このサイトは、ほんの入り口です

ここにあるのは、だれかが実際に調べ、考え、作ってきたことを集めたメモです。気になったら、ページの下の「参考にした情報源」から、もとの本や記事、それを生み出した人たちに、直接ふれてみてください。このメモには書ききれないおもしろさが、そこにあります。

かんたんそうな もんだいが、どうして とけないの?

27から始めると9232まで跳ね上がる ── 問題文は小学生にも読めるのに、解けた問題と解けない問題がある

3つの「簡単に見える」問題の明暗 ── コラッツ予想・ゴールドバッハ予想・フェルマーの最終定理

分野:歴史・文化

27という 数から はじめて、かんたんな ルールを くりかえすと、いちど 9232まで ふくらんでから、111回で 1に おちて きます。

ルールは 小学生でも よめます。なのに、「どんな 数でも そうなるか」は、いまの 数学者にも わかりません。かんたんそうな もんだいが とける ものと とけない ものに わかれる ようすが わかります。

電卓で27から始めて、ごく簡単なルールを繰り返すと、数は9232まで跳ね上がり、そのあと111回の操作で1にたどり着きます。ルールは小学生でも読めますが、「どんな数から始めても必ず1に着くのか」は、今も証明されていません。

27は111回で1に着きます。それでも、どんな数から始めても1に着くとは証明されていません。問題文が簡単でも、証明までの道のりは問題ごとに違います。358年かかって解けたもの、奇数の版だけ解けたもの、「ほとんどすべて」までしか進んでいないものを、3つ並べて見ます。

コラッツの問題は、偶数なら2で割り、奇数なら3倍して1を足す操作を繰り返したとき、どの正の整数からでも1に着くかを問う。27は111回で1に着くが、途中で9232まで上がる[2]。問題文は小学生にも読めるが、1937年の提起から今も証明は得られていない[1]。

この性質は、ゴールドバッハ予想やフェルマーの最終定理にも通じる。前者は偶数版が未解決で奇数版が2013年に解かれ、後者は1637年の書き込みから358年を経て1995年に証明された[9]。3つを並べると、「問いの易しさ」と「答えへの距離」が別の量であることが分かる。

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1. 27から はじめると、どこまで あがる?

1. 電卓で27から始めると、数は9232まで跳ね上がる

1. 3n+1問題 ── 27は111回で1に着き、途中で9232に達する

ルールは ふたつだけです。数を ひとつ えらびます。ぐうすうなら 2で わります。きすうなら 3ばいして 1を たします。できた 数にも、おなじ ことを します。

6から はじめて みましょう。6、3、10、5、16、8、4、2、1。8回で 1に つきます。

では 27は どうでしょう。82、41、124、62、31、94、47、142、71……。あがったり さがったり して、いちばん 高い ときは 9232です。それでも 111回で 1に つくと、しりょうに あります[2]。

27の 340ばいぐらいまで ふくらんでから おちて くるのは、ふしぎです。ほかの 数でも ずっと 1に つくのでしょうか。

ルールは2つだけ

数を1つ選び、偶数なら2で割り、奇数なら3倍して1を足します。出てきた数にも同じことをして、繰り返します。6から始めると、6、3、10、5、16、8、4、2、1と進み、8回の操作で1に着きます。

ここで、「どの数から始めても、いつか必ず1に着くのか」という問いが生まれます。これがコラッツの問題で、ローター・コラッツが1937年に提起しました。3n+1問題、シラキュース問題などの名前でも呼ばれます[1]。

27だけは、おとなしくない

6のような小さい数は、あっさり1に着きます。ところが27から始めると、82、41、124、62、31、94、47、142、71と、下がっては上がる道を何十回も進みます。途中の最大値は9232で、27の約340倍です。それでも、操作を111回くり返すと1に着きます[2]。

数え方によっては、最初の27も含めて112項と数えることもあります。ここでは操作の回数で数えました。

2けたの数が、4けたまで跳ね上がってから落ちてくる。この動きから、次の疑いが出てきます。もっと大きな数なら、跳ね上がったまま戻ってこない道が、あるのではないでしょうか。

