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ここにあるのは、だれかが実際に調べ、考え、作ってきたことを集めたメモです。気になったら、ページの下の「参考にした情報源」から、もとの本や記事、それを生み出した人たちに、直接ふれてみてください。このメモには書ききれないおもしろさが、そこにあります。

エビや カニは、どうして ゆでると あかく なるの?

エビやカニは茹でると赤くなる ── 赤は、はじめから殻の中にあったらしい

エビやカニは、なぜ茹でると赤くなるのか ── 色素とタンパク質の結合

分野:生きもの

いきている エビや カニは、あかい いろを して いません。くらい あおや みどり、ちゃいろに 見える ことが あります。それなのに、ゆでると まっかに なります。

じつは、あかい いろの もとは、ゆでる まえから 殻からの 中に ありました。どうして ゆでる まで 見えなかったのでしょう。その ひみつが わかります。

生きているエビやカニは、青みがかった暗い色や、緑・茶色っぽい色をしていることがあります。茹でると、あの鮮やかな赤になります。この赤は、茹でているあいだに新しくできた色なのでしょうか。

説明によると、赤い色素は生きているときから殻にあり、タンパク質に抱えられて別の色に見えていたようです。加熱で何が起きて赤が現れるのか、同じ色素がなぜ別の色になるのか、タコはどうなのか、まだ分かっていないことは何かが分かります。

生きたエビ・カニの殻は、青みがかった暗い色や緑・茶系の色に見えることがあるが、加熱すると赤橙色になる。この赤は加熱で生じる色ではなく、生体内でタンパク質に結合されて隠れていた色素が、結合が切れて本来の色を現すためと説明される[1][3]。

では、同じ色素がなぜ結合すると別の色になるのか。ロブスターの分子構造の研究と、クルマエビを対象にした日本の研究概要、解説記事を突き合わせて、色が変わる理由、茹でたときの変化、タコとの違い、まだ残る問いが分かる。

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1. なまの エビは、なに いろ?

1. 生きているエビは、赤くない

1. 生のエビ・カニの色 ── 赤くない殻

さかなやさんで、いきている エビや、なまの からつきの エビを 見た ことは ありますか。あかく ありません。くらい あおっぽい いろや、みどり、ちゃいろに 見える ことが あります[6]。

その エビが、おゆに はいると、あかく なります。エビフライの しっぽや、ゆでた カニの あかい 色は、みなさんも 見たことが あるでしょう。

あかい いろは、ゆでると 新しく できたのでしょうか。それとも、はじめから あったのでしょうか。

水族館や魚屋さんで、生きているエビやカニを見ると、赤くはありません。青みがかった暗い色、緑、茶色っぽい色など、種類や個体によって見え方はいろいろです[6]。出典によって「青」「緑」「緑・紫・茶」と表現が分かれるので、ここでは「暗い色」くらいにとどめておきます。

その同じエビが茹で上がると、あの赤になります。ふつうに考えれば、熱で色が「作られた」ように思えます。本当にそうなのでしょうか。

生のエビ・カニの殻は、赤ではなく、青みがかった暗い色、緑、紫、茶などに見える[6]。出典によって「青」「緑」「緑・紫・茶」と表現が割れるのは、種や個体で異なるためと思われ、ここでは特定の色を断定せず「赤くない暗い色」として扱う。

ところが加熱すると、赤橙色に見える種類が多い。この色の変化は、熱で新たな色素が合成された結果なのか、それとも別の理由なのか。まず、赤い色の正体から確かめる。

2. あかい いろは、どこから きたの?

2. 赤い色素は、最初から殻にいた

2. 赤色の正体 ── カロテノイド系色素アスタキサンチン

あかい いろの もとは、色素しきそという ものです。なまえは アスタキサンチン。エビや カニの 殻からに はいって います[1]。

この 色素しきそは、ひとりぼっちで いると、オレンジがかった あかい 色を して います[1]。つまり、ゆでて はじめて 生まれる 色では なく、いきて いる ときから 殻からに あった あかい 色なのです。

この 色素しきそは、エビや カニが じぶんで つくるのでは なく、えさから とりいれると いわれます[7](ひとつの かいせつに よる はなしです)。イクラや サケの あかい 色も、おなじ 色素しきそだと いわれて います。

