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ここにあるのは、だれかが実際に調べ、考え、作ってきたことを集めたメモです。気になったら、ページの下の「参考にした情報源」から、もとの本や記事、それを生み出した人たちに、直接ふれてみてください。このメモには書ききれないおもしろさが、そこにあります。

ふゆに ドアノブで パチッと なる でんきは、なにが もとで たまるの?

歩くときの静電気、セーターより靴と床が関係する? ── 乾いた日に電気が逃げにくい理由

冬の静電気 ── 履物と敷物で変わる歩行帯電と、湿度で変わる「電気の逃げる時間」

分野:技術

ふゆの パチッは、セーターの せいだと おもいますよね。ところが、あるいた ときに からだに たまる 電気は、くつと ゆかが 同じなら、下着と くつ下だけでも、ウールの セーターを きこんでも、あまり かわらなかった という 調べが あります[1]。

では 電気は どこで たまり、どうして ふゆに パチッと くるのでしょう。電気が にげる はやさが、湿度しつどで 大きく かわる という かんがえ方が わかります。

冬のパチッの犯人といえばセーターですが、大阪産業技術研究所の技術資料には、歩いたときの体の電圧を、服装を変えて測った結果が載っています。下着に靴下だけでも、ウールのセーターを着込んでも、履物が同じなら大きな差はありませんでした[1]。

では電気はどこでたまり、なぜ冬になるとパチッと来るのでしょうか。靴と床の役割と、湿度によって電気が逃げる時間が桁ちがいに変わる考え方が分かります。

歩行時の人体帯電圧は、敷物と履物の種類に強く左右された。履物と敷物を同じにして着衣を変えた場合、つまり下着に靴下だけの場合と、ウールのセーターを着込んだ場合では、帯電レベルに大きな差がない、というのが1998年の大阪産業技術研究所の技術資料の報告である[1]。冬のパチッは、本当にセーターのせいなのか。

歩くたびに電荷が移って体にたまり、湿度が高ければ逃げ、低ければ逃げにくくてたまったままになる、という考え方がある。靴と床の効き方と、電気が逃げるまでの時間が抵抗の違いで100倍変わるという和紙のモデル計算まで、公的機関の資料から分かる。

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1. パチッと きた とき、手の さきで なにが おきて いるの?

1. ドアノブに触れる直前、指先と金属のすき間で起きていること

1. 放電の直前 ── 体を「電気をためる入れ物」とみなす見方と、数千ボルトの火花

ふゆの あさ、車の ドアに 手を のばした しゅんかん、パチッ。あの いたい 音と ひかりは、からだに たまって いた 電気が、金属きんぞくに いっきに ながれた しるしです[3]。

電気の つよさは、数千から 数万ボルト ほど。でも ながれる 電気の りょうは とても 少なくて、人の いのちに かかわる ことは ないと、けんの 研究所けんきゅうじょの しりょうに あります。

ひとの からだは、電気を ためる 入れ物 みたいに かんがえる ことが できます。そこの 電気の つよさが 3000ボルトを こえると、ピリッと かんじる と いわれて います[1]。

3000ボルトの 火花は、どれくらい はなれた ところから とぶのでしょう。空気の 中では、1センチあたり 3万ボルトが めやすです[4]。3000を 3万で わると、0.1センチ。つまり 1ミリ ほどです。かたちや 湿度しつどで かわる、おおまかな 見つもりですが、パチッの 前、ゆびと 金属きんぞくの すきまは、1ミリくらいが めやすに なります。

この 電気は、どこで からだに たまったのでしょう。セーターが あやしい、と おもう 人も 多いはずです。

冬の朝、車のドアに手を伸ばしたとたんにパチッ。あれは、体にたまっていた電気が金属に向かって一気に流れる放電です。群馬県立産業技術センターの資料では、日常の静電気は数千〜数万ボルトで、放電のときの電流は1〜数ミリアンペアとされています。電流が小さいので人命にかかわることはありませんが、電子機器には誤動作や故障の原因になります[3]。

