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ここにあるのは、だれかが実際に調べ、考え、作ってきたことを集めたメモです。気になったら、ページの下の「参考にした情報源」から、もとの本や記事、それを生み出した人たちに、直接ふれてみてください。このメモには書ききれないおもしろさが、そこにあります。

駅の ホームドアは、どうして ふえたの?

駅のホームドアは、なぜ増えたのか ── 最初の熱海駅から1,190駅へ

ホームドアが1,190駅に広がるまで ── 1974年の熱海駅から、扉位置・重さ・停車時間の壁へ

分野:技術

電車が 来る ときだけ ドアが ひらく、ホームの かべ。さいしょに ついたのは、ふつうの 電車の 駅では なく、新幹線しんかんせんの 熱海あたみ駅 でした。どうして その かべは、いま ぜんこくの 駅に ふえたのでしょう。ホームドアは、ホームから おちる じこや、電車に ぶつかる じこを へらす ための ものです[5]。電車ごとに ドアの ばしょが ちがう こと、おもくて おかねが かかる ことが じゃまでしたが、かるくて ひらく はばの ひろい あたらしい かたちが できて、つけられる 駅が ふえました[3]。この ノートでは、ふえる ときに じゃまを した ものと、それを こえた ほうほうが わかります。

ホームドアが日本で最初に付いたのは、通勤電車の駅ではなく、1974年の東海道新幹線・熱海あたみ駅だったとされています。2024年度末には、全国の鉄道で1,190駅にあります。ところが、壁を作るだけなら昔からできたはずです。なぜここまで急に増えたのでしょうか。ホームドアは、転落や列車との接触を減らすための、全利用者のための安全設備です[5]。ただ、電車ごとに扉の位置がちがうこと、重さと費用が大きいことが、設置をはばんでいました。軽くて開口の広い新しい型が実用化されて、設置できる駅が増えていきました[3][7]。この記事を読むと、増えるのをじゃました3つの壁と、それを越えた軽い型のホームドア、そして守るかわりに生まれた「電車が止まる時間」の悩みが分かります。

日本で最初のホームドアは、1974年1月に東海道新幹線の熱海あたみ駅へ設置された。通勤電車ではない。それが令和6年度末には、鉄道の1,190駅(2,830番線)にまで広がった。設置が進まなかった理由は、安全の必要性が低かったからではなく、車両の扉位置、重さと費用、工事時間という技術上の壁にある。転落や接触を減らす全利用者向けの安全設備として整備が求められるなか[5]、軽量で開口の広い昇降式などの新型が実用化され、設置できる駅が増えた[3][7]。本稿では、国土交通省の報告書と報道発表を中心に、その壁を軽量型がどう越えたか、そして停車時間という新しい課題が何かが分かるようにまとめる。

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1. さいしょの かべは どこに ついた?

1. 最初のホームドアが新幹線の熱海駅だった理由

1. 熱海駅に、通勤電車より先にホームドアが付いた理由

日本で さいしょに ホームドアが ついた ところは、1974年の 新幹線しんかんせん、熱海あたみ駅 だったと いわれます[4]。

この 駅は、土地の つごうで、止まらない 電車だけが とおる 線を 作れませんでした。だから 止まらない 電車が、ホームの はしの すぐ ちかくを、とても はやく とおります。電車も 人も ふえて、人が ホームに はいる のを おさえるのも むずかしく なり、1974ねんに かべが 作られました。

さいしょの かべは、そのころの 新幹線しんかんせんの ドアの 場所に 合わせて 作られました。のちに 新しい 電車が ふえると、2011年から 2012年に かけて、あたらしい 電車に 合う ものに とりかえられました[4]。

ここで ひとつ もんだいが 見えて きます。かべの ドアは、電車の ドアと ぴったり 合わないと いけません。では、ほかの 駅では どうなのでしょう。

ホームドアというと、満員の通勤電車の駅を思い浮かべるかもしれません。ところが、日本で最初の設置は1974年1月の東海道新幹線・熱海駅だったとされています[4]。

熱海駅は、土地の制約で、止まらない列車が通る線路(通過線)を設けられませんでした。そのため、通過する列車がホームの端のすぐ近くを高速で走ります。列車の本数も乗客も増えて、人がホームに入るのを制限するやり方が難しくなったので、1974年にホームドアが付けられたと説明されています[4]。

