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ここにあるのは、だれかが実際に調べ、考え、作ってきたことを集めたメモです。気になったら、ページの下の「参考にした情報源」から、もとの本や記事、それを生み出した人たちに、直接ふれてみてください。このメモには書ききれないおもしろさが、そこにあります。

風洞ふうどうって、せんぷうきと なにが ちがうの?

風洞は、扇風機とどこがちがうのか ── ライト兄弟の木箱から新幹線の20分の1模型まで

風洞(wind tunnel)── 一様でまっすぐな気流をつくる整流・縮流の工夫と、ライト兄弟から鉄道風洞までの使われ方

分野:技術

1901年、ライトきょうだいは、じぶんたちの つばさが 思った ほど うかない ことに 気づきました。揚力ようりょくは、考えて いた 大きさの、やく 3ぶんの 1 しか なかったと いわれます[5]。

2人は 風を ふかせる 長い 箱を 作り、はかり なおしました。でも 風洞ふうどうは、ただ 風を おこす 箱では ありません。どうして 風を「そろえる」ことが 大じなのか、風洞ふうどうの 中で なにが おきて いるのかが わかります。

1901年秋、ライト兄弟は、自分たちの翼が期待どおりに揚力を出さないことに気づきました。リリエンタールのデータで予測した値の、約3分の1しか出なかったとされています[5]。2人は手持ちのデータを疑い、自分で風洞を作って測り直しました。

風を当てるだけなら、扇風機でもできそうです。それなのに、なぜ風洞は金網や絞り込みの部品を備えた大がかりな装置になるのでしょうか。風を「起こす」より「そろえる」ほうに工夫が集まっている理由と、木箱の風洞から新幹線の模型実験までの使われ方が分かります。

1901年秋、ライト兄弟は、リリエンタールのデータをもとに考えた翼が、予測した揚力の約3分の1しか出さないことに直面した。既存の揚力・抗力のデータを疑った2人は、自分たちで風洞を作って翼の形を測り直し、1901年の試験の終わりには、翼の設計について世界でいちばん詳しいデータを手にしていたとNASAは説明する[5]。

風を当てるだけなら送風機があればよいのに、風洞はなぜ金網や縮流部を備えた大きな装置になるのか。「一様でまっすぐな風」をつくる整流・縮流の工夫と、木箱の風洞から新幹線の20分の1模型までの使われ方が分かる。

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1. 扇風機せんぷうきの 風を あてれば いいの?

1. 風を起こすだけなら扇風機でいいのに、なぜ金網がいるのか

1. 風を起こすだけでは足りない ── 求められるのは一様でまっすぐな気流

うごかない 車や ひこうきの 模型もけいを、風の 中に おきます。風が あたった ときの 力を はかる そうちが、風洞ふうどうです[1]。

風を おこす だけなら、扇風機せんぷうきでも できそうです。ところが 風洞ふうどうには、風を まっすぐ そろえる ための 金あみや しきりが 入って います[1]。うずを けす ぶひんです。

うずが まざった 風では、あっちこっちを むいて しまいます。そこで 風洞ふうどうは、風を つくる だけで なく、風を そろえる ことに 力を いれて います。では 風洞ふうどうは、いつ、どんな ときに 大かつやく したのでしょう。

風洞は、人工的に一様な気流をつくり、その中に置いた模型に働く力や、まわりの圧力・風速の分布を測る装置です[1]。流れを目に見える形にして調べることもあります。動かない模型で、動くときの力を調べるわけです。

風を起こすだけなら、送風機を1台置けば足ります。ところが測定部の上流には、格子や何層かの金網でできた整流器と、流れを絞るノズルが置かれています。整流器は、渦を取り除いて流れを平行で一様にします[1]。渦や向きのばらつきが残った風では、「どんな風に当てたときの力か」がはっきりしなくなる、と考えられます。

風洞の難しさは、風を起こすことより、風をそろえることにあります。その工夫を見る前に、風洞で自分のデータを作り直した2人の話から入りましょう。

風洞は、人工的に一様な気流をつくり、その中に置いた物体(主に模型)にかかる力やモーメント、まわりの圧力と風速の分布を測る装置である。流れの様子を可視化して調べる使い方もある[1]。実物を飛ばしたり走らせたりせず、静止した模型に風を当てるのが基本の発想だ。

風そのものは、送風機があれば起こせる。難所は、その風を測定に使える状態にすることにある。測定部の上流には、格子や何層かの金網からなる整流器と、流れを絞るノズルが置かれ、整流器は渦を取り除いて流れを平行・一様にする[1]。向きも強さもそろっていない風で測れば、形の違いによる力の差と、風の乱れによる差を区別しにくくなる(ここは推論である)。

では、整流の工夫は、どんな動機から必要になったのか。手持ちのデータを疑い、自力で測り直した例が、ライト兄弟である。

2. ライトきょうだいは、どうして 風洞ふうどうを 作ったの?

