1. ライトに くる ガは、どうして おすばかり?
1. 外灯に来る蛾が雄ばかりなのは、雌が飛べないから
1. 外灯に来るのが雄だけなのは、雌が飛べないからである
ふゆの よる、車の ライトや がいとうに、ガが あつまって きます。フユシャクという なかまの ガで、とんで くるのは おすだと、しれとこの しぜんセンターの 記事には 書いて あります。
では、めすは どこに いるのでしょう。じつは、めすは はねが ほとんど ありません。チャバネフユエダシャクという ガの めすには、はねが まったく なくて、からだじゅうが しろと くろの まだらもようです。
はねが ないので、めすは とべません。そのかわり、おしりから においの もと(フェロモン)を だして、おすを よびます。おすが ふゆの よるに とぶのは、この めすを さがす ためです。
冬の夜の外灯の下は、蛾の観察に向いた場所です。ところが知床自然センターの記事は、知床で外灯や車のライトに飛んでくるのは全部雄だと説明しています[3]。雌が来ないのは、飛べないからです。
日本には、成虫が冬だけに出てくるシャクガ科の蛾が35種います。これらをまとめてフユシャク類と呼び、雌は翅が退化して飛べません[1]。翅が「ない、または極端に短い」ことが、フユシャクの最大の特徴とされています[6]。たとえばチャバネフユエダシャクの雌には翅がまったくなく、全身が白と黒のまだら模様です[3]。
飛べない雌は、おしりからフェロモンを出して雄を引き寄せます[2]。雌が動かずに合図を出し、雄が飛んで探す。この分担が、冬の夜に飛ぶのが雄だけという光景のもとです。
では、その雄は、寒さの中でどうやって動き回れるのでしょうか。
冬の夜にライトへ集まるフユシャクが雄だけなのは、雌に飛ぶ手段がないからだ。日本には成虫が冬だけに現れるシャクガ科の蛾が35種おり、これをフユシャク類と総称する。雌は翅が退化していて飛べない[1]。翅が「ない、または極端に短い」ことが最大の特徴だとする解説もある[6]。
退化の程度は種で異なる。チャバネフユエダシャクの雌は翅がまったくなく、全身が白黒のまだら模様をしている[3]。知床自然センターの記事は、知床で外灯や車のライトに来るのは全部雄だと述べており[3]、雌が飛ばない以上、これは筋が通る。
では雌は、どうやって相手を見つけるのか。飛べない雌は、おしりからフェロモンを出して雄を引き寄せる[2]。この行動は「コーリング」と呼ばれる[6]。雌が待って合図を出し、雄が飛んで探すという分担である。
ここまでが、題名の問いの前半の答えだ。冬に飛ぶのは、雌を探す雄である。だが、昆虫にとって冬は動きにくい季節のはずだ。雄はその条件で、なぜ飛べるのか。
2. さむくて へいき? ごはんは どうするの?
2. 氷点下でも動き、成虫は食べない
2. 昆虫は寒さに弱いはずなのに、氷点下でも動き、成虫は食べない
むしは ふつう、さむいと うごきにくく なります。まわりの おんどで からだの おんども かわる どうぶつだからです。でも フユシャクは、0どより ひくい さむさでも、げんきに うごけると いわれて います。
おおくの フユシャクは、おとなに なると ごはんを たべません。ようちゅうの ときに ためた えいようで いきて います。ある 記事では、おとなに なってから およそ 1か月は、ためた えいようだけで いきられると 書かれて います。
たべない わけには、さむい ときに みずや たべものを からだに いれると こおって しまうから、という かんがえも あります。
昆虫は変温動物で、体温が気温に左右されます。寒い夜には動きが鈍るのがふつうです。ところがフユシャクは、氷点下になっても活発に動ける特殊な能力をもつと、栃木県の自治体の広報資料は紹介しています[2]。別の資料も、雄は氷点下でも活動でき、冬の間に繁殖行動をすると述べています[1]。どんなしくみで寒さに耐えるのかは、まだ調べる余地のある問いです。
もう一つの特徴は、多くの種で成虫が食べないことです。それらは、シャクトリムシだった時代に蓄えた栄養だけで生きています[1]。ある解説記事は、その蓄えで成虫がおよそ1か月生きられると書いています[7]。
食べない理由には、寒い時期に水分や食べ物を体に入れると凍る危険があるから、という考えが紹介されています[7]。これは説明の一つで、実験で確かめられた結論として書かれているわけではありません。
つまり雄は、蓄えだけを頼りに、氷点下の夜に雌を探して飛びます。では、飛べない雌のほうは、翅を失って損をしただけなのでしょうか。
昆虫は変温動物であり、体温は気温に左右される。氷点下では動きが鈍るのが一般的だ。それでもフユシャクは、氷点下で活発に動く特殊な能力をもつと紹介されている[2]。雄が氷点下でも活動でき、冬の間に繁殖行動をするという記述もある[1]。この能力が体のどんな仕組みによるのかは、まだ調べる余地のある問いだ。
多くの種で成虫が餌を取らないことも、冬の活動と関係して語られる。多くの種は、シャクトリムシ時代に蓄えた栄養だけで成虫期を過ごす[1]。ある解説記事は、その蓄えで成虫がおよそ1か月生きられるとしている[7]。つまり雄が雌を探して飛べる期間は、体に残った蓄えの量で決まる、限られた時間だ。
食べない理由として同じ記事は、寒い時期に水分や食物を体に取り込むと凍結の危険があるから、という考えを紹介している[7]。ただし「とも考えられている」という書き方で、検証済みの結論ではない。
注意したいのは、約1か月という数字が一つの解説記事のものだということだ。種ごとの出現期間(後述のウスバフユシャクは本州の平地で12月から1月[5])とは別の量なので、混同しないほうがよい。
ここで雌に目を向ける。翅を失った雌は、何を得たのか。
3. はねを すてた めすは、なにを えたの?
