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ここにあるのは、だれかが実際に調べ、考え、作ってきたことを集めたメモです。気になったら、ページの下の「参考にした情報源」から、もとの本や記事、それを生み出した人たちに、直接ふれてみてください。このメモには書ききれないおもしろさが、そこにあります。

すいかの しまもようは、なんの ために あるの?

専門家の回答でも決まらなかった、スイカの縞の「なぜ」

スイカの縞模様 ── 葉緑素の濃淡、1963年の遺伝分析、「鳥への目印」説と江戸の絵の食い違い

分野:自然

すいかの 皮には、こい 緑と うすい 緑の しまが あります。こんなに きれいな もようは、どうして できたのでしょう。

2007年、この しつもんを くわしい 人に たずねた ことが ありました。答えは、すぐには 出ませんでした。いっしょに 手がかりを たどって みましょう。

スイカの縞は、あまりにも見慣れているので、理由を考えたことがある人は少ないかもしれません。ところが2007年、日本植物生理学会にこの疑問が寄せられたとき、確定的な答えは得られませんでした。

縞の正体、縞を決める遺伝のしくみ、「なぜ縞なのか」をめぐる説、そして昔のスイカの姿について、いくつかの資料を見比べます。

スイカの皮の縞は、濃緑と淡緑の帯が交互に並んだものだ。日本植物生理学会の植物Q&Aでは、2007年にこの縞の理由が検討されたが、確定的な答えは得られなかった[2]。

このメモでは、縞の実体(葉緑素の濃淡)[1]、1963年の遺伝の論文[3]と近年の遺伝子の報告[4]、「鳥への目印」説[6]、江戸時代の縞をめぐる資料間の食い違い[7][8]を、出どころを区別しながら整理する。

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1. せんもんかに きいても、わからなかった

1. 「なぜ縞なのか」に、確定的な答えは得られなかった

1. 2007年の植物Q&A ── 確定的な答えが得られなかった問い

日本植物生理学会には、しょくぶつの ことを 答える ページが あります。そこで、すいかの しまの わけが しらべられた ことが ありました[2]。

答えた 人は、しまの 中を 走る 細い すじの ことや、たねが ある すいかでも しまが ない ものが あることなどを 考えました。でも、「これだ」という 答えには なりませんでした[2]。

むずかしい もんだいだったのですね。では、まず しまの 正体から、見て みましょう。

植物の専門家に寄せられた質問

日本植物生理学会の「植物Q&A」に、スイカの縞模様についての質問が載っています。2007年9月12日付の回答では、縞の色の違いはクロロフィル(葉緑素)の量の違いで、ほかの色素は関係しないとされています[2]。

あれこれ考えても決まらない

回答者は、濃い縞の内側に維管束(水や養分の通り道)が走っていることや、種子のあるスイカでも縞のないものがあることなどを検討しました。それでも、なぜ縞があるのかについて、確定的な答えは得られなかったと書かれています[2]。

日本植物生理学会「植物Q&A」(回答者:柴岡弘郎、2007年9月12日)は、縞の色の違いはクロロフィル量の違いによるもので、他の色素は関係しないとする[2]。

回答では、濃い縞の内側を維管束が走る点、種子のあるスイカでも縞が出ないものがあり、種子の有無では説明できない点などが検討されたが、縞の理由について確定的な答えは得られなかった[2]。ここが、この記事の出発点になる。

2. しまの 正体は、みどりの こさ

2. 縞の正体は、緑色の濃さの違い

2. 濃い帯と薄い帯 ── クロロフィル量はほぼ2倍

すいかの 皮は、ぬり分けて あるように 見えます。でも、そうでは ありません。しまの ちがいは、みどりの こさの ちがいです[1]。

皮の 中には、ようりょくたいと いう みどり色の 小さな つぶが あります。こい ぶぶんには、この つぶが たくさん あります[1]。

はかった 数では、こい ぶぶんの みどりの もとは、うすい ぶぶんの ほぼ 二ばいでした[1]。

たとえば、おなじ えのぐを 一どぬりと 二どぬりに した ようです。ただし 本当は、ぬって いるのではなく、皮の 中の つぶの 数が ちがいます。

顕微鏡で見ると

早稲田大学の植物生理学研究室の資料では、スイカの皮の濃い部分と薄い部分を比べています。顕微鏡で見ると、濃い部分には葉緑体が多いように見えると説明されています[1]。

