1. せんもんかに きいても、わからなかった
1. 「なぜ縞なのか」に、確定的な答えは得られなかった
1. 2007年の植物Q&A ── 確定的な答えが得られなかった問い
日本植物生理学会には、しょくぶつの ことを 答える ページが あります。そこで、すいかの しまの わけが しらべられた ことが ありました[2]。
答えた 人は、しまの 中を 走る 細い すじの ことや、たねが ある すいかでも しまが ない ものが あることなどを 考えました。でも、「これだ」という 答えには なりませんでした[2]。
むずかしい もんだいだったのですね。では、まず しまの 正体から、見て みましょう。
2. しまの 正体は、みどりの こさ
2. 縞の正体は、緑色の濃さの違い
2. 濃い帯と薄い帯 ── クロロフィル量はほぼ2倍
すいかの 皮は、ぬり分けて あるように 見えます。でも、そうでは ありません。しまの ちがいは、みどりの こさの ちがいです[1]。
皮の 中には、ようりょくたいと いう みどり色の 小さな つぶが あります。こい ぶぶんには、この つぶが たくさん あります[1]。
はかった 数では、こい ぶぶんの みどりの もとは、うすい ぶぶんの ほぼ 二ばいでした[1]。
たとえば、おなじ えのぐを 一どぬりと 二どぬりに した ようです。ただし 本当は、ぬって いるのではなく、皮の 中の つぶの 数が ちがいます。
3. しまは、おやから こどもへ つたわる
3. 縞は遺伝する ── 1963年の論文と近年の遺伝子
3. 縞の遺伝 ── 1963年の分離比と、ClSP・ClAPRR2の報告
しまが ある すいかと ない すいかを かけあわせると、どうなるでしょう。むかしの けんきゅうでは、うまれた すいかを 数えました[3]。
うまれた すいかを 数えると、しまが ある ものは 四十九、ない ものは 二十四でした。しまが ある ほうが、ない ほうより 出やすいと 考えられました[3]。
けんきゅうの 文しょうには「三たい 一」と 書かれています。でも 数えた 数は、およそ 二たい 一に 近い 数です。どうして ずれたのかは、ここでは 分かりません。すべての すいかに あてはまるとも 言えません。
さいきんは、みどりの こさに かかわる いでんしの 名前も 知らされています[4]。まだ けんきゅうの とちゅうの 話です。
1963年の数え上げ
1963年の育種学雑誌に載った論文では、縞のあるスイカと縞のないスイカをかけ合わせた子どもの代(F2)を数えています。果皮の模様は縞が49、縞なしが24に分かれ、縞のほうが縞なしに対して優性で、メンデル式の1因子遺伝と報告されました[3]。
論文は分離比を3:1としていますが、抄録の実数49:24は約2:1で、食い違って見えます。理由は抄録からは分かりません。また、これは論文で調べた系統の結果で、すべての品種にあてはまる法則とは限りません。
遺伝子の名前が出てくる
近年の研究では、濃い緑の縞でClSPというたんぱく質が多く、ClAPRR2という遺伝子を活性化させ、その偏りが縞の濃淡を生むと報告されました(2025年)[4]。別の研究(Plant Science誌)では、ClAPRR2の遺伝子の構造が不完全なことが、淡い縞の原因になると報告されています[5]。これらの説明は、論文の要旨にもとづく紹介です。
下間実(1963)は、F2の果皮の模様が縞49・無縞24に分離し、縞が無縞に対して優性でメンデル性の1因子遺伝をすると報告した[3]。論文中の分離比は3:1とされるが、抄録の実数49:24は約2:1であり、食い違いの理由は抄録からは確認できない。この結果が全品種に当てはまるとは限らない。
分子レベルでは、Yueら(Plant Biotechnology Journal、2025)が、濃緑の縞でKNOX型の転写因子ClSPが多く、葉緑体の発達とクロロフィルの蓄積に関わるClAPRR2を活性化し、このClSP‐ClAPRR2の偏りが濃淡の縞を生むと報告している[4]。別の報告(Plant Science誌)は、ClAPRR2のコード領域の構造が不完全であることが淡緑の縞の原因になるとする[5]。これら2件の記述は要旨にもとづく。
4. とりに 見つけて もらうため?
4. 「鳥に見つけてもらうため」という説
4. 縞の意味をめぐる仮説 ── 鳥による種子散布
すいかは、さばくで うまれた くだものだと いわれます[6]。さばくの 中で、すいかは どうやって たねを ひろげたのでしょう。
ひとつの 考えは、とりに 見つけて もらう ためです。こい 色と うすい 色が ならぶと、目立ちます。とりが 気づいて 食べれば、たねを とおくへ はこんで もらえます[6]。
ただし、これは「そうかも しれない」という 考えです。本当に そうかどうかは、まだ きまっていません。
5. むかしの すいかにも、しまは あった?
