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ここにあるのは、だれかが実際に調べ、考え、作ってきたことを集めたメモです。気になったら、ページの下の「参考にした情報源」から、もとの本や記事、それを生み出した人たちに、直接ふれてみてください。このメモには書ききれないおもしろさが、そこにあります。

さむいと、どうして からだが ふるえるの?

寒いと体がふるえるのはなぜか、脳の指令と、筋肉が熱をつくる仕組み

寒冷時のふるえ(シバリング)熱産生 ── 段階的な体温調節、視索前野からの指令経路、褐色脂肪との分担

分野:からだ

ゆきの ひに そとに でたら、うでや あしが ぶるぶる しはじめました。「ふるえよう」と おもった わけでは ありません。

だれが「ふるえろ」と めいれいして いるのでしょうか。ふるえると、どうして あたたかく なるのでしょうか。いっしょに たどって みましょう。

寒い日に外へ出ると、いつのまにか体がぶるぶるしてきます。「ふるえよう」と決めたわけではないのに、勝手に動き出します。

ふるえを起こしているのは誰か、そして筋肉が小刻みに動くと、なぜ体が温まるのか。日本語の解説と論文の要旨を突き合わせて、順番に見ていきます。分かっていないことは、そのまま書きます。

シバリング(ふるえ)は、骨格筋に生じる不随意で小刻みな収縮であり、視床下部が関わる自律的な熱産生の一つである[1]。寒冷下のヒトでは、皮膚血管の収縮が先に働き、核心温がさらに下がるとふるえが加わる[2]。

このメモでは、ふるえに至るまでの段階、脳内の指令経路、筋収縮が熱になる理由、ふるえによる熱産生の大きさ、ふるえをともなわない熱産生(褐色脂肪)との分担を、複数の資料をつき合わせて整理する。ただし、ラットや一部の集団での結果は、その範囲を超えて言い切らない。

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1. さむいと、いちばん さいしょに ふるえるの?

1. ふるえは、寒さへの最初の反応ではない

1. 寒さに対して、体は血管を縮めて熱を逃がさず、足りなければ筋肉をふるわせる

さむい ところに いくと、からだは ぶるぶる ふるえます。でも、ふるえは いちばん さいしょの はんのう では ないと せつめい されて います[2]。

さいしょは、ひふの ちかくの 血管けっかんが ほそく なります。そう すると、ねつが そとに にげにくく なります。それでも たりない ときに、筋肉きんにくが ぶるぶる うごいて、ねつを つくります[2]。

ただし、かるい さむさの ときは、ふるえない ねつづくりが さきに はたらく と いわれて います。これは 6しょうで しらべます[7]。

まず、熱を逃がさない

寒さにさらされたとき、体はまず、皮膚の近くにある血管を収縮させます。血の流れが減ると、体の中の熱が外へ逃げにくくなります[2]。

それでも足りなければ、熱をつくる

体の中心の温度(核心温)がさらに下がると、骨格筋をぶるぶるふるわせて熱をつくります[2]。ただし、熱をつくる手段の中では、軽い寒さのときは、ふるえない熱づくり(褐色脂肪)が先に働き、それでも足りないほど寒いときにふるえが加わるとされています。くわしくは6章で見ます[7]。

ヒトが寒冷にさらされると、まず皮膚表面近くの血管が収縮して血流が低下し、熱の放散が抑えられる。これは熱を逃がしにくくする反応である。核心温がさらに低下すると、骨格筋がランダムに収縮して熱産生が増える[2]。

熱産生の側の順序は、軽い寒さではふるえない熱産生(褐色脂肪)が先に働き、それで足りないほど寒くなるとふるえが加わる、とされる。この点は第6章で扱う[7]。

2. だれが「ふるえろ」と めいれい するの?