人の体は、電気をためる部品であるコンデンサーのような存在とみなせる、と大阪産業技術研究所の資料は説明します。その大きさは60〜100ピコファラドで、右手でも左手でも胴体でも、同じくらいの電圧になるそうです。体の電圧が3000ボルトを超えると電撃ショックを感じるといわれ、カーペットの制電性を評価するときの目安にもなっています[1]。

では、3000ボルトの火花は、どれくらいのすき間を飛びこえるのでしょうか。空気が電気を通してしまう強さ(絶縁破壊電界)は、1センチあたり約3万ボルトです[4]。3000を3万で割ると0.1センチなので、1ミリほどと見当がつきます。形や湿度で変わる概算にすぎませんが、パチッの直前、指先と金属のすき間は、1ミリ前後が目安になります。

この電気は、いつ体にたまったのでしょうか。服を脱ぐときのパチッを思い出して、セーターを疑う人が多いでしょう。

ドアノブに指を近づけたときのパチッは、体にたまった電荷が金属へ一気に流れる放電である。群馬県立産業技術センターの試験機器の説明資料によると、日常の静電気の電圧は数千〜数万V、放電時の電流は1〜数mAにすぎず、人命にかかわることはない。それでも電子機器にとっては誤動作や故障の原因になるため、機器の耐性を調べる試験が行われている[3]。

電荷はなぜ体にとどまるのか。大阪産業技術研究所の資料は、人体を60〜100pFの静電容量をもつコンデンサーのような存在とみなす。右手・左手・胴体のどこで測っても同等の電圧になるので、この説明では、体にたまった電気を全体で考える。人の帯電圧が3kVを超えると電撃ショックを感じるといわれ、カーペットの制電性評価でも3kVが目安にされている[1]。コンデンサーにたまる電荷は「静電容量×電圧」で表せるから、60pF×3kVで約0.18マイクロクーロン、100pFなら約0.3マイクロクーロンになる(資料の数値による筆者の計算)。

では、3kVの放電は、指と金属がどこまで近づいたときに起きるのか。空気の絶縁破壊電界は約3万V/cmで、約10万Vの放電球の実験では、棒を約3cmまで近づけると放電が見えるという日本大学理工学部の公開実験資料がある[4]。この目安で3kVを割ると0.1cm、つまり1mm程度になる。これは電界が一様だと仮定した単純計算で、実際の火花は電極の形や湿度で変わるので、概算として見るのが妥当だ。

ここまでで、パチッは「数千Vまでためた体と金属が、1mm前後に近づいたときの放電」という目安が分かった。では、その電荷はどこで体に乗るのか。服を脱ぐときのパチッから、セーターを疑う人は多いだろう。

2. はんにんは セーターじゃ なくて、くつと ゆかなの?

2. 歩くときは、服より靴と床が効いている

2. 服を変えても帯電圧はほぼ同じ ── 歩行帯電を決める履物と敷物

しらべたのは、大阪おおさかの 研究所けんきゅうじょです。あるいた ときに からだに たまる 電気の つよさを、きる ものを かえながら はかりました[1]。

下着と くつ下だけの とき。ウールの セーターを きこんだ とき。くつと ゆかが 同じなら、どちらも あまり かわりませんでした。かわったのは、ゆかの しゅるいと くつの しゅるいの ほうです。

ただし、これは 1998年の しらべで、あるく ときの はなしです。ぬぐ ときの パチッまで、同じとは かぎりません。それでも、たくさん あるいた あとに パチッと くる ときは、足もとが あやしいのかも しれません。

では、同じ くつで あるいても、夏には あまり パチッと こないのは なぜでしょう。

ORISTの資料には、歩いたときの体の電圧を測った実験が載っています。下着に靴下だけの場合と、ウールのセーターを着込んだ場合を比べると、履物が同じなら帯電レベルに大きな差はありませんでした。一方、敷物と履物の種類を変えると、電圧は大きく変わりました[1]。歩くときの静電気は、着ている服より、足もとの組み合わせで決まる部分が大きいといえます。

