1. じょうきは、どうして 水に なるの?
1. 熱い蒸気が、配管の中で水に戻っていく
1. 蒸気はなぜドレンになり、なぜ邪魔なのか ── 凝縮と排出の必要
じょうきは、水が あつくなって 見えない 気たいに なった ものです。この じょうきが つめたい ものに ふれると、ねつを わたして、また 水に もどります。
この 水を「ドレン」と いいます[2]。ストーブの くだや、あたためたい きかいの まわりで、ドレンは どんどん できます。
ドレンが たまると こまります。水の かたまりが いきおいよく ぶつかって、くだや べんを いためる ことが あるからです[3]。くだの 中には くうきも あって、これも 出さなければ なりません[2]。
そこで、じょうきは とめて、ドレンと くうきだけ 出す べんが いります。それが スチームトラップです。
蒸気が水に戻る
蒸気は、熱を周りや温めたいものに渡すと、気体から液体に戻ります。この水をドレンといいます。バルブの会社の資料は、トラップを「蒸気は冷えると水に戻る。その水を自動的に出す弁」と説明しています[2]。
蒸気を使う側から見ると、役に立つのは、蒸気が水に戻るときに出す熱です[6]。だからドレンは、仕事を終えた蒸気の姿でもあります。
水を残すと、何が困るのか
配管にドレンがたまると、水の塊が高い速さで配管やバルブにぶつかるウォーターハンマーが起きやすくなります。水滴が管を少しずつ削る、という問題もあります[3]。
蒸気を通し始める前の配管は常温です。蒸気を入れた直後は、冷たい管に熱を取られて、大量のドレンができます。管の中に残っていた空気も出す必要があります[2]。トラップには、ドレンを出す、蒸気を逃がさない、空気を出す、という3つの役目があります[1]。
蒸気は放熱や被加熱物への伝熱で凝縮し、ドレンになる。ベン社の資料は、トラップを「蒸気は冷えると水に戻る。その水を自動的に排出するバルブ」と位置づける[2]。熱交換器などで間接的に蒸気を使う場合、実際に利用される熱は蒸発潜熱、つまり蒸気が水に戻るときに放出する熱だ[6]。ドレンは、熱を渡し終えた蒸気の姿といえる。
では、ドレンを残すと何が困るのか。TLVの論文は、蒸気配管のウォーターハンマーの多くが、水の塊が高速で配管やバルブに衝突して起きると述べ、配管のずれやバルブの破損につながるとする[3]。水滴による配管の減肉や穴あきも、ドレンを排出する理由に挙がる。
通気前の配管・機器は常温なので、蒸気を通し始めると多量のドレンが発生し、配管内の空気も排出しなければならない[2]。こうしてトラップには、ドレンの排出、蒸気の保持、不凝縮ガス(空気など)の排出という3つの機能が求められる[1]。次の問いは、電気もなしに、それをどう実現するかである。
2. さかさの コップが うくと、べんが しまる
2. 逆さのコップに蒸気がたまると、弁が閉じる
2. 逆さバケット式 ── 蒸気の浮力で弁を閉じる
おふろで、さかさにした コップを 水の 中へ おしこむと、中に くうきが たまって、うき上がろうと します。それと にた ことが、トラップの 中で おきます。
さかさバケット式では、じょうきが 入ると、バケットの 中に たまって、うき上がります。すると べんが しまり、じょうきは にげません[2]。
ドレンが 入って くると、じょうきの 入り口が ふさがれて、うく ちからが なくなります。バケットが しずんで べんが あき、ドレンが 出ます[2]。
ただし、トラップの 中は あつい じょうきの せかいで、おふろの コップと まったく 同じでは ありません。
蒸気がたまるとバケットが浮く
下向き(逆さ)バケット式は、お風呂で逆さにしたコップが浮こうとするのに似ています。蒸気がバケットの中にたまると浮力で浮き上がり、弁が閉じます[2]。
ドレンが流れこむと、バケットに蒸気が届かなくなり、少しずつ浮力を失って沈みます。すると弁が開いて、ドレンが出ていきます[2]。
