1. おにぎりは、どこで 食べるかで ぜいが ちがう
1. 同じおにぎりでも「店内か持ち帰りか」で税率が変わる
1. 税率を決めるのは食品の種類ではなく、サービスか販売か
コンビニで おにぎりを 買うと、店の 人が 聞く ことが あります。「店で 食べますか。持ち帰りますか。」
持ち帰りなら 8%、店の 中で 食べるなら 10%です。しょくじを する ための テーブルや いすが ある 場所で 食べさせて もらうと、「外食」と いう サービスに なるからです[1]。
コンビニの 休けいスペースでも、そこで 食べるなら 10%です。店は、お客さんに 聞いて 決めます[2]。
ただし、これは 2019年から 今の きまりの はなしです。きまりは、かわる ことも あります。
お昼にコンビニでおにぎりを買うと、「店内でお召し上がりですか」と聞かれることがあります。これは、答えによって税率が変わるからです。
持ち帰りと出前は食品の販売なので8%です。一方、レストランやフードコートの食事のように、テーブルや椅子、カウンターなどの設備がある場所で飲食させるサービスは「外食」とされ、10%になります[1]。
コンビニやスーパーのイートインスペースや休憩スペースも、そこで飲食するなら外食の扱いです。店は「店内で食べるか、持ち帰るか」をお客さんに確かめて、税率を決めます[2]。
つまり、決め手は食べ物の種類ではなく、「食べさせるサービスか、物を売るのか」です。では、そもそも食べ物の税だけを軽くしようと考えたのは、なぜでしょうか。
国税庁のQ&Aによれば、軽減税率8%の対象になる飲食料品の譲渡には、いわゆる外食とケータリングは含まれない[1]。外食とは、飲食店業などを営む者が、テーブル・椅子・カウンターなどの設備のある場所で飲食させる役務の提供を指し、レストランやフードコートでの食事が例になる。テイクアウトや出前は食品の販売なので8%である[1]。
この「設備のある場所」には、スーパーやコンビニの休憩スペース・イートインも含まれうる。そのため店は、顧客に店内飲食か持ち帰りかの意思を確認して税率を判定する[2]。ここでは、同じ食品でも提供のしかたで税率が分かれる。では、そもそも飲食料品だけを軽くする発想は、どこから出てきたのか。
2. どうして 食べ物の ぜいきんを 軽く したいの?
2. 食べ物の税を軽くしたかった理由は「逆進性」
2. 逆進性という問題 ── 所得が少ない家計ほど税負担率が高くなる
食べ物は、どの おうちでも 毎日 いります。ぜいたくを して へらす わけには いきません。
たとえば、つかえる お金が 少ない おうちを 考えます。つかう お金の 中で 食べ物に 回す 分は、大きく なりやすいのです。すると、つかう お金に しめる ぜいきんの 分も 大きく なります。これを「ぎゃくしんせい」と いいます[3]。
2012年に 国が まとめた ほうしんにも、この もんだいが 書かれました。ただし、そこで 考えられていた 手あては、食べ物を 安く する ことでは ありませんでした。
消費税は、買い物をした人が同じ率で払います。ところが、所得の少ない家計ほど、食料品を含む消費支出の割合が高くなります。そのため、収入に対する消費税の負担率も高くなります。これが「逆進性」と呼ばれる問題です[3]。
2012年2月に閣議決定された「社会保障・税一体改革大綱」は、この逆進性を踏まえた対策を挙げました。ただし、そこで挙げられたのは、給付付き税額控除など、お金を給付や控除で戻す仕組みの検討と、それまでの暫定的な「簡素な給付措置」でした。この時点では、軽減税率は前に出ていません[3]。
同じ問題への手あてには、いくつかの道がありました。では、そのうちのどれが、最後に選ばれたのでしょうか。
3. お金を もどす あんも あった。でも 決まったのは?
