1. にぎっても でない あぶらは、どこに あるの?
1. 粒の半分が油なのに、握ってもにじまないのはなぜか
1. 54.2gの脂質は、どこにどう入っているのか
ごまを ひとつかみ にぎって みても、てが あぶらで ベタベタに なる ことは ありません。
ところが、いりごま 100グラムに ふくまれる あぶら(ししつ)は 54.2グラム。みずは 1.6グラム、たんぱくしつは 20.3グラムです。ごまの つぶは、おもさの はんぶんほどが あぶらです。
つまり、あぶらは つぶの なかに ぎゅっと はいって います。そとから さわっても、でて きません。だから、ごま油を つくる ときは、あぶらを つぶの なかから おしだす くふうが いるのです。
ただし、これは つぶに ふくまれる りょうです。しぼって じっさいに とれる あぶらの りょうとは、ちがいます。
日本食品標準成分表では、いりごま100gあたりの脂質は54.2g、水分は1.6g、たんぱく質は20.3gです[1]。かどや製油の解説も、ごまは約50%が脂質、約20%がたんぱく質、約18%が炭水化物としています[2]。つまり、粒の重さのおよそ半分が油です。
1kgのいりごまなら、粒の中に脂質が約540g入っている計算になります。ただしこれは粒に含まれる量で、搾って実際に取り出せる量ではありません。
油は粒の内側にあるので、握っても表面ににじんでこないのです。粒の中から油を押し出す方法が必要になります。
では、どうやって粒から油を出すのでしょうか。次の章で、製油会社の工程を順にたどります。
成分表の値を整理すると、いりごま100gあたり脂質54.2g、水分1.6g、たんぱく質20.3gである[1]。かどや製油は、七訂食品成分表をもとに、ごまは約50%が脂質、約20%がたんぱく質、約18%が炭水化物と説明している[2]。粒の約半分が油であるため、1kgなら粒中の脂質は約540gという計算になる。ただし、これは粒に含まれる量であって、搾油で実際に得られる量(搾油率)ではない。
そして、この油は粒の内側にあるため、握っても表面ににじみ出ない。取り出すには、粒に外から力と手間を加える必要がある。ごま油の工程は、この問題への答えとして読める。では、どのような順で、どのような手間が加えられるのか。次章で、一社の公開工程から確かめる。
2. ごま油は、どんな じゅんばんで できるの?
2. 煎って、蒸して、ゆっくり搾る:油が出るまでの道すじ
2. 選別から仕上げろ過まで:蒸す目的と工程の順序
かどやせいゆの せつめいでは、ごま油は つぎの じゅんばんで つくられます。
まず、ごま いがいの ものを きかいで よりわけます。つぎに、焙煎。ごまを いって、ごま油らしい かおりと いろを ひきだします。ここが、いちばん だいじな ところ だそうです。
そのあとが、ふしぎな ところです。いった ごまを、ケトルと よぶ いれものに いれて、蒸します。蒸すと、あぶらが 搾りやすく なり、あじも まろやかに なると いいます。
それから、ゆっくり、ゆっくり 搾ります。
ただし、これは かどやせいゆの やりかたです。ほかの かいしゃも ぜんぶ おなじ じゅんばん とは かぎりません。
かどや製油が公開している工程は、次の順です[3]。
まず、選別機でごま以外のものを取り除きます。次が焙煎で、ごま油独自の風味と色を引き出す、もっとも重要な工程とされています。冷ましたあと、蒸気をかけて蒸します。蒸すと油が搾りやすくなり、風味もまろやかになるそうです。そして、ゆっくりと搾ります。
ここで意外なのは、「蒸す」工程があることです。乾いた粒を、わざわざ湿らせるのです。蒸すと油が出やすくなる理由は、紹介した資料には書かれていません。ただ、油が搾りやすくなるから蒸す、という順序は、製油会社の公開資料から読み取れます。
この順番は、あくまで一社の説明です。会社や製品によって、機械や手順が少しずつ違うこともあります。
かどや製油の公開する工程は、精選(選別機でごまの種子以外を除く)、焙煎・冷却、蒸煮(ケトルで蒸気をかける)、圧搾(ゆっくり搾る)、ろ過、静置、仕上げろ過、充填の順である[3]。このうち、焙煎は「ごま油の独自の風味・色を引き出す、もっとも重要な工程」とされる。
注目すべきは蒸煮である。蒸気をかける目的は、油を搾りやすくし、風味をまろやかにすることだと同社は説明する[3]。ただし、蒸すことで粒の中の油が動きやすくなる仕組みまでは、この資料には書かれていない。焙煎温度や時間の具体的な数値も非公表であり、ここでは扱わない。
搾り方にも条件がある。同社は「ゆっくり搾る」ことを工程の説明に入れている[3]。ゆっくり搾る方法の一つである玉締めは、第3章で扱う。なお、この工程は一社のものであり、業界共通の標準工程ではない。
3. なぜ、とかさずに おして しぼるの?
