1. おさらを たたくと、どうして 音が ちがうの?
1. たたくと、辞典では鈍い音と澄んだ音に分かれるとされる
1. 辞典が書く打音の違い ── 鈍い音の陶器、金属音の磁器
だいどころで、陶器の ちゃわんと、磁器の おさらを ならべて みます。ふたつを ゆびで コツンと たたくと、音が ちがうことが あります。
じしょに よると、陶器は たたくと にぶい 音が します[1]。磁器は、うつと 金ぞくの ような 音が するそうです[2]。
おなじ しょっきなのに、どうして こんなに ちがうのでしょう。じしょは、陶器の 中みが、小さな あなの 多い つくりだからと 書いて います[1]。では、見た目では わかるのでしょうか。
2. ひかりに かざすと、すける おさらが ある?
2. 光にかざすと、透ける磁器と透けない陶器
2. 透光性と吸水性 ── 薄ければ透けるという条件つきの性質
つぎは、おさらを あかるい まどに かざして みます。陶器は、光を とおさない ものと されて います[1]。
磁器は、白くて、うすければ 光が すけます[2]。ただし、ぶあつい 磁器は すけません。すべての 磁器が すける わけでは ありません。
もうひとつ。磁器は 水を すいません。陶器は 少し すいます[1][2]。
音も 光も 水も、ちがいが ありました。では この ちがいは、なにから 生まれるのでしょう。
3. 土を こねるか、石の こなを こねるか
3. 有田の例では、陶器は土、磁器は石の粉で作る
3. 原料の違い ── 陶土(粘土)と陶石、そして炻器という中間
ありたと いう まちで うまれる 陶器と 磁器の せつめいが あります[3]。
陶器は、やわらかい 土(ねんど)を こねて つくります。磁器は、「とうせき」と いう 石を こなに して、こねて つくります[3]。
ただし、じしょでは 磁器の もとに、ねんども 入って います[2]。「石だけ」と おぼえると、まちがいに なります。
やきものを ひろく まとめて 「陶磁器」と よびます。その 中には、陶器と 磁器のほかに、土器と、あいだの なかまも います[4]。
では、素地の違いは何から生まれるのでしょう。有田の窯元を紹介する解説によると、陶器の材料は陶土(粘土)で、磁器の材料は陶石という石を粉にしたものです。どちらも練ってから形を作ると説明されています[3]。
辞典のほうは、もう少し広く書いています。マイペディアは、磁器を「良質の粘土、石英、長石、陶石などを成形し、高温で十分焼き締めたもの」とします[2]。粘土も入っているので、「土か石か」は、石の粉が中心になる有田の例を、わかりやすく言った表現と受けとめるのが安全です。
陶器や磁器などをまとめた呼び名が「陶磁器」で、デジタル大辞泉は、素地の質や焼く温度で土器・陶器・炻器(せっき)・磁器に大きく分けられるとしています[4]。陶器と磁器の間には、中間の炻器もあります。
原料が違うと、焼いたときの焼き締まり方も変わります。その違いを、次は焼く温度の数字を目安に見ていきます。
有田の紹介では、陶器は陶土(粘土)を練って、磁器は陶石という石の粉を練って成形すると説明される[3]。一方、マイペディアは磁器を、良質の粘土・石英・長石・陶石などを成形し、1300〜1450℃で溶化するまで焼き締めたものとする[2]。つまり「土か石か」は、石の粉が主役の有田の事例を端的に述べたもので、辞典の定義では粘土も原料に含まれる。二つの出典の対象の広さが違うので、どちらかが誤りというわけではない。陶器と磁器の厳密な境界は、原料だけでは決まらず、一定した基準があるわけでもない。
分類の全体像はデジタル大辞泉が示す。陶磁器は、粘土に長石・石英などの粉末を混ぜて成形・焼成した製品の総称で、素地の質や焼成温度により、土器・陶器・炻器(せっき)・磁器に大別される[4]。陶器の位置は、土器よりかたく磁器よりやわらかい、中間である[1]。
原料が違うと焼き締まり方が変わる。次章では、焼成温度の数字を目安に、焼くときに素地の中で起きる変化を見る。
4. やく 温度の すうじが、ばらばらなのは なぜ?