3. お金を戻す案やポイント案もあった。決まったのは「その場で8%」
3. 給付・ポイント還付案と軽減税率 ── 2012年から2019年までの道すじ
お金を あとで もどす やり方も 考えられました。2015年には、買った 分の ぜいを ポイントで もどす あんも 出ました。でも、はんたいの 声が 多く、つかわれませんでした[4]。
2015年12月に、よとうが 決めました。「お酒と 外食を のぞく 食べ物と、新聞は 8%に する」。きまりは 2016年に ほうりつに なりました[4][5]。
はじまりは、2019年10月1日です。ぜいが 10%に あがる のと 同時でした。さいしょの よていは 2017年4月でしたが、ずれました[5]。
お金を戻す方法には、給付に近い考え方で、買い物の軽減分を後から戻す案もありました。東京財団の経緯整理によると、2015年9月には、財務省が「日本型軽減税率制度」として、対象品目の買い物でかかった消費税の軽減分を、ポイントで消費者に戻す案を示しました。しかし、マイナンバーカードの利用などをめぐって反対が多く、採用されませんでした[4]。
2015年12月の与党合意と税制改正大綱で、対象は「酒類と外食を除く飲食料品」と、定期購読契約の週2回以上発行される新聞で、税率は8%と決まりました[4]。軽減税率制度を決める法律は、2016年3月29日に成立しました[5]。
始まる日は、当初2017年4月1日の予定でした。2016年11月に、消費税率が10%に上がる2019年10月1日へ変更され、軽減税率はその日から始まりました[5]。
こうして、「外食とお酒を除く」という線が実際に引かれました。この線のせいで、イートインのような場面で、同じ食べ物の税率が分かれることになります。
当初、再分配の主な手段は給付だった。ポイント還付案も、買い物の軽減分を後から戻す点で、給付に近い考え方といえる。東京財団の経緯整理によると、2015年9月、財務省は「日本型軽減税率制度」として、対象品目の購入に係る軽減分の消費税相当額をポイントで消費者に還付する案を示した。しかしマイナンバーカードの利用などをめぐり反対意見が多く、採用されなかった[4]。
こうして残った道が、店頭の税率そのものを分ける方式だった。2015年12月の与党合意と与党税制改正大綱は、対象を食品表示基準にいう生鮮食品と加工食品(酒類と外食を除く)、および定期購読契約が締結された週2回以上発行の新聞とし、税率を8%とした[4]。法改正は2016年3月29日に成立し[5]、実施時期は当初の2017年4月1日から、2016年11月に2019年10月1日へ変更された[5]。
外食を除いた理由については、ここで使った資料に与党側の説明はない。確実なのは、除外が最終的な線引きの一部として明文化されたことである。
4. おもちゃ つきの おかしは、食べ物?
4. おもちゃ付きのお菓子と新聞 ── 線引きの細かい条件
4. 一体資産と新聞 ── 線引きは「両方の条件」で決まる
おもちゃが ついた おかしを 考えて みましょう。食べ物と おもちゃが 1つの ねだんで 売られて います。
ぜんぶで ぜいぬき 1万円 いかで、食べ物の 分の ねだんが 3ぶんの 2 いじょうなら、ぜんぶが 8%です[2]。ふたつの じょうけんが そろって、はじめて そう なります。
新聞も 同じです。毎日 とどく 新聞は 8%ですが、駅で 1部 買う 新聞は 10%です[1]。
食品と食品以外が1つの値段で売られているものを「一体資産」といいます。食玩(おもちゃ付きのお菓子)や福袋が例です。この場合、税抜価格が1万円以下で、食品の部分の価額が全体の3分の2以上なら、全体が8%になります[2]。
「おもちゃが付いていれば必ず8%」というわけではありません。2つの条件がそろったときだけです。たとえば食品の割合が3分の2に届かなければ、全体が10%になります。
新聞も条件つきです。政治・経済・社会・文化などの一般社会的事実を載せ、週2回以上発行され、定期購読契約に基づくものが8%です。スポーツ新聞や業界紙も、この条件を満たせば対象になります。駅の売店で買うような定期購読でないものは、10%です[1]。
こうして細かい線を引くと、同じような物でも税率が分かれます。では、軽くなった税は、結局だれの得になっているのでしょうか。
食品と食品以外が一体で一つの対価で販売される一体資産(食玩・福袋など)は、①税抜価額が1万円以下で、②食品に係る部分の価額の割合が合理的な方法で計算して3分の2以上のとき、全体が軽減税率の対象になる[2]。どちらか一方だけでは足りない。おもちゃ付きなら必ず8%というわけではない。
新聞は、政治・経済・社会・文化等に関する一般社会的事実を掲載し、週2回以上発行され、定期購読契約に基づいて譲渡されるものが対象である。スポーツ新聞や各業界新聞も、この要件を満たせば適用される。一方、駅売りなど定期購読でないものは対象外になる[1]。
税率は、標準税率10%(国7.8%+地方2.2%)と軽減税率8%(国6.24%+地方1.76%)の複数税率になった[1]。線を細かく引けば公平に近づく面がある反面、仕分けは複雑になる。では、この線引きは、目的だった低所得の家計にどれだけ届いているのか。
5. 軽くなった お金は、だれに とどくの?