コラッツの問題(3n+1問題、シラキュース問題)は、正の整数に対し、偶数なら2で割り、奇数なら3倍して1を足す操作を繰り返すと、必ず1に到達するかを問うものである。ローター・コラッツが1937年に提起した[1]。

6から始めれば6、3、10、5、16、8、4、2、1と8回で終わる。しかし27では事情が違う。奇数のたびに3倍されて増え、偶数のたびに半分になって減るという操作の綱引きの結果、数列は上下しながら進み、途中の最大値は9232、つまり出発点の約340倍に達してから、111回目の操作で1に着く[2]。出だしを書き出すと、27、82、41、124、62、31、94、47、142、71と続き、最初の10項のうち奇数は5つあって、そのたびに3倍されて数が跳ね上がる。日本語版の記事は初期値を含めた112項と数えており、「操作の回数」と「項数」は1ずれるので、引用するときは区別が要る。

この大きな振れ幅が、問いを難しくする。増える操作と減る操作が絡み合っているため、小さな数を調べた結果から、大きな数の振る舞いを読み取る規則が見つからないからである。では、実際にどこまで調べられているのか。

2. ものすごく たくさん しらべても、「かならず」とは いえないの?

2. 何京もの数を調べても、「必ず1に着く」とは言えない理由

2. コンピュータによる検証の範囲と、それが証明にならない理由

コンピュータで しらべた はんいでは、2を 68かいかけた 数、およそ 2.95がい(がいは、1の あとに ゼロが 20こ つく 数)まで、1に つかない 数は ありませんでした[1]。

けれども、これは「ぜんぶの 数で そう なる」と いう しょうめいでは ありません。しらべた すぐ 先に、ちがう 数が かくれて いるかも しれない からです。

ゆうめいな 数学者の エルデシュは、「数学は まだ、こういう もんだいの じゅんびが できて いないのかも しれない」と 話した と つたえられて います[1]。

調べた範囲に、反例はない

コンピュータで調べた範囲では、2の68乗(約2.95×10の20乗、およそ2.95垓)までの数は、すべて1に着きました。日本語版の記事は68乗まで、英語版の記事は2025年の時点で2の71乗(約2.4×10の21乗)までと紹介しています。範囲は新しい計算のたびに広がります[1]。

それでも証明にならない

何京の数で成り立っても、その次の数が例外かもしれません。「すべての数で成り立つ」と言うには、1つ1つを調べるのではなく、すべてに通じる理由を示す必要があります。それが証明です。

この問題の難しさについて、数学者のエルデシュは「数学はまだ、この種の問題に対する用意ができていないのかもしれない」と述べたと伝えられています。ジェフリー・ラガリアスは2010年に、現代数学の手の届かない非常に難しい問題だと評しています[1]。

では、もう手がかりはないのでしょうか。実は、「すべて」には届かないけれど、「ほとんどすべて」までは進んだ研究があります。

計算機による検証は、日本語版の記事では2の68乗(約2.95×10の20乗、約2.95垓)まで、英語版の記事では2025年時点で2の71乗(約2.36×10の21乗)までの出発値で、反例が見つかっていないと記されている[1]。この範囲は更新され続けるので、固定した数値として引用するときは、記事の版と年を添えるべきだ。

2の68乗は、2を68回かけた数である。約2.95垓という大きさは、1秒に1つの数を調べていくと約9.4兆年かかる量だ(2.95×10の20乗÷約3.15×10の7乗秒で計算)。人間の手作業では到底届かない範囲まで、計算機が調べたことになる。しかし、有限の範囲での成立は、すべての正の整数での成立を示さない。反例があるとすれば、検証範囲のさらに先にあることになる。必要なのは、各出発点を個別に確かめることではなく、すべての出発点に通用する論証である。

その論証がまだ出てこない理由について、エルデシュは「数学はまだこの種の問題への用意ができていないのかもしれない」と述べたと伝えられ、ラガリアスは2010年に「現代数学の手の届かない非常に難しい問題」と評した[1]。それでも研究は止まっていない。2019年の結果は、問題の姿を一歩はっきりさせた。