4. 焼く温度の数字が資料ごとに違うのはなぜか
4. 焼成温度の幅 ── 境目を決めるのは温度の線ではなく素地の変化
磁器は とても たかい 温度で 焼きます。マイペディアでは 1300度から 1450度、ありたの せつめいでは 1300度から 1400度です[2][3]。
陶器は、ありたの せつめいで 800度から 1200度です[3]。
すうじが すこし ずつ ちがうので、温度は「めやす」として 見ます。
たいせつなのは、高い 温度で 石が とけて、ガラスのように なる ことです[3]。すきまが うまり、かたくて 水を すわない 磁器に なります。
焼く温度を調べると、資料によって数字が少しずつ違います。磁器は、マイペディアでは1300〜1450℃[2]、有田の解説では1300〜1400℃です[3]。陶器は、有田の解説で800〜1200℃とされています[3]。
幅の取り方が出典ごとに違うので、「陶器は何度、磁器は何度」と一つの数字にはできません。数字は目安で、境目が温度計の目盛りの一本線で決まるわけではないことが分かります。
有田の解説は、磁器が高温で陶石が溶けてガラス化が進み、陶器より緻密でかたくなると説明します[3]。辞典の定義も、磁器は「溶化するまで十分焼き締める」と、同じ状態を指しています[2]。区別のものさしは、温度そのものより、素地がガラスのように詰まったかどうかにありそうです。
音、光、水の三つの違いも、この詰まり方の違いが関係していると考えられます。
焼成温度は、磁器でマイペディアが1300〜1450℃[2]、有田の解説が1300〜1400℃[3]と、上限が50℃違う。陶器は有田の解説で800〜1200℃である[3]。同じ1300℃台でも、出典が違えば幅が違う。さらに有田の解説は販売サイトのスタッフによる記事で、辞典との差は定義の違いか目安の幅の違いかを、今回の材料だけでは決められない。
そのため、温度を境界の定義にするのは危うい。有田の例では陶器の上限1200℃と磁器の下限1300℃の間に100℃の隙間があるが、辞典の側は温度の上下限を定義に置かず、素地が溶化するまで焼き締まったかどうかで磁器を定義している[2]。
有田の解説は、高温で陶石が溶けてガラス化が進み、陶器より緻密でかたい仕上がりになると述べる[3]。この「ガラス化して詰まった素地」を軸にすると、第1・第2章の音、透光性、吸水性が、一本の筋でつながるように見える。ただしガラス化の化学的な詳細までは、この材料では扱えない。
ここまでが現在の違いである。では、日本でこの磁器が最初に焼かれたのはどこで、なぜその土地だったのか。
5. 日本の 磁器は、石が 見つかって はじまった
5. 日本の磁器は、有田で石が見つかって始まったと伝わる
5. 有田・泉山の陶石 ── 陶器の産地から磁器の産地へ
日本で さいしょに 磁器が 焼かれたのは、有田と いわれて います[8]。
「石が ないと、磁器は つくれない」。そこで、石を さがした ことが はじまりです。400年あまり 前に、朝鮮から きた 陶工の 李参平さんたちが、泉山で 石を 見つけたと 伝えられて います[7]。
ただし、ほんとうに この 人が さいしょかは、「伝え」の はなしです。1616年に 窯を ひらいたと されて います[8]。
ありたでは、それより 前から 陶器が つくられて いました[8]。土の やきものの まちが、石の やきものの まちに かわった のです。
日本最初の磁器の話は、一つの石の発見から始まります。17世紀初頭に、朝鮮から来た陶工の李参平らが有田の泉山で陶石を見つけ、有田の磁器づくりが始まったと伝えられています[7]。
和樂webの記事は、李参平が泉山で窯を開いたのは元和2年(1616年)のことで、この年が日本で初めて磁器が焼かれた年とされると紹介します[8]。ただ、これは「されている」「伝えられている」という言い方です。年や人物を確実なものとして言い切れる資料は、今回の材料にはありません。
面白いのは、有田がもともと陶器の産地だった点です[8]。土の焼き物をつくる町が、石を手に入れて、磁器の町に広がりました。マイペディアも、磁器づくりの始まりを、中国で唐の末、朝鮮では11〜12世紀、日本では17世紀以降の有田焼が最初と記しています[2]。
その泉山の石の産地は、今どうなっているのでしょうか。
日本の磁器は、17世紀初頭、李参平らが有田の泉山で陶石を発見したことから始まると「伝えられている」[7]。和樂webは、李参平が泉山に窯を開いた元和2年(1616年)を、日本で初めて磁器が焼かれた年とし、有田を国産磁器発祥の地とする。ただし「とされる」年である[8]。
注目点は、有田がもともと陶器の産地だったことである[8]。つまり、窯も職人も土の焼き物はあった。磁器の主原料は陶石である。その陶石の発見が、有田で磁器生産が始まるきっかけの一つになったと伝えられている。なお朝鮮から来た陶工という背景には、ここでは深く立ち入らない。
辞典は磁器の歴史を、中国で唐末、朝鮮で11〜12世紀、日本で17世紀以降(有田焼が最初)と記す[2]。ただし日本の「最初」は辞典の記述である。
では、石が採れた泉山は、いまどう扱われているのか。
6. 石を とった やまは、いま どうなって いる?
