1. ベルトは いつ ごろから あったの?
1. 5200年前の人は、すでにベルトをしていた
1. 約5200年前のベルト ── アイスマンの持ち物
アルプスの ゆきと こおりの 中から、5200ねんくらい まえに なくなった ひとが みつかりました。「アイスマン」と よばれて います[1]。
この ひとは、こしに ぬのの ような かわを まき、ベルトを して いました。ベルトには、ちいさな ふくろが ぬいつけて ありました[1]。
ベルトは、ずいぶん むかしから あったのです。ただし、ズボンを とめる ためだけの ものだったかは、この ひとの ばあいでも、よく わかりません。
アルプスの氷の中から、紀元前3230年ごろ(約5200年前)に亡くなった男性が見つかりました。「アイスマン」や「エッツィ」と呼ばれる人です。腰布とベルトを身につけていて、ベルトには小物を入れる袋が縫いつけられていたと、博物館の展示などを紹介した資料に書かれています[1]。
日本語の解説でも、ベルトの使い道は「衣服を留めること」と「物を携えること」の2つに整理され、使われはじめたのは青銅器時代までさかのぼれるといいます[3]。アイスマンはそれより古い時代の人(銅石器時代)です。ベルトの歴史は、この説明よりも古いことになります。
ベルトのない時代を探すつもりが、いきなり約5200年前にベルトが出てきました。
2. ズボンは ベルトに どう つながって いたの?
2. 脚のおおいを、ベルトに結びつけた
2. アイスマンのレギンス ── ベルトに革紐で結ぶ二つ組
アイスマンは、あしの ぶぶんに、ながい ぬのの ような ものを 1本ずつ つけて いました。ヤギの かわで できて います[2]。
これは、あしを おおう ものです。うえの ほうは、かわの ひもで ベルトに むすんで ありました。したの ほうは、くつに とめて いました[2]。
ふたつの ふうせんを ひもで つるして おくように、あしの ぶぶんを ベルトから ぶらさげて いたのです。ただし ほんとうは、ふうせんの ように かるい ものでは ありません。
アイスマンは、ズボンのように一続きの服ではなく、左右別々の脚のおおい(レギンス)をはいていました。ヤギの革でできています。
南チロル考古学博物館の解説によると、上の端は革のひもで補強され、別の革ひもでベルトに結びつけられていました。下の端は靴に留められていました[2]。
つまりベルトは、腰布を留めるだけでなく、脚のおおいを吊る役目もしていたことになります。今のズボンとベルトは「ズボンにベルト」ですが、この時代は「ベルトに脚のおおいを結ぶ」という順番でした。
南チロル考古学博物館の解説では、アイスマンのレギンスはヤギ革製で、左右別々の脚のおおいである。上端は革の細い帯で補強され、別の革紐でベルトに結びつけられ、下端は靴に留められていた[2]。
つまり、ズボン(脚を分けた衣)を体に留めるのに、ベルトが「土台」になっていた。ベルトに結ぶ二つ組の構造である。
これは一例であり、当時の人々がみなこうしていたと言えるわけではない。ただ、「ベルトがあとから、ズボンを留めるために生まれた」という順序で考えると、この例とは合わなくなる。
3. いちばん ふるい ズボンは、なんの ために?
3. 最古級のズボンは、馬に乗る人の服だった?
