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ここにあるのは、だれかが実際に調べ、考え、作ってきたことを集めたメモです。気になったら、ページの下の「参考にした情報源」から、もとの本や記事、それを生み出した人たちに、直接ふれてみてください。このメモには書ききれないおもしろさが、そこにあります。

どくの ある キノコも たべる リス:ふだんは なにを たべて いるの?

毒キノコまで食べるニホンリス:クルミに頼りながら、実のない季節をどう乗りきるのか

ニホンリスは毒キノコも食べる:主食が実らない季節と、埋めたクルミが芽を出す機会

分野:生きもの

リスが、どくの ある キノコを たべて いた。ながのけんの もりで、そんな ようすが ほうこく されました。リスは、どくが こわく ないのでしょうか。

この メモでは、リスの ごはんを、どくキノコ、いちばんの ごはん、はるや ふゆの ごはん、うめた クルミの ゆくえ、の じゅんに しらべます。リスの たべものが 季節きせつで かわる わけが わかります。

長野県の森で、ニホンリスがテングタケの仲間という毒キノコを食べているのが観察され、2021年に学術誌で報告されました。毒があるはずのキノコを、リスはなぜ食べられるのでしょうか。

この記事では、毒キノコの観察から出発して、ふだんの主食、実のない季節の乗りきり方、埋めたクルミのゆくえまで、ニホンリスの食卓が季節でどう変わるのかが分かります。ある調査では、発信機をつけたクルミ156個のうち11個が、春まで誰にも掘り出されずに残り、芽を出す機会をもちました。

神戸大学の末次健司准教授と写真家の五味孝一氏は、長野県でニホンリスが毒キノコのテングタケやベニテングタケを日常的に食べている様子を観察し、2021年12月に報告した。毒をもつキノコを、リスはなぜ食べられるのか。しかも、ニホンリスの食物は少数の種に強く偏るとされる。

この記事では、毒キノコの観察を入口に、主食への依存、実らない季節の食物の切り替え、貯食した実が芽を出す機会まで、ニホンリスの食物利用が季節でどう変わるのかが分かる。ある調査では、発信機をつけたクルミ156個のうち11個が、春まで回収されずに残り、発芽の機会をもった。

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1. リスは どくの ある キノコを たべて だいじょうぶ なの?

1. 毒のあるキノコを、リスはなぜ食べているのか

1. 毒キノコを食べるリスは、本当に平気なのか:観察から言えることと言えないこと

ながのけんの もりで、ニホンリスが キノコを かじって いました。テングタケの なかまで、どくの ある キノコです。

みつけたのは、リスを かんさつ して いた 研究けんきゅうの ひとと、しゃしんを とる ひとです。おなじ リスが、なんにちか あとにも、また その キノコを たべに もどって きました。

あとから、べにてんぐたけなど、ほかの どくキノコを たべる ところも みつかって います。そこで、リスは どくキノコを あんぜんに たべて いる ようだ、と かんがえられました。

でも、どうして へいきなのかは、まだ わかって いません。人が まねしては いけません。やまや もりの キノコは、たべないで ください。

森の中で、一匹のニホンリスがキノコをかじっていました。そのキノコは、テングタケの仲間の毒キノコです。神戸大学の末次健司准教授と写真家の五味孝一さんは、長野県でこの様子を観察し、2021年12月に学術誌で報告しました[1]。

たまたま一度かじっただけ、というわけではなさそうでした。同じリスが、数日後にもテングタケを食べに戻ってきたからです。五味さんは、のちにベニテングタケ、コガネテングタケ、ドクベニタケも食べるのを確認しています[2]。研究チームは、このリスは毒キノコを安全に食べられている可能性が高い、と考えました[1]。

ただし、なぜ平気なのかという仕組みは、報告では示されていません。人が同じことをしてよいという意味でもないので、野山のキノコは食べないでください。

研究チームは、こんな推測も添えています。毒キノコの胞子がリスに食べられても消化を生きのびて、ふんといっしょに出てくるなら、リスが運ぶことはキノコにも得になるかもしれない、というものです[1]。

それにしても、キノコはリスのふだんの主食なのでしょうか。

観察された場所は長野県で、対象はニホンリスである。末次氏と五味氏は、テングタケやベニテングタケなどの毒キノコを、このリスが日常的に食べていると報告した(2021年12月、Frontiers in Ecology and the Environment)[1]。毒キノコ食が偶然の一回でないと考えられたのは、同じ個体が数日後にもテングタケを食べに戻ったためである。五味氏はその後、ベニテングタケ、コガネテングタケ、ドクベニタケを食べる様子も確認している[2]。

