1. まるい 巣だけが クモの 巣じゃ ないの?
1. クモの網は1種類ではない
1. 網の型は一つではない ── 資料ごとに違う分け方
クモの 巣には、いろいろな かたちが あります。えんもうは、まるい 網。たなあみは、ちり取りのような かたち。ふきそくもうは、くしゃくしゃの かご。さらあみは、うすい まくのような 網です。
ただ、なんしゅるい あるかは、はっきり 決まって いません。本に よって、わけかたが ちがうからです。
この 記事では、見つけやすい 4つを、ひとつずつ 見て いきます。まずは、いちばん なじみ深い まるい 巣から です。
2. まるい 網は、どうして いちばん あとに ねばる 糸を はるの?
2. 丸い網は、粘る糸を最後に張る
2. 円網 ── 足場を先に、粘る糸を最後に張る
まるい 巣は、まんなかから 外へ むかって ほそい 糸が のびて、その 上に ぐるぐると 糸が まかれて います。
つくる じゅんばんが おもしろい ところです。さいしょに、ねばらない 糸で あしばを つくります。いちばん あとで、ねばねばの 糸を ぐるぐると はります[2]。
虫が ねばねばの 糸に ひっかかると、クモは たいてい すばやく かみついて、うごきを とめます。それから、糸で ぐるぐる まきに します。
コガネグモは、大きな 丸い 網を、地めんに むかって たてに はります。まんなかに、Xの かたちの 白い 糸を つけて、あしを 2ほんずつ そろえて じっと まちます[3]。
では、ほかの かたちの 巣は、どこで 虫を まって いるのでしょう。
丸い網は、中心から外へ放射状に糸が伸び、その上に同心円状に細かく糸が張られています[1]。コガネグモ科やアシナガグモ科のクモが張ります。
この網には、糸を張る順番に特徴があります。まず、粘らない放射状の糸で足場をつくり、最後に粘着性のある捕獲らせんを張ります[2]。円網のすべての糸が粘るわけではありません。
そこへ虫がぶつかって粘る糸にかかると、クモはすばやくかみついて動きを止め、糸で包みます[2]。
コガネグモとジョロウグモ
コガネグモは、円板状の大きな網を地面に対して垂直に張ります。中央にはX字状の白い糸(かくれ帯)をつけ、脚を2本ずつそろえてじっと待ちます。敵が近づくと、網をゆすって威嚇するそうです[3]。
ジョロウグモは、木の間に馬のひづめに似た「蹄形円網」を張り、その前後にも糸を張りめぐらせて3重の網にします[4]。同じ円網でも、クモによって細かいつくりは変わります。
では、円網とは別の形の網は、獲物をどうやって待っているのでしょうか。
円網は、中央から放射状に引いた糸に、同心円状に細かく糸を張った形をしている[1]。ところが、このすべての糸が粘るわけではない。網づくりでは、まず粘らない放射状の糸を多数張って足場をつくり、最後に粘着性のある捕獲らせんを張る[2]。
獲物が粘る糸に突っこむと、クモはすばやくかみついて動きを止め、糸で包む[2]。コガネグモの場合は、円板状の網を地面に対して垂直に張り、中央にX字状の白い糸(かくれ帯)をつけて、脚を2本ずつそろえて待つ。敵が近づくと網をゆすって威嚇する[3]。
円網でも、種によってつくりは異なる。ジョロウグモは、木の間に蹄形円網(ていけいえんもう、馬のひづめに似た形)を張り、円網の前後にも糸を張りめぐらせた3重の網をつくる[4]。
では、円網でない網は、獲物とどう出会うのか。次に、草むらに多い棚網を見る。
3. くさむらの ちり取りは、どこで 虫を まつの?
3. 草むらのちり取りは、虫が落ちてくるのを待つ?