2. 期待の3分の1しか出なかった揚力が、風洞づくりのきっかけだった

2. 1901年の疑い ── 既存の揚力データを信じず、自前の風洞で測り直す

1901年の あき、ライトきょうだいの グライダーは、思った ように とびませんでした。揚力ようりょく(うかぶ 力)は、リリエンタールと いう 人の データから 考えた 大きさの、やく 3ぶんの 1 だったと いわれます[5]。

2人は、もとの データを うたがい、じぶんたちで はかり なおす ために 風洞ふうどうを 作りました[5]。

じつは、まわりを かこんだ 風洞ふうどうは、これが はじめてでは ありません。1871年に ウェナムさんが、さいしょの かこいの ある 風洞ふうどうを 作って うごかしたと つたえられて います[7]。

では ライトきょうだいの 風洞ふうどうは、どんな ものだったのでしょう。

1901年秋、ライト兄弟のグライダーは期待どおりに飛びませんでした。揚力は、リリエンタールのデータで予測した値の約3分の1しか出なかったとされます[5]。

2人は、手持ちの揚力・抗力のデータそのものを疑いました。そして自分たちで測り直すために、風洞を作ります[5]。

囲いのある風洞は、その前からあった

風洞という装置は、2人が初めて思いついたものではありません。1871年、フランシス・ウェナムが、最初の囲いのある風洞を設計して動かしたと伝えられています。長さ約3.7m、断面は約45.7cm四方で、蒸気機関でファンを回し、風速は最大で時速約64kmでした[7]。

ライト兄弟の風洞は、人の飛行の夢のためというより、手持ちのデータを疑って測り直すために作られた、という点が印象的です。では、その木箱の中身はどうなっていたのでしょうか。

1901年秋、ライト兄弟のグライダーは期待した性能を出さなかった。NASAの解説によれば、揚力はリリエンタールのデータから予測した値の約3分の1にとどまり、2人は既存の揚力・抗力のデータそのものを疑って、自分たちで測るための風洞試験を始めた[5]。

風洞という装置自体は、それ以前にもある。アメリカの航空100周年委員会(U.S. Centennial of Flight Commission)の解説では、1871年にフランシス・ウェナムが最初の囲いのある風洞を設計・運用した。長さ12フィート(約3.7m)、断面は18インチ(約45.7cm)四方で、蒸気機関で動くファンが空気を送り、最大風速は時速40マイル(約64km)だった[7]。「最初」は二次資料の記述なので、一つの説明として読む。

では、ライト兄弟は、何を測れる風洞を、どんな部品で作ったのか。

3. 小さな 木の 箱で、なにが わかったの?

3. ガスエンジンと木箱の風洞が、当時の世界でいちばん詳しいとされる翼のデータを生んだ

3. 1901年のライト風洞 ── 自作の天秤2種で揚力と抗力を分けて測る

ライトきょうだいの 風洞ふうどうは、長い 木の 箱でした。店に あった 小さな ガスエンジンで ベルトを まわし、ファンを うごかして、箱の 中へ 風を おくります[6]。

ファンの すぐ あとに、風を そろえる ぶひんが ありました。箱の おくで、風が おなじ ように ながれる ための ものです[6]。

つばさの 小さな 模型もけいに 風を あて、うかぶ 力と、うしろへ ひかれる 力を、じぶんたちで 作った はかりで はかりました[6]。

2人は、およそ 200この 模型もけいを ためし、30こ ほどを くわしく しらべたと いわれます[5]。1901年の おわりには、つばさの 作りかたに ついて、世界で いちばん くわしい データを もって いたと、NASAは せつめいして います[5]。つぎの 年には、その データで 作った 新しい きたいを、ケティホークに もって いきました。

ここで 大じなのは、ファンの すぐ あとに 風を そろえる ぶひんを おいた ことです。では 今の 風洞ふうどうは、どんな ぶひんで 風を そろえて いるのでしょう。