数字にするとほぼ2倍

面積あたりのクロロフィルの合計は、濃い部分が1.06 g/m²、薄い部分が0.56 g/m²でした。1.06÷0.56は約1.9なので、ほぼ2倍です[1]。

光合成の力は違うのか

同じ資料をまとめた要約では、濃い部分と薄い部分で、光合成の効率に色による目立った差は見られなかったとされています[1]。色が濃いほうがよく働くわけではない、ということになります。

早稲田大学植物生理学研究室の資料によると、皮の濃い部分と薄い部分の違いはクロロフィルの濃さの違いで、濃い部分には葉緑体が多い。クロロフィルa・bの濃度は、濃い部分がそれぞれ69.0・36.7 μg/ml、薄い部分が37.6・18.3 μg/mlで、面積あたりの合計は濃い部分1.06 g/m²、薄い部分0.56 g/m²であった。比は約1.9で、ほぼ2倍にあたる[1]。

また、同資料の要約では、濃淡の間で光合成効率に色による顕著な差は見られなかったとされる[1]。この点は、本文の該当箇所ではなく要約で確認した記述である。

3. しまは、おやから こどもへ つたわる

3. 縞は遺伝する ── 1963年の論文と近年の遺伝子

3. 縞の遺伝 ── 1963年の分離比と、ClSP・ClAPRR2の報告

しまが ある すいかと ない すいかを かけあわせると、どうなるでしょう。むかしの けんきゅうでは、うまれた すいかを 数えました[3]。

うまれた すいかを 数えると、しまが ある ものは 四十九、ない ものは 二十四でした。しまが ある ほうが、ない ほうより 出やすいと 考えられました[3]。

けんきゅうの 文しょうには「三たい 一」と 書かれています。でも 数えた 数は、およそ 二たい 一に 近い 数です。どうして ずれたのかは、ここでは 分かりません。すべての すいかに あてはまるとも 言えません。

さいきんは、みどりの こさに かかわる いでんしの 名前も 知らされています[4]。まだ けんきゅうの とちゅうの 話です。

1963年の数え上げ

1963年の育種学雑誌に載った論文では、縞のあるスイカと縞のないスイカをかけ合わせた子どもの代(F2)を数えています。果皮の模様は縞が49、縞なしが24に分かれ、縞のほうが縞なしに対して優性で、メンデル式の1因子遺伝と報告されました[3]。

論文は分離比を3:1としていますが、抄録の実数49:24は約2:1で、食い違って見えます。理由は抄録からは分かりません。また、これは論文で調べた系統の結果で、すべての品種にあてはまる法則とは限りません。

遺伝子の名前が出てくる

近年の研究では、濃い緑の縞でClSPというたんぱく質が多く、ClAPRR2という遺伝子を活性化させ、その偏りが縞の濃淡を生むと報告されました(2025年)[4]。別の研究(Plant Science誌)では、ClAPRR2の遺伝子の構造が不完全なことが、淡い縞の原因になると報告されています[5]。これらの説明は、論文の要旨にもとづく紹介です。

下間実(1963)は、F2の果皮の模様が縞49・無縞24に分離し、縞が無縞に対して優性でメンデル性の1因子遺伝をすると報告した[3]。論文中の分離比は3:1とされるが、抄録の実数49:24は約2:1であり、食い違いの理由は抄録からは確認できない。この結果が全品種に当てはまるとは限らない。

分子レベルでは、Yueら(Plant Biotechnology Journal、2025)が、濃緑の縞でKNOX型の転写因子ClSPが多く、葉緑体の発達とクロロフィルの蓄積に関わるClAPRR2を活性化し、このClSP‐ClAPRR2の偏りが濃淡の縞を生むと報告している[4]。別の報告(Plant Science誌)は、ClAPRR2のコード領域の構造が不完全であることが淡緑の縞の原因になるとする[5]。これら2件の記述は要旨にもとづく。

4. とりに 見つけて もらうため?

