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ここにあるのは、だれかが実際に調べ、考え、作ってきたことを集めたメモです。気になったら、ページの下の「参考にした情報源」から、もとの本や記事、それを生み出した人たちに、直接ふれてみてください。このメモには書ききれないおもしろさが、そこにあります。

フライ返しの あなは、なんの ために あいて いるの?

フライ返しの穴は、なんのためにあいているのか ── 18世紀の食卓の銀の魚用ヘラとくらべて

フライ返しの穴は、何のためにあるのか ── 汁切りの効果と限界、18世紀英国の銀のフィッシュスライス

分野:技術

フライ返しの あなは、じつは むかしの イギリスの 食たくに ならんだ、ぎんの ヘラの かざりと つながって いるかも しれません。

いまの だいどころでは、あなは なにの ために あるのでしょう。あなの ない ものと、どちらを つかえば いいのでしょう。それが わかります。

穴あきのフライ返しの先祖の一つは、18世紀のイギリスで、食卓に出された銀の魚用ヘラだったかもしれません。その透かし模様の穴は、飾りであり、汁を切る道具でもありました。

では、いまの台所の穴は何のためにあるのでしょう。穴だけで油は切れるのでしょうか。穴のないフライ返しは、どんなときに選べばよいのでしょうか。この記事で、その答えが分かります。

穴あきのフライ返し(以下、穴あきターナー)は、台所の道具としては新しく見えるが、似た形の道具は18世紀の英国の食卓にもあった。銀製の魚用の取り分け具、フィッシュスライスである。透かし彫りは飾りであり、汁を落とす役も兼ねたと解説される[6]。

では、現在の穴は何のためで、どこまで効くのか。穴なしとはどう使い分けるのか。このメモでは、料理道具の解説、特許文書の背景説明、博物館の解説から分かることを、効果と限界の両面で示す。

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1. あなから なにが おちるの?

1. 穴から落ちるのは、油と汁気

1. 穴の第一の役目 ── 油と汁気を落として盛りつける

めだまやきを フライパンから おさらに うつす ところを おもい うかべて みましょう。ふつうの フライ返しだと、フライパンに のこって いた あぶらが、いっしょに おさらへ ながれて しまいます。

あなの ある フライ返しなら、あぶらや しるが、あなから したへ おちて くれます。そのため、おさらに のせた ものが、べたべたしたり、みずっぽく なったり しにくい と いわれます[1]。

よぶんな あぶらや みずを きりたい とき、あなは やくに たちます。

フライパンの目玉焼きを皿に移すとき、ふつうのフライ返しだと、ヘラの上にたまった油も一緒に皿へ流れてしまいます。穴のあるフライ返しなら、その油や汁気が穴から下へ落ちます。

料理道具を比べた解説では、穴から油や汁気が落ちるので、盛りつけたあとにべたついたり水っぽくなったりしにくいと説明されています[1]。余分な油や水分を切って仕上げたい料理に向く、というのが、穴あきターナーのいちばん分かりやすい役目です。

では、穴さえあれば、油はしっかり切れるのでしょうか。

穴あきターナーの穴の第一の役目は、焼いた食材から油や汁気を落とすことだ。料理道具の比較解説は、穴から油や汁気が落ちるため、盛りつけたあとにべたついたり水っぽくなったりしにくいと述べ、余分な油や水分を切って仕上げたい料理に向くとする[1]。

ただし、この「向く」は、道具を選ぶ側の目安だ。穴が実際にどれだけ油を落とすのかは、次の章で見るように、別の資料が限界も指摘している。

2. あなが あれば、あぶらは ぜんぶ おちるの?

