1. 重い 石は しずむ、って ほんとう?
1. 重いものは沈む、と言い切れるのか
1. 浮き沈みを決めるのは重さか、密度か
小さな 石ころは、水に 入れると しずみます。大きな 木の いたは、水に 入れると ういます。でも、おもさを くらべると、木の いたの ほうが ずっと おもい ことも あります。
だから、「おもい ものが しずむ」とは いえません。くらべる ときは、同じ 大きさの 水と くらべます。水より おもければ しずみ、かるければ うきます[1]。
水に 入れた ものは、おしのけた 水の おもさと 同じ ぶんだけ、上に おされます。これを ふりょくと いいます[1]。
石は、水より おもいのでしょうか。つぎは、ふつうの 石の おもさを 見て みましょう。
木の板のほうが重いのに、浮く
小石を水に入れれば、すぐに沈みます。一方、大きな木の板は、小石よりずっと重くても、ぷかぷかと浮きます。もし「重いものが沈む」のなら、これは説明がつきません。
くらべているのは、同じ大きさの水
水に入ったものには、押しのけた水の重さに等しい上向きの力、浮力がはたらきます[1]。ものを全部沈めたとき、押しのける水の量は、そのものの大きさと同じです。ですから、「そのものの重さ」が「同じ大きさの水の重さ」より大きければ沈み、小さければ浮き上がって水面から顔を出して止まります[1]。
同じ大きさあたりの重さのことを、密度といいます。沈むか浮くかは、重さではなく、密度の大小で決まります。では、ふつうの石の密度は、水の何倍あるのでしょうか。
小石は沈み、大きな木の板は小石よりはるかに重くても浮く。この事実は、「重いものが沈む」という素朴な説明では扱えない。浮き沈みを決めているのは、物体の重さそのものではなく、同じ体積の水との比較だからだ。
アルキメデスの原理によれば、流体中の物体には、押しのけた流体の重さに等しい浮力がはたらく[1]。物体を全部沈めたとき、押しのける水の体積は物体の体積に等しい。そのため、物体の重さと浮力の大小は、体積あたりの重さ、つまり密度を水と比べることに置きかえられる。水より密度が小さい物体は、浮力が重力を上回るので浮き上がり、液面から顔を出したところでつりあって静止する[1]。
逆に、密度が水より大きければ、浮力は重力に届かず、沈む。ここで基準になるのは、水の密度である約1 g/cm³(1立方センチメートルあたり約1グラム)という値だ[3]。では、ふつうの岩石はこの基準の何倍なのか。
2. ふつうの 石は、水の なんばい おもいの?
2. ふつうの石は、同じ大きさの水の何倍の重さがあるのか
2. 代表的な岩石の密度は、水の2倍を超える
1センチの 立方体で くらべると、水は やく1グラムです。かこうがんと いう 石は やく2.7グラム、げんぶがんと いう 石は やく3グラムです[2]。
どちらも、水の 2ばい いじょうです。だから、この 石たちは、水に 入れると すぐに しずみます。
石の おもさを はかる じっけんは、日本の 高校の きょうざいにも あります。地球の ようすを 考える はじまりに なって います[3]。
水より かるい 石なんて、あるのでしょうか。じつは、あるのです。それが 軽石です。
牛乳パック1本分で比べる
1辺が10cmの立方体は、牛乳パック1本分と同じ約1000cm³です。この大きさの水は、約1kgです。同じ大きさで比べると、花崗岩は約2.7kg、玄武岩は約3.0kg、方解石は約2.3kgになります[2]。
この数字は、同じ岩石でも産地で少し変わる代表的な値です。どれも水の2倍以上ですから、ここに挙げた石は、水に入れた瞬間に沈みます。
学校でも「石の重さ」を測る
岩手県教育委員会の高校地学の教材には、身近な岩石の密度を測って、地殻をつくる岩石の特徴を考える活動があります[3]。石の密度は、地球の中身を考える入り口にもなっているのです。
ところが、同じ石の仲間なのに、水に浮くものがあります。それが軽石です。
水の密度を約1 g/cm³としたとき、代表的な岩石の密度は、花崗岩が約2.7、玄武岩が約3.0、方解石が約2.3 g/cm³である[2]。水との比は、花崗岩で約2.7倍、玄武岩で約3.0倍、方解石で約2.3倍になる。これらは教材に載る代表値で、同じ種類の岩石でも産地や含まれる成分で多少ちがう。それでも、ここに挙げた3つはどれも水の2倍を超えるため、水に入れれば沈む。
牛乳パック1本分に近い1000 cm³で考えると、水は約1 kgだが、花崗岩は約2.7 kgある。体積が同じでも、質量が2倍以上ちがう、という言い方が実感に近い。
岩石の密度を測る実験は、岩手県教育委員会の高校地学基礎の教材にもあり、身近な岩石の密度を測って地殻を構成する岩石の特徴を理解させる、というねらいが示されている[3]。では、水の密度1を下回る岩石は存在するのか。実は、その岩石の名前を私たちは日常でも聞く。軽石である。
3. 軽石を わると、中は どうなって いるの?