研究チームはここから、このリスは毒キノコを安全に食べられている可能性が高いと考えた。ただし、これは行動の観察から導いた見方であり、なぜ平気なのかという仕組みの説明は示されていない。人が同じことをしても安全だという意味にもならない。

では、毒キノコを食べることに、リス以外の利益はあるのか。研究チームは推測として、胞子が消化に耐えて糞とともに排出されるなら、動物がキノコの分散に役立つ可能性を挙げている[1]。あくまで推測の段階であり、確かめられた事実としては扱えない。

残る疑問は、このキノコ食がリスの食生活のどこに位置づくのかである。毒キノコを食べるのだから、リスは何でも食べるのか。実際の食卓は、もっと偏っている。

2. いちばん よく たべる ものは なに?

2. キノコはデザート? ふだん一番食べているもの

2. キノコはデザート感覚、主食は別にある:少数の食物への強い依存

キノコを たくさん たべるのかと おもいきや、リスの いちばんの ごはんは ほかに あります。クルミや くり、マツの みです。

キノコを かんさつ した しゃしんかは、「キノコは デザートみたいに すきで たべて いる」と いって います。ごはんは クルミなどで、キノコは おたのしみ、というわけです。

ニホンリスは、日本では すくない、ひるに うごく どうぶつです。すんで いる ところに よって、マツや オニグルミなど、すこしの たべものに つよく たよる ことが わかって います。

でも、クルミは いつでも みのって いる わけでは ありません。みの ない 季節きせつは、どうして いるのでしょう。

キノコを観察した五味さんは、ニホンリスの主食はクルミや栗などで、デザート感覚でキノコも好んで食べている、と述べています[2]。「デザート感覚」は観察者の実感を込めた言い方で、学術的な結論ではありません。

研究の報告を見ても、似た姿が見えてきます。ニホンリスは日本では数少ない昼行性の動物で、すんでいる環境によって、マツ類やオニグルミなど、ごく少ない種類の食物(メインフード)に強く頼る傾向があるとされます[3]。環境省の解説でも、クルミやドングリ、キノコ類のほか、昆虫なども食べるとされています[4]。

何を主食にするかは、地域の森に何が生えているかで変わるようです。ただ、頼る相手が少ないということは、それが実らない時期が来ると困るということでもあります。

五味氏は、ニホンリスの主食はクルミや栗などで、キノコは「デザート感覚」で好んで食べていると述べる[2]。これは観察者個人の表現であり、食物利用の比率を測った結果ではない点に注意が必要である。

学術的な整理はこうなっている。ニホンリスは日本では数少ない昼行性のリス類で、生息環境によってマツ類やオニグルミなどの少数の食物(メインフード)に強く依存する傾向がある[3]。「傾向」とあるとおり、どの森でも同じ種類が主食になるわけではなく、環境に応じて頼る相手が入れかわる。環境省の解説は、クルミやドングリ、キノコ類のほか昆虫などを食べると述べ、食物の幅の広さも示している[4]。

ただし、依存は弱点にもなる。1種や2種に頼る動物は、その実りが乏しい時期に影響を受けやすいはずである。では、ニホンリスはメインフードが実らない季節をどうやって越えているのか。

3. クルミの ない きせつは どうして いるの?

3. 実のない季節は、花・芽・草・キノコで乗りきる

3. メインフードが実らない季節:多様な食物と貯食の組み合わせ

クルミや マツの みが みのる じきは、きまって います。そのあいだ いがいは、どうするのでしょう。

リスは、木の はなや 芽め、くさ、キノコなど、いろいろな ものを たべて すごす と いわれます。そう、キノコは、ごはんの ない ときの たべものでも あるのかも しれません。

もうひとつの ひみつは、たべものを うめて おく こと。リスは ふゆに ねむりません。だから、ふゆに そなえて、たべものを じめんの なかに うめて おく しゅうかんが あります。

はなや 芽めや キノコで つなぎ、うめた たべもので ふゆを こえる。リスは、そうやって いちねんを すごして いる ようです。

メインフードのクルミやマツの実は、実る時期が限られています。そこでニホンリスは、木の花や芽、草、キノコ類など、さまざまな食物を利用していると報告されています[3]。