ただし、この結果は1998年の調査での、歩行時の電圧についての話です。服を脱ぐときのパチッまで同じだとは言えませんし、「セーターは全く関係ない」と言い切るのも行き過ぎです。そこで、この章の結論は「歩くときは、服よりも靴と床が効く」までにとどめておきます。

靴と床が主役だとすると、新しい疑問が出ます。同じ靴と床で歩くのに、夏はあまりパチッと来ないのはなぜでしょうか。

冬の静電気の犯人は着衣、という印象は強い。ところが大阪産業技術研究所の技術資料(No.98006、1998年)は、歩行時の人体帯電圧は敷物と履物の種類に強く依存し、履物と敷物を同じにして着衣を変えても大きな差はなかったと報告している。下着に靴下だけの場合と、ウールのセーターを着込んだ場合を比べても、帯電レベルに大きな差はなかった[1]。

この結果には条件がある。歩行時の帯電圧を測った調査であり、服を脱ぐ、立ち上がるといった別の動作で起きる帯電まで同じとは言えない。したがって「着衣は関係ない」という一般論ではなく、「ある調査では、歩行帯電に限れば着衣より履物と敷物の差が大きく出た」と読むのが正確である。

では、同じ靴と床でも、夏はパチッが少なく、冬に増える傾向があるのはなぜか。次の章で、湿度との関係を見る。

3. おなじ あるきかたなのに、かわくと どうして ふえるの?

3. 湿度が下がると、同じ歩き方でも体の電圧が高くなる場合がある

3. 相対湿度20%で10kV超の場合も ── 湿度が下がると歩行帯電圧が増える傾向

パチッと くる トラブルは、夏より 湿度しつどの ひくい 冬に 多い けいこうが あると、大阪おおさかの 研究所けんきゅうじょの しりょうは のべて います[1]。

カーペットの 上を あるいた ときの 電気の つよさは、湿度しつどが ひくく なるほど ぐんぐん 大きく なります。湿度しつどが 20パーセントの ときには、1万ボルトを こえる ことも ある そうです。ピリッと かんじる めやすの 3000ボルトの、3ばい いじょうです。

どうして、かわくと そんなに ふえるのでしょう。研究所けんきゅうじょの 答えは、湿度しつどが ひくいと 電気の 通りにくさが 大きく なり、電気が うごきにくく なるから、です[1]。

たとえば、からだを バケツに します。あるくたびに、バケツに 水が すこしずつ たまります。しめった 日は バケツに 小さな あなが あいて いて、水が にげて いきます。かわいた 日は あなが ふさがり、水が にげません。

ただし これは たとえ ばなしです。ほんとうは、水では なく 電気で、あなでは なく、電気の 通りにくさが かわって いるのです。その にげる はやさを、数字に した 人たちが います。

静電気のトラブルは、夏より湿度が下がる冬に多い傾向があると、ORISTの技術資料は述べています。カーペットの上を歩いたときの帯電圧は、相対湿度が下がるほど指数関数的に大きくなり、相対湿度20%では10キロボルト以上になる場合もあります[1]。体が3000ボルトで電撃を感じるといわれることを思うと、その3倍以上です。

ここで疑問が出ます。乾くと、電気がたくさん生まれるのでしょうか。それとも、生まれた電気が逃げないのでしょうか。ORISTの別の技術資料は、「湿度が低下すると電気抵抗が大きくなって、電荷の動きが抑えられてしまうから」と答えるのがよいだろう、と書いています[2]。

水の入ったバケツにたとえるなら、歩くたびに水が少しずつたまります。湿った日はバケツの底に穴があって、たまった分が抜けていきます。乾いた日は穴がふさがって、水が抜けません。ただし本物の電気は水とちがい、電気の通りにくさ(電気抵抗)が湿度で変わることで、逃げる速さが変わります。