2. 穴があれば油は全部落ちるのか

2. 穴の限界 ── 特許文書の背景が述べる「ごく少量」

じつは、あなが あるだけでは、あぶらは すこししか おちない、と かいた しりょうが あります[3]。

これは、アメリカの とっきょの ぶんしょの はじめに ある、せつめいです。あなから おちる あぶらは、ぎゅっと おさえない かぎり、ごく わずかだ と のべて います。もちろん、これは その ぶんしょを かいた 人の いけんです。あなで あぶらが まったく きれない、と いう いみでも ありません。

ですから、あぶらを しっかり きりたい ときは、すこし ゆすったり、キッチンペーパーを つかったり する くふうも ひつようかも しれません。

実は、アメリカの特許文書の背景説明に、こんな文があります。ほとんどのフライ返しは、揚げ物から余分な油や脂を落とすために、切り込みや穴を持っている。けれども、圧力をかけない自然な状態では、落ちる油はごく少量にとどまる、というのです[3]。

これは、穴を工夫した新しい道具を提案する出願者の側の説明です。穴で油がまったく切れないという意味ではありません。穴は油や汁を落とす助けになるものの、それだけで油切りが完全になるわけではない、と読むのが自然です。

だから、油をしっかり切りたいときは、持ち上げたあとで少し傾けたり、キッチンペーパーに移したりする手間も役に立ちそうです。穴は、あくまで「落ちやすくする」ための工夫なのです。

では、穴のない道具は、どんな場面で役に立つのでしょうか。

穴が油を落とすなら、穴だけで油切りは完了するのか。米国特許US9918591の背景部分は、多くのフライ返しが油・脂を落とすための切り込みや穴を持つことを認めたうえで、圧力をかけない自然な状態では落ちる量はごく少量にとどまる、と述べる[3]。

この記述は、穴の形を改良した新しい道具を提案する出願者の立場からのもので、穴の効果の一般的な測定値ではない。穴で油が落ちないという意味でもない。読み取れるのは、穴は「落ちやすくする」補助であり、完全な油切りには持ち上げ方や置き場所の工夫が要る、という程度までだ。

3. あなの ない フライ返しは、いつ つかうの?

3. 穴のないフライ返しの出番

3. 穴なしの出番 ── 崩したくないものを返すとき

パンケーキや オムレツは、やわらかくて こわれやすい たべものです。あなの ない フライ返しは、ヘラが うすくて、すこし しなります。そのため、たべものの したに すべりこませやすい と いわれます[1]。

アメリカの りょうりの しりょうの せつめいでは、フライパンの あぶらや にくじるを のこして おきたい ときは あなあき、もちあげる たべものが くずれない ように したい ときは あななし、と わけて います[2]。

かんたんに いうと、あなは「しるを きりたい」、あななしは「くずしたくない」ときの ほうが むいて います。

パンケーキやオムレツのように、やわらかくて崩れやすい食べ物は、穴のないフライ返しのほうが向くと言われます。ヘラが薄くてしなりがあるので、食べ物の下に滑りこませやすいからです[1]。

アメリカのアメリカズ・テスト・キッチンの説明を紹介した記事では、穴ありは「焼いた油や肉汁を残したいとき」に、穴なしは「持ち上げる食べ物が崩れないようにしたいとき」に使うとされています[2]。ゆるい生地のパンケーキが例に出てきます。

日本のメーカーの発表にも、似た悩みが出てきます。パール金属は、薄い焼き面にヘラをさしこむのが難しく、崩れやすい魚の身を均一に支えにくいことを課題として、三角形の先端とシリコーンのしなりをもつターナーを出しました[7]。

つまり、穴の有無は、返すものに合わせて選ぶ目安になります。ところで、穴のあるヘラの仲間は、台所より前に、食卓にいました。

穴なしの利点は、ヘラの面が連続していることにある。薄くてしなりがあるので食材の下にすべりこませやすく、オムレツやパンケーキのような柔らかいものを返すのに向くとされる[1]。America's Test Kitchenの説明を紹介する記事は、穴ありを「焼き油や肉汁を残したいとき」、穴なしを「持ち上げる食べ物が崩れないようにしたいとき」に使い分けると述べ、例にゆるい生地のパンケーキを挙げる[2]。ただし、America's Test Kitchen本体の記事が穴の役割を直接比較しているわけではなく、ここは二次資料の紹介である。

