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ここにあるのは、だれかが実際に調べ、考え、作ってきたことを集めたメモです。気になったら、ページの下の「参考にした情報源」から、もとの本や記事、それを生み出した人たちに、直接ふれてみてください。このメモには書ききれないおもしろさが、そこにあります。

関節かんせつの 中の ちょっぴりの 水は、軟骨なんこつの ごはんにも かかわるの?

関節の中のわずかな液は、すべりと軟骨の栄養にどう関わる?

関節液の成分と役割 ── ヒアルロン酸・ルブリシンによる潤滑と、無血管の関節軟骨への栄養供給

分野:からだ

ひざの 関節かんせつの 中に ある えきは、とれても ほんの すこしだと ほうこくされて います[1]。それなのに、体重たいじゅうを のせて 何万歩も あるく ひざが、ちゃんと うごきます。

この 少しの えきは、どこから 来て、何を して いるのでしょうか。「すべりを よくする」ことと、「軟骨なんこつの ごはんを はこぶ」ことの 2つが 分かります。

ひざの関節にある液は、採れる量がごく少量と報告されています[1]。この量で体重を支える関節がなめらかに動き、しかも液は潤滑を助け、血管のない軟骨への栄養の受け渡しにも関わるとされます。

そんな少量の液が、どうして両方の仕事をこなせるのでしょうか。液の出どころ、粘りの正体、軟骨への栄養の運ばれ方が分かります。

膝関節で採取できる関節液の量は、ごく少量とされる[1]。この少量の液が、荷重のかかる関節の潤滑と、血管を持たない関節軟骨への栄養供給の両方に関わると説明されている。

なぜ、血しょうをこした液が高い粘りを持つのか。潤滑を担う成分は何か。動かすことは軟骨の栄養とどう結びつくのか。成分と役割、そして根拠の強さの違いが分かる。

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1. ひざの 中は、どう なって いるの?

1. 階段をのぼるとき、ひざの中で何が押し合っているのか

1. 荷重のかかる関節と、少量の関節液

かいだんを のぼる ときは、ひざに 体重たいじゅうが ぐっと のります。ひざの 中では、骨ほねの さきに ついた 軟骨なんこつどうしが、圧力あつりょくを うけながら うごきます。

軟骨なんこつは、つるんと して、すこし 弾力だんりょくの ある そしきです[2]。そこに、すきとおった えきが すこし あります。これが 関節液かんせつえきです。

ひざで とれた りょうは、ほんの すこしだと ほうこくされて います[1]。

どうして、こんなに 少ない えきで だいじょうぶなのでしょう。まず、この えきが どこから 来るのかを 見ます。

階段をのぼるとき、膝には、立っているときより大きな力がかかります。その中で、骨の端をおおう軟骨どうしが、押し合いながら動きます。軟骨は、コラーゲンと水とプロテオグリカンでできた、なめらかで弾力のある組織です[2]。

その間にあるのが、無色から淡い黄色で、粘りのある関節液です。膝で採れる量は、ごく少量と報告されています[1]。

これほど少ない液が、どこから来るのでしょうか。

荷重のかかる関節では、骨端をおおう関節軟骨どうしが押し合いながら動く。軟骨はコラーゲン、水、プロテオグリカンを主成分とする、なめらかで弾力のある組織だ[2]。

その隙間を満たす関節液は、正常では無色〜淡黄色で粘性が高い。膝で採取できる量は、ごく少量とされる[1]。全身の関節の合計ではなく、膝1つぶんの話だ。

では、これほど少ない液は、どこで、何から作られるのか。

2. えきは、どこから 来るの?

