1. トビムシって、どんな いきもの?
1. トビムシは、どんな生きものか
1. 分類と生息地 ── 昆虫ではなく、土にすむ小さな六脚類
トビムシは、1〜2ミリくらいの、とても ちいさな いきものです[1]。こんちゅうでは ありません。こんちゅうに ちかい、べつの なかまです[2]。
つちや おちばの 下に すんで いて、おちばや かびを たべます。もりの つちには、1メートル四方に なんまんびきも いる ことが あります[2]。
どうがで 目の前から きえた ように 見えるのは、この ちいさな いきものが、ジャンプして いるからだと かんがえられます。
昆虫ではない、土の中の小さな生きもの
トビムシは、体長が1〜2mmほどの、とても小さな生きものです[1]。虫の仲間のように見えますが、昆虫ではありません。昆虫に近い、内顎綱という別のグループです[2]。
すみかは、湿った土や森の土の中です。落ち葉の下に多く、森の土では、1平方メートルあたり数万匹もいます。落ち葉のほか、カビなどの菌類、細菌、藻類、花粉などを食べます[2]。
動画で目の前から消えたように見えるのは、このトビムシが、体を跳ね上げているためだと考えられます。では、何のために跳ぶのでしょうか。
トビムシは、体長1〜2mmほどの、とても小さな生きものだ[1]。昆虫ではない。トビムシ目は、昆虫に近縁でより原始的なグループである内顎綱に属し、昆虫とあわせて六脚類を構成する[2]。世界で3,000種以上が記載され、日本では14科103属約360種が報告されている[2]。2024年の論文は「8,000種以上が記載されている」と書いており[3]、種数は資料によって差がある。日本の種数も、約360種とする資料と[2]、約400種とする資料がある[1]。
すみかは、水気のある土や森林の土壌で、森林土壌では1m2あたり数万個体という高い密度に達する。落ち葉や腐植を中心に、菌類の菌糸や胞子、細菌、藻類、花粉、線虫なども食べる[2]。雪解けの時期に大発生して、雪の上で見つかるものは、ユキノミと呼ばれる[2]。
動画で目の前から消えたように見えるのは、体を跳ね上げているためだと考えられる。では、何のために跳ぶのか。
2. どうして とぶの?
2. 跳ぶ理由は、逃げるため
2. 跳躍の目的 ── 捕食者からの逃避
トビムシは、てきに 会うと、とんで にげます。おなかの 下に ある ふたまたの ぼうを ぱっと のばして、じめんを おして とび上がります[2]。
ある けんきゅうでは、トビムシの 一しゅを しらべました。とぶのは にげる ためで、どこかへ いく ためでは ない、と かんがえられて います。まっすぐ 前の むきには、とばなかった そうです[3]。
にげる ときは、はやく とぶ ことが だいじです。どんな しくみなのか、見て みましょう。
トビムシは、敵に出会うと、跳んで逃げます。腹の下にある二股の棒(跳躍器)が、後ろへ勢いよく振り出され、体が大きく跳ね上がります[2]。
2024年の論文は、球形のトビムシの一種(体長約1.5mm)の跳躍を、高速度カメラで調べました。この種の跳躍は、逃げるためのもので、行きたい方向へ進むための跳び方ではない、と考えられています。真正面の方向には、跳びませんでした[3]。解説には、移動にも使うと考えられている、と書くものもあり[1]、資料によって少し言い方がちがいます。
逃げるには、素早く跳び出すことが大切です。どんな仕組みで、どれくらい速いのかを見ます。
トビムシは、捕食者などに遭遇すると、跳躍して逃げる。腹部の跳躍器が後方へ勢いよく振り出され、体が大きく跳ね上がる。跳躍器は、筋肉の収縮で振り出される[2]。力の出どころは、3章で確かめる。
2024年の論文は、球形のトビムシの一種 Dicyrtomina minuta(体長約1.5mm)の跳躍を、高速度カメラで撮影して調べた。著者らは、この種の跳躍は、捕食者からの逃避のためのもので、進みたい方向へ移動するためのものではないと考えている。跳躍の向きを調べた実験では、正面の方向には跳ばなかった[3]。一方、解説には、移動にも使うと考えられている、と書くものもあり[1]、種や資料によって、言い方が分かれる。
逃げるための跳躍なら、素早く跳び出せるかどうかが重要になる。次に、仕組みと、その速さの中身を確かめる。
3. どうして あんなに はやいの?