形そのものを課題として開発された製品もある。パール金属の発表は、既存のターナーが薄い焼き面にさしこみにくく、崩れやすい魚の身を均一に支えにくいことを課題とし、三角形の先端とシリコーンのしなりで食材の凹凸に沿って支える製品を出したと説明する[7]。この発表に穴の有無の記述はないため、「穴なしだから崩れない」とは読めない。読み取れるのは、返す対象によって、ヘラに求める条件(薄さ、しなり、支える面)が変わるという点だ。

こうして見ると、穴の有無は、汁を残すか落とすか、形を保つか、という二つの目的の間の選択になる。この選択の発想は、いつごろから食卓や台所にあったのか。

4. むかしの しょくたくにも、あなの ある ヘラが あった

4. 先祖の一つは、18世紀の食卓の銀のヘラ

4. 英国のフィッシュスライス ── 透かし彫りは飾りと汁切りを兼ねた

むかし、イギリスでは、ぎんで つくった 魚の とりわけ ようの ヘラが ありました。「フィッシュスライス」と いいます。魚を とりわけた テーブルで つかう、おしゃれな しょっきでした[4]。

1796年ごろの ものは、ヘラに すかしぼりの もようが あり、はの かたちの かざりも ついて います[5]。このとき、もようの あなは、かざりと、しるを おとす やくわりを かねて いたと せつめいされて います[6]。

この ヘラが、いまの だいどころの フライ返しの ごせんぞさまだ、と いいきる ことは できません。でも、「あなで しるを きる」と いう かんがえかたが、ずっと むかしから あった ことは わかります。

百科事典のウィキペディアは、最初に魚専用の取り分け具が言及されたのは1730年だと紹介しています。もとは食卓で魚を取り分ける銀の食器で、1740年代からは魚の形や魚の絵で飾られ、1800年代の初めには多くのカトラリーセットに含まれました[4]。ただし、1730年は「魚専用」の言及の年で、穴あきヘラそのものの始まりを示す年ではありません。

ロンドン・ヴィクトリア&アルバート博物館(V&A)にある、1796〜97年の銀のフィッシュスライスには、刃の部分に透かし彫りがあり、葉の飾りの縁どりがあります[5]。1770年代に小魚のホワイトベイトを食べるのが流行すると、魚の形に切り抜き、魚を表す彫金を施した品がたくさん作られた、という解説も添えられています[5]。

V&Aの別の解説では、のこぎりで切り抜いた透かし模様が汁を落とす役も兼ね、魚の繊細な風味に影響しにくい銀が好まれたと説明されます。もとは三角形で透かしのある「プディング・トロウル」から派生した、とも書かれています[6]。

こうして見ると、穴は、見た目を飾る工夫でもあり、汁を落とす実用でもありました。そしてのちに、「フィッシュスライス」という言葉は、揚げ焼きの食材を返す、穴や切れ込みのついた道具一般をさすようにも広がったとされます[4]。

穴あきの返し具には、食卓の側に別の系譜がある。英語でフィッシュスライス(fish slice)は、本来は魚を取り分ける銀の食器である。Wikipediaによれば、最初の魚専用のスライスは1730年に言及され、1740年代から魚の形や魚の絵で飾られ、1800年代初めには多くのカトラリーセットに含まれた[4]。1730年は「魚専用」の初出であり、穴あきヘラの起源年ではない点に注意が要る。

V&A所蔵の銀のフィッシュスライス(ロンドン、1796〜97年)は、刃に透かし彫りと葉の飾りの縁どりがある[5]。同館の解説によると、1770年代にホワイトベイト(小魚)を食べるのが流行したため、魚の形に切り抜き、魚を表す彫金を施した品が大量に作られた[5]。このため、透かしは、まず飾りとして発達した面がある。

ところが、V&Aの解説は、のこぎりで切り抜いた透かしが汁を落とす役も兼ねたと述べる。銀が好まれたのは、銅やブリキの鉄より魚の繊細な風味に影響しにくいからで、形はプディング・トロウル(三角形で透かしのあるプディング用の小ごて)から派生したという[6]。

のちにこの語は、揚げ焼きの食材を返す穴・切れ込みつきの道具一般をさすようにも広がったとされる[4]。ただし、食卓の銀のスライスと現代の台所の穴あきターナーが直系の系譜でつながるかは、「語が広がった」という記述までで、ここでは断定しない。