ライト兄弟の風洞は、長い木箱の中に、ファンで風を送る形でした。ファンは、店の小型ガスエンジンからベルトでつないで回します[6]。空気を室内から取り込んで流す開放回流で、風速が1種類の単純なものでした[6]。

ファンのすぐ下流には整流装置を置き、測定部へ均一な風を送りました。測るのは揚力と抗力で、そのために2種類の天秤を自分たちで作っています[6]。

約200の模型、約30を詳しく

NASAの解説では、2人は約200の模型を試し、そのうち約30を詳しく調べました。1901年の試験が終わるころには、翼の設計について世界でいちばん詳しいデータを手にしていたとされます[5]。翌1902年には、そのデータをもとに作った新しい機体を、ケティホークへ持ち込みました[5]。

木箱とエンジンという素朴な装置でも、ファンのすぐあとに風をそろえる部品が置かれていました。では、現代の風洞は、風をそろえるために何を備えているのでしょうか。

NASAグレン研究センターの解説によれば、ライト兄弟の風洞は、長い木箱にファンで風を押し込む構造で、ファンは店の小型ガスエンジンからベルトで回した。空気を室内から取り込んで流す開放回流で、風速が一種類に決まる単一速度型である[6]。ファンの直後に整流装置を置いて測定部の風を均一にし、揚力用と抗力用の2種類の天秤は自作した[6]。

試験の規模は大きい。約200の模型を試し、約30を詳しく調べた結果、1901年の試験の終わりに、2人は翼設計について世界でいちばん詳しいデータを持っていた、とNASAは評価している[5]。既存データの約3分の1という落差から、自分たちの測定へ切り替えたことが、この蓄積につながった。翌1902年、そのデータで設計した新機体をケティホークへ持ち込んでいる[5]。

木箱のファンのすぐ後ろに置かれた整流装置は、風洞が「風をそろえる」装置であることを、100年以上前から示している。では、現代の風洞は、そろえるために何を備えているのか。

4. 風を そろえる ぶひんは、なにが あるの?

4. 金網・ハニカム・縮流部 ── 風をそろえるための部品

4. 乱れを減らす部品 ── 整流器・金網・ハニカム・縮流部

風を そろえる ぶひんは、いくつか あります。ひとつは、金あみです。何まいも かさねて、風の うずを けします[1]。

もうひとつは、風の 通り道を せまく して、風を はやく する ぶぶんです。たくさんの 空気を 小さな 口に とおすので、はやく なります[3]。

アメリカの NASAの 研究所に ある、風の みだれが とても 小さい 風洞ふうどうには、金あみが 9まい あります。まがりかどの ない 道すじなど、みだれを へらす くふうも いくつも あると せつめい されて います[2]。ただし 9まいは、この 風洞ふうどうの 場合です。ほかの 風洞ふうどうも 9まいとは かぎりません。

では、そろえた 風を、どうやって ながしつづけるのでしょう。

風洞の測定部の手前をのぞくと、細かい仕切りが何層にも並んでいます。ここで風が整えられます。

金網とハニカムで渦を消す

測定部の上流には、格子や何層かの金網を並べた整流器があり、渦を取り除いて流れを平行で一様にします[1]。NASAラングレー研究センターの低乱れ風洞では、乱れが小さい理由として、縮流比が大きいこと、9枚の金網、ハニカムの役目をする加熱・冷却コイル、90度に曲がる部分のない風路などが挙げられています[2]。

口を絞って風を速くする

金網のあとには、縮流部(コンタクション)があります。大量の空気を小さな開口に通して、測定部の風速を上げる部分です[3]。同じ量の空気を細い口に通すので速くなる、と考えるとイメージしやすいでしょう。

この風洞の縮流比(絞る前と後の大きさの比)は17.6対1です[2]。9枚の金網とともに、この風洞の例であって、風洞一般の数字ではありません。風をそろえるために、これだけの工夫が重ねられています。

では、そろえた風を、風洞全体でどう流し続けるのでしょうか。

整流器は、格子や何層かの金網で渦を消し、流れを平行・一様にする[1]。ただ、金網1枚で済むわけではない。NASAラングレー研究センターの低乱れ風洞をまとめた資料は、乱れが小さい要因として、大きな縮流比、9枚の金網、ハニカムとして働く加熱・冷却コイル、90度の曲がりのない風路を挙げる[2]。ある風洞の縮流比は17.6対1とされるが、9枚も17.6対1も、その風洞の例であって、風洞に共通の値ではない。

縮流部(コンタクション)は、大量の空気を小さな開口に通して、測定部の風速を上げる部分である[3]。同じ量の空気を細い口に通すので速くなる、という程度に理解しておけば、ここでは足りる。

ここまでは風を「そろえる」部品の話である。では、そろえた風を、風洞全体でどう流すのか。流し方には大きく2通りがある。

5. 風は、ぐるぐる まわして つかうの?