3. 棚網 ── 糸にぶつかった虫を、奥で待つクモ
くさむらでは、ちり取りのような かたちの 巣が 見つかる ことが あります。これが、たなあみです。クサグモなどが つくります。
糸を たてよこに はりあわせた、うすい シートの ような ぶぶんが あって、ぜんたいが ちり取りみたいに 見えます。おくには、くだの かたちの すみかが あります[5]。
虫が 巣に かかると、クモは その まわりを まわって 糸を かけます。てきが 来たら、すみかの 中へ にげこみます[5]。
Futurityという ウェブの かいせつ記事には、くさむらの シートのような 巣の ひとつに ついて、こう かいて あります。上に はられた たくさんの 糸に、とんで きた 虫が ぶつかって 落ちます。クモは、下で まって いる そうです[6]。
ただし、これは この 記事の せつめいです。ぜんぶの たなあみに あてはまるとは かぎりません。
棚網は、クサグモなどタナグモ科が張る網です。糸を縦横に張り合わせたシートのようなもので、全体はちり取りのような形をしています[1]。
クサグモは、網の奥に管状の住みかをつくります。網に虫がかかると、その周りを回って糸をかけ、敵が来ると漏斗のような住みかへ逃げこみます[5]。
「落としてから待つ」型
Futurityの解説記事は、草地に多い一部のシート状の網について、網の上に張った多くの糸に飛んできた虫がぶつかって落ち、クモは網の下で待つ、と説明しています[6]。円網のように「そこへ突っこませて粘らせる」というより、「落ちたところを捕まえる」型に見えます。
ただ、これは紹介した解説記事の説明で、棚網全体に当てはまるとは限りません。形や場所から予想して、離れて観察してみたくなるところです。
網の中には、もっと形のはっきりしないものもあります。次は、カゴのような網です。
棚網は、クサグモなどタナグモ科が張る。糸を縦横に張り合わせたシート状の網で、全体はちり取りに似た形をとる[1]。クサグモは網の奥に管状の住みかをつくり、網に虫がかかるとその周りを回って糸をかけ、敵が来ると漏斗状の住みかへ逃げこむ[5]。
では、獲物はどうやって網にかかるのか。専門家の談話を紹介したFuturityの記事は、草地の一部のシート網(sheet web)を、上から張られた多数の糸に飛来した昆虫がぶつかって落ち、クモが下で待つ型として説明する[6]。
ただし、この説明の根拠は一般向けの解説記事にとどまり、棚網全体に当てはまるとは限らない。棚網の糸に円網のような粘る液が付くのかどうかも確認できていない。
そこで、棚網とは別の、構造がさらに見えにくい網に目を向ける。
4. くしゃくしゃの かごに、じめんを ねらう 糸が ある?
4. カゴのような網と、地面をねらう糸
4. 不規則網と皿網 ── 形の乱れの中にある役割
ヒメグモの なかまや ユウレイグモの なかまは、ふきそくもうを はります。かたちが はっきりしない、あらい かごのような 巣です[1]。
この 巣は、ねばねばの 糸で 虫を つかまえます。ヒメグモの なかまの 巣には、じめんへ むかって のびる、はずむような 糸が あります。じめんを 歩く 虫が、その 糸に さわると くっつくのです[7]。
さらあみは、サラグモの なかまが はる、糸を たてよこに かさねた うすい まくのような 網です。虫が ぶつかると つかまります[1]。
マネキグモの なかまは、数ほんの 糸を はるだけの「すじあみ」を つくり、ねばる えきで 虫を おさえます[1]。
では、ちゃんと そろった まるい 巣の ほうが、いいのでしょうか。
不規則網は、ヒメグモ科やユウレイグモ科が張ります。構造がはっきりしない、カゴのように粗く糸を張り合わせた形で、粘着性のある糸で昆虫を捕らえます[1]。
一見でたらめに見えますが、ヒメグモ科の網には、地面に向かって伸びる弾力のある粘着糸があります。地面を歩く虫がこの糸の粘る滴に触れると、捕まってしまいます[7]。
皿網とすじ網
皿網はサラグモ科が張る、糸を縦横に重ねた薄い膜状の網です。支持糸で支えられ、虫がぶつかると捕らえられます[1]。マネキグモ類は、数本の糸を張るだけの「すじ網」をつくり、粘液で獲物を固定します[1]。
空を飛ぶ虫を待つ円網、上から落ちてくる虫を待つとされる棚網、地面を歩く虫にも備えるカゴ網。形を見比べると、待つ場所が少しずつちがうことに気づきます。
では、形の整った円網のほうが、本当に有利なのでしょうか。
不規則網は、ヒメグモ科やユウレイグモ科が張る。構造のはっきりしない、カゴのように粗く糸を張り合わせた形で、粘着性のある糸で昆虫を捕らえる[1]。ところが、ヒメグモ科の網には、地面に向かって伸びる弾力のある粘着糸(gumfoot)があり、地面を歩く昆虫がその糸の粘る滴に触れて捕らえられるとされる[7]。乱れて見える形の中に、地面をねらう仕掛けが含まれているわけだ。
皿網はサラグモ科が張り、糸を縦横に重ねた薄い膜状で、支持糸に支えられ、昆虫がぶつかると捕らえられる。マネキグモ類の「すじ網」は、数本の糸を張っただけで、粘液で獲物を固定する[1]。
ここまでの網を「待つ場所」で並べ直すと、円網は空中で虫を受け止め、棚網は上から落ちる虫を待つ(とされる)、不規則網は地面を歩く虫にも備える、という違いが見える。ただし、これは資料から読み取れる範囲の整理で、網の型と獲物の関係が厳密に決まっているとは言えない。
では、規則正しい形のほうが、網としては優れているのだろうか。
5. せいかくな かたちの 巣が、ぜんぶ いちばん いいの?