3. ぜんぶは むりでも 「ほとんど ぜんぶ」は わかった

3. 「すべて」は無理でも、「ほとんどすべて」は証明された

3. タオの結果(2019年)── 「ほとんどすべて」と「すべて」の差

2019ねんに、テレンス・タオ さんと いう 数学者が、すごい ことを しめしました。

「はじめの 数より ずっと 小さい 数まで さがる」と いう ことが、数の ほとんど ぜんぶに あてはまる、と しょうめい したのです[3]。

ただし、「ほとんど ぜんぶ」は 「ぜんぶ」では ありません。コラッツの もんだいは、まだ とけて いません[3]。

タオが示したこと

数学者のテレンス・タオは2019年、論文をネット上に公開しました(のちに2022年、数学の専門誌に掲載)。内容を大まかに言うと、次のとおりです。ものすごくゆっくりと、でも限りなく大きくなる関数fを1つ選ぶと、出発点Nの「ほとんどすべて」について、コラッツ列はf(N)以下まで下がります。どのfを選んでも言えます[3]。

出発点がどれだけ大きくても、列はそれよりずっと小さな値まで下がる。これが、ほとんどの出発点で言えるようになったのです。

「ほとんどすべて」と「すべて」の間

ここで大事なのは、「ほとんどすべて」が、数学では「すべて」ではない言葉だという点です。論文の主張は対数密度という測り方で言うもので、例外があるとしても、数全体の中ではごくわずかな割合にしかならない、という意味です。コラッツの問題そのものは、これでも解けていません[3]。

解けない問題にも、「ここまでは分かった」という地図ができていきます。次は、もう少し昔からある問題を見てみましょう。

テレンス・タオは2019年9月にarXivへ論文を投稿し、2022年にForum of Mathematics, Piに掲載された。主張は、限りなく大きくなる関数fを任意にとったとき、対数密度の意味でほとんどすべての正の整数Nについて、Nから始めたコラッツ列の最小値がf(N)以下になる、というものである[3]。限りなく大きくなる関数であれば、fはどれほどゆっくり増えてもよい。

この結果は、列が1に着くことを示しているのではなく、「ほとんどすべての出発点で、列が出発点よりはるかに小さな値にまで下がる」ことを示している。しかも「ほとんどすべて」は対数密度の意味であり、例外の集合が空であるとまでは言えない。そのため、コラッツ予想が解決したわけではない[3]。「例外があるとしても、数全体の中ではごくわずかな割合にしかならない」という意味であり、例外がゼロだという主張ではない。

この区別は、あとの2つの問題を読むときにも要る。「近づいた」と「解けた」は違うからである。タオの論文の題にある「almost bounded」も、「有界になった」ではなく「ほとんど有界」という限定つきの言葉だ。題の言葉にも、結果の範囲が正直に書かれている[3]。

4. ぐうすうは、いつも ふたつの そすうの たし算に なる?

4. 偶数は、いつでも2つの素数の足し算になるのか

4. ゴールドバッハ予想(1742年)── 400京まで確かめられた偶数

つぎの もんだいは、たし算です。「2より 大きい ぐうすうは、ふたつの そすうの たし算で かける」と いう もんだいです[4]。

そすうは、1と 自分でしか われない 数のことで、2、3、5、7、11 などです。

やって みると、12は 5+7、20は 3+17、30は 7+23 に なります。1742年に ゴールドバッハさんが、オイラーさんへの 手紙に かいた もんだいです[4]。

コンピュータで しらべると、400けい いかの ぐうすうは ぜんぶ そう なりました[5]。それでも、「かならず」とは まだ いえません。

足し算で書けるか、という問い

「2より大きい偶数は、すべて2つの素数の和で表せる」。これがゴールドバッハ予想です。素数は、1と自分自身でしか割り切れない数で、2、3、5、7、11などです。1742年に、ゴールドバッハがオイラーへの手紙で述べたとされています[4]。

試してみると、12は5+7、20は3+17(7+13でもよい)、30は7+23(11+19、13+17でもよい)と、すぐに見つかります。小さな偶数ならいつも成り立ちそうで、「当たり前では」と感じるほどです。