では、どうして ふだんは あかく 見えないのでしょう。

エビやカニの赤い色の元は、アスタキサンチンという色素です。カロテノイドというなかまの色素で、単独で自由に存在しているときは、橙色がかった赤をしています[1]。

つまり、赤は茹でたときに新しく作られるのではなく、生きているときから殻の中にあったことになります。エビやカニは、この色素を自分では作れず、餌から取り込んで体にためるといわれます[7]。イクラやサケの赤も同じ色素だそうです。ただし、この餌の話は解説記事が中心で、種によっては体内で一部変換すると報告される例もあるため、確かなのは「体に色素を持っている」ところまでです。

赤い色素が最初からあるのなら、生きているときに赤く見えないのはなぜでしょう。

赤の正体は、カロテノイドの一種であるアスタキサンチンで、遊離した状態では橙赤色を示す[1]。したがって、赤は加熱で新たに合成された色素の色ではなく、生体内にもともとあった色素の色と考えられる。

この色素の由来は、甲殻類が自分で合成するのではなく、藻類から始まる食物連鎖で餌として取り込み、体に蓄えるとする解説がある[7]。ただし単一の二次資料に基づくので、そう説明されることがあるという程度にとどめる。エビ類には体内で一部を変換すると報告される種もあり、種ごとの詳細は資料が乏しい。イクラやサケの赤も同じ色素とされる。

では、色素があるのに生体では赤く見えないのはなぜか。鍵は、色素が単独ではなく、タンパク質と結合している点にある。

3. あかい 色素しきそは、どうして かくれて いるの?

3. ロブスターの色素は、なぜ青く見えるのか

3. クラスタシアニンとの結合 ── ロブスターでは吸収波長が632 nmへずれる

あかい 色素しきそは、タンパク質しつという ものに だかれて います。タンパク質しつは、体を つくる ざいりょうの ひとつです。エビや カニの 殻からの 中では、この タンパク質しつが 色素しきそを ぎゅっと かかえて います[2]。

おなじ 色素しきそでも、ロブスターでは、タンパク質しつに かかえられると あおっぽい 色に 見えると、けんきゅうで しらべられました[2]。

たとえば、ばねを 手で ぎゅっと おさえて いると、ばねの かたちは ちぢんだ ままです。色素しきそも、かかえられて かたちが かわると、ひかりの すいこまれかたが かわり、ちがう 色に 見えるのです。ただし ほんとうの しくみは、ばねより ずっと くわしく、かたちの ほかにも いろいろな ことが かかわっています[1]。

では、ゆでると どうなるのでしょう。

色素のアスタキサンチンは、クラスタシアニンというタンパク質の複合体に結合しています。ロブスターの殻が青く見えるのは、この結合が原因と報告されています[2]。

同じ色素なのに、結合すると色が変わる理由は、色素の形と、まわりの環境にあります。タンパク質の中で色素は平らに近い形に保たれ、電子の環境も変わるため、吸収する光の色がずれると説明されます[1]。たとえるなら、ばねを手でぎゅっと押さえ続けているようなものです。ただし、これは分かりやすくするたとえで、本当は形だけでなく電子の環境も色に関わります。

ロブスターの研究では、結合していない色素は橙赤色ですが、タンパク質と結合すると青灰色になると報告されています[2]。エビやカニのすべての種で同じ数値になるとは限らないので、ここでは「ロブスターでの例」として読んでください。

タンパク質が色素を抱え込んでいるだけなら、その手をゆるめれば、赤が出てくるはずです。

殻の色を決めているのは、アスタキサンチンとタンパク質複合体クラスタシアニンとの結合である。ロブスターでは、この結合が青い殻の原因とされ、ヘキサン中で472 nmにある遊離状態の極大吸収が、生体内の結合状態では632 nmへ大きくずれて青灰色になる[2]。

この変化の原因は、分子構造の解析から、タンパク質内で色素が平面に近い形に保たれ、電子の環境も変わるため光の吸収がずれる、と説明される[1]。「平らになるから青い」という単純化は避けたい。さらに2015年、マンチェスター大学の研究者らは、アスタキサンチンが酸のようにふるまうことが、クラスタシアニンとの結合で重要と報告した。ただし論文本体は確認できず、報道での紹介による[5]。

これらはロブスターでの結果で、エビ・カニの全種に同じ数値を当てはめることはできない。とはいえ、結合によって色が変わる仕組みが正しいなら、結合が切れれば元の色が現れるはずだ。それを起こすのが加熱である。

4. ゆでると、なにが おきるの?

