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しゃぼん玉は どうして まんまるなの?

しゃぼん玉は、どうして丸くなる?:ちぢむ膜と球の形

しゃぼん玉は、なぜ丸くなるのか ── 二つの泡がくっつく形の証明は2000年発表

分野:技術

ストローで ふいた しゃぼん玉は、いつも まんまるです。ふく人は、丸くしようと していません。

それなのに、どうして かたちが そろうのでしょう。まくの ふしぎな くせと、ふたつの しゃぼん玉が くっついたときの かたちまで、お話しします。

ふたつの しゃぼん玉の かたちが いちばん ちいさい と しょうめいされたのは、2000年です。そこまでの みちが わかります。

ストローで吹いたしゃぼん玉は、どれも丸くなります。吹く人は形を決めていません。ところが、泡が二つくっついたときの形が「二つの泡を包む膜の面積が、いちばん小さくなる形」、いわば膜にとって省エネな形だと数学で証明されたのは、2000年に発表された最近の話です。

丸い形は見ればすぐ分かるのに、数学で証明するのは、なぜそんなに難しかったのでしょうか。この記事では、膜が縮もうとする力から球ができる流れと、その証明の歴史、泡が集まるときの角度が分かります。

しゃぼん玉の形を決めているのは、吹く人ではなく膜そのものである。しかも、球が「同じ体積を囲む面のうち表面積が最小」だと厳密に示されたのは1884年、二つの泡がくっついたときの最小の形は2000年に発表された(2002年に論文として掲載)。

なぜ球になるのか、なぜその証明に長い時間がかかったのか。この記事では、表面張力と表面積の関係、体積を固定する条件の意味、泡どうしが接するときの120度の規則が分かる。

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1. だれも まるく していないのに なぜ まるい?

1. 吹く人は形を決めていないのに、なぜ丸くなるのか

1. 膜は何を最小にしようとして、丸くなるのか

しゃぼん玉の まくは、ゴムの ふくろのように、ちぢもうと します。そのちからを 表面張力ひょうめんちょうりょくと いいます。

なかの くうきを つつんだまま、まくの ひろさが ちいさく なる かたちを、まくは とろうと します。その けっか、まんまるに なります。

みずだけでは、しゃぼん玉は できません。せっけんが まざると、まくが ながもち します[2]。

しゃぼん玉の膜は、とても薄く、重さを無視できます。そのため膜に働く力は、ほぼ表面張力だけだと考えられています[1]。

膜は広げるほどエネルギーが必要で、そのエネルギーは表面積に応じて大きくなります。そのため膜は、中の空気を包んだまま、表面積がなるべく小さくなる形になろうとします。吹く人の息は形のきっかけにすぎず、あとは膜が自分で「ちぢむ」ことで形が決まります。

では、なぜ水だけでは泡ができないのでしょう。Virginia Tech の物理学の資料は、水のような純粋な液体では表面に泡を保てず、石けんのような界面活性剤が加わると、膜の中の水が下へ抜けても形を保てると説明しています[2]。石けんが張力を強めるか弱めるかは資料で説明が分かれるので、ここでは「石けんがあると膜が長もちする」とだけ受けとめます。

残る疑問は、縮むだけなら、なぜ数ある形の中から球なのかです。

しゃぼん玉の膜は極めて薄いので、重さを無視すると、膜に働く力は表面張力のみとみなせる。膜の表面エネルギーは表面積に応じて大きくなるため、膜は、中の空気を包んだまま表面積ができるだけ小さい形をとろうとする[1]。吹く人の息は形のきっかけにすぎず、形の選択は膜の側で起こる。

ただし、水だけでは泡は作れない。Virginia Tech の資料によれば、純粋な液体は表面に泡を保てず、石けんなどの界面活性剤かいめんかっせいざいが加わると、膜の中の水が下へ抜けても膜が形を保てる[2]。なお、石けんが表面張力を弱めるとする説明と、水より高い張力の膜を保つとする記述があり、資料間で食いちがう。そのため本稿では、「石けんが膜を持続させる」という点にとどめる。

ここで問いが残る。表面積を最小にするだけなら、体積を小さくしてゆけばいくらでも小さくなる。泡の中には空気が入っているので、「同じ体積を囲んだとき」という条件がつく。その条件で最小になるのは、本当に球なのか。

2. おなじ くうきの りょうなら、どんな かたちが ちいさい?

