1. まいにち 空へ とぶ きかい
1. 毎日2回、空へ上がる小さな観測器
1. 毎日2回の高層気象観測 ── 気球は直径1.6mから8mへ
天気よほうの ために、まいにち 朝9時と 夜9時に、気球が 空へ のぼって います。気球には、ラジオゾンデと いう 小さな きかいが ぶらさがって います[1]。
この きかいは、地めんから 3万メートルくらいの たかさまで、空気の あたたかさや しめりぐあい、風の むきを しらべます[1]。とぶ ばしょは、日本中の 16か所と、南きょくの しょうわきちです[1]。
はじめ 気球の 大きさは、直けい 1.6メートルです。のぼるにつれて ふくらみ、3万メートルの あたりでは 8メートルほどに なって われます[2]。直けいは 5ばいです。
では、われた あとの きかいは どう なるのでしょう。
朝9時と夜9時に飛ぶ
気象庁は、毎日決まった時刻の日本標準時09時と21時に、ゴム気球にラジオゾンデをつり下げて飛ばしています。場所は全国16か所の気象官署と、南極の昭和基地です[1]。ゾンデは地上から高度約30kmまでの気圧・気温・湿度・風向・風速を測ります[1]。
気球は5倍にふくらんで割れる
地上で直径1.6mの気球は、上るにつれてふくらみ、高度約30kmでは直径8mくらいになって破裂します。上る速さは1分間に300〜400mです[2]。8÷1.6で、直径は約5倍です。
この速さなら、30kmに届くまで75〜100分ほどかかる計算になります。割れた気球から切り離されたゾンデは、そこから降りてきます。どこへ降りるのでしょうか。
気象庁の高層気象観測では、ゴム気球にラジオゾンデを吊るし、地上から高度約30kmまでの気圧・気温・湿度・風向・風速を測る。観測は日本標準時09時と21時に決まって行われ、全国16か所の気象官署と南極の昭和基地が担う[1]。
この気球は、上昇するにつれて膨らむ。福岡管区気象台によると、地上で直径1.6mの気球は高度約30kmで直径8m位に達して破裂する[2]。直径は5倍で、球とみなせば体積は5³=125倍の計算になる(これは直径からの算術で、気球内のガスの量を測った値ではない)。上昇速度は毎分300〜400mなので、30kmまでは75〜100分かかる。
観測は気球が割れた時点で終わる。では、このとき高さ約30kmにあるゾンデは、地上のどこへ降りてくるのか。上昇の75〜100分の間にも、ゾンデは風に流されている。
2. 冬の 秋田では、うみの うえに おりる
2. 冬の秋田のゾンデは、山を越えて岩手の海に降りる
2. 秋田地方気象台の降下地点 ── 冬は岩手県沿岸の太平洋上
われた あとの きかいは、パラシュートで ゆっくり おります[1]。
あきたの 気象台の 人は、ふゆの きかいが ほとんど 山を こえて、いわて県の 海の うえに おりると せつめいして います[3]。あきたから 海までは、山が いくつも ならんで います。その 山を ぜんぶ こえるのです。
ただし、いつも 海とは かぎりません。空の ようすに よっては、りくに おりる ことも あります[3]。
それにしても、どうして そんなに ながれるのでしょう。
3. 海まで はこぶのは、空の たかい ところの 風
3. 山も越えるほどの風 ── ジェット気流
3. 海まで運ぶ力の正体 ── 風速100m/sを超えるジェット気流
秋田の 気象台は、きかいを ながすのは 空の うえの 西からの 風だと いって います。おもに「ジェットきりゅう」と よばれる 風です[3]。
この 風は、長さが 数千キロメートルも ある 強い 流れです。はやさが 1びょうに 100メートルを こえる ことも あると いわれます[4]。1じかんに すると 360キロメートルです。ふゆは とくに 強いと いわれます[4]。
ひろった きかいが、じめんの 近くでは そよ風でも、うえでは 強い 風に のって いたかも しれません。