3. 溶かし出す方法と、圧す方法:「玉締め」の搾り方
3. 圧搾法と抽出法のちがい、常温でゆっくり搾る玉締め
あぶらの とりだしかたには、2つ あります。ひとつは、あぶらを とかす えき(ようばい)を つかって とりだす ほうほう。もうひとつは、ちからで おして しぼる ほうほうです。
ごま油にも、おして しぼる ほうほうが あります。くきさんぎょうという かいしゃは、くすりを つかわず、ちからを かけて ごまを すりつぶすように 搾る やりかたを えらんで います。
「たましめ」という しぼりかたも あります。あぶらもちせいゆという かいしゃは、ごまの ふうみを まもる ために、ふつうの おんどで ゆっくり しぼる と せつめいして います。
植物油は、圧力で搾る圧搾油と、溶媒(油を溶かす液体)を使って成分を取り出す抽出油に大きく分けられ、両方を組み合わせることもあります[5]。ごま油の圧搾の例を、具体的に見てみましょう。
九鬼産業は、抽出法ではなく連続式圧搾法を採用しています。薬剤を使わず、圧をかけてごまをすり潰して搾る、昔ながらの方法です[4]。溶媒に溶かし出すのではなく、圧だけで油を出す、ということです。
油茂製油は、ごまの風味を守るために、常温でゆっくり搾る「玉絞め」という製法を用いると紹介されています[6]。
ちなみに、日本で昔、油は主に明かりをともすために使われていました。ごまの油の香りと風味が知られるにつれて、食用が中心になり、江戸時代には採油の技術が発達して庶民の間にも広まったといいます[8]。
では、なぜ溶かして取らず、圧で搾るのか。植物油は、圧力で搾る圧搾油と、溶媒で成分を取り出す抽出油に大別され、両者を組み合わせる場合もある[5]。ここでは、圧搾を採る例を、各社の説明から並べる。
九鬼産業は、抽出法ではなく連続式圧搾法を採る。JETROの事例紹介によれば、これは薬剤を使わない伝統的な方法で、圧をかけてごまをすり潰して搾る[4]。つまり、粒の中の油を、別の物質に溶かし込まず、圧と時間だけで押し出す方式である。
ゆっくり搾る方法の例もある。油茂製油は「玉絞め」(玉締め)という製法を用い、ごまの風味を守るため、常温でゆっくり搾ると紹介されている[6]。熱をかけず時間をかける、という方針である。
こうした工夫が積み重なった背景には、油の使い道の変化がある。日本では昔、油は灯火用が中心だったが、香りと風味が知られるにつれて食用が主になった。奈良時代にはごまの油が神仏の灯用・食用・薬用に栽培され、江戸時代には採油技術の発達で庶民に定着した[8]。なお、ごまの日本への伝来時期は説が分かれており、ここでは触れない。
4. しぼった あぶらを、すぐに びんに いれないのは なぜ?