3. 軽石の中をCTで見ると、何が見えたのか
3. 軽石の見かけの密度は、なぜ水より小さいのか
軽石は、とけた 岩が きゅうに ひえた ときに、ガスが ぬけて できた 石です。中には、小さな あなが たくさん あいて います[4]。
産総研の 研究者が、軽石の 中を きかいで 見ました。1ミリより 小さな あわが、体積の 多くを しめて いました。これが、水より かるい もとだと 考えられて います[5]。
外がわは かたい 石の 部分が ぎゅっと つまり、大きな あなは 真ん中に あつまって いました。けんきゅうしゃは、「シュークリームの 皮のような つくり」と 話して います[5]。
石の 部分だけを 見れば、水より おもい ものです。あなも ふくめた 全体で くらべると、水より かるく なります。
では、この 軽石は、どうやって 海を わたったのでしょうか。
溶岩が急に冷えて、泡が閉じこめられた
軽石は、溶岩が急に冷えるとき、ガスが抜けた跡の小さな穴がたくさんできた岩石です。穴も含めた「見かけの密度」が小さく、おおむね1 g/cm³より小さいとされています[4]。
シュークリームの皮のような構造
産業技術総合研究所の報告では、軽石の内部をCTで撮影した画像を見ると、1mmに満たない小さな気泡が体積の多くを占めていました。これが水より小さな密度を示す原因と考えられています[5]。しかも、密度の高い部分が殻のように外側を包み、大きな気泡は中央に集まっていました。研究者は、これを「シュークリームの皮のような構造」と表現しています[5]。
2021年に流れ着いた福徳岡ノ場の軽石は、黒い粒の入った「チョコチップクッキーのような見た目」と千葉県のページに書かれています。千葉県のページでは、見た目の特徴が写真つきで紹介されています[6]。
岩の部分だけなら水より重くても、穴を含めた全体の密度が小さければ、浮きます。では、この軽石が海を渡った旅は、どのようなものだったのでしょうか。
軽石は、溶岩が急冷される際にガスが抜けてできた多数の小さな孔をもつ岩石で、孔を含めた見かけの密度が小さく、おおむね1 g/cm³より小さい[4]。つまり、軽石の「岩の部分」だけを取り出せば、ふつうの岩石と同じく水より重い。浮くのは、孔という空洞を含めた体積で割った平均の密度が、水を下回るためだ。
産総研のCT画像の報告によれば、軽石の大部分は水より低い密度を示し、1 mmに満たない微細な気泡が体積の多くを占めることが、その原因と考えられている[5]。内部の構造にも特徴があり、密度の高い部分が殻のように外側を包み、大きな気泡は中央に集まる。報告はこれを「シュークリームの皮のような構造」と形容している[5]。
千葉県の資料も、2021年に漂着した福徳岡ノ場の軽石について、黒い粒を含む「チョコチップクッキーのような見た目」と述べている[6]。ここまでは、岩石の見た目と、切って内部を見た観察にもとづく説明である。次の問いは、その軽石が実際の海でどう動いたかだ。
4. 軽石は、どうやって 海を わたったの?
4. 軽石のいかだは、どうやって沖縄や千葉までたどりついたのか
4. 軽石いかだは、数か月で沖縄や千葉に届いた
2021ねんの 8月、小笠原の 福徳岡ノ場で 噴火が ありました。たくさんの 軽石が 海に ういて、いかだのように ひろがって ながれて いきました。これを 軽石いかだと よびます[6]。
10月には 沖縄の 海に、11月の 中ごろには、千葉県の 館山の 海岸にも つきました[6]。
軽石は 小さな あなが たくさん あるので、水より かるく、ずっと ういて いられます。でも、われめから 水が 入ると、うきにくく なる ことも あると 考えられます。
鉄の おさらも、同じ 考え方で ういて います。つぎは、その はなしです。
2021年8月から11月まで
2021年8月、小笠原の福徳岡ノ場が噴火しました。大量の軽石が海に浮かんで広がり、軽石いかだとなって漂流しました。10月には沖縄に、11月中旬には千葉県の館山市などに着いています[6]。
軽石は、いつまでも浮いていられるのか
軽石を浮かせているのは、穴の中の空気です。もし割れ目などから水が入りこむと、空気が水に置きかわって、浮きにくくなる場合があると考えられます。軽石のいかだが、永遠に浮かぶとは限らないのかもしれません。
軽石は、石なのに浮く、不思議な例です。もう一つ、鉄でできているのに浮くものがあります。船です。
2021年8月に小笠原の福徳岡ノ場が噴火すると、大量の軽石が海面に広がり、軽石いかだとなって漂流した。10月には沖縄へ、11月中旬には千葉県館山市などへ到達している[6]。
軽石が浮き続けられたのは、孔を含めた体積あたりの重さが水より小さかったからだ。ただし、この状態がいつまでも続くとは限らない。割れ目から孔に水が入れば、空気が水に置きかわって、浮きにくくなる場合があると考えられる。浮いていられる期間は、一つの数字では言えないだろう。
石が浮くのは、石という素材が特別だからではなく、空洞を含めた全体の密度が水を下回ったとき、という条件つきである。この条件は、鉄でできた船にもそのまま当てはまる。
5. 鉄の おさらは、なぜ うくの?