2. ふるえを起こしているのは、体温を見張る脳

2. 指令の経路 ── 視索前野・視床下部背内側部・淡蒼縫線核・脊髄前角

ふるえは、じぶんで「ふるえよう」と きめて おこす もの では ありません[1]。脳のうの なかに ある、からだの 温度おんどを みはる ところが、はたらいて います[1][3]。

皮膚ひふが つめたいと かんじると、その ことが 神経しんけいを とおって 脳のうに とどきます。すると 脳のうが、せなかの なかを とおる 神経しんけいを つかって、筋肉きんにくに「こまかく うごけ」と つたえます[3]。

自分の意思では起こせない

ふるえは、骨格筋に起こる不随意の小刻みな収縮です。自分の意思では起こせず、脳の視床下部が関わる、自動の体温調節の一つとされています[1]。

冷たさの知らせが脳へ上る

脳科学辞典の説明では、皮膚の冷たさの情報は、脊髄から脳の橋という場所を通って、体温の調節をまとめる視索前野へ伝わります。ふだんは、この視索前野が「ふるえなくていい」と抑えています。その抑えが弱まると、別の場所が働き出し、脊髄から筋肉へ運動の指令が出て、ふるえが起こります[3]。

皮膚の温度受容器の情報は、脊髄後角、橋の外側腕傍核を経て視索前野へ伝わる。視索前野から下行する抑制が弱まると、視床下部背内側部や延髄の淡蒼縫線核が働き、ふるえ熱産生は脊髄前角からの体性運動出力を介して起こる[3]。

同じ辞典は、褐色脂肪の熱産生と皮膚血管収縮が、脊髄中間外側核からの交感神経出力で起こると述べる[3]。ふるえが体性運動系、他の二つが交感神経系という違いは、「ふるえない熱づくり」が別の反応であることを示している。

3. ふるえを とめる スイッチは、どこに あったの?

3. ラットの実験で見つかった、ふるえを消す脳の場所

3. ラットでの検証 ── 視床下部背内側核・淡蒼縫線核の抑制(2011年)

2011ねんに、京都大学の ひとたちが、ねずみの なかまの ラットで しらべました。ひふを つめたく して ふるえが おきて いる ときに、脳のうの ある ところの 神経しんけいの はたらきを おさえると、ふるえが きえたのです[4]。

この ラットの じっけんでは、ふるえを とめる ばしょは 筋肉きんにくでは なく、脳のうの なかでした。ただし、これは ラットの けっかです。ヒトでも まったく おなじかは、この けんきゅうだけでは いえません。

2011年、京都大学のグループの報告

2011年、京都大学のグループは、ラットの皮膚を冷やして起こしたふるえが、脳の視床下部背内側核や、延髄の淡蒼縫線核という場所の神経細胞の活動を抑えると消えることを、The Journal of Physiology で報告しました[4]。

ヒトにそのまま当てはめない

これはラットでの結果です。ヒトの脳でも同じ場所が同じように働くかどうかは、この研究だけでは分かりません。一方で、脳科学辞典が説明する指令の経路は、この結果と話がつながっています[3]。

2011年、京都大学のグループは、ラットで皮膚冷却により誘発したふるえが、視床下部背内側核または延髄の淡蒼縫線核の神経細胞活動を抑制すると消失することを示した(The Journal of Physiology)[4]。第2章の経路のうち、指令の中継点を実験的に押さえた結果にあたる。

ただし動物実験の結果であり、ヒトで同じ部位が同じ役割を持つと断定できる範囲ではない。

4. きんにくが うごくと、どうして ねつが 出るの?

4. 筋肉が動くと、なぜ熱が出るのか

4. 熱になるエネルギー ── ATP加水分解とカルシウムイオンの移動

はしると、からだが あつく なります。筋肉きんにくが たくさん うごくと、ねつが 出るからです。ふるえも おなじです。

筋肉きんにくは、ちぢむ たびに、エネルギーの もとを つかいます。つかう ときに、ねつも 出ます[6]。

ただし、ふるえは はしるのと ちがって、ほとんど すすみません。ちいさく ぶるぶる する だけですが、それでも ねつは 出ます。

収縮のたびに、エネルギーを使う

筋肉が縮むたびに、体はATPというエネルギーのもとを使い、カルシウムイオンを動かし続けます。この作業がくり返されるとき、熱が生まれます[6]。

ふるえは「熱づくり」に向いている

走ったあとに体が熱くなるのは、動いた筋肉が熱を出すからです。ふるえでは、それが小刻みな動きで起きていると考えると分かりやすいです。ただし、熱になる割合の数字は、確かな資料で確認できていないので、書きません。