3. ばね仕掛けで、一瞬で跳ぶ
3. 跳躍の仕組み ── 力をためて、一瞬で放つ
トビムシの ジャンプを、1びょうに 4まんまい ちかい しゃしんを とれる カメラで とった けんきゅうが あります。それに よると、とびだすまでに かかった じかんは、1びょうの 1000分の 2くらい(1.7ミリびょう)でした。はやさは、1びょうに 1メートルくらいです[3]。
おもちゃに、ばねを カチッと とめて おいて、はなすと ぱっと とびだす ものが あります。トビムシも、にた しくみです。ただし ほんとうは、ばねの ぶひんが ある わけでは ありません。からだの かたい ところに ちからを ためて いると かんがえられて います[3]。
ちいさな からだの きんにくだけでは、こんなに つよい ちからは だせません[3]。
目の前から きえて 見えるのは、ちいさくて、とびだすのが いっしゅんだから、と かんがえられます。
とぶ いきものと いえば、ノミが ゆうめいです。ノミも、ばねの ちからで とびます。ノミと くらべると、トビムシの ちがいが はっきり します。
折りたたんだ棒を、一気に振り出す
跳躍器は、腹部にある二股の棒で、ふだんは体の下に折りたたまれ、保持器という留め具に引っかけられています[2]。跳ぶときは、これが後ろへ振り出され、先が地面に当たって、体を押し上げます[3]。
論文の数字
2024年の論文で調べられた種は、体長が平均1.53mmの、とても小さな虫です。高速度カメラで見ると、跳び出しにかかる時間は平均1.7ミリ秒(1000分の1.7秒)、速さは平均で秒速約1mでした。加速度は最大で1,938m/s²で、重力加速度の約200倍です(この倍率は数字から計算しました)[3]。
ばね仕掛け
これほどの力は、筋肉が直接押すだけでは出せません。体重あたりの出力は、脊椎動物の筋肉で測られた最大出力を大きく超えると見積もられました(筋肉の量を多めに仮定しても、なお上回ります)。そこで、力をためて、一気に放つ仕組みだと結論づけられています。ためる働きは、腹の筋肉が、基部の棒や板を変形させて行うと推測されています[3]。
ただし本当は、私たちが知っている金属のばねがあるわけではありません。体の硬い部分がばねの役をしている、というのが、論文の考え方です。
跳んだあとは、体が後ろ向きにくるくる回ります。回転は最大で毎秒約369回で、比べられた他の跳ぶ虫(キジラミ類など)を上回ります[3]。
「消えて見える」わけは?
体が1〜2mmと小さいうえに、跳び出しが1.7ミリ秒で終わるので、目で追えず、消えたように見えると考えられます。この論文の撮影は、実験用のアクリル台の上です。野外では、ちがう跳び方をするかもしれない、と論文にも書かれています[3]。
跳ぶ虫といえば、ノミがよく知られています。ノミも、ばねの力で跳びます。ノミと比べると、トビムシの特徴がはっきりします。
叉状器にためた力を放つ
跳躍器(叉状器)は、腹部の第4節にある2又の棒状の器官で、ふだんは体の下側に折りたたまれ、腹面の保持器に引っかけられている[2]。跳ぶときは、これが後方へ振り出され、先端が地面に触れて、体を押し上げる[3]。
2024年の論文の数字
Dicyrtomina minuta の体長は平均1.53mm、体重は平均0.74mgだった。約40,000コマ/秒の高速度撮影で、跳び出しにかかる時間は平均1.7ms、跳び出しの速度は平均0.982m/s(最大1.52m/s)、加速度は最大1,938m/s²と測られた[3]。1,938m/s²は、重力加速度の約200倍にあたる(この倍率は数字から計算した)。
筋肉だけでは説明できない出力
体重あたりの出力は、筋肉量を仮定した見積もりで、平均5,167W/kg。脊椎動物の筋肉で測られた最大出力とされる約1,200W/kgを大きく超える。筋肉量を多めに仮定しても、なお上回る。このため、筋肉が直接押しているのではなく、弾性エネルギーをためて、一気に放つ仕組みだと結論づけている。エネルギーをためる役は、第4節の筋肉が腹部基部の棒や板を変形させて担うと推測され、放つ側には、掛け金(ラッチ)にあたる構造があると推測されている[3]。どちらも、論文では「おそらく」という書き方だ。
跳躍のあと、体は後ろ向きに回転する。回転は最大で約369Hz(毎秒約369回転)で、比べられた他の跳ぶ虫(キジラミ類の336Hzなど)を上回る。ただし、平均は約282Hzで、キジラミ類の値より低い[3]。加速度の大きさは、体形でも差があり、球形のトビムシより、細長い体のトビムシのほうが小さい[3]。
「消えて見える」わけと、限界
体が1〜2mmと小さく、跳び出しが1.7msで終わるため、目で追えず、消えたように見える、と考えられる。この論文の撮影は、実験用のアクリル台の上で行われ、野外ではちがう跳び方をする可能性がある、と論文も述べる[3]。
跳ぶ虫といえば、ノミがよく知られている。ノミも、ばねの力で跳ぶ。同じ仕組みのノミと比べると、トビムシの特徴がはっきりする。
4. ノミとは、どこが ちがうの?