3. 翅を失った雌は、何を得たのか
3. 翅の退化は雌に何をもたらしたのか:複数の説と未解明の部分
はねが ないと、とべません。ふしぎですが、いくつか せつが あります。
ひとつは、さむさに つよく なれる という せつです。からだの ひろい ところが あると、ねつが にげやすい からだと いわれます。もうひとつは、とぶ ための ちからを、たまごを うむ ことに まわせる という せつです。
はねを すてた めすは、おもい リュックを おろして、のこった ちからを ぜんぶ たまごに つかう ようなものかもしれません。ただし これは たとえで、ほんとうの わけは まだ はっきり していません。
翅がないのは、不便なだけに見えます。それでも翅を持たない形が冬のシャクガに受け継がれてきたのは、何か得があったからだろうと考えられてきました。
いくつかの説があります。一つは、体の表面積が広いと体温が奪われやすいから、という説です。もう一つは、飛ぶのに使うエネルギーを産卵に回せるから、という説です[2]。別の解説は、翅を持たないぶん耐寒性を高められ、そのエネルギーを産卵に回せると説明しています[7]。
これらは、資料のなかでも「〜からだと言われている」「〜かもしれない」という書き方の説明です。雌が翅を退化させた本当の理由は、体温を守るためか、エネルギーの節約のためか、まだはっきり分かっていません。
もう一つ、興味深い例があります。フユシャクガの多くは夜に飛びますが、早春の昼間に飛ぶ種として、フチグロトゲエダシャクとカバシタムクゲエダシャクの2種が知られています。この2種の翅の退化と早春の活動の進化を扱った研究発表があります[8]。同じ「冬の蛾」でも、暮らし方はいくつかあるようです。
では、飛べない雌が生き残れたのは、冬だからなのでしょうか。
翅の退化は、飛べないという不利を伴う。それでも雌でこの形質が保たれてきたのは、不利を上回る何かがあったからだと考えるのが自然だろう。資料に挙がる説は大きく二つある。一つは、翅のように表面積が広い部分があると体温が奪われやすい、という体温説。もう一つは、飛ぶのに使うエネルギーを産卵に回せる、という配分説である[2]。別の解説も、翅がないぶん耐寒性を高められ、そのエネルギーを産卵に回せると述べる[7]。
ただし、これらは「からだと言われる」「かもしれない」と書かれた説明にとどまる。出典の信頼度も、一次資料というよりは解説記事・広報資料が中心だ。雌が翅を失った本当の理由が体温保持なのかエネルギー節約なのか、あるいは両方なのかは、まだはっきり分かっていない。
この問題をさらに難しくするのが、昼に飛ぶ種の存在である。フユシャクガの多くは夜に活動するが、早春の昼間に飛ぶ種として、フチグロトゲエダシャクとカバシタムクゲエダシャクの2種が知られ、翅の退化と早春の活動性の進化を扱った研究発表が日本生態学会の大会で行われている[8]。夜の寒さへの適応だけでは、すべてを説明しきれない可能性がある。
では、翅のない雌が生き残れたのは、冬という季節の性質と関係があるのか。次に、冬を選んだ理由として語られる推測を見る。
4. どうして わざわざ ふゆなの?