4. 熱でタンパク質が手を放す

4. 加熱による変性 ── 結合の解放と赤橙色の出現

ゆでると、タンパク質しつは かたちを うしなって しまいます。これを「へんせい」と いいます[3]。

タンパク質しつが かたちを うしなうと、かかえて いた 色素しきそを はなして しまいます。はなされた 色素しきそは、もとの あかい 色に もどります[3]。

たまごを ゆでると かたまるのも、おなじ タンパク質しつの へんせいです。ただし、エビの 場合、かたまる ことより、色素しきそが はなされて あかく なる ことが、見た目の いちばんの ちがいです。

にほんの けんきゅうでも、クルマエビを しらべて、おなじ 説明せつめいが されて います[4]。

茹でると、タンパク質が熱で立体構造を失います。これを変性といいます。変性したクラスタシアニンは、抱えていた色素を放します。変性したクラスタシアニンから色素が放され、赤橙色が現れます[3]。

日本の科研費研究の概要にも、クルマエビを対象とした研究として、同じ説明があります。クラスタシアニンは、アポタンパク質とアスタキサンチンの複合体として本来の色を示し、変性でアスタキサンチンが放出されると赤色に変わる、というものです[4]。日本食品新聞社の解説も、加熱でタンパク質が変化して色素との結合が切れ、色素本来の赤が出ると説明しています[6]。

ゆで卵が固まるのも、卵のタンパク質の変性の例です。エビの場合は、固くなるより、赤い色素が現れる変化のほうが目に見えやすいのが特徴です。

一度茹でたエビを冷ましても、青っぽい色に戻ることはありません。変性したタンパク質は一般に元に戻りにくいとされます。

加熱すると、クラスタシアニンが変性して立体構造を失い、抱えていたアスタキサンチンを放し、色素は本来の橙赤色に戻る[3]。前章の結合が色を変えていたのだから、結合が切れれば元の色が現れる、という筋道になる。

この説明は、日本の科研費研究(24580302)の概要が、クルマエビを対象に、クラスタシアニンがアポタンパク質とアスタキサンチンの複合体として本来の色を示し、変性によって色素を放出すると赤に変わると述べている点と一致する[4]。加熱前のエビが緑・紫・茶などに見えるのは、タンパク質と結合した色素のためで、結合が切れると赤くなるという解説もある[6]。

変性が不可逆かどうかについて、出典は「戻らない」と明言していない。タンパク質の変性は一般に元に戻りにくいとされる。加熱以外の条件(酸・アルコール・冷凍)で赤くなるかは、資料で確認できておらず、断定を避ける。

5. タコも、ゆでると あかく なるよね?

5. タコが赤くなるのは、同じ仕組みだろうか

5. タコの場合 ── アスタキサンチンとは別の要因とされる

タコも、ゆでると あかく なります。おなじ しくみかと いうと、そうとは いえないようです[7]。

タコの あかい 色は、エビや カニとは べつの しくみと されて います。くわしい りゆうは、まだ よく わかって いません[7]。

見た目は おなじ「あかい 色」でも、なかみは ちがう かもしれません。

タコも茹でると赤くなりますが、エビやカニとは仕組みが違うと考えられています。ある解説では、タコの赤はアスタキサンチンの影響ではないとされます[7]。

ただし、この点は一次資料を確認できておらず、詳しい理由も分かっていません。同じ「茹でると赤くなる」でも、中身が同じとは限らない、というところまでにしておきます。

タコも加熱で赤くなるが、アスタキサンチンの影響ではないとされ、詳細は未解明とされる[7]。

この記述は一つの解説記事に基づき、一次資料は確認できていない。したがって、タコの仕組みは「エビ・カニと別の仕組みとされるが、詳しくは分かっていない」までしか言えない。見た目が同じでも仕組みが同じとは限らない、という例として読める。

6. まだ わからない ことは、あるの?