4. 搾ったあとも、油を「置いて」沈ませる
4. ろ過のあとに静置を置く理由:固形物を時間で分ける
あぶらを しぼりおえても、まだ びんには いれません。
しぼった あとの あぶらには、ごまの かわなどの かたい ものが まざって います。まず、これを こして、とりのぞきます。
それから、あぶらを タンクに いれて、しばらく おきます。じっと おくと、まざって いたものが、すこしずつ そこへ しずんで いきます。さいごに もういちど こして、すきとおった あぶらに します。
おして、こして、おいて、また こす。じかんを かけて、きれいな あぶらに して いくのですね。
搾ったばかりの油には、ごまの皮などの固形物が混ざっています。かどや製油の工程では、まずろ過でこれを取り除きます。そのあと、油をタンクに入れて静置します。置いておくと、混ざっていた成分が少しずつ沈み、分かれます。最後に仕上げろ過をして、透明感のあるごま油になります[3]。
ろ過のあとに、「ただ置く」時間があります。ろ過だけでは取りきれない細かなものを、時間をかけて沈ませて分ける工程です。
圧す、こす、置く、また、こす。ごま油の工程の後半は、力を加えるより、時間を使って油を整えていく作業といえます。
搾油後の油には、ごまの皮などの固形物が含まれる。かどや製油の工程では、まずろ過でこれを除き、続いてタンクで静置して成分を沈降・分離させ、最後に仕上げろ過で透明感のあるごま油に仕上げる[3]。
ここで注目したいのは、ろ過の後にもう一度「静置」が置かれている点である。フィルターで取れる大きさのものは先に除かれるが、細かな成分や、搾油の途中でわずかに混ざったものは、時間を使って沈降させるほうが分けやすいからだと考えられる。これは工程の順序からの推測であり、同社が目的を直接述べた文ではない。
圧搾の工程が「力を加える」作業だったのに対し、後半は「時間と濾材で整える」作業になる。同じ油でも、工程の前半と後半では、使っている道具が力から時間に替わっていると読み取れる。
5. いらずに しぼると、どんな あぶらに なるの?
5. 煎らずに搾る「太白」は、何が違うのか
5. 焙煎しない太白ごま油と、焙煎する純正・濃口のちがい
ごまを いらずに そのまま しぼる ごま油も あります。「たいはく」と よばれる ものです。
いって いないので、いろも かおりも ほとんど ありません。ごま油と いうと こげちゃいろで かおりが つよい ものを おもいうかべますが、それは いって から しぼった ものの いろと かおりです。
かどやせいゆでは、ふつうの ごま油は こうばしく いって から しぼり、「こいくち」は もっと つよく いって しぼります。「たいはく」は いらずに しぼります。いりかげんで、おなじ ごまでも あぶらの いろや かおりが かわります。
太白ごま油は、ごまを煎らず、生のまま圧力をかけて搾ります。焙煎の工程がないので、色も香りもほとんどありません[7]。
かどや製油の説明では、純正ごま油は香ばしく煎ってから搾り、濃口はそれよりも強く焙煎し、太白は煎らずに搾ります[2]。同じごまでも、煎り方によって、油の色や香りが変わります。
焙煎の色や香りの変化については、別の記事で扱っているので、ここでは詳しく立ち入りません。
もう一つ、ごま油は、食用油の中でも酸化しにくい油として知られます。かどや製油は、ほかの油と比べて劣化しにくい抗酸化作用を持つと説明しています[2]。
太白ごま油は、ごまを煎らず生のまま圧力をかけて搾る。焙煎の工程がないため、色も香りもほとんどない[7]。一方、かどや製油の説明では、純正ごま油は香ばしく煎り上げてから搾り、濃口はより強く焙煎し、太白は煎らずに搾る[2]。同じ原料でも、焙煎の有無と強さで、油の色や香りが変わることになる。
焙煎による色と香りの変化は、本サイトの別記事で扱っているため、ここでは深追いしない。注意したいのは、ごま油の保存性の話である。ごま油は食用油の中でも酸化安定性がよい油として知られ、かどや製油も、ほかの油より劣化しにくい抗酸化作用をもつと説明している[2]。ただし、これは油の保存性についての説明であり、ごまに含まれる成分が体内で働く話(ゴマリグナンの話)とは別である。
6. しぼった あとの つぶは、どこへ いくの?