5. 整った形は有利なのか ── 分かっていることと、まだ分からないこと
5. 規則的な網は有利か ── 研究報告と進化をめぐる議論
2021年の ある 大学生の 研究では、ぐるぐるの まるい 巣の ほうが、シートのような 巣よりも、たくさんの 虫を つかまえたと ほうこく されて います[9]。ただ、まとめの 一ぶぶんしか 読んで いない 小さな 研究で、ぜんぶの クモに あてはまるとは いえません。
ウズグモの なかまは、まるい 巣を はりますが、ねばる えきでは なく、とても ほそい せんいで 虫を からめとります。どくの せんも もたず、糸で しっかり つつみます[8]。
クモの 巣は、すくなくとも 1おく年 まえから あった ことが、こはくの 中に のこる しょうこで わかって います[11]。どの かたちが さきに できたのかは、まだ 分かって いません。
粘着糸つきの円網と、乱れた形のシート網を比べた学部生の研究(2021年)では、幾何学的に規則的な円網のほうが、多くの獲物を捕らえたと報告されています。規則的な構造が衝撃のエネルギーをむらなく分散するためではないか、と推測されています[9]。ただし、これは要旨だけで確かめた小さな報告なので、一般化はできません。
円網に似た網を張るウズグモ科は、粘る液ではなく、極めて細い繊維で獲物をからめとります。毒腺を持たず、獲物を糸でしっかり包みます[8]。形が似ていても、獲物を捕まえるしくみはちがうことがあります。
網はいつからあるのか
クモの網は、少なくとも1億年前、イングランド南部の前期白亜紀の琥珀からも見つかっています[11]。網の進化については、昆虫が空を飛ぶようになると、クモも高い空中に網を張るようになった、という仮説的な説明があります。シート網が祖先型かもしれないこと、円網が一度だけ生まれたのか何度も生まれたのかは、まだ決着していません[10]。
網の形の整い方は、捕獲効率と関係するのか。UBCの学部生の報告(Tarazi 2021)は、粘着糸つきの円網と乱れた形のシート網を比べ、幾何学的に規則的な円網のほうが多くの獲物を捕らえたと報告している。規則的な構造が衝撃の運動エネルギーを均等に分散するためではないかと推測しているが、確認できたのは要旨のみで、一般化はできない[9]。
形が似ていても機構は同じではない。ウズグモ科は円網に似た網を張るが、粘る液ではなく、極細の繊維で獲物をからめとる。毒腺を持たず、獲物を糸でしっかり包む[8]。
網は少なくとも1億年前から存在し、イングランド南部サセックスの前期白亜紀の琥珀に、その証拠が残る[11]。進化の経路としては、昆虫が飛ぶようになるとクモも高い空中に網を移したという仮説的な説明がある。シート網が全クモの祖先型かもしれないこと、円網が一度だけ生じたのか複数回なのかは未解決とされる[10]。
6. 見つけた 巣を、そっと 見て みよう
6. 見つけた巣を、遠くから観察してみる
6. 出口 ── 巣の場所と形から、待つ獲物を予想する
おうちの まわりや こうえんで、クモの 巣を さがして みましょう。見つけたら、さわらずに、すこし はなれて 見ます。
「まるい」「シートみたい」「くしゃくしゃ」の どれに 近い でしょうか。そして、どこに あるでしょう。空に むかって ひらいて いる 巣、くさむらの 中の 巣、じめんに 近い 巣。
かみに かたちと 場所を かいて、「どんな 虫を まって いそうかな」と よそうして みましょう。巣は こわさないように します。巣が 見つからない ときは、ずかんや 日本語の 本の しゃしんで、かたちを くらべて みても いいです。
公園や庭で、クモの巣を探してみましょう。見つけたら、触れずに少し離れて眺めます。
円網に近いか、シート状か、カゴのようか。巣はどんな場所に、どんな高さにあるでしょうか。形と場所をメモして、「どんな虫を待っていそうか」を予想してみてください。予想のあとで、巣に何がかかっているかを、距離を置いて観察してみると楽しいと思います。
巣は壊さず、クモにも触れないようにしてください。巣が見つからないときは、図鑑や日本語の本の写真で形を見比べてみても構いません。
原典を読むなら、日本語版ウィキペディアの「クモの巣」から入り[1]、コトバンクのコガネグモ[3]やクサグモ[5]の項目に進むと、クモごとの巣の使い方が分かります。