筋収縮のたびにATPが加水分解され、カルシウムイオンの移動が繰り返される。ATPを使う筋収縮とカルシウムイオンの移動にともなって、熱が生じる[6]。

ふるえは小刻みな収縮であり[1]、収縮のたびに消費されるエネルギーが熱の産生につながる[6]。なお、熱に変わる割合を示す数値は、信頼できる一次資料で確認できていないため記さない。

5. どれくらい ねつを つくって、どこが ふるえるの?

5. ふるえが作る熱の大きさと、働く筋肉の場所

5. 熱産生の規模と分布 ── 安静時代謝の最大約5倍、体幹・近位筋が主役

ふるえは、あたたかく なる ための、けっこう おおきな しごとです。ある ろんぶんでは、からだの なかの 温度おんどが 35どくらいまで さがると、じっと して いる ときの 5ばいくらいまで、ねつが ふえる ことが あると まとめて います[5]。

ふるえて いる ところも きまって います。おなかや せなか、あしの つけねの ちかくの 筋肉きんにくが よく はたらく ことが おおく、うでや すねの 筋肉きんにくは あまり ねつを つくりません[5]。ただし、どの 筋肉きんにくを どれだけ つかうかは、ひとに よって ちがいます。

安静時の最大5倍まで

大人が寒さにさらされたとき、ふるえは熱づくりの中心になります。体の中心の温度が約35℃まで下がると、ふるえによる熱産生は、じっとしているときの約5倍にまで達しうると、論文がまとめています[5]。これは最大の目安で、いつも5倍出るわけではありません。

主役は体の真ん中に近い筋肉

同じ論文によると、ふるえが強まるのは、主に体幹や脚の付け根に近い筋肉である傾向があります。腕やすねの筋肉は、熱づくりへの貢献が小さいとされています。どの筋肉をどれだけ使うかには、個人差もあります[5]。

Haman と Blondin の総説(2017)によれば、核心温が約35℃まで低下すると、ふるえによる熱産生は安静時代謝率の約5倍に達しうる[5]。「最大約5倍」であり、常に5倍が出るのではない。別の百科事典的な資料は最大6倍とするなど数値に幅があり、本節ではこの総説の値に絞る。

ふるえの強さは、主に体幹と大腿近位部などの近位筋で増加し、腕や下腿の筋肉は熱産生への寄与が小さい傾向がある。筋の使い方には個人差もある[5]。また同総説は、皮膚温が変わるとふるえの強さが素早く変化するとも述べる[5]。

6. ふるえないで ねつを つくる ほうほうも あるの?

6. ふるえる前後に働く、褐色脂肪という熱づくり

6. 非ふるえ熱産生 ── 褐色脂肪の動員と寒冷順化(2013年)、ふるえとの分担

じつは、ふるえないで ねつを つくる しくみも あります。かっしょく脂肪しぼうという もので、かるい さむさの ときは、こちらが さきに はたらき、たりない ときに ふるえが くわわると いわれて います[7]。

10にちかん、さむい へやで すごして もらった わかい おとな 17にんの けんきゅうが あります。ふるえないで つくる ねつの わりあいは、およそ 10パーセントから 18パーセントに ふえました[7]。

ふるえに先立つ、静かな熱づくり

褐色脂肪は、ふるえずに熱を作る組織です。軽い寒さではこちらが先に働き、それでは足りないときにふるえが加わるとされています[7]。

10日間の実験

2013年の研究では、若い大人17人が協力して、10日間、寒い環境で過ごしました。ふるえずに熱を作る割合は、平均で10.8%から17.8%に増えました[7]。

役割を分け合っている面も

男性を調べた研究では、褐色脂肪がある人ほど全身のふるえの活動が少ない、という関係が見られました。寒さへの熱づくりを、二つで分け合っている面があるようです[5]。この結果は男性でのもので、女性や子どもにまで広げることはできません。

