1. たべた あと、胃の なかで なにが おきて いるの?
1. 食べたあと、胃は食べ物を数時間ためて混ぜている
1. 胃は食べ物を数時間とどめ、混ぜながら小さくしている
ごはんを たべた あと、胃は しずかに はたらいて います。たべものを ためて、まぜて、こまかく して、すこしずつ 腸へ おくります。これが 胃の おおきな しごとです。
胃の かべは、あつい 筋肉で できて います。たべものを まぜる ために、つよい ちからが いるからです。
たべものが 胃に いる じかんは、2じかん から 5じかんほどと いわれます。ただし、なにを たべたかや ひとに よって かわります。
あぶらの おおい しょくじは ながく とどまり、のみものは はやく でて いきます。
食事のあと、胃は食べ物を一度ためておき、胃液と混ぜながら小さく砕いて、腸へ送る準備をしています[2]。胃の壁は、食べ物を混ぜるために厚い筋肉でできています。
胃の上のほうは食べ物を一時的にしまっておく場所です。下のほうの部分が、リズミカルに縮んで胃液と混ぜ、小さく砕きます[1]。
胃に食べ物がとどまる時間は、2〜5時間とされます。脂肪の多い食事は出ていくのが遅くなり、液体は固形物より早く出ていきます[3]。時間は食事の中身や人によって変わる目安です。
ここで、一つ疑問がわきます。入ってくる量はそのつど違うのに、胃はどうやって大きな圧力をかけずに、多くの食べ物を受けとめるのでしょうか。
胃は、食べ物を一度ためておき、胃液による化学的消化と、壁の伸縮による機械的消化を行って、消化吸収の準備をする器官である[2]。壁が厚い筋肉でできているのは、食べ物を混ぜるためだと説明される。
役割は場所によって分かれる。上部は食べ物を一時的に収容し、体部と前庭部がリズミカルに収縮して、胃液や酵素と混合しながら小さく粉砕する[1]。つまり胃は、「ためる部分」と「混ぜる部分」を一つの袋の中に持っている。
滞留時間は2〜5時間とされ、脂肪性の食事では排出が遅れ、液体は固形物より早く排出される[3]。この時間は食事の内容や個人で変わる目安であり、一定の値ではない。
では、毎回量の違う食事を、胃はどのように受けとめているのか。次の章で、袋の広がり方を見る。
2. たくさん たべると、胃は どうやって ひろがるの?
2. 食べ物が入ると、胃の上のほうがゆるんで広がるといわれる
2. 食べ物が入ると胃底部がゆるむ:容量の幅と、広がらないときに起きること
たべものが はいると、胃の うえの ほうが ゆるんで ひろがる、と いわれます。ふうせんを ふくらませると、ふくろが ひろがるのと すこし にて います。
ただし ふうせんと ちがって、胃は じぶんで ゆるんで ひろがります。そのため、たくさん たべても、なかの おす ちからが ひどく ふえないように できて いる、と かんがえられて います。
胃に はいる りょうは、ひとに よって ちがいます。じてんでは 1.5リットルから 2リットルほど、にほんの おとなの へいきんでは 1.3リットルから 1.4リットルほどと、かいて ある ものが あります。
ひろがらない ときは、すこし たべただけで おなかが いっぱいに なったり、はった かんじが する ことが ある、と かんがえられて います。
食べ物が入ってくると、胃の上のほう(胃底部)がゆるんで広がります。これを適応性弛緩といい、内側の圧力を大きく上げずに、多くの食べ物をためられるしくみだと考えられています[5]。
この広がりがうまく働かないと、少し食べただけでおなかがいっぱいになったり、おなかが張ったように感じたりする原因になると考えられています[5]。広がることも、胃の大事な働きの一つなのです。
胃の容量は、出典によって数字に幅があります。事典には、目安として1.5〜2リットルと書かれたものがあります。別の事典には、日本人成人の平均が男性約1.4リットル、女性約1.3リットルと書かれています[3]。つまり、2リットルのペットボトル1本ぶんに近いのは、数字の幅のうちの大きいほうの目安です。
広がって受けとめた食べ物を、胃はこのあと、どのようにして腸へ渡すのでしょうか。
食物が胃に入ると、胃底部が弛緩して容積を増やす。この適応性弛緩によって、胃は内圧を大きく上げずに多くの食物を収容できると考えられている。逆に食後に胃底部が弛緩しないと、早期飽満感や上腹部の膨満感の原因になると考えられている[5]。
容量は個人差が大きく、出典によって数値が異なる。ブリタニカ国際大百科事典の小項目では、1.5〜2リットル程度とされる。日本大百科全書は、日本人成人の平均を男性約1,408cc、女性約1,275ccとしている[3]。前者は容量の目安の幅、後者は平均値であり、二つの数値は食いちがっているのではなく、何を測ったかが違う可能性がある。
こうして広がり、混ぜて小さくなった内容物は、蠕動によってかくはんされ、粥状になって十二指腸へ送られる[3]。食道との境は噴門、十二指腸との間が幽門である。では、この出口は、何を基準に中身を通すのか。
3. でぐちの ところでは、どんな ものから とおすの?