400京まで成り立つのに

2014年の論文は、4×10の18乗(400京)以下のすべての偶数で、この予想が成り立つことをコンピュータで確かめたと報告しました[5]。400京は、400兆の1万倍です。

それでも、これは証明ではありません。コラッツの問題と同じように、調べ終えた数の外側までは何も言えないからです。

ゴールドバッハ予想は、2より大きいすべての偶数は2つの素数の和で表せる、という主張で、1742年にゴールドバッハがオイラーに宛てた手紙で述べたとされる[4]。12 = 5 + 7、20 = 3 + 17 = 7 + 13、30 = 7 + 23 = 11 + 19 = 13 + 17のように、小さな偶数では次々に確かめられる。

計算機による検証も進んでいる。2014年にMath. Comp.に掲載された論文は、4×10の18乗(400京)以下のすべての偶数で成り立つことを報告している[5]。400京は4×10の18乗であり、400兆(4×10の14乗)の1万倍にあたるので、桁の取りちがいに注意が要る。

しかし、検証は証明ではない。偶数は無限にあり、有限の範囲での成立は、その外側の偶数について何も保証しないからである。では、証明の側からは、どこまで進んだのか。1973年と2013年に、それぞれ形の違う前進があった。

5. ぐうすうは まだ、きすうの ほうは とけた

5. 偶数版は未解決、奇数版は解けた ── 近づき方の2通り

5. 陳景潤の結果(1973年)とヘルフゴットの証明(2013年)

この もんだいを 「ちかづく」やりかたが、ふたつ あります。

ひとつめは、「ぴったり」では なくても、ほとんど それに ちかい ことを しめす やりかたです。1973ねんに、ちんけいじゅん さんが、「じゅうぶん 大きい ぐうすうは、そすう ひとつと、そすう ふたつを かけた 数の たし算で かける」と しめしました[4]。

ふたつめは、ちょっと かたちを かえた もんだいを とく やりかたです。「5より 大きい きすうは、そすう みっつの たし算で かける」と いう もんだいを、ヘルフゴットさんが 2013ねんに しょうめい しました[6]。

1742ねんに もんだいが でてから、およそ 270ねん かかりました。ぐうすうの ほうは、いまも とけて いません。

あと一歩まで近づいた陳景潤

陳景潤は1973年、「十分に大きいすべての偶数は、素数1つと、素数2つの積の和で表せる」ことを示しました[4]。たとえば20は、5+15で、15は3×5です。予想の「素数2つ」まで、あと少しの形です。

形を変えて解けた奇数版

もう1つの進み方は、予想を少し弱めた版を証明することです。「5より大きい奇数は、3つの素数の和で表せる」。これは弱いゴールドバッハ予想と呼ばれ、ハラルド・ヘルフゴットが2013年に証明を発表しました。大きな奇数は理論で、それ以下はコンピュータの検証で、という組み合わせです[6]。

1742年から数えると、約270年かかりました。「偶数が2つの素数」という本来の予想は、今も解けていません。簡単に見える問題を、少し形を変えて解く。解けた形と解けない形が隣り合っていることが、この問題の味わいです。

予想本体への接近として、陳景潤は1973年に、十分大きいすべての偶数は、素数1つと半素数(2つの素数の積)の和で書けることを示した[4]。20 = 5 + 15 = 5 + 3×5のような形である。予想の「素数2つ」まであと一歩だが、半素数を素数に置き換えるところが越えられていない。

別の道は、弱い版の証明である。すべての5より大きな奇数が3つの素数の和で書けるという三項版を、ヘルフゴットが2013年に証明した。10の27乗より大きい奇数は理論で扱い、それ以下は計算機検証で補う構成である[6]。1742年の提起から約270年を要したことになる。

注意したいのは、解かれたのは奇数・3つの素数の版であり、偶数・2つの素数の版ではない点である[6]。ここまでで、未解決(コラッツ)、部分的に解決(ゴールドバッハ)の2つの姿が出そろった。最後に、完全に解けた問題を見る。

6. 本の よはくに かかれた もんだいは、どう とけたの?