5. 浮いたお金は、円で見るか割合で見るかで答えが変わる
5. 軽減の効果 ── 金額では高所得層が大きく、年齢差が所得差を上回るという試算
ある けんきゅうは、食べ物の ぜいきんが 軽く なった ときに 1年で うく お金を ひとの グループごとに 見つもりました。それを 見ると、お金が 少ない おうちは およそ 5800円、多い おうちは およそ 8000円でした[6]。
円で 見ると、お金が 多い おうちの ほうが 大きいのです。でも、もともと つかえる お金が 少ないので、その 少ない お金の 中では、5800円の 重みは 大きい、という 見方も あります。
この けんきゅうでは、年れいの ちがいも 大きく、年を とった 人の おうちほど、うく お金は 多く なりました[6]。
全国消費実態調査(2014年)のデータを使った研究が、食料品の軽減で浮く税額を所得層ごとに試算しています。それによると、年間の軽減税額は、最も所得が低い層で5,843円、最も高い層で7,959円でした。円で見れば、所得の高い層のほうが大きくなります[6]。
ただし、この研究は、全消費支出にしめる軽減税額の割合で見ると、低所得層のほうが大きくなるとも述べています。同じ数千円でも、支出の少ない家計には、その分だけ割合が大きくなるためです[6]。
研究はさらに、勤労世帯を世帯主の年齢別にも調べました。食料品の税率を10%でなく8%にした場合の試算で、軽減税額は20代が4,357円、60代が8,386円です。この比べ方では、60代のほうが大きくなりました。所得層ごとの違いより年齢層ごとの違いのほうが大きく、低所得者支援というより高齢者支援の性格が濃い、と述べています[6]。経済学では、低所得者対策なら給付のほうが効果的だという見方が多いとも紹介されています。
これは1つの研究の結論で、国の公式な見解ではありません。見る角度で評価が変わる、という例として読むのがよいでしょう。
KIERディスカッションペーパー(明村・小嶋)は、全国消費実態調査(平成26年)の個票データを使い、食料品の軽減による税額の軽減を試算した。軽減税額は、最低所得層で年5,843円、最高所得層で7,959円であり、金額では高所得層のほうが大きい[6]。ただし同研究は、全消費支出に占める軽減税額の割合では低所得層のほうが大きくなるとも述べる。見るのが金額か割合かで、評価は逆になりうる。
同研究は、勤労世帯の世帯主年齢別の集計も示す。食料品の税率を10%でなく8%にした場合の試算で、軽減税額は20代が4,357円、60代が8,386円と、60代のほうが大きい。所得層間よりも年齢層間の差が大きいため、「低所得者支援よりも高齢者支援としての性格のほうが色濃い」と述べる[6]。経済学では、低所得者対策としては給付のほうが効果的だという見方が多いとされる。
ただしこの結論は筆者らの試算に基づくもので、公式見解ではない。金額の前提(試算した税率の変え方など)は、原文の該当節で確かめる価値がある。軽減税率の評価は、この1本で決まらない。外国は、同じ課題にどう向き合っているのか。
6. 外国は、食べ物の ぜいきんを どうして いるの?
6. 外国の食べ物の税 ── 日本はどこが同じで、どこが違うか
6. 付加価値税の国際比較 ── EUの軽減税率とイギリスのゼロ税率
外国にも、食べ物の ぜいきんを 軽くする 国が あります。ヨーロッパでは、食べ物や 新聞に ひくい ぜいりつを 使える きまりが あります[8]。でも、やり方は 国ごとに ちがいます。
イギリスでは、ほとんどの 食べ物の ぜいは 0%です。それでも、レストランの 食事には ぜいが かかります。日本と 同じように、食べ物でも 「かかる もの」と「かからない もの」が あります[9]。
日本は、食べ物の ぜいを 0%に するのでは なく、8%に おさえる 形でした。
消費税にあたる税は、多くの国で付加価値税と呼ばれます。財務省の国際比較(2026年1月現在)では、日本の標準税率10%は、付加価値税のあるOECD加盟国37か国のうち34位、つまり下から4番目です[7]。
ヨーロッパでは、EUの指令が、食料品・水道水・新聞・書籍・医薬品などに軽減税率を適用することを認めています[8]。ただし、食料品や外食の税率は国ごとに違います。
イギリスは、ほとんどの食品を税率0%(ゼロ税率)にしています。それでも、レストランなど店内の飲食には税率20%が課されます[9]。食べ物でも対象外がある点は、日本と似ています。日本が選んだのは、食べ物の税率を0%に下げるのではなく、8%に抑える形でした。
財務省の国際比較(2026年1月現在)によると、日本の標準税率10%は、付加価値税を有するOECD加盟国37か国中34位(下から4番目)である[7]。なお、この37か国は付加価値税を持つ国に限った数であり、年によって数字は変わる。
EUでは、EC指令が食料品・水道水・新聞・書籍・医薬品などに軽減税率を適用することを認める。ただし各国の食料品・外食・新聞の税率は表のとおり国ごとに異なる[8]。イギリスでは、ほとんどの食品が0%のゼロ税率だが、レストランで提供される飲食には標準税率20%が課される[9]。つまり、食品を軽くしつつ外食を別扱いにする形は、日本に特有ではない。