3. 胃の出口は、試験用の小さな球から先に通す傾向があった
3. 出口の幽門は粒の大きさをどう選ぶのか:1〜3mmの球の研究から
胃の でぐちは、腸と つながる ところです。ここには、ぐっと しまる 筋肉が あります。
けんきゅうでは、げんきな おとなの ひとたちに、1ミリの ちいさな つぶと、それより おおきい つぶを たべて もらい、くらべました。そうしたら、1ミリの つぶの ほうが、はやく 胃から でて きたと ほうこくされました。
つまり この けんきゅうの つぶでは、胃は ちいさい ものから さきに おくりだして いました。ただし ふつうの しょくじでも いつも そうなる とは かぎりません。
この けんきゅうは、ふだんの ごはんを しらべた ものでは ありません。よく かんで ちいさく する ことの いみは、まだ はっきり いえません。
胃の出口は幽門とよばれ、輪の形をした筋肉が厚くなって、ぎゅっとしまる部分をつくっています。食べ物はここを通って、十二指腸へ送られます[3]。
では、何でも同じように通すのでしょうか。健康な成人26人を対象にした研究では、直径1mmの小さな球が、2.4mmや3.2mmの球より、胃から有意に速く出ていったと報告されています。1〜3mmの範囲では、食事の量よりも粒の大きさの影響のほうが大きかったそうです[6]。
この実験の球については、胃は小さな粒から先に送り出す傾向があったことになります。ただし試験用の球での結果で、ふだんの食べ物でも常に同じとは限りません。「2mm以下しか通らない」といった決まった基準があるわけでもありません。
別の研究では、1型糖尿病や胃の動きが弱い人を対象に、食べ物の粒が小さいと胃からの排出が速くなることが示されました[7]。胃のしくみを知ることは、食事の工夫にもつながっています。
ここまでで、胃が「ためる・混ぜる・少しずつ送る」場所だと見えてきました。では、胃を手術でとると、体はどう変わるのでしょうか。
胃の出口である幽門では、輪状筋が厚くなって幽門括約筋をつくる。内容物は蠕動でかくはんされて粥状となり、十二指腸へ送られる[3]。この出口が、粒の大きさを選んでいることを示す研究がある。
Meyerらは、健康な成人26人を対象に、ガンマカメラで胃排出を計測した。直径1mmの球は、2.4mmや3.2mmの球より有意に速く排出された。1〜3mmの範囲では、食事の量よりも粒の大きさの影響のほうが大きかった[6]。
この結果は、試験用の球については、胃が小さい粒を先に排出する傾向があることを示唆する。ただし対象は健康成人の試験用小球であり、食べ物全般で常に成り立つとは限らない。「2mm以下しか通さない」と固定するのも誤りで、食事の種類や条件によって変わる。
粒の大きさと排出の関係は、臨床でも研究されている。Olaussonらは、1型糖尿病で胃の動きが弱い(胃不全麻痺)人を対象に、小さな粒の食事のほうが胃から速く出て、食後血糖の低下が小さかったと報告した[7]。この対象は特定の患者であり、健康な人にそのまま当てはめることはできない。
貯留・混和・排出という三つの働きは、通常は同時に進む。これを外から確かめる方法として、胃の一部または全部を切除した場合に何が変わるかを見ることができる。
4. 胃を ちいさく すると、なにが かわるの?