軽度の寒冷では、褐色脂肪組織によるふるえない熱産生が先に働き、不足分をふるえが補うとされる[7]。

2013年の JCI 誌の報告は、若年成人17人が10日間の寒冷暴露を受けた結果を示した。ふるえない熱産生の割合は、暴露前の10.8%(±7.5)から暴露後の17.8%(±11.1)に増えた[7]。

また、男性では褐色脂肪の存在と全身のふるえ活動が逆相関したと報告されており、寒冷時の熱産生を両者が分担している可能性がある[5]。ただし男性での結果であり、女性・小児には広げない。

じぶんでも しらべて みたく なったら

自分でも調べてみたくなったら

自分でも調べてみたくなったら

さむいと おもった とき、からだの どこが ぶるぶる するか、きが ついたら おぼえて おきましょう。おなかの あたりや あしの つけねと、うでや すねと、くらべて みると おもしろいです。

ただし、ふるえる ほど ひえた ときは、あたたかい ばしょで やすみましょう。わざと さむい ところに いく ひつようは ありません。

今日できること:寒いと感じたときや、冷たい風に当たったときに、体のどこがぶるぶるするかを覚えておきます。体の真ん中に近いところと、腕やすねで違いがあるか、自分の体で確かめてみます。わざと寒い場所へ行く必要はありません。ふるえるほど冷えたら、暖かい場所で休みます。

資料を読むなら:日本語では、テルモ体温研究所の体温調節の解説[2]や、京都大学のプレスリリース[4]が読みやすいです。

日本語では、テルモ体温研究所の解説[2]、脳科学辞典の「体温調節の神経回路」[3]、京都大学のプレスリリース[4]が入口になる。まずはこの3つを読み比べて、ふるえの順序や指令経路の説明が資料ごとにどう違うかを見るとよい。

調べる際の論点は3つある。ラットで見つかった脳の中継点は、ヒトでも同じか。ふるえの熱産生の大きさ(最大約5倍)は、年齢や体格でどう変わるか。褐色脂肪とふるえの分担は、男性以外でも成り立つか。乳児は褐色脂肪に頼るとされるが、今回は調べていない。

しらべた もとの じょうほう

参考にした情報源

参考にした情報源と、その使い方

出典について:日本語の解説、脳科学の辞典、大学のプレスリリース、論文の要旨と本文を突き合わせた。何に使ったかは項目の最後に書いている。教科書の原文は確認しておらず、ふるえの定義は百科事典の説明の範囲で書いた。

  1. シバリング(Wikipedia日本語版)。https://ja.wikipedia.org/wiki/シバリング (ふるえの定義、不随意であること、視床下部が関わることについて)
  2. テルモ体温研究所「体温調節の仕組み」。https://www.terumo-taion.jp/health/basic/article02.html (寒さへの反応の順番について)
  3. 脳科学辞典「体温調節の神経回路」。https://bsd.neuroinf.jp/wiki/体温調節の神経回路 (ふるえの指令経路について)
  4. 京都大学 プレスリリース(2011年5月31日)。https://www.kyoto-u.ac.jp/ja/archive/prev/news_data/h/h1/news6/2011/110531_1 (ラットでふるえが消えた実験について)
  5. Haman and Blondin, Temperature 4(3) (2017)。https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC5605160/ (熱産生の大きさ、働く筋肉、褐色脂肪との関係について)
  6. Deranged Physiology, Mechanisms of thermoregulation。https://derangedphysiology.com/main/cicm-primary-exam/thermoregulation/Chapter-124/mechanisms-thermoregulation (筋肉が熱を出す理由について)
  7. Cold acclimation recruits human brown fat, Journal of Clinical Investigation (2013)。https://www.jci.org/articles/view/68993 (褐色脂肪と10日間の寒冷暴露の実験について)

なおした ところ

更新履歴

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