5. 部屋から吸うか、ぐるっと回すか ── 風の流し方と大きさ

5. 開放回流と閉鎖回流 ── 建設費・運転費・騒音のちがい

風洞ふうどうには、2つの かたちが あります。ひとつは、部屋の 空気を すいこんで、とおして、また 部屋へ もどす やりかた。もうひとつは、ダクトで ぐるっと 一しゅう させて、おなじ 空気を まわす やりかたです[4]。

部屋から すう ほうは、作る お金が やすく すみます。でも、うごかす お金が かかり、おとも うるさく なりやすいと いわれます[4]。

日本の てつどうの けんきゅうじょには、まわる 道の 長さが 228メートルも ある 風洞ふうどうが あります。はねが 12まいの 大きな ファンで 風を おこし、いちばん 強い 風は 時速 400キロメートルです[10]。

こんなに 大きな そうちで、小さな 模型もけいを ためす ことが あります。どうして 小さな 模型もけいで、本ものの ことが わかるのでしょう。

風洞は、風の流し方で大きく2種類に分けられます。NASAの解説では、空気を室内から取り込んで測定部を通す「開放回流」と、ダクトと案内羽根で、送風機の出口から縮流部へ空気を戻す「閉鎖回流」です[4]。開放式は建設費が安い反面、流れの質が悪くなりうること、運転費が高いこと、うるさいことが挙げられています[4]。

エッフェルの風洞

エッフェルは、1909〜1912年に約4000回の試験を風洞で行ったと紹介されています[8]。試験部を囲い、ハニカムの整流器をつけた広がった入口と、拡散部(ディフューザー)をつけて効率を上げた開放型で、「エッフェル型」と呼ばれます[8]。年号や回数は百科事典的な資料の記述です。

全長228mの周回風路

日本の鉄道総研の大型低騒音風洞は、直径5m・羽根12枚の主送風機で、全長228mの周回風路に風を起こします。測定部の最高風速は時速400kmで、何も置かない測定部の騒音は75dBです[10]。1996年に運用が始まり、2016年にモーターを7000kWのものに更新して、7月15日に再開しました[10]。

これほど大きな装置に、たとえば新幹線の縮尺模型を置く例があります。なぜ、縮めた模型で、実物の流れが分かるのでしょうか。

風洞は、風の流し方で分類できる。NASAは、空気を室内から取り込んで測定部を通す開放回流と、ダクトと案内羽根で送風機の出口から縮流部へ空気を戻す閉鎖回流に分ける。開放式は建設費が安い一方、流れの質が悪くなりうること、送風機が常に空気を加速し続けるため運転費が高いこと、うるさいことが弱点とされる[4]。ライト兄弟の風洞は開放式だった。

1909〜1912年に約4000回の試験を行ったエッフェルの風洞も、開放型である。試験部を囲い、ハニカムの整流器つきの広がった入口と拡散部をつけて効率を上げたこの形は、「エッフェル型」と呼ばれる[8]。二次資料では、エッフェルは1909〜1912年に約4000回の試験を行ったと紹介されている。

気流の作り方でも分けられる。送風機を連続運転する連続式と、高圧空気を放出する間欠式がある[1]。速さでは、NASAが亜音速(マッハ0.8未満)、遷音速(0.8〜1.2)、超音速(1.2〜5.0)、極超音速(5.0超)と区分する[3]。低速の境をマッハ0.5とする資料もあり、区分は資料によって異なる[1]。

規模の例が、鉄道総研の大型低騒音風洞である。直径5m・羽根12枚の主送風機で全長228mの周回風路に風を起こし、測定部の最高風速は400km/h、何も置かない測定部の騒音は75dBである。1996年に運用が始まり、2016年に7000kWのモーターへ更新して7月15日に再開した[10]。

これほど大きな装置に、新幹線のような縮尺模型を置く例がある。なぜ縮めた模型で、実物の流れが分かるのか。

6. 小さな 新幹線しんかんせんで、どうして 本ものが わかるの?