4. ノミとのちがい
4. ノミとの比較 ── 分類・ばねの位置・暮らし
ノミもトビムシも、ばねに力をためて、一気に放つ「ばね仕掛け」で跳びます。仲間も、ばねの場所も、暮らし方もちがう2つの虫ですが、跳び出しの数字は、意外なほど近いものでした。数字は、この章の終わりで並べます。まず、どこがちがうのかを見ます。
- 仲間:ノミは昆虫(ノミ目)です[4]。トビムシは昆虫ではありません[2]。
- ばねの場所:ノミは、胸の部分にある、レジリンという弾力のあるたんぱく質を含む、弾力のある構造です[5]。トビムシは、腹の跳躍器です[2]。
- 地面を押すところ:ノミは後ろ脚のすねと足先です[5]。トビムシは跳躍器の先です[3]。
- 暮らし:ノミの成虫は、すべて、哺乳類など体温が一定の動物の体の表面で、血を吸って暮らします[4]。トビムシは、土や落ち葉の下で、落ち葉やカビを食べます[2]。
跳び出しの数字を、並べてみます。論文で測られたノミは、加速する時間が約1.4ミリ秒、跳び出しの速さが秒速約1.3m、加速度が最大で約1,500m/s²です[5]。トビムシは、1.7ミリ秒、秒速約1m、最大1,938m/s²でした[3]。ただし、種も測り方もちがうので、どちらが上かは決められません。このサイトの別のメモにある約930m/s²は、速度と時間から出した平均値で、ここで使った最大値とは別のものです。
跳ぶ高さも、よく比べられます。ノミは、体長の数十倍の高さを跳ぶと紹介されることが多く、日本語版Wikipediaには、体長の60倍の高さ、100倍の距離と書かれています。ノミの跳躍の高さについては、このサイトの別のメモ「ノミはどうしてあんなに跳べるの?」で、数字の幅も含めて詳しく調べました。トビムシは、垂直の高さが平均約33mm(体長の約20倍)、最大62mm(約40倍)でした。倍率は数字から計算しました[3]。
まとめると、トビムシは、昆虫に近い別のグループで、腹の跳躍器を使って、逃げるために跳びます。ノミは、脚で跳ぶ昆虫で、血を吸う暮らしのなかで跳びます。似ているのは、ためて放つ仕組みと、跳び出しの速さです。
分類も、ばねの場所も、暮らしもちがうのに、跳び出しの数字は、ノミと近い。表で比べる。
| 項目 | トビムシ | ノミ |
|---|---|---|
| 分類 | 昆虫ではない(内顎綱)[2] | 昆虫(昆虫綱ノミ目)[4] |
| 体長 | 1〜2mm[1] | 1mm以下〜9mm程度[4](論文で測られた個体は平均1.8mm[5]) |
| ばねの場所 | 腹部の叉状器。保持器に引っかけてある[2] | 胸部の、レジリンという弾性たんぱく質を含む弾性構造[5] |
| 地面を押す所 | 叉状器の先端[3] | 後脚のすねと足先[5] |
| 跳び出しの測定例 | 約1.7ms、平均0.982m/s、最大1,938m/s²(D. minuta)[3] | 約1.4ms、1.3m/s、最大約1,500m/s²(論文で測られたノミ)[5] |
| 暮らし | 土や落ち葉の下で、落ち葉や菌類などを食べる[2] | 成虫はすべて、哺乳類など恒温動物の体表で吸血する[4] |
似ているのは、弾性エネルギーをためて一気に放つ点と、跳び出しの速さだ。ノミの論文は、ばねの力が、後脚のすねと足先から地面に伝わることを、高速度カメラの映像と計算モデルで確かめた[5]。トビムシは、体の下に折りたたんだ叉状器で、地面を押す[3]。種も条件もちがうので、数字の大小で、どちらが上かは決められない。このサイトの別のメモにある約930m/s²は、速度と時間から出した平均値で、ここで使った最大値とは別のものだ。
跳躍の高さも比べられる。ノミは、体長の数十倍の高さを跳ぶと紹介されることが多く、日本語版Wikipediaには、体長の60倍の高さ、100倍の距離と書かれている[4]。ノミの跳躍の高さは、このサイトの別のメモ「ノミはどうしてあんなに跳べるの?」で、数字の幅も含めて詳しく調べた。D. minuta の垂直方向の跳躍は、平均約33mm(体長の約20倍)、最大62mm(約40倍)だ(倍率は数字から計算した)[3]。
ここまでで、跳ぶ理由、仕組み、ノミとのちがいを、確かめてきた。
じぶんでも やって みる
自分でも調べてみたくなったら
自分でも調べてみたくなったら
おうちの 人と いっしょに、こうえんや にわの おちばの 下を 見て みましょう。ちいさな いきものが いるかも しれません。
あんぜんな ばしょで できる こと
