このサイトは、ほんの入り口です

ここにあるのは、だれかが実際に調べ、考え、作ってきたことを集めたメモです。気になったら、ページの下の「参考にした情報源」から、もとの本や記事、それを生み出した人たちに、直接ふれてみてください。このメモには書ききれないおもしろさが、そこにあります。

ひやけを すると、どうして はだが くろく なるの?

日焼けで肌が黒くなるのはなぜか ── 傷ついた細胞さいぼうが出す、メラニンを作る合図

日焼けによる黒化(サンタン)のしくみ ── 紫外線しがいせん・DNA損傷・p53・メラニンの核上のおおい

分野:からだ

ひやけを した 日、はだは 赤く ヒリヒリ します。ところが 数日 たつと、赤みが 引いて、こんどは 黒く なって きます。

この 黒さは、外から ぬられた 色では ありません。はだの 中の 小さな 細胞さいぼうに、ある 合図が 出て、べつの 細胞さいぼうが 色を 作る と 考えられて います。合図とは、どんな ものでしょう。この メモでは、そこまで 見て いきます。

日焼けをした日は、肌が赤くなってヒリヒリします。数日たつと赤みは引き、今度は黒っぽくなってきます。赤くなることと黒くなることは、時間をずらして起きる別々の反応はんのうです。

黒くなる反応はんのうのきっかけは、紫外線しがいせんで傷ついた細胞さいぼうが出す「合図」だと報告ほうこくされています。その合図に応えてメラニンという色素しきそが作られ、細胞さいぼうの核の上に並びます。ところが、その守りの力は、思ったより小さいといわれます。どんな順番で何が起きるのかを見ていきます。

日焼けには、数時間後に赤くなるサンバーンと、赤みが消えた数日後に現れるサンタン(黒化)がある[1]。サンタンは紫外線しがいせんによる被害を防ごうとする体の防衛反応はんのうとされるが、その防御効果はSPF4程度と小さい[1]。

2007年には、傷ついたDNAに反応はんのうして働くp53というタンパク質が黒化の引き金になると報告ほうこくされた[4]。この記事では、紫外線しがいせん→DNAの傷→ホルモン→メラニン→核のおおいという因果を、環境省・MSDマニュアル・大学の資料しりょうで確かめる。医療的な判断は扱わない。

読み方を切り替えられます。画面の上にある「よみかた」のボタンで、小学校低学年むけ・小学校高学年むけ・中学生むけの3つの書き方に切り替わります。むずかしいと思ったら、いつでもやさしい方に戻ってください。選んだ読み方はブラウザが覚えているので、次に別の記事を開いたときも同じ読み方で始まります。

1. あかく なるのと、くろく なるのは、おなじ?

1. 赤くなるのと黒くなるのは別の反応はんのう

1. サンバーンとサンタン ── 時間差のある2つの日焼け

ひやけを して 赤く なる ことを、サンバーンと いいます。日に あたって 数時間 たつと 出て きます。

赤みが 消えた あとに、数日 して 出て くる 黒さは、サンタンと よばれます。数週間から 数か月 つづく ことも あります[1]。

赤いのと 黒いのは、時間が ちがう、べつべつの 反応はんのうです。だから 「なぜ 黒く なるの?」には、赤い ときとは ちがう 答えが あります。

日本語の「日焼け」は、実は2つの反応はんのうをまとめた言葉です。1つは、日光にっこうにあたって数時間後から現れる、赤くなる日焼けで、サンバーンといいます。

もう1つは、赤みが消えた数日後に現れる、肌が黒っぽくなる日焼けで、サンタンといいます。数週間から数か月続くことがあると説明されています[1]。

この記事で「黒くなる」と呼ぶのは、後のほうのサンタンです。赤くなる反応はんのうを起こす光は、主に波長320ナノメートル未満の紫外線しがいせん(UVB)とされています[2]。

環境省の紫外線しがいせん環境保健マニュアルは、日焼けを2種類に分けている。サンバーンは、紫外線しがいせんにあたって数時間後から現れる赤い日焼けで、サンタンは、赤みが消えた数日後に現れ、数週間から数か月続く黒っぽい日焼けである[1]。

MSDマニュアルは、サンバーンを起こす光線を主に波長320nm未満(UVB)とし、これに対する防御反応はんのうとして表皮が厚くなり、メラノサイトがメラニン色素しきそを急速に作ると説明する[2]。

つまり日焼けの黒さは、赤みの延長ではなく、時間差で起こる別の反応はんのうとして整理されている。以下では、このサンタンの因果を、DNAの傷から順にたどる。

2. しがいせんは、はだの 中で なにを するの?