6. 20分の1の新幹線で、本物の風をどう再現するのか

6. レイノルズ数の相似 ── 縮尺模型の流れを実物の流れとみなす条件

JR東海の けんきゅうじょには、新幹線しんかんせんの 20ぶんの 1の 模型もけいに 風を あてる 風洞ふうどうが あります。いちばん 強い 風は 1びょうに 97.2メートル、時速に なおすと 350キロメートルです[11]。

風の おとや 空気の ていこうを へらす けんきゅうに つかわれ、N700Sの 先頭の かたちを きめる ときにも つかわれたと つたえられて います[11]。

小さな 模型もけいで 本ものの ことが わかるのは、いくつかの 数を 本ものに 近づけると、模型もけいの まわりの 風の ながれ方も 本ものに 近づくと いわれる からです。その 1つを レイノルズ数と いいます[8]。

JAXAの 風洞ふうどうでは、空気の あつりょくを かえて、この 数を かえて います[9]。ただし 本ものと 同じに なって いるかは、数を くらべて みないと わかりません。

JR東海の小牧研究施設には、新幹線の20分の1の模型に風を当てる低騒音風洞があります。最高風速は秒速97.2m、時速に直すと約350kmです(97.2×3.6≒349.9)[11]。空力騒音や空気抵抗を減らす研究に使われ、N700Sの先頭形状の開発にも使われたと報じられています[11]。

縮尺模型の風を実物に近づけるには

小さな模型で実物のことが分かる根拠は、流れの性質を表す数を実物に合わせる考え方で、その代表がレイノルズ数です。ただし合わせるのはこの数だけではなく、速さが音速に近いときは、マッハ数なども関わります。条件がそろうほど、縮尺模型のまわりの流れは実物に近づくと説明されています[8]。風速が実物に近いだけでは、これらが合っているかは分かりません。

JAXAの調布にある2m×2m遷音速風洞は、1960年に完成し、マッハ0.1〜1.4で連続運転します。全圧を50〜150kPaの範囲で変えることで、レイノルズ数を変えられます[9]。風を速くするだけでなく、空気の圧力も、風洞が使う調整の一つです。

ここまでの話を、家にあるもので少し確かめられないでしょうか。

小さな模型で実物の流れを調べられる根拠は、レイノルズ数などの相似パラメータを実物に合わせれば、縮尺模型のまわりの流れが実物に近づく、という考え方にある[8]。レイノルズ数は条件の一つで、遷音速以上ではマッハ数なども合わせる必要がある。風洞での模型実験は、この考え方を拠り所にしている。

JAXA調布の2m×2m遷音速風洞は、1960年に完成した連続式の風洞で、マッハ0.1〜1.4、全圧50〜150kPaで使える。全圧を変えるとレイノルズ数が変わる[9]。数値は、パンフレットの英語表記部分による。

JR東海の小牧研究施設の低騒音風洞は、20分の1スケールの模型に最高風速97.2m/sの風を当てる。97.2×3.6≒349.9で、時速約350kmにあたる。この風洞は、空力騒音と空気抵抗の低減の研究に使われ、N700Sの先頭形状の開発にも使われたと報じられている[11]。

ただし、風速が実物の最高速度に近いというだけでは、レイノルズ数が実物と同じかどうかは分からない。この数が同じかどうかは、別に見る必要がある。

20分の1は長さの縮尺である。模型が10cmなら、実物は2mにあたる。この計算は、手元の物差しで検算できる。

7. 風を そろえる ようすを、おうちで みて みよう

7. 扇風機の風を、ストローの束でそろえてみる

7. 風のゆれ方を家で観察する ── 資料を読むときの視点

おうちの 扇風機せんぷうきで、風の ゆれかたを みて みましょう。扇風機せんぷうきは「よわ」に して、はねには ぜったいに ふれません。ゆびも 入れないで ください。

ようい するものは、ストローを 20ぽんくらい、わごむ、うすい 紙を ほそく きった ひもです。ストローを たばに して、わごむで とめます。

ひもの はしを ゆびで つまんで、扇風機せんぷうきの 風に かざします。つぎに、ストローの たばの 出口で、おなじ ことを します。ゆれかたが ちがうか、みて みましょう。

ちがいが でるかどうかは、やって みないと わかりません。これは 風洞ふうどうの しくみの しょうめいでは ありません。風洞ふうどうの 中では、金あみなどが 風を そろえて います。