蒸気とドレンの見分け方は、「浮くかどうか」だけです。これは、蒸気と水の重さのちがい(比重差)を使うメカニカル式と呼ばれる仲間で、フロート式も同じ仲間に入ります[2]。ただし、お風呂のコップと同じ条件ではありません。中は高温の蒸気で満たされているので、あくまで原理が似ているという話です。
下向きバケット式は、浮力で弁を動かす。蒸気がバケット内にたまるとバケットが浮き上がって弁が閉じ、ドレンが流入すると蒸気の供給が途絶えて浮力が失われ、バケットが沈んで弁が開く[2]。見分けの手がかりは、蒸気とドレンの比重差だ。
ベン社の資料は、作動方式を3つに分ける。蒸気とドレンの比重差を使うメカニカル式(フロートやバケットが浮力で上下)、温度差を使うサーモスタチック式、熱力学特性の差を使うサーモダイナミック式である[2]。逆さバケット式は、メカニカル式の1つにあたる。
なお、逆さバケットの考案者や年代は、この記事の範囲では書かない。メーカーの沿革として語られる話はあるが、第三者の確認がとれる資料で読んでいないためだ。次は、浮力を使わない見分け方を見る。
3. おんどで のびちぢみする 部品と、水の ふたを する うき
3. 温度で伸び縮みする部品と、水で蓋をする浮き
3. ベローズ式とフロート式 ── 温度差と水封
つぎは「おんど」で みわける べんです。ベローズと いう、じゃばらの 形を した 金ぞくの 入れものが、あつい じょうきに ふれると のびて、べんを とじます。ドレンが 来て ひえると ちぢんで、べんが あきます[2]。
もう 1つは フロート式です。水の 上に うく たまが、ドレンが ふえると 上に あがって べんを あけます。べんは 水の 中に あるので、水が ふたに なって、じょうきが もれにくく なります[2]。
じゃばらが伸びたり縮んだりする
ベローズ式のベローズは、じゃばら状の金属の容器です。高温の蒸気が入ると膨らんで弁を閉じ、低温のドレンが入ると縮んで弁を開きます[2]。蒸気とドレンの温度のちがいを、金属の伸び縮みに変えているわけです。
水で弁に蓋をするフロート式
フロート式では、フロートと弁が、ドレンの最低水位より下にあります。弁が水に沈んで封じられる(水封)ため、蒸気が漏れにくくなります。ドレンが増えて水位が上がると、フロートが浮いて弁が開きます[2]。
ここまでの3種は、浮力や温度という、手で触ってもイメージしやすい性質で見分けています。次の方式は、蒸気の流れそのものを使います。
サーモスタチック式のベローズ式は、蒸気(高温)が流入すると膨張して弁を閉じ、ドレン(低温)が流入すると収縮して弁を開く[2]。ベローズとは、じゃばら状の金属容器のことだ。見分ける手がかりは温度で、蒸気そのものではなく、触れたものの温度を拾っている。
フロート式は、メカニカル式のなかで水封を利用する。フロートと弁体・弁座が、ドレンの最低水位より下にあるため、弁が水で封じられて蒸気が漏れにくい。ドレンが増えて水位が上がるとフロートが浮き、弁が開く[2]。蒸気漏れを防ぐ構造が、浮力に加えて水封にある点が、逆さバケット式との違いだ。
ここまでは、浮力か温度かという静的な性質を使っていた。次の方式は、蒸気とドレンで流れる速さがちがうことを使う。
4. はやい ながれで、じぶんを とじる べん
4. 蒸気が速く流れると、ディスクの下の圧力が下がる
4. ディスク式 ── ベルヌーイの定理で圧力が下がる
3つ目の べんは、円ばんの 形を した ふたが 中心です。この ふたが、じょうきが はやく ながれる ときに、じぶんで しまります[2]。
ながれが はやい ところは、おす ちからが ひくく なる、という きまりが あります。「ベルヌーイ」と いう 人の なまえが ついた きまりです[2]。
じょうきは ふたの したを とても はやく とおるので、ふたの したの おす ちからが さがります。ふたの うえからは じょうきが おすので、ふたが とじます。