初代のホームドアは、当時の新幹線(0系)の扉の位置に合わせて作られました。のちに車両が変わり、2011〜2012年にN700系・700系用のものへ取り替えられています[4]。ホームドアは、電車のほうの扉の位置とぴったり合うことが前提の設備なのです。

この「扉の位置を合わせる」という条件が、あとでほかの駅に広げるときの大きな壁になります。

通勤電車の混雑する駅ではなく、なぜ新幹線の熱海駅が最初だったのか。理由は駅の構造にある。熱海駅は土地の制約で通過専用線を設けられず、停車しない列車がホームの端近くを高速で通る。そこへ列車本数と乗客が増え、入場制限では対応しにくくなったことが、1974年1月に日本で初めてホームドアを設置する動機になったと報じられている[4]。

初代は、当時の0系の扉位置に合わせた設計だった。その後、車両はN700系・700系へ替わった。それに合わせて、2011〜2012年にホームドアが取り替えられた[4]。最初の1台の時点で、「ホームドアは車両の扉に合わせて作る設備だ」という性質がすでに現れていたことになる。

この性質は、車両が多様な在来線へ広げる場面で、最大の制約になっていく。次の章では、まず何のために整備するのかを確かめ、そのあとで制約を見ていく。

2. かべは、だれを まもる ため?

2. ホームドアは、だれを守るための設備なのか

2. 転落するのは誰か:ホームドアの目的と、数字の読み方

ホームの かべは、目の 見えにくい 人だけを まもる ものでは ありません。ホームから おちたり、電車に ぶつかったり する ことを へらし、そのせいで 電車が おくれる ことも へらします。のる 人が あんしんする ことにも つながります[5]。

おちた 人の 数を 見ると、2019ねんどに ぜんぶで 2,887けん。そのうち 目の 見えにくい 人は 61けんで、ぜんたいの 2〜3%です。100人の うち 2〜3人ぐらいです[5]。おちた 人の 多くは、目の 見えにくい 人では ありませんでした。

だから この かべは、みんなの ための ものと 考えられて います。

ホームドアは、ホームでの転落や、列車との接触を減らすための設備です。事故が減れば、それに伴う列車の遅れも減ります。利用者の安心感を高めることにも役立つと、国土交通省の報告書は整理しています[5]。

数字を見ると、全利用者のホーム転落は、2014年度をピークに減り、2019年度で2,887件でした。そのうち視覚障害者の転落は2015年度をピークに、2019年度は61件で、割合は2〜3%にとどまります[5]。転落した人の多くは、視覚障害のない利用者でした。

ホームドアは、視覚障害者のための設備と思われがちです。けれども資料は、全利用者のための安全設備と位置づけています[5]。

ただし、この数字の減少がホームドアだけの成果とは書かれていません。足もとの点字ブロックなど、ほかの対策も同時に進んでいたからです[5]。

報告書は、ホームドアの効果を「転落・接触事故と、それに伴う列車遅延を減少させ、利用者の安心感の向上にも寄与する」と整理する[5]。ここで注目したいのは、遅延の減少が目的に入っている点だ。この後の章で、ホームドアが遅延の原因にもなりうる話につながる。

転落件数は、全利用者で2014年度がピーク、2019年度が2,887件。視覚障害者に限ると2015年度がピークで、2019年度は61件である。61÷2,887は約2.1%で、報告書の「2〜3%」と合う[5]。つまり転落する人の多くは視覚障害のない利用者であり、報告書は要因別に酔客が2019年度で約54%を占めるとも示している[5]。

ここから、ホームドアは特定の人のための福祉設備ではなく、全員のための安全設備として整備される、という考え方が読み取れる。ただし2014年度以降の減少を、ホームドアだけの効果とは書けない。報告書の数字には、ホームドア以外の対策(内方線付き点字ブロックなど)の影響が混ざっている[5]。

では、安全のために必要だと分かっているのに、なぜすぐ全部の駅に付かなかったのか。

3. かべの ドアが そろわない

3. 電車ごとに扉の位置がちがうという壁

3. 扉位置の不一致と、限られた工事時間

ホームの かべを つける とき、いちばん むずかしいのは、電車の ドアの 場所です。

ひとつの 駅に、いろいろな 電車が 来ます。会社が ちがうと、電車の 車両の 数も、ドアの 場所も ちがう ことが あります。おなじ 会社の 中でも、とっきゅうと ふつうで ドアの 場所が ちがう ことが あります[5]。