もうひとつの備えが、貯食です。環境省の解説によると、ニホンリスは冬眠をしません。そして冬に備えて、食べ物を地中に埋める習性があります[4]。研究報告も、貯食の習性によって食物が乏しくなる季節に対応していると述べています[3]。

冬眠しないので、冬も食べ物が要ります。花や芽や草で実のない時期をつなぎ、秋にためた実で冬を越す。そう考えると、毒キノコを食べることも、リスが広く食物を使いこなしている一つの姿に見えてきます。

では、埋められた実は、すべてリスのおなかに入るのでしょうか。

メインフードは結実期が限られる。そのためニホンリスは、木本の花・芽、草本、キノコ類など、さまざまな食物を利用している。加えて、貯食の習性によって、食物が乏しくなる季節に対応しているとされる[3]。

貯食が冬に意味をもつ理由は、冬眠をしないことにある。環境省の解説は、ニホンリスは冬眠せず、冬に備えて食べ物を地中に埋めると説明している[4]。動かないで過ごすのではなく、寒い時期にも食べ物を必要とするため、実りの多い時期に先回りして蓄える。

この整理は、少数の主食に頼る動物が、どう実りの波に対応するかの一つの答えになっている。実のある時期はそれに集中し、ない時期は花・芽・草・キノコで補い、さらに蓄えで冬を越す。キノコ食も、こうした幅広い食物利用の一部と位置づけられる。

残る問いは、埋められた実の行方である。リスは埋めた実をすべて掘り出すのだろうか。

4. うめた クルミは どう なるの?

4. 埋められたクルミの行方:食べ残しが芽を出す

4. 埋められたクルミ156個を追う:回収されなかった11個と、発芽の機会

リスは、クルミを 1こずつ、べつべつの ところに うめます。じめんに うめるだけで なく、木の また に はさむ ことも あります。ちかくに はこぶ ことが おおく、とおくは 168メートルも はこんだ ものも ありました。

ある ちょうさでは、はっしんきを つけた クルミ 156こを、はるまで おいかけました。

65こは、すぐに たべられました。のこりの 91こは うめられました。そのうち、19こは アカネズミに たべられ、61こは リスが ほりだしました。のこりの 11こは、だれにも ほりだされずに はるまで のこりました。

この 11こは、めを だす チャンスを もった ことに なります。リスが たべのこした ことが、あたらしい 木の はじまりに なるかも しれません。

ニホンリスはオニグルミを、1個ずつ別々の場所に貯えます(分散貯蔵)。地面に埋めるほか、木の股に挟むこともあります。追跡では15mまでの近い場所が多いものの、最高168m運ばれたものもありました[5]。サッカー場の長いほうの辺よりも遠くです。

発信機をつけたクルミ156個を春まで追った調査があります[5]。65個はすぐ食べられ、残る91個(木の上に44個、地面に47個)が貯蔵されました。その91個のうち、19個はアカネズミに食べられ、61個はリスが回収し、11個は春まで回収されずに残りました。

この11個を計算すると、全体156個の約7%、貯蔵された91個の約12%です。この11個が発芽の機会をもった、と解説されています。発芽したという意味ではなく、1つの調査の数字なので、どの森でも同じとは限りません。

別の例として、ドングリの話ですが、自然に落ちただけでは芽を出しにくく、鳥や動物に浅く埋められたものが芽を出せる、という解説もあります[6]。ただしこれは鳥や動物の話で、リスだけの働きとは言えません。それでも、リスの食べ残しが森の次の木につながる可能性は、数字から読み取れます。

毒キノコから始まったリスの食卓は、食べ残しが木を生む話にまでつながりました。最後に、この話を自分で確かめる道すじを紹介します。

貯食の中身を詳しく見ると、ニホンリスはオニグルミを1個ずつ別々の場所に貯える「分散貯蔵」をする。地面に埋めるほか、木の股に挟むこともある。追跡では15mまでの近距離に運ばれたものが多かったが、最高168m運ばれた例もあった[5]。最高168m運ばれた例もあり、近くに運ばれたものだけではない。

では、貯蔵されたクルミの運命はどうなるのか。発信機をつけたクルミ156個を春まで追った調査では、65個がすぐに食べられ、44個が木の上に、47個が地面に貯蔵された。貯蔵は合計91個で、65と91を足せば156になり、数字は合っている。貯蔵91個のうち、19個はアカネズミに食べられ、61個はリスが回収した。残る地面3個、樹上8個の計11個が回収されず春まで残り、発芽の機会をもった[5]。19+61+11=91となり、これも合う。