のこされた じょうきが ひえて 水に もどると、ふたの うえの ちからが へります。そこへ ドレンが ふたを おしあげて、べんが あきます[2]。
速い流れの下では、圧力が下がる
ディスク式は、円盤形のディスクが弁の役目をする方式です。ベン社の資料では、熱力学特性の差を使うサーモダイナミック式にあたります[2]。
ディスクの下を流れる蒸気は、ドレンよりずっと速くなります。流れが速いところは圧力が下がる、というベルヌーイの定理が働き、ディスクの下の圧力が下がります。一方、ディスクの上の「変圧室」にある蒸気の圧力が上から押すので、弁が閉じます[2]。
閉じた弁が開くとき
変圧室の蒸気は、周りへ熱を逃がしたり、ドレンが流れ込んだりして水に戻り、圧力が下がります。すると、ドレンの圧力にディスクが押し上げられ、弁が開きます[2]。
この記事で一番話したくなるのは、この点です。蒸気が速く流れること自体が、自分を止めるスイッチになっています。
ディスク式は、蒸気とドレンの流速のちがいと、蒸気の凝縮による圧力変化を使う。ディスク下を流れる蒸気はドレンの場合より急激に高速化し、ベルヌーイの定理によりディスク下の圧力が降下する。同時に変圧室内の蒸気圧がディスクを上から押すため、弁が閉じる[2]。
開くのは、変圧室の蒸気が放熱やドレンの流入で凝縮し、圧力が下がったときだ。ドレンの圧力でディスクが押し上げられ、弁が開く[2]。弁の開閉に、蒸気の凝縮という、蒸気自身の性質が組みこまれている。ベン社の分類では、この方式はサーモダイナミック式にあたる。
3方式を並べると、手がかりは浮力、温度、流れと凝縮に分かれる。見分け方の原理がちがえば、構造の単純さ、水封の有無、動きかたも変わる。ただしこの資料は1社の製品解説であり、方式の優劣を比べる目的で書かれたものではない。次の問いは、こうした弁が傷んだとき、実際にどれほどの蒸気が漏れるのかである。
6. すこしの もれが、1ねんで どれくらい?
6. 少しの蒸気漏れは、1年でどれくらいになるか
6. 蒸気漏れ量と年間損失の試算 ── 条件つきの数字
かんきょうしょうの じっけんで、トラップから もれる じょうきの 多さを くらべた 数字が あります[4]。
この 表は、1.5メガパスカルの じょうきで しらべた ものです。ある ふつうの ディスク式は、1じかんに 1.2キロ もれました。うきを つかった べつの トラップは、0.02から0.04キロでした[4]。
1.2キロが 1ねん ずっと つづくと、およそ 10.5トンの じょうきに なります[4]。ただし、これは ある 1つの しゅるいの れいで、ディスク式が いつも こう なる わけでは ありません。
同じ条件で比べた試験
環境省の環境技術実証事業(ETV)には、同じ条件で蒸気の漏れを測った表があります。同じ報告の表では、1.5MPaの蒸気で、フリーフロート式が毎時0.02〜0.04kg、汎用のディスク式が1.20kg、汎用のバケット式が0.58kgでした[4]。
これは申請した企業(TLV)が自分の製品を実証した事業で、特定の機種の比較です。ディスク式やバケット式がいつもこの量を漏らす、という意味ではありません。
1年に直すと
同じ資料の試算では、汎用ディスク式の1.20kg/hが1年間続くと、蒸気は約10,512kg、CO2は約1.5トン、LNGの費用は約4.4万円ぶんに相当します[4]。1.20×8760時間を計算すると10,512で、確かに合います。ただし1.5MPa、ボイラー効率97%、LNG1トン8万円という仮定つきの数字です。
1台ぶんの漏れは小さく見えても、数が多ければ積み重なります。だから、点検や交換が大切にされています。
環境省ETV事業の実証(実証番号140-2101)には、ISO 7841に準拠した蒸気漏れ試験の結果がある。同報告の表では、1.5MPaで、フリーフロート式は0.02〜0.04kg/h、汎用ディスク式は1.20kg/h、汎用バケット式は0.58kg/hだった[4]。1.20÷0.04=30、1.20÷0.02=60から、この試験でのディスク式の漏れは、フリーフロート式の30〜60倍にあたる。