2. 同じ量の空気を包むなら、球が表面積最小になる

2. 「同じ体積」の条件で、なぜ球が最小になるのか

しゃぼん玉の なかには、くうきが はいっています。その くうきの りょうは かわりません。

おなじ りょうの くうきを つつむとき、まくの ひろさが いちばん ちいさく なるのは、まんまるの かたちです[1]。

たとえば、おなじ ふくろに ものを いれるとき、でこぼこより、ぎゅっと まるめた ほうが ふくろが ちいさく すみます。ただし ほんとうは、ふくろの かわりに まくが ちぢむ ちからで きまります。

泡の中の空気の量を変えずに、それを包む閉じた面を考えます。そのとき表面積がいちばん小さいのは球面だと、数学では示されています[1]。九州大学の小磯深幸さんの講義資料では、これが定理として書かれています。

注意したいのは、「表面積が最小」が、体積をそろえたときの比べ方だということです。体積をそろえなければ、いくらでも小さい面が作れてしまいます。

たとえば、同じ空気を包むのに、細長く伸ばした形を考えてみます。膜の面積は、球より広くなります。膜は縮もうとするので、そんな形は長くは続かず、球に近づくと考えられます。

この「同じ体積の球が最小」という性質は、数学では空間の等周問題とも呼ばれます。では、これはいつ、どのように示されたのでしょうか。

泡の中の空気の量は変わらないので、問題は「同じ体積を囲む閉曲面のうち、表面積が最小のものは何か」という形になる。答えは球面である。これは空間の等周問題とうしゅうもんだいの答えで、小磯深幸の講義資料では定理として述べられている[1]。

体積を固定する条件を外すと、表面積はいくらでも小さくできる。そのため「最小」は、体積をそろえたときの最小という意味に限られる。

圧力の面からも、球は自然である。空気中の石けん膜には内側と外側の2つの面があり、内外の圧力差は 4γ/r(γは表面張力、rは半径)と書ける[3]。半径が小さいほど、泡の中の圧力は高い。なお、この式は膜が2面ある薄い泡の場合で、水滴のように面が1つなら 2γ/r になる。

では、「球が最小」はどのように、いつ示されたのか。

3. まるが いちばん ちいさい と しょうめい するのに、どれくらい かかった?

3. 「球がいちばん」を数学で証明するのに、何があったのか

3. 円から球へ:「最小」の証明はどう組み立てられたか

「まるが いちばん ちいさい」と おもうのは かんたんです。でも、すうがくで「どんな かたちより ちいさい」と しっかり しょうめい するのは、むずかしい ことでした。

ひらたい かみの うえの まる(円)は、シュタイナーと いう ひとの くふうが しょうめいの どうぐに なりました[1]。

しゃぼん玉の まんまる(球)の ほうは、1884ねんに シュワルツと いう ひとが しめした と いわれます[4]。

平らな紙の上の話なら、「同じ面積を囲む閉じた線のうち、長さがいちばん短いのは円」です。この証明の道具の一つが、ドイツのヤコブ・シュタイナー(1796〜1863)が考えた対称化という操作です[1]。面積を変えずに、図形の周りの長さを縮めていく方法です。

球については、1884年にH. A. シュワルツが厳密な証明を示したと、百科事典のような二次資料が伝えています[4]。ここで気をつけたいのは、円が最小だという予想そのものは、古代ギリシャの時代から知られていたことです。1884年は「発見」ではなく、「球の証明が示された年」と読むのが適切です。

見た目に明らかなことでも、数学では「どんな形でも、これより小さくはならない」とすべての場合を示す必要があります。

そして、泡が一つではなく、二つ三つと集まったとき、形はどうなるのでしょう。

平面では、「同じ面積を囲む閉曲線のうち長さ最小のものは円」という定理がある。この証明に使われる道具の一つが、ヤコブ・シュタイナー(独、1796〜1863)が考えた対称化という操作で、図形の面積を保ったまま周の長さを縮める[1]。

空間では、球が「同じ体積を囲む面のうち面積が最小」であることを、1884年にH. A. シュワルツが示したと伝えられる[4]。この資料は二次資料であり、また、円が最小だという予想自体は古代ギリシャ時代から知られていた点に注意が要る。1884年を「発見」と書くのは誤りで、球についての厳密な証明が示された年と読むのが正確である。

直観的に明らかなことでも、数学では、考えられるすべての形について「これより小さくならない」と示さなければならない。表面積という量はなめらかな曲面全体に対して定義されるので、候補は無数にある。直観と証明の間が長かった理由の一つは、この候補の多さだろう。

では、泡が二つ、三つとくっついたときはどうか。

4. ふたつ くっついたら、まくの かどは なん度?