2. 紫外線しがいせんは細胞さいぼうの設計図に傷をつける

2. 紫外線しがいせんとDNA損傷 ── 黒化の出発点

お日さまの 光には、目に 見えない 紫外線しがいせんが まじって います。この 紫外線しがいせんが はだに あたると、細胞さいぼうの 中の 大切な ものに きずが つく ことが あります。

大切な ものとは、遺伝子いでんしです。体を つくる ための 「せっけい図」のような もので、細胞さいぼうの かくの 中に しまわれて います。

ただし 本当は、紙の せっけい図では ありません。とても 小さな つぶの つながりで、目には 見えません。

太陽の光には、目に見えない紫外線しがいせんが含まれています。この紫外線しがいせんが皮膚ひふの細胞さいぼうにあたると、細胞さいぼうの核の中にしまわれているDNAに傷がつくことがあります。

DNAは、体をつくる情報が書かれた、いわば設計図のようなものです。ただし、実際は紙ではなく、非常に小さな物質が長くつながったものです。

この「DNAの傷」が、黒くなる反応はんのうの出発点だと考えられています[3]。傷ついたことを、細胞さいぼうがどう知らせるのかが、次の章の話です。

紫外線しがいせんは、皮膚ひふの細胞さいぼうのDNAに損傷を与える。研究けんきゅうの総説では、黒化反応はんのうの一部は、この損傷に反応はんのうするp53というタンパク質に依存すると説明されている[3]。

ここで押さえたいのは、日焼けの黒さがDNAの傷という出来事につながっている点である。色を作る細胞さいぼうは、傷を受けた細胞さいぼうからの知らせ(α-MSH)を受けて動くと説明されている。次章でその知らせの正体を見る。

3. きずついた 細胞さいぼうは、どうやって 「たすけて」を 出すの?

3. 傷ついた細胞さいぼうが出す「助けて」の合図

3. p53とα-MSH ── 2007年のフィッシャーらの報告ほうこく

きずついた 細胞さいぼうは、だまって いません。火事の ときの ベルのように、まわりに 知らせる ものを 出します。

この 知らせは、ホルモンの 一つで、はだの 細胞さいぼうが 作ります。この ホルモンが とどくと、色を 作る 細胞さいぼうが 目を さまします[3]。

ただし 本当は、ベルの 音のように 耳で 聞く ものでは ありません。ごく 小さな ぶっしつが とんで いって、相手に くっつきます。

紫外線しがいせんでDNAが傷つくと、表皮の細胞さいぼうの中で、p53というタンパク質が働き出します。p53は、POMCという遺伝子いでんしを通して、α-MSHというホルモンが作られることに関わっているとされています[3]。

このα-MSHが、色素しきそを作る細胞さいぼうに届くと、メラニンが作られます。たとえるなら、火災報知器のようなものです。ただし、実際に音が鳴るわけではなく、決まった物質が次々に受け渡されるのです。

2007年、ハーバード大学医学部のダナ・ファーバーがん研究けんきゅう所のデイビッド・フィッシャーらは、この流れの引き金がp53だと報告ほうこくしました[4]。p53を働かないようにすると、α-MSHが増えませんでした。p53を持たないマウスは、紫外線しがいせんを浴びても、耳やしっぽが黒くなりませんでした[4]。

2007年、ダナ・ファーバーがん研究けんきゅう所(ハーバード大学医学部)のデイビッド・フィッシャーらは、Cell誌で、p53が日焼けの黒化の引き金になることを報告ほうこくした。紫外線しがいせんを浴びたあと、p53の増加はα-MSHの増加より約3時間先に起こり、p53の発現を阻害するとα-MSHが増えなかった。また、p53を持たないマウスは、紫外線しがいせんを浴びても耳や尾が黒くならなかった[4]。

経路は、DNA損傷→表皮のケラチノサイトでp53が働く→POMC遺伝子いでんしが活発になる→α-MSHが作られる→メラノサイトに作用して色素しきそ合成が進む、と整理されている[3]。

なお、p53は日焼け専用のタンパク質ではなく、DNAの修復などでも働く有名な因子である。ここでは黒化に関する働きだけを取り上げている。

4. くろい 色は、どこで 作られて どこへ いくの?

