この点でちがいます。マツの実生など、裸子植物の一部は、暗い場所でも緑化できると紹介されています。エンドウのような被子植物では、緑になるのに光が必要です[1]。クロマツの子葉についても、発芽のあいだ完全な暗黒の中でクロロフィルを作ると報告されています[2]。

ここで大事なのは、「光の下と同じ量」とは言っていないことです。研究では、暗所で育った子葉は、光の下で育ったものより光合成に関わるタンパク質の複合体が少なかったと報告されています。暗くても緑にはなれるが、いつも明るい場所と同じとは限りません。

では、光がないのに、どうやってクロロフィルを作れるのでしょうか。

暗所に置かれた被子植物の芽生えは、エンドウのように黄白色の黄化芽生えになる。一方、マツの芽生えなどの裸子植物は、暗所でも緑化できる[1]。クロマツの子葉についても、Shinohara らの研究が、発芽のあいだ完全な暗黒でもクロロフィルを合成することを示している[2]。

ただし、暗所で作られるのは、光の下と同じ量ではない。同じ研究は、暗所育ちの子葉では光化学系などの複合体の量が明所育ちより少ないことも示した[2]。暗所緑化は「できる、できない」の二分ではなく、どの程度まで進むかの問題でもある。

では、光を使えないはずの暗所で、クロロフィルの合成はどの段階を、どんな部品で進めているのか。次の章で、豆とマツの分かれ目になる酵素を見る。

2. ひかりが ないのに、マツは どうやって みどりを つくるの?

2. 緑色を作る最後の段階で、豆とマツは別の道具を使う

2. プロトクロロフィリドの還元:光依存型のLPORと暗所作動型のDPOR

クロロフィルを つくる とちゅうに、ひかりで うごく しごとが あります。まめの なかまは、この しごとを、ひかりを つかう 「こうそ」(しごとを たすける ぶぶん)だけに まかせて います。だから くらいと、ここで とまって しまい、しろっぽい ままに なります。

マツの なかまは、ひかりが なくても うごく べつの こうそも もって います。この こうそが、くらい ところでも みどりを つくって くれると かんがえられて います。

ひかりで うごく かぎで しか あかない 戸が、まめ。ひかりが なくても あく、もう 一つの かぎを もつのが、マツ。そんな ちがいです。ただし これは、わかりやすく した たとえで、ほんとうの こうそは もっと ふくざつです。

クロロフィルを作る道すじの終わり近くに、プロトクロロフィリドという物質を、クロロフィリドaという物質に変える段階があります。クロロフィリドaは、クロロフィルaの直前の物質です。この変化には、還元という反応が必要で、酵素が働きます[1]。

酵素には2種類あります。1つは光で動くLPOR、もう1つは光を使わず、暗い場所でも働くDPORです。被子植物はプロトクロロフィリドの還元にLPORだけを使うことが知られています。そのため暗所ではプロトクロロフィリドがたまり、エチオプラストという、暗所育ちの葉緑体の前段階のような構造にプロラメラ体ができます[3]。豆の芽が白いのは、この段階が光待ちで止まるからだと説明されています。

暗所で緑になれる裸子植物では、DPORも使えます。DPORの部品は葉緑体のDNAにある3つの遺伝子(chlL・chlN・chlB)から作られ、裸子植物の葉緑体ゲノムにはこの3つがあります。多くの被子植物は、少なくとも2つを持っていません[4]。「光を使わない道具そのものを持っているか」が、マツと豆の分かれ目の1つになっているわけです。

クロロフィル合成の終盤では、プロトクロロフィリド(Pchlide)の二重結合が還元され、クロロフィルaの直前の物質であるクロロフィリドaが生じる。この反応を担う酵素は2系統あり、光で駆動するLPORと、光を必要としない暗所作動型のDPORである[1]。

被子植物はPchlideの還元にLPORだけを用いる。そのため暗所ではPchlideが蓄積し、エチオプラストにはプロラメラ体が形成される。光が当たって初めて反応が進むので、暗所では黄化の状態にとどまる[3]。

これに対し暗所緑化できる裸子植物は、DPORを備える。DPORの構成要素は葉緑体DNAにコードされた3遺伝子chlL・chlN・chlBに由来し、裸子植物の葉緑体ゲノムはこれらを持つ。多くの被子植物は少なくとも2つを欠く[4]。ただし「遺伝子があれば必ず暗所で緑になる」とまでは言えず、遺伝子の有無と暗所緑化の強さが一致しないと報告された樹種もある。

道具の有無が分かれ目の1つだとして、マツのどの部分で、どこまでこの道具は使われているのか。

3. め の ふたばだけ? ほそい はも みどりに なるの?