ジェット気流は、上空を吹く強い西風の流れです。長さは数千km、幅は数百km、深さは数kmほどで、風速が秒速100mを超えることもあります[4]。秒速100mは、時速に直すと360kmです。
特に冬は、日本付近で強まることが多いといわれます[4]。冬の秋田のゾンデが山を越えて海まで運ばれるのは、この西風に乗るからだと、秋田地方気象台は説明しています[3]。
ジェット気流のしくみそのものは、このメモでは立ち入りません。ここで押さえたいのは、ゾンデを運ぶ上空の風は、地上で感じる風とはまったく別の強さをもつことがある、という点です。
ところで、風に流されるということは、ゾンデの動いた跡を追えば風が分かる、ということにもなりそうです。
ジェット気流は上空の強い西風で、長さ数千km・幅数百km・深さ数kmの流れとされ、風速が100m/sを超えることもある[4]。100m/sは時速360kmにあたる。冬は日本付近で寒帯前線ジェットと亜熱帯ジェットが近づくため、風が強くなりやすい[4]。
秋田のゾンデが山脈を越えて海に降りるという前章の記述は、この上空の西風が説明の中心になっている[3]。ただしゾンデが飛ぶのは30kmまでで、風の強さは高さによって違う。ここでの100m/sは、ジェット気流という流れの代表的な最大値であって、ゾンデが受けた風の実測値ではない。
ジェット気流そのものの成り立ちには、ここでは立ち入らない。視点を変え、風に流される側のゾンデが、実は風を測る道具でもあることを見る。
4. ながされた みちが、そのまま 風の きろくに なる
4. 流された道すじが、風の観測になる
4. GPSゾンデ ── 位置の変化が風向・風速の観測値になる
気象庁の ゾンデには、GPSという しくみが ついて います。GPSは、いまの ばしょを しらべる しくみです[5]。
GPSの 電波から、たかさや 風の むき、風の はやさも わかります[5][1]。つまり、きかいが どこへ ながれたかが、そのまま 風を しらべる ことに なって いるのです。
ながれて いった みちは、むだでは ありません。空の 風の かたちを おしえて くれる ものです。
5. アメリカでは、200キロメートル いじょう ながれる ことも ある
5. 米国では、ゾンデが放球地点から200km以上流されることもある
5. 米国NWSの例 ── 飛行2時間超・放球地点から200km超
アメリカで 天気を しらべる 国の しごとの せつめいでは、気球は 2じかん いじょう とんで、とびはじめた ばしょから 125マイル、つまり 200キロメートル いじょう ながされる ことも あるそうです[7]。
とおくへ ながされるのは、あきたの ふゆだけの ことでは ありません。上の 風が つよいほど、きかいは とおくまで はこばれます。
米国のNWS(国立気象局)の説明では、気球は飛行中に115,000フィート(約35km)を超えることがあり、上昇につれて膨らんで破裂します。飛行は2時間以上で、放球した場所から125マイル(約200km)以上流されることもあるとされています[7]。
上空の風に運ばれるという点で、冬の秋田の説明ともつながっています。
ゾンデが2時間もかけて200km以上流されるなら、降りる場所は、飛ばした気象台から思いのほか遠くになります。
NWSの資料では、気球は飛行中に115,000フィート(約35km)を超えることがあり、上昇につれて膨らんで破裂する。飛行は2時間以上、放球地点から125マイル(約200km)以上流されることがある[7]。
125マイルは約201kmで、本文の「約200km」はこの換算を丸めたものだ。上空の風に運ばれて遠くへ降りるという構図は、秋田の冬の例と同じ向きの話である。
さて、遠くへ流れた機械は、拾われたあとどうなるのか。
6. ひろったら、どうすれば いいの?