たとえば、こう 考えて みましょう。いろいろな はばの 本を、1つの すきまに ならべる ような ものです。すきまの 大きさを 1つに きめられません。ただし 本当は、本の かわりに、電車ごとに ドアの 場所が ちがう のが もんだいです。

しかも、工事が できるのは、さいごの 電車が 終わってから、はじめの 電車の てんけんが はじまる までの みじかい 時間だけです[5]。

駅に来る電車は、1種類ではありません。複数の鉄道会社が相互に乗り入れる路線では、会社ごとに車両の両数も扉の位置も違う電車が走ります。自社の線だけでも、特急と普通で扉の位置が違う例があります。国土交通省の報告書は、これがホームドア設置のハードルになっていると述べます[5]。

ホームドアの扉は、すべての電車の扉の位置に合わなければなりません。たとえるなら、いろいろな大きさの荷物を、決まった位置の窓口で受けとるようなものです。ただし本当は、窓口の位置が悪いのではなく、荷物のほうが毎回ちがう場所に来る、という状態です。

工事の時間も限られます。電車が走る時間にはできないので、終電のあと、始発前の点検が始まるまでの短い時間に行います[5]。

扉が合わない、工事の時間がない。この2つに、さらにお金の問題が重なります。

設置を阻んだ第一の要因は、車両の多様さである。相互直通運転では、会社ごとに編成両数や扉位置の異なる車両が同じホームに入る。さらに自社線内でも、特急と普通で扉位置が違う場合がある。報告書はこれを設置のハードルとして挙げている[5]。

ホームドアは、車両の扉と一対一で対応する設備である。そのため、扉位置が1パターンに決まらない路線では、「どの位置に開口を作るか」が決められない。1974年の熱海駅のように、新幹線という限られた車両だけが来る環境は、実は条件がもっともそろっていた例だと読める。

第二の要因は工事時間だ。電車の運行中は作業できず、終電後から始発前の点検までの限られた時間に行う[5]。一晩で終わる作業量には限界があり、駅の数を増やす速度にも響くと考えられる。

そして、もう一つの壁がお金と重さだ。

4. おもくて、おかねも かかる

4. 数億〜十数億円と、500キロの重さ

4. 初期費用・維持管理費と、1開口450〜500kgの自重

かべは、おもくて、おかねも かかります。

ひとつの 駅(上りと 下りの 2つの 線)に つけると、数おく円から 十数おく円 かかる ことが あります。ホームを じょうぶに する 工事も ふくみます。つけた あとも、1つの 線で 1年に 300まん円から 2,000まん円ぐらい かかると いわれます[5]。

ドアの ひとつぶんには、450〜500キロぐらいの おもさに たえる つくりが いります[5]。とても おもい ドアに なる、という ことです。

おもい かべは、ホームの ほうも じょうぶに しなければ いけません。

もう一つの壁は、費用です。報告書は、1駅(上り・下りの2線)あたり数億〜十数億円の初期費用がかかるとしています。これにはホームの補強工事の分も含まれます。設置したあとも、1線あたり年間300万〜2,000万円ほどの維持管理費がかかります[5]。

重さも問題です。従来型のホームドアは、1つの開口あたり450〜500kgほどの自重に耐える設計が求められます。盛土のホームなどは、この重さを支えるための補強に、とくにお金がかかるそうです[5]。

ホームドアを増やす道すじは、安全が大事かどうかの議論ではなく、軽く・安く・扉の位置の違いに合わせて作れる型をどう生み出すか、という技術の課題でした。

報告書によれば、初期費用は1駅(上下2線)あたり数億〜十数億円で、ホーム補強も含む。維持管理も1線あたり年間300万〜2,000万円前後と見込まれる[5]。年間の維持費は駅の規模や型で幅があるため、金額の大小は一つの目安にとどまる。

費用を押し上げる大きな要因の一つが重量である。従来型は、1開口あたり450〜500kg程度の自重に耐える構造が求められる。そのため盛土のホームなどでは、ホーム自体の補強に高いコストがかかる[5]。