6. 泉山の石の産地は、国の史跡になっている
6. 肥前磁器窯跡 ── 1980年に国の史跡に指定された泉山磁石場跡
石を とった ところは、泉山と いう 山の ちかくに あり、「磁石場あと」と よばれます[9]。
この あとは、むかしの 窯の あとと いっしょに、1980年に 国の 大事な ばしょに きめられました[9]。国が ずっと まもる ことに した、という ことです。
ぶんかちょうの データベースでは、「磁器の もとの 石を とどけた ところ」と 書かれて います[9]。石の とれた 場所は、いまも 史跡として のこって います。
泉山の石の産地は、文化庁の「国指定文化財等データベース」に載っています。江戸時代の初めに生産を始めた初期伊万里の窯跡のうち保存のよい五つと、磁器の原材料供給地である泉山磁石場跡が、「肥前磁器窯跡」として1980年3月24日に国の史跡に指定されました[9]。
国が守る史跡として、「磁器の原材料供給地」が、窯跡と並んで名を連ねている。石の産地そのものが、磁器づくりを語る場所として扱われていることになります。
石が見つかった話は、伝承だけでなく、場所と文化財の記録にもつながっています。では、磁器づくりに欠かせない原料の名は、どこから来たのでしょうか。
泉山の石の産地は、文化庁の国指定文化財等データベースに、史跡「肥前磁器窯跡」の一部として載る。江戸時代初頭に生産を始めた初期伊万里の窯跡のうち、保存状態のよい天狗谷・山辺田・原明・百間・不動山の5窯跡と、磁器の原材料供給地である泉山磁石場跡が、1980年3月24日に指定された[9]。
ここで確かめられるのは、窯跡と原料の産地が、一つのまとまりとして国の史跡になっている事実である。指定の根拠は、伝承そのものではなく、初期の窯と石の産地という遺跡の価値にある。「李参平が最初」という点は伝承の範囲だが、磁器の原料の供給地が有田にあったことは、公的な記録からも読み取れる。
では、磁器の原料の名は、どこから来たのか。
7. 「カオリン」は、中国の 山の 名前だった
7. 「カオリン」は、中国の山の名前から来た
7. カオリンの語源 ── 景徳鎮の高嶺とセラミックスの語源
やきものの もとの 名前に、「カオリン」が あります。白い ねんどの なかまで、陶磁器の もとに なります[6]。
この 名前は、中国の 景徳鎮と いう まちの ちかくの、「高嶺」という 山から 来て います[6]。
「セラミックス」という 言葉も あります。むかしの ギリシャの 言葉で、ねんどを やいた もの、という 意味が もとです[5]。
やきものの 名前は、国を こえて つながって いたのです。
8. だいどころで、おさらの ひかりと うらを 見くらべよう
8. 食器棚で、手ざわりと光の通り方と底の産地表示をくらべる
8. 食器棚で確かめる ── 自分の家の食器で、辞典の定義を試す
おうちの おさらや ちゃわんを、2まい えらびます。ひとつは ざらっと した ものを、もうひとつは つるつるで 白い ものを。
まず、2まいの おさらを 手に とって、さわりごこちを くらべます。どちらが ざらざら、つるつるか、しずかに なでて みます。おとすと われるので、テーブルの 上で そっと もって ください。
つぎに、まどの 光に かざして みます。うすい 磁器は、すこし あかるく 見えるかも しれません。かならず すけるわけでは ありません。
うらを 見ると、「有田」など、うまれた まちの 名前が 書いて あるかも しれません。ほかの おさらと、書いて ある 名前を 見くらべて みましょう。
食器棚から、手ざわりの違う食器を2枚選んでみましょう。テーブルの上で手に取り、表面や縁のざらつき、なめらかさを、そっとなでて比べます。落とすと割れるので、低い位置で持ちます。
次に、窓の光にかざしてみます。薄手の磁器なら、うっすら明るく見えるかもしれません。厚い磁器は透けません[2]。見えなくても、磁器ではないとは限りません。