4. 泡が集まると、膜は120度で出会う

4. 泡が集まるときの120度と、二重泡の証明

しゃぼん玉が ふたつ くっつくと、あいだに ひらたい まくが できます。まくが あつまる ところを よく みると、3まいが 1ほんの せんで あつまる きまりに なって います。

ただし、きれいな せっけんの まくなら、3まいの まくの あいだは 120度に なります[5]。むかし ベルギーの プラトーさんが、じっけんで しらべました。

ふたつの しゃぼん玉が くっついた かたちが いちばん ちいさい と しょうめい されたのは、2000年の ことです[6]。

理想的な石けん膜では、泡がいくつも集まると、膜は3枚ずつ1本の線に集まり、その3枚は120度の角度で出会います。さらに、線が4本集まる点では、正四面体の角にあたる約109.47度になります。19世紀にベルギーの物理学者プラトーが実験から整理し、プラトーの法則と呼ばれています[5]。

二つの泡が合体した形は、「標準的な二重シャボン玉」と呼ばれます。3枚の球面が120度で出会う形で、二つの体積を囲んで仕切る最小面積の形がこれだと、ハッチングス、モーガン、リトレ、ロスが2000年に発表し、2002年に Annals of Mathematics に掲載されました[6]。

球の証明が示された1884年から2000年まで、100年以上あいています。身のまわりの泡の形でも、数学の最新の研究とつながっているのは面白い点です。

ところで、泡の形は一生続くわけではありません。

理想的な石けん膜では、泡が集まると膜は3枚ずつ1本の線(プラトー境界)で出会い、その角度は120度になる。この線が4本集まる点では、正四面体の角、約109.47度で交わる。19世紀のベルギーの物理学者プラトーが、実験から整理した規則である[5]。

では、これは「最小面積」の話とどうつながるのか。二つの体積を囲んで仕切る最小面積の形は、3枚の球面が120度で出会う「標準的な二重シャボン玉」だと証明された(二重泡定理)。ハッチングス、モーガン、リトレ、ロスが2000年に発表し、2002年に Annals of Mathematics に掲載された[6]。

なお、年については資料によって「2002年に確立」とするものと「2000年発表・2002年掲載」とするものがあり、本稿は後者に従う。球の証明が示された1884年から二重泡の発表の2000年まで、百年以上あいている。

プラトーの観察が先にあり、二重泡の証明が発表されたのは百年以上後である。実験で見える規則と証明の間に、こんなに長い時間があることは注目に値する。

5. まんまるの しゃぼん玉は、なぜ われちゃう?

5. 丸い形は、どうして長くは続かないのか

5. 泡が割れるとき、膜に何が起きているのか

しゃぼん玉は、すぐ われて しまいます。まくの なかの みずが、おもさで したに ながれて、まくが うすく なるからです[7]。

みずが じょうはつ したり、ほこりや あぶらが さわったり しても われます。

うすく なりすぎると、まくは くろく みえる ことも あります。

泡が割れる原因は一つではありません。重力で膜の水が下へ流れる、水が蒸発する、ほこりや油が触れる、などがあります[7]。

膜が薄くなりすぎると、膜の中を通る光の道のりが可視光の波長より短くなり、強め合う色がなくなって黒く見えることがあります。色の話は、別の記事のテーマです。

丸い形は「いまの条件で膜がいちばん安定する形」であり、永遠ではないのです。だからこそ、割れる前の短い時間に球を観察する価値があります。

泡が割れる原因は複数ある。重力によって膜の水が下へ流れて上部が薄くなる、水が蒸発する、ほこりや油が触れる、などである[7]。

膜が極限まで薄くなると、膜の中の光路長が可視光の波長より短くなる。そのため強め合う色が存在せず、膜が黒く見える場合がある[7]。色の仕組みそのものは、別の記事が扱う主題であり、ここでは割れる前の目印として触れるにとどめる。

球という形は、膜の表面積を最小にする点で安定だが、膜の厚さまで一定に保つわけではない。形の安定と、膜の寿命とは別の問題である。

6. おうちで みつけて みよう

6. 台所で、泡の角度と膜の張り方を見てみる

6. 角度を自分で測る:観察のしかたと資料の探し方

おとなと いっしょに やりましょう。おみせで うって いる しゃぼん玉の えきと ふきぐが あれば、それを つかいましょう。なければ、おさらに せんざい(かさんぶん)を すこし まぜた みずを いれ、ストローで ふたつ ならべて ふいて みましょう。