つまり、「ホームドアの本体を軽くできれば、補強工事の費用も、工事の手間も減る」という因果が成り立つ。2013年以降の国の動きは、この方向を向いていた。

5. かるくして、ひろく あける

5. 軽くして、扉の位置が違っても対応できる型へ

5. 2013年の現地試験から軽量型の普及へ:戸袋をなくす発想

2013ねんの 3がつ、国は、あたらしい かべを ためして みると 知らせました。ドアの 場所が ちがっても つかえる もの、おかねを おさえられる ものを めざす ものです[6]。

その 一つが、うえに あがり、さがる しくみの かべです。ドアの よこに、ドアを しまう ばしょ(戸袋とぶくろ)が いりません。だから ドアの ひらく はばを 広く できます[3]。

おもさも、かるい かべは、これまでの かべの はんぶん ぐらいに できます[5]。ホームを じょうぶに する 工事が すくなくなり、トラックで はこべる ものも あります[3]。2015ねんの 3がつ28にちに、拝島はいじま駅(八高線)で ためしに つかいはじめました[3]。

そして 2019ねんの 7がつ、国の ほうこくは、かるい かべなどが つかえる ように なって きたと 書きました[7]。

転機の一つは、2013年3月に国土交通省が発表した現地試験です。扉位置の違いやコストの課題に対応できる新しい型として、戸袋移動型・昇降ロープ式・昇降バー式を試すもので、補助金で支援されました[6]。この発表は、導入を決めたものではない、と断っています[6]。

昇降式のよさは、戸袋とぶくろが要らないことです。戸袋とは、開いた扉をしまう場所のこと。それがなければ、扉の開く部分の幅を広げられるので、扉の位置が違う電車にも対応しやすくなります[3]。重さのほうは、軽量型で従来型の半分程度におさえられるとされ、補強工事が少なくて済み、トラックで運び込めるのでコストを抑えられます[5][3]。2015年3月28日には、JR東日本の八高線・拝島はいじま駅で試行導入されました[3]。

2019年7月の報告書は、軽量型ホームドアなど、設置費用やホーム補強費を下げる新しい型が実用化されつつある、と書きました。そして、番線ごとに計画を立てて整備することを求めました[7]。

軽くし、開口を広げた型ができたことで、設置できる駅が増えていきました。

2013年3月、国土交通省は戸袋移動型・昇降ロープ式・昇降バー式の現地試験を発表した。目的は、車両扉位置の相違やコスト低減への対応である。同省は、導入を決めたものではないと断っている[6]。

では、昇降式がなぜ有利なのか。要点は戸袋の有無だ。従来型は開いた扉を収める戸袋が必要で、そのぶん固定部分が大きく重くなる。昇降式は戸袋が不要なので、開口を広くとれる。開口が広ければ、扉位置の違う車両にも対応しやすくなる[3]。重量は、軽量型で従来型の半分程度とされ、補強工事が少なく、トラックで搬入できるものもある[5][3]。2015年3月28日、JR東日本の八高線・拝島はいじま駅で試行導入された。視覚障害者団体から課題の指摘もあった[3]。

この流れは政策にも表れた。2019年7月の報告書は、軽量型など費用や補強費を下げる新型が実用化されつつあるとし、番線単位での計画的整備を求めた。10万人以上の駅でも、当時の整備は353番線で、全体1,219番線にとどまっていたからだ[7]。

では、その後、本当に増えたのか。

6. どれだけ ふえた?

6. 数字で見ると、どれくらい増えたのか

6. 設置数の推移:番線・年度の単位をそろえて読む

駅の かずを 見て みましょう。2007ねんの 3がつ ごろは 318えき でした。2014ねんの 9がつごろには 593えき で、およそ 1.9ばいです[3]。

その あと、2016ねんで 686えき、2020ねんどの おわりには 943えき[2]。2024ねんどの おわりには、1,190えき に なりました[1]。

1日に 10まん人 いじょうが つかう 駅では、かべが ある ばんせんは、2019ねん7がつの 353ばんせんから、2024ねんどの おわりの 621ばんせんに ふえました[7][1]。およそ 1.8ばいです。

数字を並べてみましょう。ただし、年と年度、駅数と番線数は別の単位なので、混ぜないことが大切です。番線とは、線路ごとのホームの面のことです。

従来型のホームドアは、2007年3月末に318駅、2014年9月末に593駅でした。約1.9倍です[3]。その後は、内閣府の白書の表記どおり、2016年(平成28年)に686駅、2020年度末に943駅[2]、国土交通省の資料では2024年度末に1,190駅(2,830番線)となりました[1]。

