1. かさぶたって、なにで できて いるの?
1. かさぶたは、血を止めた栓が乾いたもの
1. 血が止まってから、痂皮ができるまで
きずが できると、まず 血が でます。すると 血の なかの ちいさな つぶが、あなに くっついて、ふたを します。この つぶを 血小板と いいます[1]。
そこへ、あみの ような ものも できて、ふたを しっかり とめます。これは、けがを して すうふんの うちに はじまると いわれて います[1]。
この ふたが そとに でて かわくと、かたく なります。それが かさぶたです[1]。
つまり、かさぶたは 「血が とまった あとの すがた」 です。
2. かさぶたの したで、さいぼうは どう すすむ?
2. 下では、皮膚の細胞が「くぐって」進んでいる
2. 痂皮の下で、表皮の細胞が傷を覆っていく
かさぶたの したでは、皮膚の いちばん そとがわの 細胞が、きずの ふちから ひろがって いきます。かさぶたの したに もぐる ように すすむと いわれて います[1]。
けあなや 汗の でる くだの なかに のこった 細胞からも、あたらしい ひふが ひろがる と、1962ねんの ろんぶんの しょうかいに あります[2]。
3. かさぶたが ないほうが、はやく なおる?
3. 1962年、ブタの実験で「かさぶたは治りを遅らせる」と報告された
3. Winter(1962)── 湿らせた傷のほうが速く覆われた実験
1962ねん、ジョージ・ウィンターと いう けんきゅうしゃは、わかい ブタの せなかに あさい きずを つくって、くらべて みました。実験は ブタで した[2]。
ひとつは、ふつうに かさぶたが できる きず。もうひとつは、うすい まくで おおって、しめった ままに した きずです。
すると、まくで おおった ほうが はやく ひふが おおわれた、と ほうこくされました[3]。この ろんぶんの しょうかいには、「かわいた かさぶたが、ひふが ひろがるのを おそくする」と あります[2]。
ただし、これは ブタの ほうこくです。ひとで おなじだと いえる わけでは ありません。
4. ひとで しらべたら、どうだった?
4. 翌1963年、人での試験は「差は小さい」と読める結果に
4. 1963年の追試 ── Hinman & Maibach とZahir
つぎの とし、ヒンマンさんと マイバッハさんは、ひとの うでの ちいさな きずで しらべました[5]。
ポリエチレンで おおった きずは、5にちめには なおりが すすんで いました。でも 7にちめには、かさぶたの きずも、おおった きずも、ぜんぶ なおって いたと、しょうかいされて います[5]。
ブタでは「かさぶたが ないほうが はやい」。ひとでは「とちゅうは ちがっても、7にちめには おなじ」。どうして ちがって 見えたのでしょうか。
人の腕の小さな傷で
1963年に、ヒンマンとマイバッハは、人の前腕につけた小さな傷を調べました。ポリエチレンで覆った傷は、5日目には治りが進んでいましたが、7日目には、かさぶたのできた傷も覆った傷も、すべて治っていたと紹介されています[5]。参加した人は少なく、個人差も大きかったといわれ、小さな浅い傷での話でもあります。
見え方が割れた
同じ1963年には、Zahirがモルモットの傷でかさぶたの影響を調べた論文も出ています[6]。この論文の結論は、ここでは扱いません。
ブタでは「かさぶたは遅い」、人では「途中は差があっても、7日目には同じ」。研究ごとに見え方がちがっていた、と読めます。その理由までは、ここで見た資料からは分かりません。
5. いまは、きずを どう 考えて いるの?
5. いまの医療は「清潔で湿った環境」を大切にする立場
5. 湿潤環境の考え方 ── 日本皮膚科学会ガイドラインと家庭での注意
いま、おいしゃさんの あいだでは、きずの ひょうめんを きれいで しめった ままに する かんがえが あります[7]。
でも、これは おいしゃさんや かんごしさん むけの はなしです。おうちで、じぶんで きめては いけません。
きずが いたい、はれる、あつい、なかなか なおらない ときは、おとなに はなして、びょういんで 見て もらって ください。
「洗う・消毒しない・乾かさない」
日本皮膚科学会の創傷・褥瘡・熱傷のガイドライン(2018)は、清潔な湿潤環境を保つ立場をとっている、と紹介されています[7]。一般向けには、「洗う・消毒しない・乾かさない」という言葉で広まりました。
ただし、これは医療者向けの指針の話です。傷の深さや汚れ、場所で最適な手当ては変わります。自分で決めず、気になるときは大人や医師に相談してください。
この1960年代の実験は、その後の湿潤の考え方につながる最初期の報告のひとつとして読める、というのが、ここでの見方です。
日本皮膚科学会の創傷・褥瘡・熱傷ガイドライン(2018)は清潔な湿潤環境の維持を推す立場とされ、一般には「洗う・消毒しない・乾かさない」の3原則で紹介される[7]。
これは医療者向けの指針であり、家庭での自己判断を促すものではない。創の深さ、汚染、部位により適切な処置は異なる。気になる症状は保護者や医師に相談してほしい。1962年の実験が現在の湿潤療法に直接つながる、と言い切れる根拠は今回の資料にはない。
6. かさぶたが とれた あとは?
6. かさぶたが取れても、傷あとは1年かけて強くなる
6. 増殖期から成熟期へ ── 傷あとの強度の回復
かさぶたが とれたら、おしまいでは ありません。きずの したでは、細胞が ふえて、あたらしい ひふの もとが できて いきます。これは、けがの 2〜3にち あとから はじまる と いわれます[1]。
きずあとの つよさは、3しゅうかんで もとの 5ぶんの 1くらい、1ねん たつと 8わりくらいに なる そうです[1]。
だから、とれた ばかりの ところは、まだ やわらかいです。ていねいに あつかって あげましょう。
じぶんでも しらべて みたく なったら
自分でも調べてみたくなったら
自分でも調べてみたくなったら
ちいさな きずが できて、かさぶたが できたら、はがさずに、かさぶたの かたちを かみに えんぴつで かきます。すうじつ おきに おなじ ように かいて、ならべて みましょう。ふちの ようすが かわるか 見て みます。
いたい、はれて あつい ときは、はかる まえに おとなに はなして ください。
しらべた もとの じょうほう
参考にした情報源
参考にした情報源と、その使い方
出典について:英語の解説記事、論文の要旨、日本語の事典項目を突き合わせた。何に使ったかは項目の最後に書いている。論文の本文は一部しか読めていない。
- Wikipedia「Wound healing」。https://en.wikipedia.org/wiki/Wound_healing (止血、かさぶた、細胞の移動、傷あとの強さについて)
- Winter GD, Nature 193:293-4 (1962)(PubMedの書誌情報)。https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/14007593/ (表皮の供給源、乾いたかさぶたと上皮化について)
- Wikipedia「George D. Winter」。https://en.wikipedia.org/wiki/George_D._Winter (ブタでの実験の紹介について)
- Odland G, Ross R, J Cell Biol 39:135 (1968)。https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC2107509 (人の浅い傷で表皮の再生にかかる日数について)
- Hinman CD, Maibach H, Nature (1963)(PubMedの書誌情報)。https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/14087904/ (人の前腕の小さな傷での比較について)
- Zahir M, Nature 199:1013 (1963)。https://www.nature.com/articles/1991013a0 (モルモットの傷の研究があったことについて)
- コトバンク「湿潤療法」。https://kotobank.jp/word/湿潤療法 (湿潤療法の考え方と3原則について)
なおした ところ
更新履歴
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