日本は、食品を0%にするのではなく、8%に抑える形を採った。制度の設計には複数の選び方があり、どれが正解かは国と時代で異なる。
7. じぶんで たしかめて みよう
7. 自分でも調べてみたくなったら
7. 資料案内と、日常で確かめられること
今日 できる ことは、お店で 耳を すます ことです。「店で 食べますか。持ち帰りますか。」と 聞かれたら、その あとに 何が かわるのか、おうちの 人と 話して みましょう。
お店で 食べるのと、持ち帰るのとで、ねだんが ちがう 場面が ないか、さがして みても 楽しいです。
くわしく 知りたいときは、こくぜいちょうの「けいげんぜいりつ せいどに かんする Q&A」を おうちの 人と 見て みてください。
今日できること
コンビニやスーパーのイートインスペースがある店で、店員さんがどんな聞き方をしているかを見てみてください。「店内ですか、お持ち帰りですか」と聞かれる場面があれば、それが税率を決める確認です。
出かけてできること
イートインのある店で、店内で食べる場合と持ち帰りの場合の案内を見比べてみるのもよいでしょう。注意書きにどんな書き方があるか、見てみてください。
公式情報
国税庁の「軽減税率制度に関するQ&A」には、制度の概要編と個別事例編があります。この記事の線引きの例は、その中から選びました。
日常で確かめられるのは、店頭の確認である。イートインのある店で、店員が店内飲食か持ち帰りかをどう尋ねているか、観察してみるとよい[2]。家でできることもある。同じ店で持ち帰りと店内飲食の2通りの買い方をしたレシートを並べ、税率の表記を見比べてみる。
制度の根拠は、国税庁「軽減税率制度に関するQ&A」の制度概要編・個別事例編で読める[1][2]。経緯は財務省の「消費税法の改正等について」[5]、効果の見方はKIERディスカッションペーパー[6]、国際比較は財務省の資料[7][8]とGOV.UK[9]が出発点になる。
読み比べるとき、金額と割合のどちらで見ているか、いつ時点の制度か、という2点を確かめると、同じ制度でも評価が分かれる理由が見えやすくなる。
しらべた もとの じょうほう
参考にした情報源
参考にした情報源と、その使い方
国税庁・財務省・厚生労働省などの資料を中心に使いました(2026年10月1日に確認)。
- 国税庁「軽減税率制度に関するQ&A(制度概要編)」。https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/zeimokubetsu/shohi/keigenzeiritsu/pdf/qa/02-01.pdf (税率・対象・外食・新聞の定義)
- 国税庁「軽減税率制度に関するQ&A(個別事例編)」。https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/zeimokubetsu/shohi/keigenzeiritsu/pdf/qa/03-01.pdf (イートイン・一体資産の扱い)
- 厚生労働省掲載「社会保障・税一体改革大綱」(2012年2月17日閣議決定)。https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000002b1nq-att/2r9852000002b4jv.pdf (逆進性と対策の方向)
- 東京財団 消費税アーカイブ第17回「低所得者対策・軽減税率導入の経緯(後編)」。https://www.tkfd.or.jp/research/detail.php?id=3914 (ポイント還付案と与党合意)
- 財務省「消費税法の改正等について」。https://www.mof.go.jp/tax_policy/summary/consumption/consumption_tax/law/index.html (成立と実施時期の経緯)
- 明村・小嶋「家計の食料品消費に対する軽減税率の効果と限界」KIER Discussion Paper No.1701。https://www.kier.kyoto-u.ac.jp/wp/wp-content/uploads/2021/03/DP1701.pdf (軽減の効果の試算。筆者個人の見解)
- 財務省「付加価値税率(標準税率)の国際比較」。https://www.mof.go.jp/tax_policy/summary/itn_comparison/j04.htm (日本の標準税率の順位)
- 財務省「諸外国における付加価値税の概要」。https://www.mof.go.jp/tax_policy/summary/consumption/108.pdf (EUの軽減税率の考え方)
- GOV.UK「Rates of VAT on different goods and services」。https://www.gov.uk/guidance/rates-of-vat-on-different-goods-and-services (イギリスのゼロ税率と外食)
なおした ところ
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