6. 拾ったときは、ラベルの連絡先か気象台へ
6. 回収の手順 ── ラベルの連絡先と、触らない場合の例外
もし 空から おちて きた きかいを ひろったら、きかいに はってある ラベルの れんらくさきに れんらくしましょう。ちかくの 気象台でも だいじょうぶです[6]。
もどって きた きかいは、もういちど つかえる ことも あります[6]。ひろった 人が、つぎの 天気よほうを たすける ことに なります。
気象庁の きかいは、あぶない ものでは ありません。ただし、どこの きかいか わからない ものや、ふくらんだ ゴムの 気球、ビニールぶくろは さわらずに、けいさつへ れんらくしましょう[6]。
電せんに ひっかかる ことも あるので、気象庁の きかいは かるくて、つりひもも 電気を とおしにくい ざいりょうで できて います[3]。でも、電せんに かかって いたら ちかづかず、れんらくしましょう。
見つけたら
福岡管区気象台によると、観測器を拾った場合は、機器のラベルに書かれた連絡先か、最寄りの気象台に連絡すれば回収してもらえます。回収された機器は、再利用や運用の管理に使われるそうです[6]。
触らずに連絡するもの
気象庁のゾンデは危険物ではありません。ただし、どこが飛ばしたのか分からないものや、ふくらんだゴム気球、ビニール袋を見つけたときは、触らずに最寄りの警察へ連絡するよう案内されています[6]。
降りてくる側の工夫
電線に掛かった場合に備えて、気象庁のゾンデは軽く作られ、吊りひもにも絶縁性にすぐれた材質が使われています[3]。拾う側に頼むだけでなく、降りる側も、人にも暮らしにも迷惑をかけにくい作りになっています。
7. せかいには、おちた 場しょを さがす 人たちも いる
7. 世界には、ゾンデの位置を追う愛好家たちがいる
7. SondeHubによる追跡 ── 愛好家の受信局網と回収報告
せかいには、おちた ゾンデを さがす 人たちが います。そういう 人たちが つかう「SondeHub」と いう ホームページが あります[8]。
ひろった 人が 「見つけたよ」と しらせる しくみも あります。そうすると、ほかの 人は むだに さがさなくて すみますし、てんきを しらべる 人たちは、きかいが どのくらい ひろがって おちるのか わかります[8]。
これは、せかいの 人たちの 話です。日本では、ひろったら 気象台などに れんらくするのが、気象庁の せつめいです。
SondeHubは、ゾンデを探して回収する愛好家たちが使うサイトです[8]。
ゾンデを拾った人は、発見を報告できます。報告があれば、ほかの愛好家は、すでに回収されたゾンデを探しに行かずにすみます。気象機関も、着地がどのくらい広がるかを知ることができます[8]。
ただし、これは海外の団体の取り組みで、日本の気象庁が愛好家による回収をすすめているわけではありません。日本で拾ったときは、前の章のとおり、ラベルの連絡先か気象台に連絡するのが案内されています。
米国の気象局の数字では、毎年約75,000個のゾンデが放たれ、見つかって返ってくるのは約20%、つまり約15,000個です[7]。拾われて連絡が来る数は、思ったより少ないかもしれません。
SondeHubは、ゾンデを探して回収する愛好家が使うサイトである[8]。拾った人が発見を報告でき、ほかの愛好家が回収済みのゾンデを探しに行く無駄を避けられ、気象機関も着地の広がりを知れる[8]。
回収の規模はNWSの数字で見られる。米国では年に約75,000個が放たれ、見つかって返ってくるのは約20%である[7]。20%を個数にすれば約15,000個で、残りの約60,000個は回収されない計算になる(米国の数字であって、日本の回収率ではない)。
注意点は、SondeHubの取り組みを、日本の気象庁が推奨しているわけではないことだ。日本で拾った場合の手順は、前章のとおり、ラベルの連絡先か最寄りの気象台に連絡する、が案内されている[6]。日本で拾ったら、まずその案内に従う。
8. 空の 高い ところの 風を、目で かんじて みよう
8. 空の高い所を流れる雲の向きを見てみる
8. 雲の動きで上空の風を意識する ── 観察と資料案内
やってみよう:くもの うごきを みる
まど ごしに、くもが どちらへ うごくか みて みましょう。まどの わくを めじるしに して、1分くらい じっと みます。