2. 血しょうをこして、細胞が成分を足す

2. 滑膜:血漿の限外ろ過と、ヒアルロン酸の分泌

関節かんせつの 中は、うすい まくで つつまれて います。この まくが、えきの もとです。

血液けつえきの 中の 水の ぶぶんを、まくで こして、関節かんせつの 中に おくります。こして できた えきに、まくの 細胞さいぼうが 出す ものが たされます[3]。

たされる ものの ひとつが、ヒアルロンさんです。とても 長い つぶで、まくの 細胞さいぼうが、たえず 関節かんせつの えきへ おくり出して いると せつめいされて います[3]。

この えきは、ヒアルロンさんの 入った とくべつな えきです。この ちがいが、つぎの 話の かぎです。

関節をつつむ滑膜が、液の出どころです。関節液は、血しょう(血液の液体の部分)を滑膜でこしたものに、滑膜の細胞が出す成分が加わったものと説明されます[3]。

加わる成分の代表がヒアルロン酸です。線維芽細胞に似たタイプの滑膜細胞が、とても大きく長いヒアルロン酸の分子をたえず関節液へ送り出しています[3]。

血しょうをこした液に、細胞が長い分子を足していく。これで、水とはちがう液ができあがります。この長い分子は、量がとても少ないのに、液の性質を大きく変えます。

関節液は、血漿が滑膜を通ってこされた液(限外ろ過液)に、滑膜細胞の分泌物が加わったものと説明される[3]。

分泌の主役は、線維芽細胞様のタイプB滑膜細胞だ。高分子量(分子が大きく長い)のヒアルロン酸を関節液へ持続的に放出する[3]。ヒアルロン酸は、健康な関節の関節液に1〜4mg/mL含まれ、分子量は600万〜1000万ダルトン程度とされる。1〜4mg/mLは、液1mLあたり1〜4mgの意味で、1〜4%ではない(水と同じ密度と仮定すると0.1〜0.4%ほど)[3]。

わずか0.1〜0.4%ほどの成分が、なぜ液の性質を決めるのか。次で、粘りの働きを見る。

3. ヒアルロンさんが、すべりを よく する?

3. 水ではなく「粘りのある液」である意味

3. 粘弾性と潤滑 ── ヒアルロン酸とルブリシンの役割分担

水は、さらさらして います。でも、関節かんせつの えきは、すこし ねばねば しています。

ヒアルロンさんの 入った えきは、ふつうの 水とは ちがう ながれかたを して、とても すべりを よくすると 書かれて います[3]。

もうひとつ、軟骨なんこつの 表面から 出る ルブリシンという ものも、すべりに かかわります[3]。ルブリシンと ヒアルロンさんで、はたらく ばめんが ちがうと せつめいされることが あります[4]。

ただし これは、分かりやすく した せつめいです。ほんとうは、いくつもの 成分せいぶんが いっしょに はたらいて います。

ヒアルロン酸の水溶液は、ふつうの液体とちがう流れ方(粘弾性)を示し、潤滑剤としてとても優れているとされます。関節液は高分子量のヒアルロン酸を含むため、潤滑に必要な粘りを持つのです[3]。

関節液にはもう1つ、軟骨の表面から出るルブリシン(PRG4)という成分が、0.05〜0.35mg/mL含まれます。軟骨どうしが強く押し合う場面で、潤滑を助けます[3]。

役割分担については、力の強さによって主に働く成分がちがう、と説明する論文があります[4]。ただし単純化された説明で、実際には成分が組み合わさって働きます。摩擦の大きさも測り方で幅があり、0.002ほどの低い値から0.3以上まで報告されています[5]。

滑らかさは分かりました。では、血管のない軟骨は、どうやって栄養を受け取っているのでしょうか。

ヒアルロン酸溶液は、粘りと弾力をあわせ持つ特異な性質(粘弾性)を示し、潤滑性が非常に高い。高分子量のヒアルロン酸を含むことが、関節液の潤滑に必要な粘りを与える[3]。

もう1つの潤滑成分が、軟骨表層に由来するルブリシン(PRG4、0.05〜0.35mg/mL)だ。軟骨どうしが強く押し合う場面で潤滑を助ける[3]。総説では、高荷重時の境界潤滑をルブリシンが、低荷重時の流体潤滑をヒアルロン酸が担うと説明される[4]。ただし、この分担は単純化されたモデルであり、成分は組み合わさって働く。

摩擦係数は、測定条件で0.002程度から0.3以上まで報告があり、幅が大きい[5]。

潤滑の話は、関節液のもう1つの仕事の前置きにすぎない。血管のない軟骨は、栄養をどこから得るのか。

4. 血管けっかんの ない 軟骨なんこつは、どうやって ごはんを もらう?