11個は全体の約7%、貯蔵された91個の約12%である。ここで注意したいのは、この11個が発芽したという意味ではなく、あくまで「発芽の機会をもった」にとどまることと、1つの調査の結果であることだ。数字をそのまま他の森に当てはめることはできない。

別の例として、ドングリを題材にした解説がある(クルミの話ではない)。自然に落ちたドングリは芽を出しにくく、鳥や動物に浅く埋められたものが芽を出せるという説明である[6]。ただしこれは鳥や動物全般の話で、リスだけの功績とは言いきれない。それでも、リスが蓄えて食べ残した実が、森の次の木につながる経路になりうることは、上の追跡の数字から読み取れる。

ここまでの流れを振り返ると、毒キノコの観察から始まった食物の話は、主食への依存、季節ごとの切り替え、貯食、そして食べ残しという順に、一本の線でつながっていた。この線を自分で確かめる手がかりを、最後に示す。

5. リスの ごはんを じぶんで たしかめるには

5. 156個の数字を検算して、住んでいる地域のリスの主食を調べる

5. 数字を自分で検算し、原典と地域の資料に当たる

やって みよう:クルミの すうじを けいさん して みましょう。65こ + 91こ = 156こ です。19こ + 61こ + 11こ = 91こ に なるかも、たしかめて みて ください。

こたえが あえば、きじの かずの たしざんが あっていると わかります。きじに かいてある すうじも、じぶんで けいさん できる ことが おおいのです。

もりで リスを みかけたら、とおくから しずかに みましょう。キノコは さわったり たべたり しないで ください。

やってみよう:この記事の数字を、自分で検算してみましょう。65個+91個が156個、19個+61個+11個が91個になります。11個が全体の何%か、電卓で割り算して、記事の「約7%」と合うか確かめられます。

もう一つは、住んでいる地域のリスの主食を調べることです。メインフードは環境によって変わるとされるので、地域の自然観察の資料や博物館の解説に、その土地の主食が書かれているかもしれません[3]。

林や公園でリスを見かけたら、近づかずに遠くから静かに見てください。野生のキノコには触れず、食べないでください。

この記事の数字のうち、最初に確かめやすいのは貯食の追跡結果である。65+91=156、19+61+11=91、11÷156≒0.07、11÷91≒0.12という計算で、記事中の数字が一貫していることを自分で確かめられる。元の資料(長野県林業総合センターの技術情報)にも当たると、調査の方法や条件も読める[5]。

毒キノコの観察は、観察者の五味氏による記事と大学の発表の両方がある。観察者自身の言葉と研究チームの結論を並べて読むと、事実と推測・感想がどこで分かれるかが見えてくる[1][2]。

地域ごとの主食の違いは、この記事の範囲を超える。自分の住む地域のリスについては、自治体や博物館の資料で確かめるとよい。野外では、リスには近づかず、野生のキノコには触れない。

しらべた もとの じょうほう

参考にした情報源

参考にした情報源と、その使い方

下の資料は、いずれも記事で使った事実の出どころです。

  1. 神戸大学 ニュース(Kobe University news)「ニホンリスが毒キノコを食べる観察」2022年2月4日 https://www.kobe-u.ac.jp/en/news/article/2022_02_04_01/ (毒キノコの観察と、安全に食べられている可能性、胞子についての推測)
  2. 五味孝一「日本菌学会ニュースレター 2023-1」 https://www.mycology-jp.org/_userdata/Newsletter/NL2023-1_OA.pdf (観察者の言葉、のちに確認された毒キノコの種類)
  3. 霊長類研究 Supplement 29(J-STAGE・要旨) https://www.jstage.jst.go.jp/article/primate/29/0/29_47/_article/-char/ja (メインフードへの依存と、季節ごとの食物)
  4. 環境省 エコジン クイズ https://www.env.go.jp/guide/info/ecojin/quiz/20210818.html (食べ物の種類、冬眠しないこと、地中に埋める習性)
  5. 長野県林業総合センター 技術情報No.92(森林総合研究所『研究の森から』抜粋) https://www.pref.nagano.lg.jp/ringyosogo/seika/gijyutsu/documents/092-4.pdf (分散貯蔵と、発信機をつけたクルミの追跡結果)
  6. キヤノン「鳥が教えてくれること vol.4」 http://global.canon/ja/bird-branch/bird-column/biodiversity4/index.html (ドングリが浅く埋められて芽を出す話)

なおした ところ

更新履歴

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