巣を見つけたら、触れずに離れて、形(円網・シート状・カゴ状)と場所(空中・草むら・地面付近)を記録し、待っていそうな獲物を予想してみるとよい。そのうえで、実際に何がかかるかを観察して比べると、本文で述べた「待つ場所」の整理が当たっているかを自分で確かめられる。巣は壊さず、クモにも触れない。巣が見つからなければ、図鑑や日本語の本の写真で形を比べてもよい。
原典に当たるなら、日本語版ウィキペディア「クモの巣」[1]、島根県の自然観察ページ[4]、コトバンクのコガネグモ・クサグモの項目[3][5]が日本語で読める。英語版ウィキペディアの Spider web[11]と Sticky Science の解説[10]は、分類と進化の議論を知る入口になる。
しらべた もとの じょうほう
参考にした情報源
参考にした情報源と、その使い方
出典について:日本語・英語のウィキペディア、コトバンク、島根県の自然観察ページ、Futurityの解説記事、UBCの学部生の報告、Scientific Americanの解説を使った。棚網と皿網の獲物のとり方は、一般向けの資料にもとづくため、断定していない。
- 日本語版ウィキペディア「クモの巣」。 https://ja.wikipedia.org/wiki/クモの巣 (網の種類と、それぞれを張るクモの科について)
- Wikipedia "Orb-weaver spider". https://en.wikipedia.org/wiki/Orb-weaver_spider (円網を張る順序と、獲物の捕らえ方について)
- コトバンク「コガネグモ」。 https://kotobank.jp/word/%E3%82%B3%E3%82%AC%E3%83%8D%E3%82%B0%E3%83%A2-3151530 (コガネグモの網と待ち方について)
- 島根県「自然観察 動物解説(クモ)」。 https://www.pref.shimane.lg.jp/infra/nature/shizen/shimane/sizennkansatu/doubutu_kaisetu/kumo.html (ジョロウグモの3重の網について)
- コトバンク「クサグモ」。 https://kotobank.jp/word/%E3%81%8F%E3%81%95%E3%81%90%E3%82%82-3149655 (クサグモの棚網と住みかについて)
- Futurity "Spiderwebs types". https://www.futurity.org/spiderwebs-types-3252342/ (シート網の獲物のとり方の説明について。専門家談の解説記事)
- Wikipedia "Cobweb spider". https://en.wikipedia.org/wiki/Cobweb_spider (ヒメグモ科の網と、地面へ伸びる粘着糸について)
- Wikipedia "Uloboridae". https://en.wikipedia.org/wiki/Uloboridae (ウズグモ科の糸と獲物のとり方について)
- Tarazi (2021), Expedition, UBC. https://ojs.library.ubc.ca/index.php/expedition/article/view/195689 (規則的な網と不規則な網の捕獲数の比較について。要旨のみ確認)
- Scientific American "Sticky Science: The Evolution of Spider Webs". https://www.scientificamerican.com/article/sticky-science-the-evolution-of-spider-webs (網の進化についての説明と、未解決の点について)
- Wikipedia "Spider web". https://en.wikipedia.org/wiki/Spider_web (英語圏の網の分類と、琥珀に残る最古級の網について)
なおした ところ
更新履歴
更新履歴(改版の記録)
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