5. 鉄でできた船が浮くのは、軽石と同じ考え方なのか
5. 鉄の器が浮くのは、平均の密度が水より小さくなるからだ
鉄は、水より おもい ものです。かたまりを 水に 入れると、しずみます。
でも、鉄を おさらや 船の 形に して、中に 空気を 入れると、うきます。鉄の おもさは 同じですが、体積が ふえるので、全体の おもさを 体積で わった 数が 小さく なるからです[7]。
軽石の あなの 中の 空気と、船の 中の 空気は、同じ はたらきを して います。
水に うかぶか しずむかは、ものの 名前や 大きさでは きまりません。「中に 空気が どれだけ あるか」も 大切です。
鉄の質量は変わらないのに、密度は小さくなる
鉄は、水の約8倍の重さがあり、かたまりのままなら沈みます。ところが、鉄を器の形にして、内部を軽い空気で満たすと、鉄そのものの質量は変わらないまま、全体の体積が増えます。体積あたりの質量、つまり密度が小さくなり、水より小さければ浮きます[7]。
軽石の気泡も、鉄の船の中の空気も、「全体の体積を増やして、平均の密度を下げる」点で、同じ仕組みで説明できます。
浮くかどうかを決めるのは、素材の名前ではありません。素材と空気をあわせた、全体の密度です。これを、家でたしかめてみましょう。
鉄の比重は約8で、水より大きい。かたまりのままでは沈む。しかし鉄で器をつくり、内部を軽い空気で満たすと、器自体の質量は変わらず体積だけが増え、体積あたりの質量、つまり平均の密度が小さくなる[7]。この平均の密度が水より小さければ、器は浮く。
軽石の孔と船の空洞は、全体の体積を増やして平均の密度を下げる点で、役割が同じだ。ただし、船の浮かび方には、転覆しにくい形や重心の位置など、密度とは別の条件もかかわる。ここでは、浮くための最低条件として「平均の密度が水より小さいこと」だけを取り上げる。
軽石と鉄の器という、見た目のまったくちがう2つの例が、平均の密度という同じ一つの量で説明できる。素材の名前ではなく、空洞を含めた全体で考えるのが要点だ。
6. 水おけで、石と 軽石を 見くらべよう
6. 水おけで、石と軽石と、アルミホイルを見くらべる
6. 密度の比べっこを、台所で確かめる
水を 入れた ボウルを ようい します。庭の 石ころを 入れると、しずみます。もし 家に 軽石が あれば、入れて みましょう。足の かかとを こする 軽石でも だいじょうぶです。
つぎは、アルミホイルを 小さく まるめた 玉と、おさらの 形に した ものを 入れます。まるめた 玉は しずみ、おさらの 形は うくか、見て みましょう。
水が こぼれない ように、ボウルは 大きめの ものを 使い、おうちの 人と いっしょに やります。
洗面器や大きめのボウルに水を入れ、庭の小石と、家に軽石(足のかかとをこする軽石でもよい)があれば、その軽石を静かに入れてみましょう。小石は沈み、軽石は浮くか、浮いたあとの変化も見てみます。
次に、アルミホイルを小さく丸めた玉と、同じ大きさのホイルでつくったお皿の形のものを、水に入れてみます。素材の質量は変わらなくても、形によって沈むか浮くかが変わるか、観察してみましょう。
水があふれないよう、大きめの容器を使い、足元には新聞紙などを敷いて行います。
しらべた もとの じょうほう
参考にした情報源
参考にした情報源と、その使い方
アルキメデスの原理と浮力は辞典・一般の解説で、軽石は公的機関の報告で確かめた。
- コトバンク「アルキメデスの原理」 https://kotobank.jp/word/アルキメデスの原理 (浮力と、沈む・浮くの決まり方)
- Density of minerals and rocks(earth2class教材PDF) https://earth2class.org/wp-content/uploads/2014/01/Density-of-minerals-and-rocks.pdf (岩石の密度の代表値)
- 岩手県教育委員会「岩石の密度の測定」(地学基礎教材) https://www1.iwate-ed.jp/07tantou/kagaku/h26_chigakukiso/02_wakusei/006ganseki_mitsudo.pdf (岩石の密度を測る教材、水の密度の目安)
- コトバンク「軽石」 https://kotobank.jp/word/軽石 (軽石の定義と見かけ密度)
- GSJ地質ニュース 11巻3号 口絵(産業技術総合研究所) https://www.gsj.jp/data/gcn/gsj_cn_vol11.no3_p63-64.pdf (軽石のCT画像と内部構造)
- 千葉県「軽石(福徳岡ノ場)」 https://www.pref.chiba.lg.jp/wit/chishitsu/fobpmice.html (2021年の軽石いかだの漂流と見た目)
- 池田良穂「鉄の船はなぜ浮くのか」現代ビジネス https://gendai.media/articles/-/112598 (鉄の器が浮く理由)
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