この「逃げる速さ」は、資料の中で数字にされています。何秒かかるのでしょうか。

静電気によるトラブルは夏より湿度の低い冬に多い傾向があり、カーペットを歩行したときの人体帯電圧は、相対湿度が下がるにつれて指数関数的に大きくなる。相対湿度20%では、10kV以上になる場合もある[1]。電撃ショックを感じる目安の3kVの3倍以上だが、「場合もある」と条件つきの記述であり、いつもこの値が出るわけではない。

乾くと帯電が増えるのは、電荷の発生が増えるからか、逃げにくくなるからか。大阪産業技術研究所の別の技術資料(No.10001)は、後者を答えとしている。湿度が下がると電気抵抗が増し、電荷が動きにくくなる。そう答えるのが妥当だろう、という書き方である。しかも同じ資料は、電気抵抗そのものが湿度でどう変わるかについては、なお理論的な検討が必要だとも書く[2]。つまり、方向は分かっているが、仕組みの全部は決着していない。

この資料の実験材料は和紙であり、人の皮膚や衣類で同じ数値が出るとは限らない。それでも、帯電した物体の電位が時間とともにどう減るかを、式で書けるところに価値がある。その式を使うと、「逃げるのに何秒かかるか」が計算できる。

4. 電気が にげきる まで、なん秒 かかるの?

4. 電気が逃げきるまでの時間は、湿度で桁ちがいに変わる

4. 緩和時間τ=RC ── 和紙の計算では、抵抗が10分の1になると電気は10倍の速さで抜ける

大阪おおさかの 研究所けんきゅうじょの 人たちは、和紙に 電気を ためて、どれくらいで なくなるかを 計算けいさんしました[2]。

電気の 通りにくさが 大きい とき、50秒びょうほど。ちょうど 10ぶんの 1の とき、5秒びょうほど。さらに 10ぶんの 1だと、0.5秒びょうほどで、ほとんど ゼロに なります。

50秒びょうと 0.5秒びょうは、100ばいも ちがいます。湿度しつどが あがると、電気の 通りにくさが ぐんと へるので、しめった 日は あっというまに 電気が にげます。かわいた 日は、にげる のが おそくて、つぎの 一歩の 電気が かさなって いきます。

ただし これは 和紙の 計算で、人の からだや ふくで はかった 数字では ありません。通りにくさが 湿度しつどで かわる わけは、研究所けんきゅうじょの 人も、これからの けんきゅうが ひつよう、と かいて います。

では、ふゆの 空気は、どうして そんなに かわいて いるのでしょう。

ORISTの資料は、帯電した和紙の電位が時間とともに指数関数で減っていくことを実験で確かめ、減る速さを決める「緩和時間τ(タウ)」を使って説明しています。τは、電気の通りにくさ(抵抗R)と、電気をためる大きさ(静電容量C)をかけた値です[2]。

和紙の抵抗が10の11乗オームのとき、帯電量がほぼゼロになるまでおよそ50秒。10の10乗オームなら約5秒。10の9乗オームなら約0.5秒です。抵抗が10分の1になるたびに、電気が抜けきるまでの時間も10分の1になります。50秒と0.5秒を比べると、100倍の差です。

この資料では、和紙の抵抗は湿度が上がると指数関数的に小さくなっています。和紙の資料では、湿った日は抵抗が小さいので、電気は数秒で抜けると予測されています。乾いた日は抵抗が大きいので、電気が抜けるまでに時間がかかり、その間に次の一歩の電気が重なっていく、という考え方ができます。ただし、これは和紙のモデル計算で、人の体や冬の服の実測値ではありません。抵抗が湿度で変わる理由についても、資料は「なお理論的な検討が必要」と書いています[2]。

では、湿度が下がる冬、空気そのものはなぜ乾いているのでしょうか。

帯電した和紙の電位Vは、V=V₀exp(−t/τ)のように指数関数で減り、τ=RCで表される。静電容量Cは約1×10⁻¹⁰Fと見積もられている。資料の予測では、和紙の電気抵抗が10¹¹Ωのときは約50秒、10¹⁰Ωなら約5秒、10⁹Ωなら約0.5秒で、帯電量がほぼゼロになる[2]。