4. 胃を手術で小さくすると、体はなにに困るのか
4. 胃切除で弱まる貯留・消化・殺菌の働きと、内因子の役割
びょうきで 胃の ぜんぶや いちぶを とる ことが あります。そうすると、たべものを ためたり、こなしたりする ちからが、よわく なる ことが あります。
胃の なかは とても すっぱくて、たくさんの ばいきんを やっつける はたらきも あります。
それでも、ひとは 胃を とった あとも くらして いけます。すこしずつ、なんかいかに わけて たべるなど、くふうを かさねて います。
こうして みると、ふだん なにげなく つかっている 胃が、じつは たくさんの しごとを して いる ことが わかります。
胃の一部や全部を手術でとった人には、さまざまな症状が出ることがあります。これは、胃がもつ貯めておく力・消化する力・菌を殺す力が、弱まったり、なくなったりするためだと説明されています[4]。
胃の中が強い酸性であることは、大部分の細菌を殺して感染を防ぐ効果もはたしています[1]。
また、胃の壁の細胞でつくられる「内因子」という物質は、腸でビタミンB12を吸収するのに必要だといわれます[8]。そのため胃を全部とると、B12を補う必要が出てくることがあるといわれます。補い方は注射や飲み薬など、いくつかの見方があります。
胃がなくなると、一度に食べられる量が減り、食べ物が早く腸へ進むなど、暮らしに工夫が要ります。けれど、これは胃が毎日どれだけの仕事を引き受けているかを、逆から教えてくれます。
胃切除や胃全摘では、胃の貯留能、消化能、殺菌能が低下または廃絶し、小胃症状(無胃症状)と呼ばれるさまざまな症状が生じるとされる[4]。これは、これまで見てきた貯留(第1・2章)、混和(第1章)、排出の調整(第3章)が失われる、ということである。
殺菌能は、胃液の強い酸性による。胃液の酸は、ペプシンがたんぱく質を分解するのに必要な環境をつくると同時に、大部分の細菌を殺して感染を防ぐ[1]。
もう一つの例が内因子である。胃の壁細胞が分泌する糖たんぱく質で、回腸終端部でのビタミンB12の吸収に必要とされる[8]。このため胃全摘後には、B12の補給が必要になることがある。補充の方法は、注射か経口かで見解が分かれる。
胃を失うことで、貯めて混ぜて送る調整役が消える。そのため食事を細かく分けるなどの工夫が必要になる、と整理できる。
5. じぶんで たしかめて みよう
5. 胃の部位ごとの働きを、絵に描いて整理してみる
5. 胃の部位と働きの対応を、図に描いて確かめる
きょう できる こと
胃の かたちを、えに かいて みましょう。うえの ほうに「ためる ところ」、したの ほうに「まぜる ところ」、でぐちに「しまる ところ」と、なまえを かきこみます。
かいた あとで、この きじの はなしと あって いるか、もういちど よんで たしかめて みましょう。じょうずに かく ひつようは ありません。
しらべる とき
「にほん しょうかき げか がっかい」の しみんむけ ページに、胃の はなしが あります。おうちの ひとと いっしょに みて みましょう。
今日できること
胃の絵を描いて、上のほう(ためる)、下のほう(混ぜて砕く)、出口の幽門(しまる筋肉)に、それぞれの働きを書きこんでみます。
描いたあとで第1〜3章を読み返し、自分の整理と合っているかを見くらべます。上手な絵である必要はありません。
資料を読むなら
日本消化器外科学会の市民向けページ[2]に、胃の役割がやさしく書かれています。MSDマニュアル家庭版[1]は、胃の部位ごとの働きを、日本語で読めます。
今日できること
胃の図を描き、胃底部・体部・前庭部・幽門に、それぞれ貯留・混和・排出の働きを書きこんでみるとよい。描いたあとで第1〜3章と見くらべ、どこを「らしい」「傾向」と書いたのか、断定の強さも整理しておく。
資料を読むなら
粒の大きさと胃排出の研究[6][7]は、PubMedで要旨が読める。日本語では、日本消化器外科学会の市民向け解説[2]が読みやすい。胃切除後の症状については、原典[4]の全文を確かめてから数値を引くのがよい。
しらべた もとの じょうほう
参考にした情報源
参考にした情報源と、その使い方
本文で使った資料です。
- MSDマニュアル家庭版「胃」. https://www.msdmanuals.com/ja-jp/home/ (胃の部位ごとの働き・酸の役割)
- 日本消化器外科学会 市民向け「胃について」. https://www.jsgs.or.jp/citizen/disease/stomach-2/ (胃の役割・筋肉の壁)
- コトバンク「胃」(ブリタニカ国際大百科事典・日本大百科全書・マイペディア・世界大百科事典). https://kotobank.jp/word/%E8%83%83-29720 (容量・滞留時間・幽門)
- 阪眞「胃切除後症候群」(日本消化器外科学会 教育資料). https://www.jsgs.or.jp/cgi-html/edudb/pdf/20101013.pdf (胃切除後に失われる働き)
- 松枝啓「今月の主題 消化器薬の使い方Update」(medicina). https://webview.isho.jp/journal/detail/abs/10.11477/mf.1402102940 (胃底部の弛緩)
- Meyer JH et al. Gastroenterology 1988;94:1315. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/3360258/ (1〜3mmの球の胃排出)
- Olausson EA et al. Diabetes Res Clin Pract 2008;80(2). https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/18237818/ (粒の大きさと胃排出)
- 慈恵医大 ir.jikei.ac.jp 掲載論文(内因子とビタミンB12). https://ir.jikei.ac.jp/record/322/files/117-1-9.pdf (内因子の役割)
なおした ところ
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