6. 本の余白に書かれた問題は、どうやって358年後に解けたのか

6. フェルマーの最終定理 ── 1637年の書き込みから1995年の証明まで

3×3+4×4=5×5 と いう 式が あります。2かいかける 数なら、こう なる ことが あります。

では、3かい かける 数や 4かい かける 数では どうでしょう。フェルマーさんは、「そう なる 数は ない」と 本の よはくに 書き、「しょうめいは あるが、よはくが せまくて 書けない」と 書いた と つたえられて います[7]。

それから 358年、だれも とけませんでした。1995年に、ワイルズさんが しょうめいを かんせい させました[9]。ワイルズさんは 1993年に 一度 はっぴょうしましたが、まちがいが 見つかり、なおして 1994年に のりこえた のです[8]。

ワイルズさんの しょうめいは、2つの ろんぶん、あわせて 129ページ でした[8]。よはくには とても おさまりません。

余白の書き込み

3の2乗+4の2乗は5の2乗、つまり9+16=25です。2乗なら、こうして成り立つ組が見つかります。では、3乗、4乗、5乗……ではどうか。フェルマーの最終定理は、3以上の自然数nについて、xのn乗+yのn乗=zのn乗となる自然数の組はない、という主張です。

フェルマーは1637年ごろ、本の余白に「真に驚くべき証明を見つけたが、余白が狭すぎて書けない」と記したと伝えられています[7]。

一つずつ片づけても、終わらない

n=4は、フェルマー自身が無限降下法で示しました。n=3はオイラーが、n=5は1825年にディリクレとルジャンドルらが証明し、ジェルマンも貢献しました[7]。けれどもnは無限にあり、1つずつ片づけても、終わりません。

1993年の発表から、1995年の論文まで

アンドリュー・ワイルズは1993年6月23日にケンブリッジで証明を発表しました。しかし9月に誤りが見つかります。1994年9月19日にひらめきで修正し、1995年に2本の論文(ワイルズ単独、リチャード・テイラーとの共著)が専門誌に掲載されました。計129ページです[8]。

フェルマーが書いた1637年から、証明の1995年まで358年。ギネス世界記録は、これを「最も長く未解決だった数学の問題」として記録しています[9]。ワイルズは2016年にアーベル賞を受賞しました。授賞理由は、楕円曲線とモジュラー形式を結びつける道を通った見事な証明です[10]。

129ページの証明は、余白に収まる長さではありません。フェルマーの言う証明が同じものだったかどうかは、資料からは分かりません。

フェルマーの最終定理は、3以上の自然数nについて、x^n + y^n = z^nを満たす自然数の組が存在しない、という主張である。n = 2では3^2 + 4^2 = 5^2のように解がある。フェルマーは1637年ごろ、本の余白に「真に驚くべき証明を見つけたが、余白が狭すぎて書けない」と記したと伝えられる[7]。

個別のnへの進展はあった。n = 4はフェルマー自身が無限降下法で示し、n = 3はオイラーが扱った(発表年は資料により食いちがう)。n = 5は1825年にディリクレとルジャンドルが証明し、ジェルマンの貢献があった[7]。ただしnは無限にあるので、個別の証明を積んでも主張全体には届かない。

全体を示したのは、ワイルズである。1993年6月23日にケンブリッジで証明を発表したが、9月に誤りが指摘された。1994年9月19日に着想を得て修正し、1995年にAnnals of Mathematicsにワイルズ単独の論文とテイラーとの共著論文の2本、計129ページが掲載された[8]。修正にはテイラーの協力があった。

1637年から1995年まで358年で、ギネス世界記録は「最も長く未解決だった数学の問題」と認めている[9]。ワイルズは2016年にアーベル賞を受賞し、授賞理由は「半安定楕円曲線に対するモジュラー性予想を通じた、フェルマーの最終定理の見事な証明」だった[10]。楕円曲線とモジュラー形式という、問題文にはまったく出てこない道具を結びつけたことで解けた点に、この問題の性格が表れている。フェルマーが想定した証明と同じものかどうかは、資料からは判断できない。

でんたくで、ちいさな 数を ためして みよう

電卓と紙で、小さな数を試してみよう

小さな数で試す、そして原典を読む

でんたくが あれば、7から コラッツの ルールを やって みましょう。16回で 1に つくはずです。2から 15までの 数で、いちばん 回数が 多い 数は どれでしょう。