この数字を検算してみる。R=10¹¹Ω、C=10⁻¹⁰Fなら、τ=10秒になる。資料の約50秒はその約5倍にあたり、exp(−5)≈0.0067なので、最初の1%を切る時間と読める(筆者の計算。資料が「ほぼゼロ」の基準を明記しているわけではない)。抵抗が10分の1になればτも10分の1になるので、50秒と0.5秒は100倍の差だ。

同じ資料は、和紙の電気抵抗が相対湿度に対して指数関数的に減ること、τが絶対湿度の高いほど指数関数的に減ることも報告している。ただし、同じ絶対湿度でも20℃と28℃でτは違った。筆者らはこれを抵抗の温度変化によると考えているが、「想像ですが」と断った推測である[2]。

この計算が使える範囲は限られる。材料は和紙であり、人の体や冬の衣類での実測値ではない。電気抵抗が湿度で変わる理由そのものについても、資料は理論的な検討が必要としている。だから、乾いた日は逃げるのが遅いので電荷が重なっていく、という筋道は「こういう考え方がある」として読むのがよい。

湿度が下がる冬、そもそも空気はなぜ乾くのか。次の章で、気象と空気の水蒸気量から考える。

5. ふゆの 空気は、どうして かわくの?

5. 冬の太平洋側が乾く理由と、「湿度◯%」の読み方

5. 冬型の気圧配置と、相対湿度・絶対湿度の違い

ふゆに なると、きたにしの 風が ふきます。この 風は、山を こえる ときに 水を おとして、かわいた 空気に なります。きしょうちょうの 東北の せつめいに、山を こえた 風は かわいて いて、たいへいようがわでは 晴れの 日が つづく、と あります[5]。ふゆがたの ときの はなしです。

もうひとつ、気温の はなし。空気が ふくめる 水の りょうは、気温で かわります。15度で 湿度しつど70パーセントの 空気には、1立方メートルに 水が 9グラム。3度まで ひえると、6グラムしか ふくめず、のこりの 3グラムが 水の つぶに なります[2]。

つまり 湿度しつどは、そのときの 気温で かわる わりあい です。外の 水の りょうと、へやの 中の 湿度しつどは、同じ 数字には なりません。

冬型の気圧配置になると、北西の季節風が山脈を越えるあいだに水分を落とし、乾いた空気になります。気象庁の東北地方の解説では、太平洋側で晴れの日が続くのは、山脈を越えてきた季節風が乾いているためだと説明されています[5]。この話は、冬型のときの太平洋側に限ったものです。

湿度の数字の読み方にも注意が必要です。相対湿度は、空気が含める水蒸気の最大量に対する割合なので、気温で変わります。たとえば気温15℃で相対湿度70%の空気は、1立方メートルあたり水蒸気9グラム、つまり絶対湿度9g/m³です。3℃に冷えると含める量は6g/m³まで下がり、超えた3g/m³が水滴になります[2]。

ORISTの実験では、τは絶対湿度が高いほど指数関数的に小さくなりました。ただし、同じ絶対湿度でも20℃と28℃でτは異なり、筆者らは抵抗の温度変化が原因ではないかと推測しています[2]。「湿度が何%か」と同時に、「いま何℃か」も見るほうが、電気の逃げやすさを考えやすくなります。

ここまで、電気の量と逃げる速さの話をしてきました。この「体にたまる電気」は、数字に直せるほどはっきりした量なのでしょうか。

冬の乾燥には、季節風と気温による湿度の変化が関係する。まず気象については、気象庁の東北地方の解説で、冬型の気圧配置では北西の季節風が山脈を越えるあいだに水分を落とすため、太平洋側では乾いた晴天が続くと説明されている[5]。ただしこれは東北地方の記述であり、全国の太平洋側に広げるときは「冬型の気圧配置のとき」と限定する必要がある。