見分けがつかない食器も、あるはずです。辞典の定義は典型の姿で、現場ではもっと多くの種類が混じっているのかもしれません。底の裏に産地名が書いてあれば、有田の磁器の話と照らして、どんな土地の焼き物か想像してみるのも手です。窯元や産地の表示が違う食器を並べて見比べると、同じ磁器や陶器でも産地ごとに違いがありそうだと気づきます。
泉山磁石場跡の国の史跡指定は、文化庁のデータベース[9]にも載っています。
家にある食器を使って、辞典の定義を自分の目と手で確かめられる。テーブルの上で食器を手に取って手ざわりを比べ、窓の光にかざして透け方を見て、底の産地表示も読む。陶器は光を通さず、磁器は薄ければ透けるという定義と合うかどうか[1][2]。落として割らないよう、低い位置で扱う。
結果が定義と合わなくても、間違いとは限らない。辞典の定義は典型の姿で、厚みや形、釉薬、焼き方で、実際の音や透け方は変わりうる。炻器のような中間の焼き物もある[4]。見分けにくさ自体が、境目が温度の線でないことの現れとも読める。
資料の読みどころは三つある。①デジタル大辞泉の陶器と陶磁器の項[1][4]は、素地の質と焼成温度による分類を示す。②マイペディアと日本大百科全書の磁器の項[2]は、磁器の定義と、肉厚という条件を示す。③泉山磁石場跡は、国指定文化財等データベース[9]で、窯跡との関係が読める。家の食器の底の産地表示を有田の話と比べ、光の通り方も見て、どんな食器なのかを自分なりに考えてみるのもよい。
しらべた もとの じょうほう
参考にした情報源
参考にした情報源と、その使い方
出典について:辞典・百科事典、有田に関する解説記事、文化庁のデータベース、博物館の展示解説を使った。何に使ったかは、それぞれの項目の最後に書いている。
- デジタル大辞泉・食器・調理器具がわかる辞典「陶器」(コトバンク)。https://kotobank.jp/word/%E9%99%B6%E5%99%A8 (陶器の定義、吸水性、音について。辞典)
- 百科事典マイペディア・日本大百科全書「磁器」(コトバンク)。https://kotobank.jp/word/%E7%A3%81%E5%99%A8 (磁器の定義、原料、焼成温度、透光性の条件、歴史について。事典)
- ふるなび「陶器と磁器の違い」(スタッフブログ)。https://furunavi.jp/discovery/staff_blog/202503-pottery_porcelain/ (有田の事例での原料の違いと温度の目安について。販売サイトの解説記事)
- デジタル大辞泉「陶磁器」(コトバンク)。https://kotobank.jp/word/%E9%99%B6%E7%A3%81%E5%99%A8-103618 (陶磁器の分類について。辞典)
- 名古屋市科学館 展示解説「セラミックス」。https://www.ncsm.city.nagoya.jp/exhibit_files/pdf/S513.pdf (セラミックスの語源について。博物館の展示解説)
- デジタル大辞泉「カオリン」(コトバンク)。https://kotobank.jp/word/%E3%82%AB%E3%82%AA%E3%83%AA%E3%83%B3 (カオリンの名前の由来について。辞典)
- jeepe.jp「泉山磁石場」の解説。https://www.jeepe.jp/ja/articles/izumiyama-porcelain-quarry-2670 (有田の磁器の始まりの伝承について。解説記事)
- 和樂web「有田焼」。https://intojapanwaraku.com/craft/980/ (1616年とされる年と、有田が陶器の産地だったことについて。解説記事)
- 文化庁 国指定文化財等データベース「肥前磁器窯跡」。https://online.bunka.go.jp/db/heritages/detail/163981 (泉山磁石場跡の史跡指定について。公的機関のデータベース)
なおした ところ
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