6. まだ残っている問い

6. 未解決の点 ── 生体での色の意味と機構の細部

いきて いる 時の 色は、なんの ために あるのでしょう。「てきから 身を まもる ため」と いう 話も ありますが、けんきゅうで たしかめた 資料しりょうは 見つかりませんでした。だから、ここでは かんがえの ひとつと して おきます。

いろが かわる しくみの くわしい ところも、いまも しらべられて います。2015ねんには、色素しきそが さんの ように ふるまう ことが だいじだと いう けんきゅうも 出ました[5]。

生きているときの暗い色が何のためにあるのかは、資料で確かめられませんでした。「外敵から身を守るため」という解説を見かけますが、研究で確かめた出典は見つからず、ここでは「そういう説明もある」にとどめます。

色が変わる仕組みの細部も、研究が続いています。2015年には、アスタキサンチンが酸のようにふるまうことが結合に重要だとする研究が報告されました[5]。ただし、ここでは論文本体を読めておらず、細かい機構までは紹介できません。

生体での色の意味については、「外敵から身を守るため」とする解説があるが、研究で確かめた出典は見つからない。進化的な理由づけは仮説の域を出ず、本稿では採らない。

結合の機構についても、2015年の報告(アスタキサンチンの酸としてのふるまい)があるなど、研究は続いている[5]。ただしこれは報道による紹介で、詳細な機構は論文本体に当たる必要がある。日本語で読める食品化学・水産分野の資料も、今回は科研費の概要以外を見つけられなかった。

自分でも しらべて みたく なったら

自分でも調べてみたくなったら

自分でも調べてみたくなったら

今日できること

おうちの ひとと いっしょに、からつきの なまの エビを 買って、ゆでる まえの 色を 見て おきましょう。ゆでると どう かわるか、くらべて みます。おゆは あつく、やけどを しやすいので、火と おゆは おとなに まかせます。

出かけてできること

すいぞくかんや さかなやさんで、いきている エビや カニの 色を 見て みましょう。ゆでた あとの 色と くらべると、ちがいが よく わかります。

こうしきの 情報じょうほう

日本語で 読める しりょうの ひとつに、かがくけんきゅうひの がいようが あります。「クラスタシアニン」で さがして みましょう。

今日できること

大人と一緒に、殻付きの生のエビを買って、茹でる前の色を観察しておきましょう。茹でたあとと比べて、頭の部分や殻の色の変わり方を見比べます。熱湯は危ないので、火と湯は大人にまかせます。

出かけてできること

水族館や魚屋さんで、生きているエビやカニの色を見てみましょう。種類によって、暗い色の出方が違うことに気づくかもしれません。

公式情報

日本語で読める資料に、科学研究費助成事業の概要があります。「クラスタシアニン」「甲殻類の体色」で検索してみてください。

今日できること

殻付きの生のエビを用意し、茹でる前後の殻の色を比べて、色の変化が全体に一様か、部位で違うかを観察する。加熱には火と熱湯を使うので、大人と一緒に行う。

出かけてできること

水族館や鮮魚店で、生きている甲殻類の色を種ごとに比べる。出典で生の色の表現が割れる点(青・緑・茶)が、種や個体差によるのかを考える手がかりになる。

公式情報

科研費データベース(KAKEN)の課題番号24580302の概要に加え、出典に挙げたロブスターの原論文(Cianci et al. 2002)で、結合による吸収の変化を確認できる。

しらべた もとの じょうほう

参考にした情報源

参考にした情報源と、その使い方

アスタキサンチンとタンパク質の結合による色の変化は、原論文の概要(ロブスター)と日本の研究概要(クルマエビ)を中心に、解説記事と突き合わせた。餌からの取りこみとタコの説明は解説記事によるもので、一次資料は未確認。

  1. Lobster Shell Color Shift Explained(Scientific American) https://www.scientificamerican.com/article/lobster-shell-color-shift/ (遊離した色素の色・平らになる形)
  2. Cianci et al. 2002, PNAS 99:9795(PMC) https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC125020 (結合による青い色・吸収の変化)
  3. Why do lobsters change color when cooked(Physics Today) https://physicstoday.aip.org/news/why-do-lobsters-change-color-when-cooked (加熱による変性と色素の解放)
  4. 甲殻類の体色変異(KAKEN 24580302) https://kaken.nii.ac.jp/grant/KAKENHI-PROJECT-24580302 (クルマエビでの変性と赤への変化)
  5. Scientists unravel chemistry behind why lobsters turn red when cooked(NBC News) https://www.nbcnews.com/science/weird-science/scientists-unravel-chemistry-behind-why-lobsters-turn-red-when-cooked-n350596 (2015年の研究の紹介)
  6. エビの不思議(日本食品新聞社) https://news.nissyoku.co.jp/?p=403657 (加熱前後の色の説明)
  7. 毎日雑学(ダイヤモンド・オンライン系 ddnavi) https://ddnavi.com/article/d686633/a/ (餌からの取りこみ・タコの赤)

なおした ところ

更新履歴

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