次に、湿度の数字の意味である。相対湿度は、その気温で空気が含める水蒸気の最大量に対する割合で、絶対湿度は1m³あたりの水蒸気の質量だ。ORISTの資料の例では、気温15℃・相対湿度70%の空気は絶対湿度9g/m³で、3℃まで冷えると含める量は6g/m³に下がり、超過した3g/m³が結露する[2]。つまり相対湿度は気温で動く値で、水蒸気の量が同じでも、気温が変われば%の表示は変わる。

この区別は帯電の議論にも関わる。ORISTの実験では、和紙のτは相対湿度よりも絶対湿度に対して指数関数的に減る形で整理されたが、同じ絶対湿度でも20℃と28℃でτが異なった。理由は抵抗の温度変化と考えられているが、あくまで筆者らの推測として書かれている[2]。

ここまでの話は、体にたまる電気を「静電容量と電圧」で考えてきた。では、この体を再現する機械は、どんな数字で作られているのか。

6. ひとの からだを まねる 機械きかいって、どんな もの?

6. 電子機器の試験は、人の体の放電をまねて行われる

6. 人体モデルの数字 ── 150pF・330Ωの試験機と、60〜100pFの違い

電気で うごく きかいは、パチッで こわれて しまう ことが あります[3]。だから 作る 人たちは、人の からだの パチッを まねる 機械きかいで、こわれないか ためして います。

その 機械きかいには、電気を ためる 部品と、ながれを おさえる 部品が はいって います。ためる ほうは 150ピコファラド、ながれを おさえる ほうは 330オームという 数字が 使われて います。

パチッは、はかれる ものに なって、スマートフォンや パソコンを まもる テストに 使われて いるのです。

群馬県立産業技術センターの資料によると、電子機器の静電気試験は、人の体からの放電をまねて行います。試験機の充電用コンデンサーは150ピコファラド(500ピコファラドも可)、放電抵抗は330オーム、出力は0.2〜30キロボルトで、IEC 61000-4-2などで規格化されています[3]。

注意したいのは、この150ピコファラドは試験規格の値で、人の体の実測値ではないことです。先に見た60〜100ピコファラドとは、別の数字です。人体モデルの数字は規格ごとに異なり、100ピコファラドと1.5キロオームの組み合わせを使う規格(MIL-STD-883)もあります。

体にたまる電気は、数字で書き、機械でまねし、機器を守るための試験に使える量になっています。

電子機器の静電気試験は、人体からの放電を模擬して、故障しない、誤動作しないなどの耐性を確認するものである。群馬県立産業技術センターの試験機は、充電用コンデンサ150pF(500pFも可)、放電抵抗330Ω(100Ω、500Ω、2kΩも可)、出力0.2〜30kVで、IEC 61000-4-2などで規格化されている[3]。

注意が必要なのは、150pFが試験規格の値で、人の体の実測値ではないことだ。先に見たORISTの資料の60〜100pFとは別の数字であり、人体モデルの数字も規格ごとに違う。100pFと1.5kΩの組み合わせを使うMIL-STD-883のような例もある。

体にたまる電気を、静電容量・抵抗・電圧という数字に分けて扱うと、パチッは測れて、まねできて、守れるものになる。この見方で、最初の問いに戻れる。冬のパチッの犯人は、セーターだけではなく、足もとの靴と床の組み合わせで体にたまる電荷と、乾いた日はその電荷が逃げにくいことの重なりだ。

7. パチッの ひを きろくして、計算で たしかめよう

7. パチッの日の記録と、「逃げる時間」の検算

7. 日常の観察と検算、資料の読み方

おうちに 湿度しつど計が あれば、パチッと きた ひの 数字を メモして みましょう。ない ときは、てんきよほうの 湿度しつどで だいじょうぶです。その ひに はいて いた くつ下と スリッパも、いっしょに かきます。

10日ほど たまったら、湿度しつどの ひくい ひに パチッが 多いか、スリッパの しゅるいで かわるか、見て みます。ぐうぜんが まじるので、きまりが 見えなくても それで いいのです。