家の扇風機で、風のゆれ方を観察できます。扇風機は弱にして、羽根や回転する部分には絶対に触れないでください。

用意するのは、ストロー20本ほど、輪ゴム、薄い紙を細く切ったひもです。ストローを束ねて輪ゴムでとめ、短い筒にします。ひもの端を指でつまんで、扇風機の風にかざし、ゆれ方を見ます。次に、ストローの束の出口で同じようにかざして比べます。ゆれ方が変わるかどうかは、やってみないと分かりません。これは風洞の仕組みの証明ではなく、風をそろえる工夫を想像するきっかけです。

計算もできます。20分の1の模型が10cmなら、実物は2mです。97.2m/sに3.6をかけると、時速約350kmです。定規と電卓があれば確かめられます。

日本語で読める資料は、JR東海の風洞を紹介した記事[11]と、鉄道総研の風洞の記事[10]です。数字や設備の大きさが並んでいます。

観察:扇風機(弱)の風に、薄い紙を細く切ったひもをかざし、ゆれ方を見る。次に、ストロー20本ほどを輪ゴムで束ねた短い筒の出口で同じことをして、比べる。羽根や回転部には絶対に触れない。この観察は、金網やハニカムの効果を証明するものではなく、風のゆれ方がどう変わるかを自分の目で見る遊びである。変化が出るかどうかは、やってみないと分からない。

数字の検算もできる。20分の1の模型が10cmなら、実物は2mになる。97.2m/sに3.6をかけると、349.92km/hで、資料の「350km/h」とおおよそ一致する[11]。

資料の読みどころは三つある。①NASAグレン研究センターの開放回流のページ[4]は英語だが、開放式と閉鎖式を、建設費・運転費・騒音で比べている。②NASAラングレー研究センターの資料[2]は、9枚の金網や17.6対1が一つの風洞の例であることを読み分ける練習になる。③JR東海[11]と鉄道総研[10]の数字は報道記事からで、それぞれの発表に当たると、風洞の仕様の細部まで読める。ウェナムとエッフェルの風洞は二次資料の記述なので、原典で確かめる価値のある問いである。

しらべた もとの じょうほう

参考にした情報源

参考にした情報源と、その使い方

出典について:辞典、NASAなど公的機関の解説、論文、報道記事を使った。何に使ったかは、それぞれの項目の最後に書いている。

  1. コトバンク「風胴」(日本大百科全書ほか)。https://kotobank.jp/word/%E9%A2%A8%E8%83%B4-864888 (風洞の定義、整流器、連続式・間欠式の分類について。辞典の記述)
  2. NASA Technical Reports Server「Low-disturbance wind tunnels」。https://ntrs.nasa.gov/api/citations/19880005555/downloads/19880005555.pdf (乱れを小さくする工夫、金網の枚数、縮流比について。一つの風洞の例)
  3. NASA Glenn Research Center「Tunnel Types」。https://www.grc.nasa.gov/www/K-12/airplane/tuntype.html (縮流部のはたらき、速さによる風洞の区分について)
  4. NASA Glenn Research Center「Open Return Tunnel」。https://www.grc.nasa.gov/www/K-12/airplane/tunoret.html (開放回流と閉鎖回流の違い、費用と騒音について)
  5. NASA Glenn Research Center「Beginner's Guide to Aeronautics: Wind Tunnel」。https://www1.grc.nasa.gov/beginners-guide-to-aeronautics/wind-tunnel/ (ライト兄弟が風洞を作った動機と、試験の結果について)
  6. NASA Glenn Research Center「1901 Wright Wind Tunnel」。https://www.grc.nasa.gov/WWW/K-12/airplane/wrights/tunnel.html (ライト兄弟の風洞の構造について)
  7. U.S. Centennial of Flight Commission「First Wind Tunnels」。https://centennialofflight.net/essay/Evolution_of_Technology/first_wind_tunnels/Tech34.htm (ウェナムの風洞について。二次資料)
  8. Wikipedia「Wind tunnel」。https://en.wikipedia.org/wiki/Wind_tunnel (エッフェルの風洞とレイノルズ数の考え方について。百科事典の記述)
  9. JAXA「2m×2m遷音速風洞」パンフレット。https://www.aero.jaxa.jp/about/pamphlets/pdf/2x2_senonsoku.pdf (完成年、マッハ数、全圧とレイノルズ数について)
  10. 乗りものニュース(鉄道総研の発表の報道)。https://trafficnews.jp/post/52038 (大型低騒音風洞の大きさと最高風速について。報道記事)
  11. 乗りものニュース(JR東海 小牧研究施設)。https://trafficnews.jp/post/80361 (20分の1模型の低騒音風洞について。報道記事)

なおした ところ

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