4. メラニンを作る細胞さいぼうと、その運び方

4. メラノサイトとメラノソーム ── 色素しきその受け渡し

色を 作る 細胞さいぼうの 名前は、メラノサイトです。ここで できる 黒い 色の もとを、メラニンと いいます。

メラニンは、小さな ふくろに 入れられます。ふくろは、メラノサイトから のびる えだを とおって、まわりの 細胞さいぼうへ とどけられます[3]。

じつは、メラニンが おもに はたらく のは、とどけられた 先の 細胞さいぼうの 中だと いわれます。作る ところと、使う ところは、べつなのです。

色素しきそを作る細胞さいぼうは、メラノサイトです。α-MSHの合図を受けたメラノサイトは、黒っぽい色素しきそ、メラニンを作ります。

メラニンは、メラノソームという小さな袋に入れられます。袋は、メラノサイトから木の枝のように伸びた突起を通って、周りのケラチノサイトという細胞さいぼうに受け渡されます[3]。

メラニンが主に働くのは、受け渡された先のケラチノサイトの中だと説明されています[3]。作る細胞さいぼうと、守りが必要な細胞さいぼうは、別々なのです。

色素しきそ合成を担うのはメラノサイトである。作られたメラニンは、メラノソームという小さな袋に入り、メラノサイトのデンドライト(木の枝のような突起)を通って、周囲のケラチノサイトに移される。メラニンが主に役割を果たすのは、ケラチノサイトの中である[3]。

東北大学の研究けんきゅう紹介も、メラノソームの受け渡しは肌を暗くするだけでなく、紫外線しがいせんを吸収して細胞さいぼう核のダメージを防ぐ重要な働きをすると述べる[5]。

つまり黒くなるとは、色を作る細胞さいぼうが受け取った合図に応じて、色素しきそを袋に詰め、周りの細胞さいぼうに配る過程である。次章では、その色素しきそが細胞さいぼうの中でどこに置かれるかを見る。

5. くろい 色は、細胞さいぼうの 中で なにを するの?

5. 核の上に並ぶ「日がさ」

5. 核上のおおい ── 京都大学2016年の観察かんさつ

とどけられた メラニンは、細胞さいぼうの かくの 上に ならびます。まるで 小さな 日がさを ひらいた ようです。

日がさが あると、そのあとに くる 紫外線しがいせんの 光を、うけとめやすく なります[5]。だから 黒く なるのは、体が 自分を 守ろうと している すがたと 考えられて います。

ただし 本当は、メラニンは ぬのや 紙の 日がさでは ありません。色の つぶが つまった、ごく 小さな ふくろです。

受け取ったメラニンは、細胞さいぼうの核を囲むように並びます。京都大学などの研究けんきゅうグループは、2016年にこの様子を報告ほうこくしました[6]。

メラノサイトの膜が、水ぶくれのようにふくらんでメラノソームを運び、細胞さいぼうに入って核を取り囲み、DNAの損傷から守るとされています[6]。

日がさにたとえると分かりやすいです。ただし、この観察かんさつはニワトリの卵の中で育つ皮膚ひふの組織などを使った実験でのものなので、人の日焼けとそのまま同じとは言い切れません。

京都大学などの研究けんきゅうグループは、2016年にScientific Reportsで、メラノサイトの膜が水ぶくれ状に突出し、メラノソームの運搬体となってケラチノサイトに取り込まれ、核を取り囲む様子を報告ほうこくした。メラニン色素しきそはケラチノサイトの核を囲むことでDNAの損傷から守ると述べられている[6]。

東北大学の研究けんきゅう紹介も、メラノソームの受け渡しが紫外線しがいせんを吸収して細胞さいぼう核へのダメージを防ぐと述べており[5]、両者は同じ方向を指している。

ただし、京都大学の観察かんさつはニワトリ胚の皮膚ひふ組織などを用いた実験によるもので、人が日に焼けたときの皮膚ひふにそのまま当てはまるかは、この資料しりょうだけでは判断できない。

6. くろく なれば、あんしん なの?