利用者が1日10万人以上の駅は、2019年7月の報告書の時点で353番線でした[7]。2024年度末には621番線で、約1.8倍です[1]。国の目標は、令和3〜7年度で全体3,000番線、10万人以上の駅で800番線です[1]。

この比べ方は、ちがう資料の数字を並べたものです。集計の範囲が少し違う可能性があるため、大づかみな見方として読んでください。

設置数は、資料ごとに単位が違う。駅数と番線数は別物で、年と年度も混在する。ここでは、使った単位を明記して並べる。

従来型の設置駅数は、2007年3月末の318駅から2014年9月末の593駅へ、約1.9倍になった[3]。その後は、白書の表記で、2016年(平成28年)686駅、2017年725駅、2018年783駅、2019年(令和元年)858駅、2020年度末943駅と推移した(2020年だけ年度末で、年の値とは基準時点が異なる)[2]。令和6年度末には、1,190駅・2,830番線に達している[1]。2020年度末の2,192番線[2]と比べると、番線数は約1.3倍である。

10万人以上の駅に限ると、2019年7月時点で353番線[7]、令和6年度末で621番線[1]で、約1.8倍だ。目標は令和3〜7年度で全体3,000番線、10万人以上駅で800番線である。令和6年度末の達成度は、全体で約94%(2,830÷3,000)、10万人以上駅で約78%(621÷800)となる[1]。

ただし、異なる資料の数字を並べた概算であり、集計範囲の違いがありうる点には注意が要る。増加の原因を軽量型だけに帰することもできない。資料が示すのは、課題への対応が進み、設置数が増えたという事実までだ。

7. かべの ぶん、電車は すこし 長く 止まる

7. 守るかわりに、電車は少し長く止まる

7. 停車時間という新しいコスト:ダイヤへの影響

かべが ふえた あとに、あたらしい なやみも 出て きました。

電車が 止まって ドアが ひらく とき、かべの ドアも ひらき、とじます。その ぶん、止まっている 時間が すこし のびる ことが あります。人が たくさん 乗る あさの ように、電車が つづけて 来る 時間は、おくれが つぎの 電車に うつりやすく なると いわれます。

大阪おおさかの 地下鉄の 千日前線では、かべを つける 工事の あいだ、ダイヤが よく みだれました。そこで ダイヤを 直して、止まる 時間を 長く しました。そのかわり、はしから はしまで かかる 時間は のびました[8]。

ホームドアで 安全を 高めると、止まる 時間や ダイヤの 調整が いる ことが あります。そこを どう つり合わせるかが、これからの 話です。

ホームドアを付けると、扉を開け閉めする時間が加わります。そのため停車時間が延び、朝のラッシュのように電車の間隔が詰まった時間帯では、遅れが後ろの列車へ伝わりやすくなるといわれています。

実際の例として、旧・大阪市営地下鉄の千日前線では、ホームドアの整備中にダイヤの乱れが慢性的に起きました。そこでダイヤ改正を行い、停車時間を延ばして乗り降りにゆとりを持たせています。そのかわり、全線の所要時間は延びました[8]。同じように、御堂筋線の2駅や横浜市営地下鉄のブルーラインでも、停車時間にゆとりを持たせたと紹介されています[8]。

安全のための設備が、別のところで時間を使う。この両方を見ながら、鉄道会社はダイヤを作っているのです。

ここで紹介した例は、報道記事に基づく一部の事例です。どの路線でも同じことが起きる、という意味ではありません。

安全を高めると、別の場所に負担が出る。ホームドアの場合、それは停車時間である。ホームドアは電車の扉の開閉に合わせて動くため、停車時間に扉の開閉の時間が加わる。ラッシュ時のように運行間隔が詰まると、遅れが後続列車へ伝わりやすくなると考えられる。

実例として、旧・大阪市営地下鉄の千日前線では、ホームドア整備中にダイヤの乱れが慢性的に発生し、ダイヤ改正で停車時間を延ばして乗降にゆとりを持たせた。その代償として、全線の所要時間が延びた[8]。御堂筋線の2駅や横浜市営地下鉄ブルーラインでも、停車時間にゆとりを持たせたという[8]。

なお、ここで引いた記事は鉄道ライターによる解説で、時間の具体的な増減は書かれていない。そのため、停車時間が何秒延びるかは本稿では述べない。遅延の減少(第2章)と、停車時間の増加(本章)は、同じ設備が持つ別々の側面であり、どちらも資料で言えるのはここまでである。

