1. あかく なるのと、くろく なるのは、おなじ?
1. 赤くなるのと黒くなるのは別の反応
1. サンバーンとサンタン ── 時間差のある2つの日焼け
ひやけを して 赤く なる ことを、サンバーンと いいます。日に あたって 数時間 たつと 出て きます。
赤みが 消えた あとに、数日 して 出て くる 黒さは、サンタンと よばれます。数週間から 数か月 つづく ことも あります[1]。
赤いのと 黒いのは、時間が ちがう、べつべつの 反応です。だから 「なぜ 黒く なるの?」には、赤い ときとは ちがう 答えが あります。
2. しがいせんは、はだの 中で なにを するの?
2. 紫外線は細胞の設計図に傷をつける
2. 紫外線とDNA損傷 ── 黒化の出発点
お日さまの 光には、目に 見えない 紫外線が まじって います。この 紫外線が はだに あたると、細胞の 中の 大切な ものに きずが つく ことが あります。
大切な ものとは、遺伝子です。体を つくる ための 「せっけい図」のような もので、細胞の かくの 中に しまわれて います。
ただし 本当は、紙の せっけい図では ありません。とても 小さな つぶの つながりで、目には 見えません。
太陽の光には、目に見えない紫外線が含まれています。この紫外線が皮膚の細胞にあたると、細胞の核の中にしまわれているDNAに傷がつくことがあります。
DNAは、体をつくる情報が書かれた、いわば設計図のようなものです。ただし、実際は紙ではなく、非常に小さな物質が長くつながったものです。
この「DNAの傷」が、黒くなる反応の出発点だと考えられています[3]。傷ついたことを、細胞がどう知らせるのかが、次の章の話です。
紫外線は、皮膚の細胞のDNAに損傷を与える。研究の総説では、黒化反応の一部は、この損傷に反応するp53というタンパク質に依存すると説明されている[3]。
ここで押さえたいのは、日焼けの黒さがDNAの傷という出来事につながっている点である。色を作る細胞は、傷を受けた細胞からの知らせ(α-MSH)を受けて動くと説明されている。次章でその知らせの正体を見る。
3. きずついた 細胞は、どうやって 「たすけて」を 出すの?
3. 傷ついた細胞が出す「助けて」の合図
3. p53とα-MSH ── 2007年のフィッシャーらの報告
きずついた 細胞は、だまって いません。火事の ときの ベルのように、まわりに 知らせる ものを 出します。
この 知らせは、ホルモンの 一つで、はだの 細胞が 作ります。この ホルモンが とどくと、色を 作る 細胞が 目を さまします[3]。
ただし 本当は、ベルの 音のように 耳で 聞く ものでは ありません。ごく 小さな ぶっしつが とんで いって、相手に くっつきます。
紫外線でDNAが傷つくと、表皮の細胞の中で、p53というタンパク質が働き出します。p53は、POMCという遺伝子を通して、α-MSHというホルモンが作られることに関わっているとされています[3]。
このα-MSHが、色素を作る細胞に届くと、メラニンが作られます。たとえるなら、火災報知器のようなものです。ただし、実際に音が鳴るわけではなく、決まった物質が次々に受け渡されるのです。
2007年、ハーバード大学医学部のダナ・ファーバーがん研究所のデイビッド・フィッシャーらは、この流れの引き金がp53だと報告しました[4]。p53を働かないようにすると、α-MSHが増えませんでした。p53を持たないマウスは、紫外線を浴びても、耳やしっぽが黒くなりませんでした[4]。
2007年、ダナ・ファーバーがん研究所(ハーバード大学医学部)のデイビッド・フィッシャーらは、Cell誌で、p53が日焼けの黒化の引き金になることを報告した。紫外線を浴びたあと、p53の増加はα-MSHの増加より約3時間先に起こり、p53の発現を阻害するとα-MSHが増えなかった。また、p53を持たないマウスは、紫外線を浴びても耳や尾が黒くならなかった[4]。
経路は、DNA損傷→表皮のケラチノサイトでp53が働く→POMC遺伝子が活発になる→α-MSHが作られる→メラノサイトに作用して色素合成が進む、と整理されている[3]。
なお、p53は日焼け専用のタンパク質ではなく、DNAの修復などでも働く有名な因子である。ここでは黒化に関する働きだけを取り上げている。
4. くろい 色は、どこで 作られて どこへ いくの?