ただし、この実証は申請企業(TLV)の自己申請で、特定機種どうしの比較である。方式全体の優劣を示す数字ではなく、ディスク式がいつも1.20kg/h漏らすわけでもない。評価基準は0.1kg/h以下で、汎用ディスク式と汎用バケット式はこれを超えた[4]。
同じ資料の試算(LNG、8,760時間)では、汎用ディスク式の1.20kg/hは年間約10,512kgの蒸気、CO2約1.5t、LNG費用約4.4万円に相当する[4]。1.20×8,760=10,512で、蒸気量は検算できる。条件は1.5MPa、ボイラー効率97%、LNG 8万円/tで、一般値ではない。1箇所では小さな数字でも、不良が数万箇所あれば大きな損失になりうる、という読み方ができる。
7. やかんの ゆげで、「水に もどる」を 見て みよう
7. 冷たいスプーンで、蒸気が水に戻る瞬間を見る
7. 出口 ── 家の湯気で試す凝縮と、資料の読みどころ
あたたかい おちゃを コップに 入れます。ふたの ない コップの 上に、れいぞうこで ひやした スプーンを、すこしだけ 近づけて みます。スプーンが おちゃに ふれないように します。
スプーンの 下がわに、小さな 水の つぶが つくでしょう。じょうきが 水に もどった ものです。おとなと いっしょに やって、あついものには さわらないで ください。
ただし、スプーンに つく 水は、トラップの 中で できる 水より ずっと すくない りょうです。でも、「ねつを うばわれると 水に もどる」という ことは、同じです。
しらべた もとの じょうほう
参考にした情報源
参考にした情報源と、その使い方
出典について:メーカーの技術資料、月刊「省エネルギー」の論文、環境省の実証報告、自治体と公的機関の資料を使った。何に使ったかは、それぞれの項目の最後に書いている。
- TLV 佐伯「スチームトラップの管理」月刊「省エネルギー」2019年12月号。https://www.tlv.com/sites/default/files/tlv_assets/ja/articles/pdf/energy_conservation12.pdf (トラップの3つの機能、消耗品であること、国内診断の不良率について)
- ベン株式会社「スチームトラップ編」。https://venn.co.jp/content/download/6555/143102/file/00133.pdf (作動方式の分類と、各方式の動き、通気時のドレンと空気について)
- TLV 宮脇 月刊「省エネルギー」2020年10月号。https://www.tlv.com/sites/default/files/tlv_assets/ja/articles/pdf/drain_syoene2010.pdf (ドレンがたまったときの問題について)
- 環境省 環境技術実証事業(ETV)実証番号140-2101。https://www.env.go.jp/policy/etv/pdf/list/r03/140-2101a.pdf (蒸気漏れ試験の数字と年間試算について。申請企業による実証)
- 堺市「省エネ事例(スチーム)」。https://www.city.sakai.lg.jp/kurashi/gomi/ondanka/shoene/jigyou_shoene_info/steam_case.html (見た目では分からない蒸気漏れの事例について)
- J-Net21(中小機構)「蒸気の省エネ」。https://j-net21.smrj.go.jp/solution/qa/energyeff/Q1165.html (蒸気が水に戻るときの熱について)
なおした ところ
更新履歴
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