4. 血管のない軟骨に、栄養はどう届くのか

4. 無血管組織としての関節軟骨と、関節液を介した栄養供給

からだの 多くの ところでは、血管けっかんが 栄養えいようを はこびます。でも、関節かんせつの 軟骨なんこつには、血管けっかんが ありません。

そのかわりに、関節かんせつの えきが 軟骨なんこつに 栄養えいようを とどけると せつめいされて います[2]。ふつうの 動物では、栄養えいようを おもに 関節かんせつの えきから もらうと 考えられて います[6]。

うごかす ことも、かかわると 考えられて います。軟骨なんこつに 力が かかったり ぬけたり すると、えきが 軟骨なんこつの 中に 出入りして、栄養えいようや いらない ものの やりとりが すすむ、と せつめいされます[7]。

ただし、これは ひとつの 研究の 考えです。「うごけば ぜったい じょうぶに なる」とは いえません。

まとめると、えきの ねばねばは すべりを たすけ、えきと 軟骨なんこつの 行き来は ごはんの やりとりに かかわる、と されます。

関節軟骨には血管がありません。成熟した動物では、栄養を主に関節液からの拡散で受け取ると説明されます。この方式のため、生きた軟骨の厚さは数ミリに限られる、という見方もあります[6]。動物の研究を含むので、ヒトにまったく同じとは言い切れません。

滑膜の細胞がつくる液は、軟骨に栄養を届けるだけでなく、摩擦もさらに減らすとされます[2]。

動きも関わるようです。関節に力がかかったり抜けたりすると、圧力の変化で液が軟骨に出入りし、栄養や老廃物のやり取りが進むと説明されます[7]。運動が軟骨を丈夫にするといった約束としては、読まないでください。

整理すると、液の粘りは潤滑を助け、液と軟骨の間の行き来は栄養の受け渡しに関わる、とされます。1つの液が、2つの場面で役に立っているのです。

関節軟骨は無血管で、細胞は存在し代謝も活発だ。成熟した動物では、栄養を主に関節液からの拡散に頼るとされ、この様式が生存可能な軟骨の厚さを数mmに制限するという[6]。動物研究の記述を含み、ヒトへの完全な一般化は避けたい。

滑膜細胞が産生する液は、軟骨に栄養を供給するとともに摩擦をさらに軽減する[2]。

運動との関係では、周期的な荷重によって関節液が軟骨内を出入りし、栄養・老廃物の交換が進むと説明される[7]。運動が軟骨を丈夫にするという医療的な保証としては扱わない。

整理すると、液の粘性は潤滑を助け、液と軟骨の間の物質の行き来は栄養の受け渡しに関わるとされる。1つの液が2つの場面で働く点が特徴といえる。では、この液が変化するとき、何が起きるのか。

5. えきの 中に、ほかにも 何か あるの?

5. 液が変わるときと、指の関節が鳴る音

5. 病態での変化と、関節液中の微小気泡

関節液かんせつえきの 中には、ごく 小さな あわが できることが あると いう 研究が あります。関節かんせつが ポキッと なる 音と かかわると 考えられて います[8]。

この 音の 話は、べつの 記事で くわしく 書いて います。ゆびが ポキッと なるのは なぜ?を 見て ください。

ヒアルロン酸は、関節の病気の研究でも注目されています。変形性関節症では、軟骨でヒアルロン酸が低分子化するなどの変化が起きると報告され、関節液のヒアルロン酸の変化が研究で調べられているといいます[9]。ここでは、関節液の役割を知る背景として触れるだけで、治療については書きません。

一方、指の関節が鳴る音にも、関節液が関わる可能性が研究されています。関節の動きで液の圧力が変化し、液中の微細な気泡が崩壊することが関係するとされます[8]。音の話は、別の記事で詳しく書いています。指の関節が鳴るのは、なぜ?