ぐうすうの 10、14、24 を、そすう ふたつの たし算に して みましょう。いくつ かき方が あるかも、かぞえて みます。

電卓で、7から始めてみてください。16回で1に着きます。2から15までの数のうち、いちばん操作の回数が多いのはどれか。紙に表を書くと、予想外の数が出てくるかもしれません。27のように、途中で大きく跳ねる数も探せます。

ゴールドバッハ予想のほうは、偶数10、14、24などを、素数2つの和で書けるだけ書いてみます。書き方が1通りか、何通りあるか。数えてみると、偶数ごとに差が出ることに気づくはずです。

それぞれの問題の出どころを読みたくなったら、日本語版ウィキペディアの項目から入り、論文の要旨へと進む順がたどりやすい道です。

手で確かめるなら、7から始めて16回で1に着くことを確認し、2から15までで操作回数が最大になる数を探すとよい。ゴールドバッハ予想では、10、14、24などを素数2つの和で書き、組み合わせの数が偶数ごとにどう変わるかを数えられる。

原典は、ヘルフゴットの三項版の論文[6]とタオの論文[3]が、arXivで公開されている。どちらも英語の専門論文なので、要旨(abstract)から読んでみる方法もある。400京までの検証[5]の要旨と合わせて読むと、「検証」「部分的な結果」「証明」の違いが、各論文の書き方からも見えてくる。

しらべた もとの じょうほう

参考にした情報源

参考にした情報源と、その使い方

出典について:論文の要旨、ギネス世界記録、アーベル賞の公式ページ、百科事典サイトを使った。何に使ったかは、それぞれの項目の最後に書いている。

  1. Wikipedia英語版「Collatz conjecture」。https://en.wikipedia.org/wiki/Collatz_conjecture (コラッツの問題の定義、検証範囲、エルデシュとラガリアスの評について)
  2. Wikipedia日本語版「コラッツの問題」。https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B3%E3%83%A9%E3%83%83%E3%83%84%E3%81%AE%E5%95%8F%E9%A1%8C (27の例、日本語版の検証範囲について)
  3. Terence Tao「Almost all orbits of the Collatz map attain almost bounded values」(arXiv:1909.03562)。https://arxiv.org/abs/1909.03562 (「ほとんどすべて」の結果について)
  4. Wikipedia日本語版「ゴールドバッハの予想」。https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B4%E3%83%BC%E3%83%AB%E3%83%89%E3%83%90%E3%83%83%E3%83%8F%E3%81%AE%E4%BA%88%E6%83%B3 (予想の内容、1742年の手紙、陳景潤の結果について)
  5. Oliveira e Silva, Herzog, Pardi「Empirical verification of the even Goldbach conjecture and computation of prime gaps, up to 4·10^18」(Mathematics of Computation 83, 2014)。https://www.ams.org/journals/mcom/2014-83-288/S0025-5718-2013-02787-1 (400京までの検証について)
  6. Harald Helfgott「The ternary Goldbach conjecture」(arXiv:1312.7748)。https://arxiv.org/abs/1312.7748 (奇数・3つの素数の版の証明について)
  7. Wikipedia日本語版「フェルマーの最終定理」。https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%95%E3%82%A7%E3%83%AB%E3%83%9E%E3%83%BC%E3%81%AE%E6%9C%80%E7%B5%82%E5%AE%9A%E7%90%86 (定理の内容、余白の書き込み、個別のnの証明について)
  8. Wikipedia英語版「Wiles's proof of Fermat's Last Theorem」。https://en.wikipedia.org/wiki/Wiles%27s_proof_of_Fermat%27s_Last_Theorem (1993年の発表から1995年の掲載までの経過について)
  9. Guinness World Records「Longest-standing maths problem ever」。https://www.guinnessworldrecords.com/world-records/longest-standing-maths-problem-ever (358年の記録について)
  10. The Abel Prize「2016 laureate」。https://www.abelprize.no/abel-prize-laureates/2016 (ワイルズのアーベル賞の授賞理由について)

なおした ところ

更新履歴

更新履歴(改版の記録)

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