- おちばを 白い かみの 上に すこし のせて、しばらく 見て いる。とても ちいさな いきものが 見つかったら、とんで にげるか どうか、見て みましょう。さわった あとは、てを あらいましょう。
- おうちの 人と いっしょに、「トビムシ」と けんさくして、とぶ すがたの どうがを 見る。とびだす いっしゅんが、ゆっくり 見られる ことが あります。
きょう 知った ことを ひとつ だけ ノートに 書いて おきましょう。「トビムシは、にげる ために とぶ」だけでも いいです。
このメモの内容は、身近な場所や、公開されている資料で確かめられます。
今日できること
- 落ち葉の下を、虫めがねで見てみる。白い紙の上に落ち葉を少しのせて、しばらく見ていると、小さな生きものが見つかることがあります。跳んで逃げるものがいたら、跳び方を見てみましょう。触ったあとは、手を洗いましょう。
- 「トビムシ 跳躍」で検索して、映像や連続写真を探す。出典[3]の論文には、跳躍の連続写真や、速度のグラフが載っています。跳び出しの一瞬が、コマ送りでどう見えるかを確かめてみましょう。
気になった言葉を1つだけ書いておくと、あとで調べる入口になります。「内顎綱」や「叉状器」だけでも十分です。
人の目にどう見えるか、野外での跳び方、ノミの「60倍の高さ」という数字の根拠だ。
手を動かして確かめる
- 2024年の論文の図と補足資料を見る。跳躍の連続写真や、速度・加速度のグラフが、どう示されているかを確かめられます[3]。
- ノミの論文と読みくらべる。地面に力を伝える部位を、どう区別したかが、書かれています[5]。
- 種数の食いちがいの出どころを探す。「3,000種以上」と「8,000種以上」が、どの分類の整理にもとづくかを、専門の資料で探してみましょう[2][3]。
気になった数字や言葉を1つだけノートに記録しておきましょう。「1.7ミリ秒、加速度は重力の約200倍」という一文でもかまいません。
しらべた もとの じょうほう
参考にした情報源
参考にした情報源と、その使い方
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出典について:自治体の科学館のコラム、日本語版Wikipedia、研究論文の要旨と本文の一部を使いました。英語の資料は、内容を日本語で説明しています。このメモは、これらの団体のものではなく、個人のまとめです。
- 西東京市「サイエンスコラム 第87回 驚異のハイジャンパー!トビムシ」。 https://www.city.nishitokyo.lg.jp/enjoy/rokutosciencecolumn/rokutosaiensukoramu/koram_87.html (トビムシの体長、跳躍器、跳ぶ理由の説明)
- 日本語版Wikipedia「トビムシ目」。 https://ja.wikipedia.org/wiki/トビムシ目 (分類、種数、生息地、食べ物、叉状器と保持器、雪の上のユキノミ)
- Smith, A. A. & Harrison, J. S. (2024). Jumping Performance and Behavior of the Globular Springtail Dicyrtomina minuta. Integrative Organismal Biology, 6(1), obae029. https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC11360184/ (球形のトビムシの跳躍の高速度撮影。速度・加速度・回転・出力・逃避の目的。英語の資料)
- 日本語版Wikipedia「ノミ」。 https://ja.wikipedia.org/wiki/ノミ (ノミの分類、体長、吸血の暮らし、跳躍力の紹介)
- Sutton, G. P. & Burrows, M. (2011). Biomechanics of jumping in the flea. Journal of Experimental Biology, 214(5), 836–847. https://journals.biologists.com/jeb/article/214/5/836/33598/Biomechanics-of-jumping-in-the-flea (ノミの跳躍の仕組み。ばねの材料、地面に力を伝える部位、跳び出しの数字。英語の資料)
なおした ところ
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