3. 洋海のズボン ── 紀元前13〜10世紀の羊毛製
いま みつかって いる いちばん ふるい ほうの ズボンは、ちゅうごくの さばくの ちかくの おはかから でて きました。ひつじの けで できて います[4]。
まっすぐな ズボンの あしと、ひろい またの ぬのが あります。うまに のるのに むいた かたち、と けんきゅうした ひとは かんがえて います[4]。
こしを どう とめたかは、しらべた しりょうでは わかりません。わからないことは、わからないままにしておきます。
世界でも最古級とされるズボンは、中国のトルファン近くにある洋海(ヤンハイ)の墓地から出た、羊毛の布でできたものです。放射性炭素による年代測定で、紀元前13〜10世紀ごろとされました[4]。
形は、まっすぐな脚の部分と、広い股の当て布をもちます。研究者は、馬に乗るのに向いた形だったとみています。ただし「乗馬のために発明された」と決まったわけではありません[4]。
腰まわりの留め方については、参照した資料には書かれていませんでした[5]。
ちなみに古代のローマでは、ズボンは最初「野蛮な人の印」と見られ、のちに帝国が広がると、暖かいのでとり入れられたといいます[6]。ズボンは、はじめから人気者ではなかったようです。
世界最古級のズボンは、中国・トルファン近郊の洋海墓地の墓M21・M157から出土した羊毛製で、放射性炭素年代は紀元前13〜10世紀とされる。まっすぐな脚と広い股の当て布をもち、乗馬に適した形と論じられている[4]。ただし「乗馬用に発明された」という点は研究者の説であり、断定できない。
腰まわりの留め方(紐やベルトの有無)は、参照した資料に記述がない。ウエストバンドまで織られた2枚の脚部と十字形の股部という三枚構成の記述にとどまる[5]。
ズボンへの評価は地域で異なった。ウィキペディアによると、古代ギリシャ人はズボンを滑稽なものと見なし、共和政ローマも当初は野蛮人の印と軽んじたが、帝国が広がると暖かさから受け入れた[6]。
4. ちゅうせいの ズボンは、どう とめたの?
4. 中世ヨーロッパ ── 通しひもと、上着に結ぶ「ポイント」
4. ブレーの紐とホーズのポイント ── 中世ヨーロッパの留め方
ちゅうせいの ヨーロッパには、したばきの ような ズボンが ありました。11せいきごろには、あしくびまでの ながさに なり、うえの ふちに とおした ひもで とめて いました[7]。
これは、ふくの こしの ぶぶんの ひもを、ぎゅっと ひっぱって むすぶ やり かたです。
もっと あとの じだいには、あしを おおう ぬのを、うわぎに ひもで むすんで いました。この ひもは、「ポイント」と よばれます[8]。
5. にほんの はかまは、どう とめるの?
5. 日本の袴 ── 4本のひもで腰に結ぶ
5. 袴の紐 ── 「ひもで腰に結び留める」衣
にほんには、袴が あります。きものの うえに つけて、こしから したを おおう ふくです。
はかまは、ひもで こしに むすんで とめます[10]。いまの はかまは、まえと うしろに ひもが 2ほんずつ、ぜんぶで 4ほん あります[11]。
ひもを ぐるりと まわして むすぶと、ベルトが なくても、ずり おちません。
6. ベルトは、いつ ふつうに なったの?
6. サスペンダーの時代を経て、ベルトへ
6. サスペンダーからベルトへ ── 18世紀〜20世紀
せなかや かたから ズボンを つる「サスペンダー」も あります。18せいきの はじめに、ドイツで あらわれたと する せつが あります[12]。はじまりには いろいろな せつが あります。
むかしの ズボンは、おなかの ずっと うえまで ありました。だから、ベルトは しにくかった そうです[13]。
ズボンの かたちが かわって、ベルトが ふえて いきました。とめ かたは、ひとつでは なかったのです。
サスペンダーは、18世紀の初めにドイツに現れたとする説明があります。ただ、英語版のウィキペディアには、1822年にロンドンで広まったとする説明もあり、起源には諸説があるようです。日本語版によると、はじめは背中でH型にクロスし、18世紀末にX型、19世紀半ばにはY型になりました。ズボンとの留め方も、ボタンのほか、クリップやリングの式があります[12]。
19世紀の中ごろから20世紀の初めのズボンは、股上が高く、ベルトが使いにくかったので、サスペンダーが主流でした。1938年のアメリカの雑誌には、男性の60%がベルトを選ぶと書かれています[13]。ここから、ベルトが広がっていったとみられます。
ベルトのない時代を探してみると、見てきた例では、ひもやベルト、サスペンダーなどで留めていました。