5. 江戸時代のスイカに縞はあったか
5. 江戸期の縞をめぐる資料の食い違いと、大和・都の系統
すいかが 日本に きたのは、十七せいきごろと いわれます。ただ、いつ だれが もってきたかには、いくつかの 考えが あります[7]。
えどじだいの すいかに しまが あったかは、しりょうに よって 言う ことが ちがいます。しまの ない まっ黒な 皮が ふつうだったと する しりょうと[7]、黒っぽい 地に たての しまが ある 絵が あると する しりょうが あります[8]。
いまの しまの すいかは、大和すいかと 都すいかという 二つの なかまが もとに なり、大正の おわりごろから かいりょうが すすんだと されます[7]。いまは、しまの ない 黒い すいかも 売られています[9]。
日本に来たのは17世紀ごろ
ALICの資料では、スイカが日本に渡来したのは17世紀ごろとされます。1630年ごろに長崎へ、1650年ごろに隠元禅師が、など諸説あります[7]。ただし、次に紹介する「ことばのまど」は、それより前のスイカを思わせる書き方もしていて、資料によって見方が分かれます[8]。
江戸のスイカに縞はあった?
農畜産業振興機構(ALIC)の資料は、江戸時代の皮を「縞模様のない真っ黒」なものが一般的としています[7]。一方、小学館の「ことばのまど」は、江戸中期の絵に黒っぽい地に縦縞のスイカが描かれていることから、現代より黒っぽいが縦縞のあるスイカだったと考えられるとしています[8]。資料が割れているので、縞がいつ広まったかは、ここでは決めません。
いまの縞の元になった品種
ALICの資料では、縞模様スイカの基礎は奈良県の「大和すいか」と千葉県の「都すいか」で、現在の品種のほとんどがこの二大品種の系統とされます。大正後期から昭和初期に、海外の種との交雑で改良が進みました[7]。今は、縞のない黒皮の品種も売られているようです[9]。
ALICはスイカの渡来を17世紀とし、1630年ごろ長崎、1650年ごろ隠元禅師など諸説ある[7]。「ことばのまど」はそれ以前を示唆する書き方をしており、渡来時期も資料間で一致しない[8]。江戸期の外観について、ALIC野菜情報は「縞模様のない真っ黒な皮が一般的」とする一方[7]、小学館「ことばのまど」(第45回)は江戸中期の絵に黒っぽい地に縦縞のスイカが描かれるとし、現代より黒っぽいが縦縞のあるスイカだったと考えられるとする[8]。資料が割れているため、縞の起源年代は断定できない。
縞模様スイカの基礎は奈良県の大和すいかと千葉県の都すいかで、現在の品種のほとんどはこの二大品種の系統とされる。大正後期から昭和初期に海外種との交雑から改良が進んだ[7]。近年は北海道の「でんすけすいか」など縞のない黒皮品種も流通するとの解説がある[9]。以上はALIC等の解説を要約したものだ。
6. じぶんの 目で 見て みよう
6. 自分でも調べてみたくなったら
6. 自分でも調べてみたくなったら
今日できること
すいかを 見かけたら、しまの 数を 数えて みましょう。へたから 反対がわまで、しまは まっすぐ つづいて いるでしょうか。ちがう すいかと くらべても おもしろいです。
切る ときは、かならず おうちの 人に おねがいしましょう。
本で しらべる
すいかの 絵が のった 図かんや えほんを 見て、しまが どう かかれて いるか 見て みましょう。
今日できること
スイカを見かけたら、縞の帯の数や幅を数えてみましょう。へたの側から反対側まで縞がどう走っているか、別のスイカと比べると違いに気づくかもしれません。切るときは、必ず大人に頼んでください。
本や資料で
図鑑や絵本に描かれたスイカの縞を見比べると、絵によって描き方が違うことが分かります。江戸時代の絵が気になった人は、「ことばのまど」の記事[8]も読んでみてください。
しらべた もとの じょうほう
参考にした情報源
参考にした情報源と、その使い方
[1]〜[9]は、本文で使った事実の出どころです。[4][5]は要旨の抜粋、[7][8][9]は要約段階で確認したものです。
- 早稲田大学 植物生理学研究室「スイカの皮の光合成と縞模様の謎」(2007年) https://photosynthesis.jp/photoex4.html (縞の色素量・葉緑体の数)
- 日本植物生理学会「植物Q&A スイカの縞模様について」(回答:柴岡弘郎、2007年9月12日) https://jspp.org/hiroba/q_and_a/detail.html?id=1373 (縞の理由の検討)
- 下間実「Citrullus属植物の細胞遺伝学的研究 第7報 スイカの2,3の形質の遺伝」育種学雑誌13巻(1963) https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsbbs1951/13/4/13_4_235/_article/-char/ja/ (縞の遺伝の分離)
- Yue et al. "The KNOX transcription factor ClSP activates ClAPRR2 to regulate dark green stripe formation in watermelon" Plant Biotechnology Journal (2025) https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/40344409/ (縞の遺伝子の報告・要旨)
- "Identification and characterization of ClAPRR2, a key candidate gene controlling watermelon stripe color" Plant Science https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0168945224004102 (淡緑の縞の原因の報告・要旨)
- 農林水産省「こどもそうだん」農水省Q&A(スイカは外側は縞模様なのに、中が赤いのはどうしてですか。)https://www.maff.go.jp/j/heya/sodan/1708/01.html (鳥への目印説)
- 農畜産業振興機構(ALIC)野菜情報「すいか」 https://vegetable.alic.go.jp/yasaijoho/yasai/0506_yasai1.html (渡来・江戸期の皮・大和と都の系統)
- 小学館「ことばのまど」第45回 https://kotobanomado.jp/column/1101/ (江戸中期の絵の縞)
- 南原ファーム「スイカの話」 https://e-suika.net/suika_talk/20185/ (縞のない品種の例)
なおした ところ
更新履歴
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