電たくが あれば、計算けいさんも できます。秒びょうの 数は、通りにくさが 10ぶんの 1に なると、10ぶんの 1に なります。50を 10で わると 5、5を 10で わると 0.5。ほんとうに そう なって いるか、たしかめて みましょう。

まず、家にある湿度計で、パチッと来た日の湿度を記録してみてください。湿度計がなければ、天気予報の湿度でかまいません。靴下かスリッパかはだしか、床がフローリングかカーペットかも、一緒にメモします。

10日ほど続けて、湿度の低い日にパチッが多いか、足もとの組み合わせでちがうかを見てみます。偶然が混ざるので、はっきりした傾向が見えなくても問題ありません。「湿度が低い日が多かった」だけでも、資料の話と照らし合わせるヒントになります。

もう1つは、電卓での検算です。和紙の抵抗が10¹¹Ω、静電容量が10⁻¹⁰Fなら、τ=RCは10秒です。抵抗が10¹⁰Ωなら1秒、10⁹Ωなら0.1秒になります。資料が示した50秒、5秒、0.5秒は、そのおよそ5倍にあたります。

記録と検算を重ねると、冬のパチッを数字で見たとき、足もとと空気の乾き具合という2つの手がかりが見えてきます。資料はORISTの技術資料No.98006とNo.10001で、どちらも日本語で読めます。

日常で確かめる方法は2つある。1つは記録で、パチッと来た日の湿度(家の湿度計、なければ天気予報の湿度)、気温、履物、床の種類をメモする。10日ほど続けて、湿度の低い日にパチッが多いか、履物や床で差が出るかを見る。偶然が混ざるので、傾向は参考程度に見る。

もう1つは検算だ。資料の和紙の例で、R=10¹¹Ω、C=10⁻¹⁰Fとするとτ=RC=10秒になる。10¹⁰Ωなら1秒、10⁹Ωなら0.1秒だ。資料が示す50秒・5秒・0.5秒は、ちょうどそれぞれの約5倍に当たる。これが「ほぼゼロ」の基準として資料に書かれているわけではなく、筆者の読み取りである点は押さえておきたい。

記録と検算をそろえれば、冬のパチッを、湿度・気温・履物という条件と、τ=RCという数字から考えられる。大阪産業技術研究所の技術資料No.98006(歩行帯電圧と着衣・履物・敷物の関係)とNo.10001(湿度と電荷の減衰)は、どちらも日本語で公開されている。

しらべた もとの じょうほう

参考にした情報源

参考にした情報源と、その使い方

本文の[ ]の番号は、下の出典に対応しています。数値は各資料の記述にもとづき、検算や概算は筆者によるものです。

  1. 大阪産業技術研究所(ORIST)「技術資料 No.98006 繊維・高分子材料の帯電性とその評価方法」 https://www.orist.jp/technicalsheet/98006.pdf (人体の静電容量・歩行帯電圧と湿度・服装の関係)
  2. 大阪産業技術研究所(ORIST)「技術資料 No.10001 バチッと感じる静電気。湿度との関係は?」 https://orist.jp/technicalsheet/10001.pdf (和紙の帯電減衰・緩和時間τ・絶対湿度と相対湿度)
  3. 群馬県立産業技術センター 静電気の耐性試験 説明資料 https://www.tec-lab.pref.gunma.jp/wp-content/uploads/info/files/11-01.pdf (日常の静電気の大きさ・人体モデル試験機の仕様)
  4. 日本大学理工学部 物理 公開実験資料(バンデグラーフ型装置) https://www.phys.chs.nihon-u.ac.jp/kamioka/img/file9.pdf (空気の絶縁破壊電界の目安)
  5. 気象庁「東北地方の気候 〜四季の天気〜 冬」 https://www.data.jma.go.jp/cpd/j_climate/tohoku/winter.html (冬型の気圧配置と太平洋側の乾いた晴天)

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