4. メラニンを作る細胞と、その運び方
4. メラノサイトとメラノソーム ── 色素の受け渡し
色を 作る 細胞の 名前は、メラノサイトです。ここで できる 黒い 色の もとを、メラニンと いいます。
メラニンは、小さな ふくろに 入れられます。ふくろは、メラノサイトから のびる えだを とおって、まわりの 細胞へ とどけられます[3]。
じつは、メラニンが おもに はたらく のは、とどけられた 先の 細胞の 中だと いわれます。作る ところと、使う ところは、べつなのです。
5. くろい 色は、細胞の 中で なにを するの?
5. 核の上に並ぶ「日がさ」
5. 核上のおおい ── 京都大学2016年の観察
とどけられた メラニンは、細胞の かくの 上に ならびます。まるで 小さな 日がさを ひらいた ようです。
日がさが あると、そのあとに くる 紫外線の 光を、うけとめやすく なります[5]。だから 黒く なるのは、体が 自分を 守ろうと している すがたと 考えられて います。
ただし 本当は、メラニンは ぬのや 紙の 日がさでは ありません。色の つぶが つまった、ごく 小さな ふくろです。
6. くろく なれば、あんしん なの?
6. 黒くなれば安心、ではない
6. 防御効果はSPF4程度 ── 黒化の限界
黒く なれば あんしん、と 思いたく なります。でも かんきょうしょうの 資料では、日やけは 体の 守りの 反応だと 書かれて います[1]。
その 守りの 力は、小さいと されて います。日やけ止めの SPFに たとえると、4 くらいと されて います[1]。
だから 黒く なった から と いって、日ざしを あびて よい わけでは ありません。
自分でも しらべて みたく なったら
自分でも調べてみたくなったら
自分でも調べてみたくなったら
今日 できること
わざと 日に やくのは やめましょう。
ひどく 赤いとき、いたいとき、水ぶくれが できたときは、すぐに 大人に つたえて、おいしゃさんに 見て もらいましょう。
本で 調べる
かんきょうしょうの 紫外線の マニュアルを、大人と いっしょに 読んで みると、日やけの しゅるいが くわしく 書かれて います。
今日できること
わざと日焼けをするのはやめてください。
ひどく赤い、痛みが強い、水ぶくれができたなどのときは、大人に伝えて、医師に相談してください。
資料を読む
環境省の「紫外線環境保健マニュアル」の第1章には、サンバーンとサンタンの違いや、日焼けの防御効果の話が載っています。
今日できること
意図的に日焼けをすることは勧めない。肌の状態が気になるときは、大人や医師に相談する。
資料を読む
環境省の「紫外線環境保健マニュアル」第1章(日本語)が入り口になる。サンバーンとサンタンの違いや、防御効果の話が載っている[1]。
しらべた もとの じょうほう
参考にした情報源
参考にした情報源と、その使い方
本文で使った資料です。p53・メラノソームの部分は英語の資料を使いましたが、要点は日本語で書いています。
- 環境省「紫外線環境保健マニュアル」第1章(WHO資料の翻訳を含む) https://www.env.go.jp/content/900410651.pdf (サンバーンとサンタンの違い、防御効果SPF4程度)
- MSDマニュアル プロフェッショナル版「日光による影響の概要」 https://www.msdmanuals.com/ja-jp/professional/14-皮膚疾患/日光に対する反応/日光による影響の概要 (UVBと防御反応、健康上の利益がないこと)
- Ribosomal stress, p53 activation and the tanning response, Expert Review of Dermatology (2008) https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC3427653 (p53からα-MSHまでの経路、メラノソームの受け渡し)
- Harvard Medical School News「Famous factor triggers tanning response」 https://hms.harvard.edu/news/famous-factor-triggers-tanning-response (2007年のフィッシャーらの報告の紹介)
- 東北大学 理学研究科 青葉理学振興会 研究紹介(丸橋総史郎) https://www.sci.tohoku.ac.jp/aoba-society/250.pdf (メラノソームの受け渡しが核を守る働き)
- 京都大学 研究ニュース「Safety in darkness」(2016-12-12) https://www.kyoto-u.ac.jp/en/research-news/2016-12-12 (メラニンが核を囲んで守る観察、ニワトリ胚の皮膚組織など)
なおした ところ
更新履歴
更新履歴(改版の記録)
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