4. 「鳥に見つけてもらうため」という説

4. 縞の意味をめぐる仮説 ── 鳥による種子散布

すいかは、さばくで うまれた くだものだと いわれます[6]。さばくの 中で、すいかは どうやって たねを ひろげたのでしょう。

ひとつの 考えは、とりに 見つけて もらう ためです。こい 色と うすい 色が ならぶと、目立ちます。とりが 気づいて 食べれば、たねを とおくへ はこんで もらえます[6]。

ただし、これは「そうかも しれない」という 考えです。本当に そうかどうかは、まだ きまっていません。

農林水産省が紹介している説

農林水産省の子ども向けQ&Aでは、縞は鳥に果実を見つけやすくするために進化した特徴という説が紹介されています。砂漠が原産のスイカが、2色の対比という視覚的な刺激で鳥の注意をひき、種を運んでもらうという考えです[6]。

説は説のまま

これは有力な説明の一つですが、証明された事実ではなく、仮説として語られています。2007年の学会Q&Aが確定的な答えを得られなかったことも、あわせて思い出しておく必要があります[2]。

農林水産省「こどもそうだん」のQ&Aは、縞の意味について、砂漠原産のスイカが鳥に発見されやすくなり、種子を運ばせるために、2色の対比で目立つように進化したという説を紹介している[6]。同Q&Aは参考文献に稲垣栄洋『スイカのタネはなぜ散らばっているのか』を挙げている。

これは仮説であり、実証された事実として扱うことはできない。2007年の植物Q&Aが確定的な答えを得られなかった点[2]とあわせ、縞の意義は決着していない問いとして読むのが妥当である。

5. むかしの すいかにも、しまは あった?

5. 江戸時代のスイカに縞はあったか

5. 江戸期の縞をめぐる資料の食い違いと、大和・都の系統

すいかが 日本に きたのは、十七せいきごろと いわれます。ただ、いつ だれが もってきたかには、いくつかの 考えが あります[7]。

えどじだいの すいかに しまが あったかは、しりょうに よって 言う ことが ちがいます。しまの ない まっ黒な 皮が ふつうだったと する しりょうと[7]、黒っぽい 地に たての しまが ある 絵が あると する しりょうが あります[8]。

いまの しまの すいかは、大和すいかと 都すいかという 二つの なかまが もとに なり、大正の おわりごろから かいりょうが すすんだと されます[7]。いまは、しまの ない 黒い すいかも 売られています[9]。

日本に来たのは17世紀ごろ

ALICの資料では、スイカが日本に渡来したのは17世紀ごろとされます。1630年ごろに長崎へ、1650年ごろに隠元禅師が、など諸説あります[7]。ただし、次に紹介する「ことばのまど」は、それより前のスイカを思わせる書き方もしていて、資料によって見方が分かれます[8]。

江戸のスイカに縞はあった?

農畜産業振興機構(ALIC)の資料は、江戸時代の皮を「縞模様のない真っ黒」なものが一般的としています[7]。一方、小学館の「ことばのまど」は、江戸中期の絵に黒っぽい地に縦縞のスイカが描かれていることから、現代より黒っぽいが縦縞のあるスイカだったと考えられるとしています[8]。資料が割れているので、縞がいつ広まったかは、ここでは決めません。

いまの縞の元になった品種

ALICの資料では、縞模様スイカの基礎は奈良県の「大和すいか」と千葉県の「都すいか」で、現在の品種のほとんどがこの二大品種の系統とされます。大正後期から昭和初期に、海外の種との交雑で改良が進みました[7]。今は、縞のない黒皮の品種も売られているようです[9]。

ALICはスイカの渡来を17世紀とし、1630年ごろ長崎、1650年ごろ隠元禅師など諸説ある[7]。「ことばのまど」はそれ以前を示唆する書き方をしており、渡来時期も資料間で一致しない[8]。江戸期の外観について、ALIC野菜情報は「縞模様のない真っ黒な皮が一般的」とする一方[7]、小学館「ことばのまど」(第45回)は江戸中期の絵に黒っぽい地に縦縞のスイカが描かれるとし、現代より黒っぽいが縦縞のあるスイカだったと考えられるとする[8]。資料が割れているため、縞の起源年代は断定できない。