ストローは、ふくだけです。ぜったいに すわないでね。

ふたつの あいだの まくを、よく みて みましょう。みっつ くっつけると、まくが あつまる ところが みつかる ことも あります。みえない ときも あります。

ストローの さきを つかうと、まくの かたちを みやすいよ。かならず おとなと いっしょに やりましょう。

大人といっしょに行いましょう。お店で売っているしゃぼん玉用の液と吹き具があれば、まずそれを使います。液が口に入りにくいように工夫された吹き具もあります。なければ、台所の皿に、薄めた食器用洗剤の液を少し入れます。ストローで泡を2つ、3つと並べて吹き、くっついた境目の膜を、真上から見てみましょう。洗剤液を吸い込まないよう、ストローは吹くためだけに使います。

3つ以上の泡を近づけると、3枚の膜が1本の線に集まる所が見つかることがあります。見つかったら、その3つの角を、紙に写し取るか目で比べてみます。ほとんど同じ角度に見えるでしょうか。見つからない場合もありますし、定規と分度器で測るほど正確には測れませんが、プラトーの規則の「3枚ずつ」は確かめられるかもしれません。

もう一つの観察は、針金の枠を液に浸して引き上げる方法です。枠を張る石けん膜は、枠を張る面のうち面積が極小になる極小曲面のモデルになります[1]。ただし、同じ枠でも複数の膜が張れる場合があり、形は一つとは限りません。

もっと知りたくなったら、小磯深幸さんの日本語の資料([1])に、図や式の続きがあります。

試すなら、市販のしゃぼん玉用の液と吹き具を使うのがよい(液が口に入りにくいように工夫された吹き具もある)。台所で用意するなら、大人といっしょに、薄めた食器用洗剤の液を皿に入れ、ストローで泡を3つ以上近づけて吹く。洗剤液を吸い込まないよう、ストローは吹くためだけに使う。境目の膜が3枚ずつ1本の線に集まる所を探し、真上から見る。泡が2つだけだとその場面が見えないことがあり、見つからない場合もある。角度は目で見て120度に近いかを確かめる程度で、精密な測定にはならないが、3枚ずつという規則は目で見ても確かめられる可能性がある。

もう一つの確かめ方は、針金の枠を液に浸して引き上げる実験である。張った石けん膜は、枠を張る曲面のうち面積が極小となる極小曲面のモデルで、膜の内外の圧力差が0であることと対応する[1]。同じ枠でも複数の膜が張れる場合があるので、結果は一つに決まらない。

資料としては、小磯深幸「シャボン玉とシャボン膜の数学」([1])が、表面張力から極小曲面までを日本語でつなげている。針金の枠を張る膜や圧力差の話も、この資料から読み進められる。

「表面積を最小にする」という一つの考え方が、泡の形、泡の接し方、枠を張る膜という別々の現象を貫いている。それを自分の目で確かめたくなったら、まず1つ泡を吹いて(ストローなら吹くだけで、吸わない)、形を見てほしい。

しらべた もとの じょうほう

参考にした情報源

参考にした情報源と、その使い方

本文の事実は、下の資料から読みました。年や角度などの数字は、それぞれの資料に書かれたものです。

  1. 小磯深幸「シャボン玉とシャボン膜の数学」(九州大学・JST 講演資料、2012)https://www.JST.go.jp/kisoken/presto/research/activity/1112067/pdf/201206_Chiba/2_Koiso.pdf (表面張力と表面積、球の最小性、シュタイナーの対称化、極小曲面)
  2. Virginia Tech, Properties of Bubbles https://www1.phys.vt.edu/bubble/properties-of-bubbles.html (石けんなどの界面活性剤の役割)
  3. Wikipedia: Laplace pressure https://en.wikipedia.org/wiki/Laplace_pressure (泡の内外の圧力差の式)
  4. Wikipedia: Soap bubble https://en.wikipedia.org/wiki/Soap_bubble (球の最小性の証明の年)
  5. Trinity College Dublin, Foams group, Plateau's Rules https://tcd.ie/physics/research/groups/foams/intro-foams/plateau (膜が3枚ずつ120度で出会う規則)
  6. Wikipedia: Double bubble conjecture https://en.wikipedia.org/wiki/Double_bubble_conjecture (二重泡定理の発表と掲載の年)
  7. 薄膜干渉の教材(デジリカ)https://www.digirika.tym.ed.jp/wp-content/uploads/hakumakukanshou.pdf (膜が薄くなると黒く見えること)

なおした ところ

更新履歴

更新履歴(改版の記録)

  •  初版を公開。
  •  中学生向けの題名を、日常の疑問が先に来る形に見直した。
  •  6章の実験と導入を直した。理由: 市販のしゃぼん玉用の吹き具を先にすすめ、ストローを使うときは洗剤液を吸い込まないよう吹くだけにする注意を3レベルに足した。また、高学年向けの導入で「省エネ」が先に出ていたので、「二つの泡を包む膜の面積が、いちばん小さくなる形」を先に書く順番に直した。

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