5. おうちで あなの ちがいを ためして みよう

5. 水とミニトマトで、穴の働きを比べてみる

5. 穴の効果を自分で確かめる ── 台所でできる比較と、資料の読み方

おうちの 人に ことわって から、ボウルに みずを いれ、ミニトマトを 1つ いれましょう。あなの ある フライ返しと、あなの ない フライ返しで、おなじ 1つの トマトを、1かいずつ すくって みます。

すくった ときに、みずが どのくらい ながれ おちるかを みくらべて みましょう。あなの ある ほうが、みずが した に おちるのが わかるかも しれません。

じゃがいもや 玉ねぎを いためて つぶす ときにも、あなの ある ヘラは むいて いると いわれます。あなに たべものが つまったら、みずに ひたして ふやかして から あらうと いいそうです[1]。

家に穴あきと穴なしのフライ返しがあれば、水の入ったボウルに洗ったミニトマトを入れ、それぞれですくって、ボウルの上で3秒止めてみてください。水がどれくらい落ちるかを比べられます。火は使わないので、安全に試せます。

穴のあるほうは水が落ちやすく、穴のないほうは水が残りやすいはずです。そのあと、ヘラを少し傾けてみると、穴あきでも水が残ることに気づくかもしれません。これは、穴あきと穴なしの比べっこが終わったあとの、別の観察です。

穴に食材が詰まったときは、水にひたしてふやかしてから洗うとよい、とされます。穴あきターナーは、じゃがいもや玉ねぎを炒めながらつぶす作業にも向く、という解説もあります[1]。

V&Aの収蔵品の検索ページには、フィッシュスライスの写真と解説があります。台所の道具の先祖の一つを、じっくり見てみる出発点になります[5]。

確かめ方の例を示す。水を入れたボウルに洗ったミニトマトを入れ、穴あきと穴なしのフライ返しで同じようにすくって、ボウルの上で数秒止める。落ちる水の量を比べると、穴あきと穴なしで水の抜け方がどう違うかが目で見える。比較が終わったら、別の観察として、穴あきのヘラを少し傾け、残る水の量がどう変わるかも見る。水での実験なので、油についての資料の記述をそのまま確かめるものではない。

資料の読み方も、ここで確かめておく。穴あきターナーの効果に関する記述は、料理道具の比較記事[1]、その紹介記事[2]、特許の背景[3]と、立場が違う。比較記事は選び方の目安であり、特許は新しい道具を提案する立場の説明である。どちらも測定した数値ではない。

さらに調べるなら、V&Aの収蔵品データベース[5]と、特許の全文[3]が原典に近い。食卓の銀のスライスと台所の穴あきターナーがどう結びつくのかは、このメモでは断定していない。そこが、次に調べたくなる問いだ。

しらべた もとの じょうほう

参考にした情報源

参考にした情報源と、その使い方

本文の参照番号と対応しています。

  1. マイベスト「穴あきターナーと穴なしの違い」 https://my-best.com/484 (穴あきと穴なしの使い分け)
  2. Tasting Table「How Slotted And Solid Spatulas Are Used Differently」 https://tastingtable.com/1375297/slotted-solid-spatulas-used-differently (America's Test Kitchenの説明の紹介)
  3. US9918591B2 特許(背景の説明) https://patents.google.com/patent/US9918591 (穴で落ちる油の量の記述)
  4. Wikipedia「Fish slice」 https://en.wikipedia.org/wiki/Fish_slice (フィッシュスライスの由来と語の広がり)
  5. V&A「Fish Slice」収蔵品ページ https://collections.vam.ac.uk/item/O105133 (1796〜97年の銀のフィッシュスライス)
  6. V&A「Fish slices」解説 https://api.vam.ac.uk/v2/object/O94496 (透かしの汁切りの役割と、プディング・トロウルとの関係)
  7. パール金属 プレスリリース(PR TIMES) https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000002.000176300.html (魚の身を崩さず返す課題と製品)

なおした ところ

更新履歴

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