3. 子葉だけでなく、初めの針葉も暗所で緑になるのか

3. 子葉から初期の針葉へ:暗所緑化が確かめられた範囲

マツの め には、さいしょに 出る ふたば(子葉しよう)と、そのあとに のびてくる ほそい は(針はりのような は)が あります。むかしの けんきゅうは、おもに ふたばを しらべて いました。

その あと、ほそい はの ほうも、くらい ところで クロロフィルを つくれる ことが しめされました。ちがう マツ 2しゅるいで、おなじ けっかが 出て います。

さらに、ヨーロッパの マツ 2しゅるいを くらい ところで そだてた けんきゅうでは、ひかりの あるなしに かかわらず、クロロフィルを つくる ための ざいりょうが たまって いました。くらくても じゅんびが できて いる、という ことです。

ここまでの話は、主に子葉の研究が元になっています。では、子葉のあとに伸びる初期の針葉はどうでしょうか。

1998年の研究が、マツの初期の針葉でも、暗所でクロロフィルを作れることを示しました。調べられたのは、Pinus jeffreyi と Pinus sylvestris(ヨーロッパアカマツ)という2種です。それまでの研究は主に子葉で、針葉については確かでなかったとされています[4]。

別の研究では、Pinus mugo と Pinus sylvestris の暗所育ちの実生で、DPOR遺伝子の発現が分析したすべての試料で一定でした。クロロフィル合成に必要なグルタミルtRNA還元酵素や、光化学系に関わるD1・LHCIというタンパク質も、光に関係なく蓄積したと報告されています[5]。暗所でも、緑を作る準備が着々と進んでいるわけです。

暗所緑化は子葉に限った現象なのか、それとも針葉でも成り立つのか。Schoefs と Franck は、Pinus jeffreyi と Pinus sylvestris の初期の針葉でも、暗所でクロロフィルが合成されることを示した。それ以前の研究は主に子葉を対象としており、針葉については未確定だった[4]。

では、その背後で何が起きているのか。Breznenová らは、Pinus mugo と Pinus sylvestris の暗所育ちの実生を調べ、DPOR遺伝子の発現が分析した全試料で一定だったと報告した。グルタミルtRNA還元酵素、D1、LHCIの蓄積も光に依存しなかった[5]。クロロフィル合成の準備となるタンパク質が、光の有無にかかわらずそろうということである。

ただし、これらの研究で扱われたのはマツ属のごく一部の種にすぎない。マツ科全体、あるいは裸子植物全体に同じ程度で当てはまるかは、別問題になる。

4. どんな マツでも、どんな ときでも みどりに なるの?

4. 種類や温度によって、暗所での緑の度合いは変わる

4. 暗所緑化の程度は、種・組織・温度で一定ではない

「マツは くらくても みどり」と おぼえたら、ひとつだけ つけたして ください。いつでも、どんな マツでも、おなじとは かぎりません。

たとえば、クロマツの ふたばは、とても さむい ところでは、くらいと きいろっぽく なると ほうこく する けんきゅうが あります。マツの なかまの なかでも、くらい ところで みどりに なる つよさが、しゅるいに よって ちがう ことも いわれて います。

「マツは暗くても緑になる」と覚えるなら、条件をつけておく必要があります。

報告によると、クロマツの子葉は、とても低い温度の暗所では黄色くなり、光に頼らないクロロフィル合成がほとんど抑えられるそうです。また、マツ科の中でも暗所での緑化の強さには差があり、ドイツトウヒでは強く、カラマツでは弱いという報告があります。さらに、DPORの遺伝子らしいものを持っていても、暗所で緑にならない樹木の例も言われています。

マツの仲間でも、種類や温度によって、緑の度合いが変わります。

道具を持っているかどうかだけでは、暗所でどこまで緑になるかは決まらないようです。では、この「光を使わない道具」は、そもそもどこから来たのでしょうか。

暗所緑化の強さは、種、組織、温度によって異なるとされる。クロマツの子葉は、低温の暗所では黄色くなり、光非依存のクロロフィル合成がほぼ抑えられるとの報告がある。マツ科の中でも、ドイツトウヒは暗所緑化が強く、カラマツは弱いという報告もある。また、DPORの遺伝子を持つのに暗所で緑化しない植物も報告されており、イチョウでは遺伝子があってもDPORのタンパク質が検出されなかったという。

温度ごとの具体的な数値は、ここでは挙げない。報告ごとに材料も条件もちがうため、数字だけを並べて比べると誤解を生みやすいからである。言えるのは、DPORを持つ裸子植物は暗所でも緑化しうるが、その程度は遺伝子の有無だけでは決まらず、種・組織・温度などの条件が絡むということだ。組織ごとの差という点でも、子葉での結果を針葉や成長した葉にそのまま当てはめることはできない。

では、条件に左右されるとはいえ、光を使わずにクロロフィルを作るこの酵素の正体は、何に似ているのか。

5. ひかりを つかわない こうそは、なにに にて いるの?