朝と 夕がたに もう1回 みて、むきが かわるか くらべても おもしろいです。ゾンデの ながれた むきと おなじとは かぎりません。それでも、空の たかい ところに 風が ある ことは、めで わかります。
まどから 体を のりださない こと、たいようを ちょくせつ みない ことを まもりましょう。
もっと しりたい とき
気象庁の「こうそうきしょうかんそく」の せつめいに、ゾンデの くわしい しらべ方が のって います[1]。
やってみよう:雲の動く向きを見る
窓の外の雲が、どちらへ動いているかを見てみましょう。窓枠を目印に、1分ほど続けて見ます。朝と夕方でもう一度見て、向きが変わるか比べてもよいでしょう。
雲の高さによって向きが違って見えることもあるので、ゾンデが流された向きと同じとは限りません。それでも、地面に近い風とは別に、高いところにも風が流れていることは、目で感じられます。窓から身を乗り出したり、太陽を直接見たりしないでください。
気象庁の資料でさらに
気象庁の高層気象観測の解説には、毎日2回のゾンデ観測の目的や、観測する項目が載っています[1]。ゾンデを拾ったときの連絡先は、福岡管区気象台の案内にまとめられています[6]。
観察:雲の動きを見る
窓の外の雲の動く向きを、窓枠を目印に1分ほど観察し、朝と夕方で比べてみる。雲の高さによって向きが違って見えることもあり、ゾンデが流された向きと同じとは限らない。ただ、地上の風と別に、上空にも風があることを、目で意識するきっかけになる。窓から身を乗り出さない、太陽を直接見ない、という安全は守ること。
資料を読むなら
気象庁の「高層気象観測」の解説[1]は、観測の目的と項目の入り口になる。秋田地方気象台の「よくある質問」[3]は、降下地点の記述を確かめるのによい。福岡管区気象台の「観測器を見つけたら」[6]は、回収と安全の案内だ。
海外の資料としては、NWSのRaleighの案内ページ[7]が、気球の飛行距離と回収の数字を載せている。SondeHub[8]は、愛好家による追跡の実例を知る資料だ。ただし、英語の資料なので、日本語で読める資料を先に読むほうが、状況を取り違えにくい。
しらべた もとの じょうほう
参考にした情報源
参考にした情報源と、その使い方
このメモで使った資料です。ゾンデの数字や手順は、気象庁と各地の気象台の資料を優先し、米国の数字は米国の気象局のものとして区別しました。
- 気象庁「高層気象観測の解説」 https://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/upper/kaisetsu.html (観測の時刻・場所・高度・パラシュート降下)
- 福岡管区気象台「高層気象観測」 https://www.data.jma.go.jp/fukuoka/kansoku/kousou_kansoku.html (気球の大きさと上昇速度)
- 秋田地方気象台「よくある質問」 https://www.jma-net.go.jp/akita/knowledge/qanda/qanda.html (冬の降下地点・ゾンデの安全設計)
- 気象庁(羽田空港)天気トピックス https://www.data.jma.go.jp/haneda-airport/weather_topics/file/rjtt_wt20120330.pdf (ジェット気流の大きさと風速)
- 国立科学博物館資料「空を測る」(気象庁高層気象台 野島) https://www.sci-museum.jp/wp-content/uploads/2023/10/universe202310_04-09.pdf (GPSゾンデによる風の観測)
- 福岡管区気象台「観測器を見つけたら」 https://www.jma-net.go.jp/fukuoka/kansoku/kansokuki_mituketara.html (拾ったときの連絡と安全)
- 米国NWS Raleigh「Weather Balloon」案内 https://www.weather.gov/rah/virtualtourballoon (米国での飛行距離・回収率)
- SondeHub「Found」 https://sondehub.org/found (愛好家による追跡と発見報告)
なおした ところ
更新履歴
更新履歴(改版の記録)
- 初版を公開。
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