安全と遅れのバランスは、路線によって違う形で現れる。自分の駅で確かめてみる手がかりが、次の章にある。

8. 駅で、かべの ドアを 見くらべて みよう

8. ホームドアの「ずれ」を、自分の駅で探す

8. 自分の駅で確かめる:扉位置・開口幅・停車の合図

ホームドアの ある 駅で、見て みましょう。ホームの はしの ほうには ちかづきません。きいろい せんの うしろから 見ます。

電車が 止まった とき、電車の ドアと、かべの ドアが ぴったり 合って いますか。かべの ドアの はばは、ふつうの 電車の ドアより 広いでしょうか。上に あがる かたちの かべなら、ドアの よこに、ドアを しまう 場所が あるか、見て みましょう。

ほかの 駅の かべと くらべると、かたちの ちがいが 見えて きます。

もっと 知りたい ときは、国土交通省こくどこうつうしょうの ホームドアの ページが 手がかりに なります[1]。

ホームドアのある駅で、次の3つを観察してみましょう。ホームの端には近づかず、黄色い線の内側から見てください。

まず、電車が止まったとき、電車の扉とホームドアの扉の位置が合っているかどうか。つぎに、ホームドアの開口が、電車の扉より広いか。最後に、開閉のとき、扉の横に戸袋のような出っぱりがあるか、それとも上下に動く型か。

ほかの駅や別の路線のホームドアと比べると、形の違いが見えます。ただし、見た目だけで型や設置の理由は決められません。気になったら、下の資料で確かめてみてください。

数字や制度を確かめたいときは、国土交通省の整備状況のページ[1]や、整備に関する報告書[5]が出発点になります。

自分の使う駅のホームドアを、次の観点で確かめられる。ホームの端には近づかず、黄色い線の内側から行う。

第一に、停車した電車の扉位置とホームドアの開口が、どの程度ずれているか。第二に、開口の幅が電車の扉より広いか。広ければ昇降式かもしれないが、見た目だけでは型も設置理由も決められないので、気になったら資料や各社の発表で確かめる。第三に、ホームドアの型が駅や番線で違うか。違うなら、整備の時期や車両の違いを反映している可能性がある(断定はできない)。

数字を追う資料としては、国土交通省の「鉄道:バリアフリー関連事業」[1]が整備状況の入り口になり、「ホームドア整備に関するWG報告書」[5]が費用・扉位置・目的を一つにまとめている。ただし、取り上げたのは公開された資料の一部で、各社の最新の計画は鉄道会社の公式発表で確かめる必要がある。

しらべた もとの じょうほう

参考にした情報源

参考にした情報源と、その使い方

公的機関の資料を中心に、報道記事を補助に使いました。報道記事の数字は、各記事が示す時点のものです。

  1. 国土交通省「鉄道:バリアフリー関連事業」 https://www.mlit.go.jp/tetudo/tetudo_tk6_000008.html (令和6年度末の整備状況・目標)
  2. 内閣府「令和4年交通安全白書 駅ホームにおける安全対策」 https://www8.cao.go.jp/koutu/taisaku/r04kou_haku/zenbun/genkyo/topics/topic_09.html (設置駅数の推移)
  3. 乗りものニュース「昇降式ホーム柵」の記事 https://trafficnews.jp/post/39849/ (従来型の駅数の推移・昇降式の特徴・拝島駅)
  4. 乗りものニュース「東海道新幹線のホームドア」の記事 https://trafficnews.jp/post/36660/2 (熱海駅の最初の設置)
  5. 国土交通省「ホームドア整備に関するWG報告書」(令和元年) https://www.mlit.go.jp/tetudo/content/001380214.pdf (目的・転落件数・費用・扉位置)
  6. 国土交通省 報道発表(平成25年3月5日) https://www.mlit.go.jp/report/press/tetsudo07_hh_000042.html (新型ホームドアの現地試験)
  7. 国土交通省 報道発表(令和元年7月31日) https://www.mlit.go.jp/report/press/tetsudo04_hh_000078.html (軽量型の実用化・10万人以上駅の整備状況)
  8. DIME 鉄道ライターの記事 https://dime.jp/genre/586048/2/ (千日前線ほかのダイヤの例)

なおした ところ

更新履歴

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