変形性関節症では、軟骨でヒアルロン酸の低分子化などが起きるとされ、関節液中のヒアルロン酸の変化が研究で調べられている[9]。本稿は、関節液の役割を理解する背景として言及するにとどめ、診療は扱わない。

指の関節音についても、関節の動きで関節液の圧力が変化し、微細な気泡が崩壊することが関与するとされる研究がある[8]。詳細は指の関節が鳴る音の記事を参照されたい。

6. ひざを うごかして、「すべり」を かんじよう

6. 手と水で、粘りのちがいを感じてみる

6. 出口 ── 粘りを手で比べる/日本語の資料で確かめる

りょうての てのひらを かるく あわせて、やさしく こすって みます。つぎに、みずで ぬらして こすります。さいごに、すこしの せっけんを みずに とかした もので こすって みます。

どれが すべりやすいか、くらべて みましょう。これは、関節液かんせつえきの じっけんでは ありません。「ぬるぬる、ねばねばが すべりを かえる」ことを、ちょっと かんじる あそびです。

てで かんじた ちがいを、おもいだして みましょう。ぬるぬるの ちがいで、すべりかたが かわりましたか。

手のひらを軽く合わせてやさしくこすり、次に水でぬらして、最後に少量の石けんを水に溶かしたものでこすってみてください。すべりやすさは、どう変わるでしょうか。

これは関節液の実験ではなく、「ぬるぬる、ねばねばがすべりを変える」ことを手で感じる遊びです。ヒアルロン酸のような長い分子が関わる本物の仕組みは、もっと複雑です。

体験のあとは、日本語で読めるMSDマニュアル家庭版の「関節」[2]で、軟骨や滑液のことを確かめてみてください。

手のひらを軽く合わせ、乾いたまま、水でぬらして、少量の石けんを水に溶かしたもので、と順にこすり合わせ、すべりやすさを比べる。関節液の再現ではないが、液の性質(粘り)で摩擦の感じ方が変わることを手で体験できる。

確かめるなら、日本語で読めるMSDマニュアル家庭版「関節」[2]が、軟骨と滑液の基本をまとめている。指の関節音との関係は、別の記事にもある。

しらべた もとの じょうほう

参考にした情報源

参考にした情報源と、その使い方

出典について:関節液の成分や役割は、総説論文とMSDマニュアル家庭版、日本語の解説を突き合わせた。一部(正常量、摩擦係数、運動と栄養)は検索抜粋のみで、本文で強さを弱めて書いた。

  1. 関節液の解説(Ropesらの値を引く日本語文献)。 https://webview.isho.jp/journal/detail/abs/10.11477/mf.1542909229 (膝で採れる正常な関節液の量について)
  2. MSDマニュアル家庭版「関節」。 https://www.msdmanuals.com/ja-jp/home/08-骨-関節-筋肉の病気/筋骨格系の生物学/関節 (軟骨の性質と、滑液が栄養と潤滑にかかわることについて)
  3. Hyaluronan and synovial joint: function, distribution and healing. Interdiscip Toxicol, 2013. https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC3967437/ (血しょうのろ過、ヒアルロン酸とルブリシンの量と粘りについて)
  4. Knee Surg Sports Traumatol Arthrosc, 2012(ルブリシンとヒアルロン酸の役割分担)。 https://link.springer.com/article/10.1007/s00167-012-1977-7 (高荷重・低荷重での潤滑の分担の説明について。検索抜粋で確認)
  5. 関節潤滑の総説(摩擦係数)。 https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC2622427 (摩擦係数の幅について。検索抜粋で確認)
  6. 関節軟骨の栄養に関する総説(PMC3717153)。 https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC3717153/ (軟骨に血管がないことと、栄養の届き方について。検索抜粋で確認)
  7. Influence of cyclic loading on the nutrition of articular cartilage. Ann Rheum Dis, 1990. https://ard.bmj.com/content/49/7/536 (動きと軟骨の栄養の関係について。題名と検索抜粋のみ確認)
  8. Nature Asia ハイライト(指の関節音の数理モデル研究)。 https://www.natureasia.com/ja-jp/phys-sci/research/12435 (関節液中の気泡と関節音について)
  9. 橋本ら「ヒアルロン酸の抗酸化作用」臨床整形外科 42(4), 2007. http://imis.igaku-shoin.co.jp/contents/journal/05570433/42/4/1408101020/ (変形性関節症とヒアルロン酸の背景について)

なおした ところ

更新履歴

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