6. 黒くなれば安心、ではない

6. 防御効果はSPF4程度 ── 黒化の限界

黒く なれば あんしん、と 思いたく なります。でも かんきょうしょうの 資料しりょうでは、日やけは 体の 守りの 反応はんのうだと 書かれて います[1]。

その 守りの 力は、小さいと されて います。日やけ止めの SPFに たとえると、4 くらいと されて います[1]。

だから 黒く なった から と いって、日ざしを あびて よい わけでは ありません。

環境省の資料しりょうは、日焼け(サンタン)を、体が紫外線しがいせんによる被害を防ごうとする防衛反応はんのうと説明しています。ただし、その効果はSPF4程度で小さいとされています[1]。

MSDマニュアルも、サンタンはわずかな自然の防御になるものの、健康上の利益はないとしています[2]。

つまり、黒くなることは、細胞さいぼうの側が精いっぱい守ろうとした結果です。けれど、日光にっこうを浴びてもよい印ではないようです。

環境省の資料しりょう(WHOの資料しりょうの翻訳)は、サンタンを紫外線しがいせんによる被害を防ごうとする防衛反応はんのうとしつつ、その効果は小さく、SPF4程度と述べる[1]。MSDマニュアルも、サンタンは若干の自然な防御にはなるが、健康上の利益はないとしている[2]。

整理すると、黒くなる反応はんのうは、傷ついたDNAからの合図でメラニンが作られ、核の上に置かれるという合理的な仕組みである。しかし守りの力は小さく、黒くなったから安全という根拠にはならない。

この記事は仕組みの説明であり、医療的な助言ではない。肌の状態が気になるときは、大人や医師に相談してほしい。

自分でも しらべて みたく なったら

自分でも調べてみたくなったら

自分でも調べてみたくなったら

今日 できること

わざと 日に やくのは やめましょう。

ひどく 赤いとき、いたいとき、水ぶくれが できたときは、すぐに 大人に つたえて、おいしゃさんに 見て もらいましょう。

本で 調べる

かんきょうしょうの 紫外線しがいせんの マニュアルを、大人と いっしょに 読んで みると、日やけの しゅるいが くわしく 書かれて います。

今日できること

わざと日焼けをするのはやめてください。

ひどく赤い、痛みが強い、水ぶくれができたなどのときは、大人に伝えて、医師に相談してください。

資料しりょうを読む

環境省の「紫外線しがいせん環境保健マニュアル」の第1章には、サンバーンとサンタンの違いや、日焼けの防御効果の話が載っています。

今日できること

意図的に日焼けをすることは勧めない。肌の状態が気になるときは、大人や医師に相談する。

資料しりょうを読む

環境省の「紫外線しがいせん環境保健マニュアル」第1章(日本語)が入り口になる。サンバーンとサンタンの違いや、防御効果の話が載っている[1]。

しらべた もとの じょうほう

参考にした情報源

参考にした情報源と、その使い方

本文で使った資料です。p53・メラノソームの部分は英語の資料を使いましたが、要点は日本語で書いています。

  1. 環境省「紫外線環境保健マニュアル」第1章(WHO資料の翻訳を含む) https://www.env.go.jp/content/900410651.pdf (サンバーンとサンタンの違い、防御効果SPF4程度)
  2. MSDマニュアル プロフェッショナル版「日光による影響の概要」 https://www.msdmanuals.com/ja-jp/professional/14-皮膚疾患/日光に対する反応/日光による影響の概要 (UVBと防御反応、健康上の利益がないこと)
  3. Ribosomal stress, p53 activation and the tanning response, Expert Review of Dermatology (2008) https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC3427653 (p53からα-MSHまでの経路、メラノソームの受け渡し)
  4. Harvard Medical School News「Famous factor triggers tanning response」 https://hms.harvard.edu/news/famous-factor-triggers-tanning-response (2007年のフィッシャーらの報告の紹介)
  5. 東北大学 理学研究科 青葉理学振興会 研究紹介(丸橋総史郎) https://www.sci.tohoku.ac.jp/aoba-society/250.pdf (メラノソームの受け渡しが核を守る働き)
  6. 京都大学 研究ニュース「Safety in darkness」(2016-12-12) https://www.kyoto-u.ac.jp/en/research-news/2016-12-12 (メラニンが核を囲んで守る観察、ニワトリ胚の皮膚組織など)

なおした ところ

更新履歴

更新履歴(改版の記録)

  •  初版を公開。

このサイトでは、公開した記事の本文は原則として書き直しません。誤りが見つかったときや、内容が古くなったときだけ手を入れ、その理由をこの欄に残します。