6. 搾ったあとに残るものと、ごまの原料の行き先
6. 搾りかす(ミール)の行き先と、原料のほぼ全量が輸入であること
つぶの はんぶんが あぶらなら、のこりの はんぶんは なんでしょう。ごまには、たんぱくしつが 20%ほど、たんすいかぶつが 18%ほど ふくまれると いわれます。
あぶらを しぼると、これらを ふくんだ しぼりかすが のこります。かどやせいゆは、この しぼりかすを かつようする かんがえを しょうかいして います。あぶらを とった あとの ごまにも、つかいみちが あるのですね。
ところで、日本で つかわれる ごまの 99.9%は、輸入です。日本で たべる ごま 1000の うち、日本で つくられた ものは 1だけ。ごま油の ごまは、ほとんどが、ほかの くにから はいって きた ものなのです。
粒の約半分が油なら、残りは何でしょうか。かどや製油の解説では、たんぱく質が約20%、炭水化物が約18%などです[2]。搾油のあとには、たんぱく質や食物繊維を含む搾りかす(ミール)が残るといい、かどや製油はこれを活用する構想を紹介しています[10]。油をとったあとの粒にも、使い道が考えられているのです。
では、そもそもその粒は、どこから来ているのでしょうか。三重県の紹介ページによれば、日本で消費されるごまの99.9%は輸入です。残りの0.1%を生産する農家の一つが、三重県の松阪にあります[9]。0.1%は1000分の1です。国内で消費されるごま1kgにたとえれば、国産は1gにあたります。
毎日のように口にする、ごま油。その原料のごまのほとんどが輸入だと知ると、台所の瓶の見え方が、少し変わるかもしれません。
油を搾った後の粒は、どうなるのか。粒の約半分が脂質であり、残りには、たんぱく質(約20%)や炭水化物(約18%)などが含まれる[2]。搾油後には、たんぱく質や食物繊維を含む搾りかす(ミール)が残る。かどや製油は、これを活用する構想を紹介している[10]。
では、その粒はどこから来るのか。三重県の紹介ページによれば、国内で消費されるごまの99.9%が輸入であり、残りの0.1%を生産する農家の一つが三重県松阪にある[9]。0.1%は1000分の1で、100粒に1粒ではない。国内で消費されるごま1kgあたりに直せば、国産は1gにすぎない。日本食糧新聞(2026年9月7日)は、三重県知事が国内自給率0.1%未満と述べ、九鬼産業の社長が「99.9%を輸入に頼る」と述べたと報じている。
7. だいどころで たしかめて みよう
7. 台所のごまで、「油は粒の中にある」を確かめる
7. 台所で確かめられること、読める資料
きょう できる こと
おうちの ひとと いっしょに、いりごまを ひとつまみ、すりばちで すって みましょう。すりごまに なったら、かみの うえに すこし のせて、ゆびで ぎゅっと おして みます。かみに うっすら あぶらの しみが つくか、みて みましょう。
もう ひとつ。ごま油の びんの ラベルを みて、「ごま」と かいてあるか、なにが かいてあるかを よんで みましょう。
しらべる とき
かどやせいゆの ホームページに、「ごま油が できるまで」が のって います。にほんごで よめます。
しらべた もとの じょうほう
参考にした情報源
参考にした情報源と、その使い方
本文で使った資料です。工程の説明は各社の説明であり、業界共通の標準工程ではありません。
- 文部科学省 食品成分データベース(種実類/ごま/いり). https://fooddb.mext.go.jp/details/details.pl?ITEM_NO=5_05018_7 (いりごまの脂質・水分・たんぱく質)
- かどや製油 ごまのQ&A大百科. https://www.kadoya.com/enjoy/page02.html (ごまの成分、焙煎の強さ、保存性の説明)
- かどや製油 純正へのこだわり(ごま油ができるまで). https://www.kadoya.com/specialty/pure/ (工程と、ろ過・静置の説明)
- JETRO 九鬼産業 事例紹介. https://www.jetro.go.jp/case_study/kuki.html (連続式圧搾法の説明)
- 世界の油(油屋.com)「ごま油」(weblioに転載). https://www.weblio.jp/content/%E3%81%94%E3%81%BE%E6%B2%B9 (圧搾油と抽出油の分け方)
- テレビ東京 アド街ック天国(油茂製油の紹介ページ)/小野田製油所の資料. https://www.tv-tokyo.co.jp/adomachi/backnumber/20080913/33583.html (油茂製油の玉絞めの紹介)
- macaroni 太白ごま油ってどんな油?. https://macaro-ni.jp/29911 (煎らずに搾る太白の説明)
- nippon.com にっぽん食べ物図鑑(ごま). https://www.nippon.com/ja/japan-topics/c15333/ (日本での油の使われ方の変化)
- 三重県 県産品紹介(ごま). https://www.pref.mie.lg.jp/app/db/d000401/detail.asp?no=112 (国内消費のごまの輸入割合)
- かどや製油 Makuake プロジェクトページ. https://www.makuake.com/project/kadoya/ (搾りかすの活用構想)
なおした ところ
更新履歴
更新履歴(改版の記録)
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