縞模様スイカの基礎は奈良県の大和すいかと千葉県の都すいかで、現在の品種のほとんどはこの二大品種の系統とされる。大正後期から昭和初期に海外種との交雑から改良が進んだ[7]。近年は北海道の「でんすけすいか」など縞のない黒皮品種も流通するとの解説がある[9]。以上はALIC等の解説を要約したものだ。

6. じぶんの 目で 見て みよう

6. 自分でも調べてみたくなったら

6. 自分でも調べてみたくなったら

今日できること

すいかを 見かけたら、しまの 数を 数えて みましょう。へたから 反対がわまで、しまは まっすぐ つづいて いるでしょうか。ちがう すいかと くらべても おもしろいです。

切る ときは、かならず おうちの 人に おねがいしましょう。

本で しらべる

すいかの 絵が のった 図かんや えほんを 見て、しまが どう かかれて いるか 見て みましょう。

今日できること

スイカを見かけたら、縞の帯の数や幅を数えてみましょう。へたの側から反対側まで縞がどう走っているか、別のスイカと比べると違いに気づくかもしれません。切るときは、必ず大人に頼んでください。

本や資料で

図鑑や絵本に描かれたスイカの縞を見比べると、絵によって描き方が違うことが分かります。江戸時代の絵が気になった人は、「ことばのまど」の記事[8]も読んでみてください。

今日できること

スイカを見かけたら、縞の本数と幅、へた側から反対側までの走り方、品種による違いを観察してみよう。切るときは大人に頼むこと。

資料を読むなら

  • 日本植物生理学会「植物Q&A スイカの縞模様について」[2]
  • 早稲田大学植物生理学研究室「スイカの皮の光合成と縞模様の謎」[1]
  • Yue et al. (2025) Plant Biotechnology Journal(縞の分子機構)[4]

しらべた もとの じょうほう

参考にした情報源

参考にした情報源と、その使い方

[1]〜[9]は、本文で使った事実の出どころです。[4][5]は要旨の抜粋、[7][8][9]は要約段階で確認したものです。

  1. 早稲田大学 植物生理学研究室「スイカの皮の光合成と縞模様の謎」(2007年) https://photosynthesis.jp/photoex4.html (縞の色素量・葉緑体の数)
  2. 日本植物生理学会「植物Q&A スイカの縞模様について」(回答:柴岡弘郎、2007年9月12日) https://jspp.org/hiroba/q_and_a/detail.html?id=1373 (縞の理由の検討)
  3. 下間実「Citrullus属植物の細胞遺伝学的研究 第7報 スイカの2,3の形質の遺伝」育種学雑誌13巻(1963) https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsbbs1951/13/4/13_4_235/_article/-char/ja/ (縞の遺伝の分離)
  4. Yue et al. "The KNOX transcription factor ClSP activates ClAPRR2 to regulate dark green stripe formation in watermelon" Plant Biotechnology Journal (2025) https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/40344409/ (縞の遺伝子の報告・要旨)
  5. "Identification and characterization of ClAPRR2, a key candidate gene controlling watermelon stripe color" Plant Science https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0168945224004102 (淡緑の縞の原因の報告・要旨)
  6. 農林水産省「こどもそうだん」農水省Q&A(スイカは外側は縞模様なのに、中が赤いのはどうしてですか。)https://www.maff.go.jp/j/heya/sodan/1708/01.html (鳥への目印説)
  7. 農畜産業振興機構(ALIC)野菜情報「すいか」 https://vegetable.alic.go.jp/yasaijoho/yasai/0506_yasai1.html (渡来・江戸期の皮・大和と都の系統)
  8. 小学館「ことばのまど」第45回 https://kotobanomado.jp/column/1101/ (江戸中期の絵の縞)
  9. 南原ファーム「スイカの話」 https://e-suika.net/suika_talk/20185/ (縞のない品種の例)

なおした ところ

更新履歴

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