5. 光を使わない酵素は、窒素をつかまえる酵素に似ている

5. DPORとニトロゲナーゼの類似と、進化的な近縁の可能性

くらい ところで みどりを つくる こうその 名まえは、DPORと いいます。この こうそは、まったく ちがう しごとを する 「ちっそを とりこむ こうそ」に にて いると いわれて います。

かんけいが ありそうに 見えない ふたつが、にた かたちを して いる。もしかすると、むかしは なかまだったのかも しれません。にている ところが 見つかって いて、むかしの つながりは「あるかも しれない」と 考えられて います。

DPORは、ニトロゲナーゼという酵素によく似ています。ニトロゲナーゼは、空気中の窒素を、生きものが使える形に変える窒素固定を担う酵素です。DPORの紹介記事は、窒素固定と、暗所でのクロロフィル形成には、進化の上でつながりがある可能性を指摘しています[1]。

植物の緑色を作る酵素と、窒素をつかまえる酵素が親戚かもしれない。そう考えると、同じ緑の葉でも、中の道具のルーツは、思いがけないところにつながっているのかもしれません。

ただし、似ていることが、そのまま親戚の証拠になるわけではありません。可能性があるという段階です。

DPORは、窒素固定酵素ニトロゲナーゼと構造や性質が似ている。窒素固定と暗所でのクロロフィル形成には、進化的な近縁性がある可能性が指摘されている[1]。

窒素固定は、空気中の窒素を生物が使える形に変える反応で、クロロフィル合成とは一見まったく別の仕事である。それでも、暗所で働く還元酵素の部品がニトロゲナーゼに似ているという事実は、光を使わない合成の道具が古い時代の酵素から受け継がれた可能性を考える手がかりになる。一方で、なぜ多くの被子植物がDPORを失ったのか、またマツ類が暗所緑化でどんな利益を得ているのかについては、述べられるだけの資料がない。似ていることから近縁を推定する段階であり、結論ではない。この空白が、次に読む論文を探す理由にもなる。

6. たしかめて みよう、そして もっと しらべたく なったら

6. 豆とマツで確かめてみよう、原典で読んでみたいこと

6. 確かめる方法と、原典に当たるときの手がかり

おうちで できる 小さな じっけんが あります。まめの たね(かいわれの たねでも よいです)を、ぬらした キッチンペーパーの 上に のせて、二つの 入れものに わけます。一つは あかるい まどべに、もう 一つは かみの はこを かぶせて、くらい ところに おきます。

三、四日 たったら、くらべて みましょう。あかるい ほうは みどり、くらい ほうは しろっぽく なる ことが あります。はこを とって まどべに おくと、みどりに かわるかも しれません。

マツの は が みどりなのは、ひかりも つかうけれど、ひかりが なくても みどりを つくる しくみも もって いるから、かもしれません。

豆の芽が光の有無でどう変わるかは、家で確かめられます。豆の種かカイワレ大根の種を、湿らせたキッチンペーパーの上に置いて、2つの容器に分けます。1つは明るい窓辺に置き、もう1つは紙の箱をかぶせて暗くします。3、4日ほど観察して、色と背の高さを比べてみましょう。箱の中の芽は、白っぽく、ひょろっと伸びることが多いはずです。そのあと箱を外して窓辺に置くと、色の変化も見られます。

もっと調べたいときは、DPOR、暗所緑化、LPORといった言葉で探してみてください。マツの種類や温度による差は、原典の論文や総説に具体的な数字が載っているかもしれません。

豆の芽生えを光のある場所と暗い場所の両方で育てれば、黄化と緑化の差を自分で確かめられる。暗所で育てた豆の芽を窓辺に移し、時間がたつと色がどう変わるか観察できる。マツは種を入手しにくいので、まずは豆で試すのがよい。

原典に当たるなら、DPOR、dark chlorophyll synthesis、gymnosperm、light-independent といった英語の語で検索するとよい。特に、種ごと・温度ごとの差、ニトロゲナーゼとの関係、なぜ被子植物がDPORを失ったのかといった点は、これから調べる余地があり、新しい論文や総説を読む価値のある問いである。

参考さんこうにした情報源じょうほうげん

参考にした情報源

参考にした情報源

マツ類の暗所緑化に関する論文・紹介記事・学会要旨をもとに書きました。リンクは各資料の入り口です。

  1. Nature Asia ハイライト「暗所での緑化に働く酵素DPORとニトロゲナーゼ」https://www.natureasia.com/ja-jp/nature/highlights/24559 (マツの暗所緑化、DPORの役割、ニトロゲナーゼとの類似)
  2. Shinohara, Murakami & Fujita (1992) Plant Physiology 98(1):39-43 https://europepmc.org/ (クロマツ子葉の暗所でのクロロフィル合成。Europe PMCで書誌を検索)
  3. 日本植物生理学会年会 講演要旨集 2011 https://www.jstage.jst.go.jp/article/jspp/2011/0/2011_0_0685/_article/-char/ja (被子植物のLPORのみの利用と黄化)
  4. Schoefs & Franck (1998) Plant Physiology 118(4):1159-1168 https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC34732 (初期の針葉の暗所緑化、chlL・chlN・chlB遺伝子)
  5. Breznenová et al. (2010) Photosynthetica 48(1):16-22 https://ps.ueb.cas.cz/artkey/phs-201001-0004_light-independent-accumulation-of-essential-chlorophyll-biosynthesis-and-photosynthesis-related-proteins-in-pi.php (暗所育ちマツ実生でのタンパク質蓄積)

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