日本語版ウィキペディアは、サスペンダーが18世紀初めにドイツで登場したとし、当初はH型(背中で交差しない)、18世紀末にX型、19世紀半ばにY型になった。留め具はボタン式のほか、クリップ式とリング式がある[12]。なお英語版ウィキペディアは、1822年にアルバート・サーストンが「braces」として広めたとする。起源は資料によって異なり、ここでは一つに決めない。
19世紀中ごろ〜20世紀初めのズボンは股上が高く、ベルトが使いにくかったため、サスペンダーが主流だった。1938年の『ライフ』誌は、アメリカ人男性の60%がベルトを選ぶと述べている[13]。
結論として、「ベルトがない時代」は見つけにくく、腰の紐・ベルトへの結び付け・上着への結び付け・サスペンダーなど、留め方は多様だった。
自分でも しらべて みたく なったら
自分でも調べてみたくなったら
自分でも調べてみたくなったら
いえで できる こと
- ズボンや スカートの こしの まわりを 見て みましょう。ひも、ボタン、ゴム、ベルトの どれで とめて いるでしょうか。
- うちに はかまや きものの しゃしんが あれば、はかまの ひもが どこから でて いるか 見て みましょう。
でかけて できる こと
- としょかんで、むかしの ふくの ほんを さがして みましょう。むかしの ひとは、どう とめて いたか、かいて ある ページが あるかも しれません。
家でできること
- 家にある服を何着か出して、腰まわりの留め方を見比べてみましょう。ひも、ボタン、ゴム、ベルトなど、いくつあるでしょうか。
- 家に着物や袴の写真があれば、ひもの出ている位置と結び目の場所を観察してみましょう。
出かけてできること
- 図書館や博物館の服飾の展示で、昔の服の留め具(ひも、ボタン、ベルト)を探してみましょう。
しらべた もとの じょうほう
参考にした情報源
参考にした情報源と、その使い方
本文で使った事実の出どころです。ウィキペディアは二次資料なので、必要に応じて原典にもあたってください。
- Ötzi - Wikipedia https://en.wikipedia.org/wiki/%C3%96tzi (アイスマンの年代・腰布・ベルトと袋)
- South Tyrol Museum of Archaeology: Clothing https://www.iceman.it/en/oetzi/clothing (レギンスとベルトの結びつけ)
- ベルト (服飾) - Wikipedia https://ja.wikipedia.org/wiki/ベルト_(服飾) (ベルトの歴史と用途)
- Beck et al. 2014, Quaternary International (abstract) https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S1040618214002808 (洋海のズボンの年代と形)
- Earliest pair of trousers found in China (Archaeology Wiki) https://www.archaeology.wiki/blog/2014/06/02/earliest-pair-of-trousers-found-in-china/ (洋海のズボンの構成)
- Trousers - Wikipedia https://en.wikipedia.org/wiki/Trousers (古代ギリシャ・ローマのズボンへの見方)
- Braies - Wikipedia https://en.wikipedia.org/wiki/Braies (ブレーの通しひも)
- Hose (clothing) - Wikipedia https://en.wikipedia.org/wiki/Hose_(clothing) (ホーズを上着やベルトに結ぶ)
- Medieval arming points (Medieval Rats) http://www.medievalrats.co.uk/medieval_arming_points.htm (ポイントで上着に結んで張らせる)
- 袴 - コトバンク(日本大百科全書ほか) https://kotobank.jp/word/袴-113519 (袴の紐と歴史)
- 袴 - Wikipedia https://ja.wikipedia.org/wiki/袴 (現在の袴の4本のひも・語源)
- サスペンダー - Wikipedia https://ja.wikipedia.org/wiki/サスペンダー (サスペンダーの形の移り変わり)
- Suspenders - Wikipedia https://en.wikipedia.org/wiki/Suspenders (高い股上とベルトの広がり)
なおした ところ
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