4. わざわざ冬に飛ぶ理由として語られていること
4. なぜあえて冬なのか:天敵と競争相手の少なさという推測
ふゆは さむくて、むしを たべる てきが すくなくなります。だから はねの ない めすも、いきのこれたのだろうと かんがえられて います。
ふゆに さく はなを ひとりじめ できるかもしれない、という せつも あります。ただ、どちらも「かもしれない」という すいそくです。ふゆは あえて えらばれた きせつなのか、それとも ほかに わけが あるのか、すべては わかって いません。
冬は寒く、虫を食べる天敵が少ない季節です。ある解説は、そのため雌は翅がなくても生き残れたと考えられている、と述べます[7]。翅を失う前提に、天敵の少なさがあったという筋道です。
ホンダの森の解説は、さらに一歩進めて、冬なら天敵が少ないうえ、冬に花を咲かせる植物を独り占めできる可能性も高いので、フユシャクはあえて冬を活動時期に選んだのかもしれない、と書いています[6]。ただし、この解説自体が「かもしれない」という推測の形で書かれています。
整理すると、確かなのは、雌が飛べず、雄が氷点下でも動け、成虫は食べずに蓄えで生きているという事実です。冬が選ばれた理由の候補として、天敵の少なさや競争相手の少なさが挙げられていますが、検証された結論ではなく、推測の段階です。
ところで、冬のなかでも、フユシャクが見られる時期は決まっているのでしょうか。
冬が選ばれた理由について、資料は複数の推測を並べる。解説記事の一つは、冬は気温が低く天敵も少ないため、翅を持たなくても生き残れたと考えられている、と述べる[7]。この説明では、天敵の少なさが翅の退化を許す条件になっている。
ホンダの森の解説は、冬なら天敵が少なく、冬に花を咲かせる植物などを独り占めできる確率も高くなるので、あえて冬を活動時期に選んだのかもしれない、と書く[6]。この文は、冬の活動を「競争を避ける選択」として読む見方であり、天敵・競争相手の少なさに着目している。
これらは、ある出来事の原因を断定した文章ではない。「考えられている」「かもしれない」と書かれており、確かめられた事実と推測を分けて読む必要がある。事実として言えるのは、雌が飛べないこと、雄が氷点下で動けること、成虫が食べず蓄えで生きること。冬という季節がなぜ有利に働いたのかは、現時点では説明の候補が並ぶ段階だ。
冬のあいだなら、いつ行っても同じ蛾が見られるのか。それとも、時期によって顔ぶれが変わるのか。
5. ふゆの あいだに、なかまが いれかわる
5. 冬のあいだに、見られる種類が入れかわる
5. 同じ場所でも、時期によって見られるフユシャクは入れかわる
にほんには、ふゆだけ おとなに なる ガが 35種類も います。ふゆの あいだに、つぎつぎと なかまが いれかわって あらわれるので、おなじ ばしょでも、じきが ちがうと 出あう ガも ちがいます。
とちぎけんでは、さむく なるのが はやい やまから、フユシャクが 出はじめます。そのあと、だんだん へいちでも 見られるように なります。ほんしゅうの へいちの ウスバフユシャクは、12がつから 1がつごろに おとなに なります。
日本のフユシャク類は35種で、冬の間に次々と種が入れ替わりながら現れます。同じ場所でも、時期が違えば出会う種が変わるということです[1]。
栃木県立博物館の展示紹介によると、栃木県では、晩秋に平地より早く寒くなる山のほうから出始め、しだいに平地でも見られるようになります[4]。気温が下がるタイミングに合わせて、出てくる場所が山から平地へ広がっていくわけです。
種ごとの時期も記録されています。ウスバフユシャクは、本州の平地では成虫が12月から1月に出現します[5]。フユシャクと一口に言っても、種ごとに「自分の季節」があるようです。
35種のフユシャク類は、冬の間に次々と種が入れ替わりながら出現する。そのため同じ場所でも、時期が違えば出会う種が変わる[1]。これは、見に行く日を変えるだけで、観察の結果が変わりうるということだ。
分布の面でも差がある。栃木県立博物館の展示紹介では、晩秋に平地より早く寒くなる山のほうから出始め、しだいに平地でも見られるようになるとされる[4]。出現が気温の低下に歩調を合わせているように読めるが、資料はそこまで書いておらず、種ごとの要因は個別に確かめる必要がある。
種ごとの時期も記録されている。ウスバフユシャクは、本州の平地では成虫が12月から1月に出現する[5]。ここで注意したいのは、この数字が種の出現期間であり、先に出てきた「成虫の寿命のめやす約1か月」とは別の量だということだ。
つまり冬のフユシャクは、一つの種が冬じゅう飛ぶのではなく、種ごとにずらした季節を使い、全体として冬を長く埋めている。自分の目で確かめるには、観察する日付を記録するのが近道になる。
6. ふゆの よるに、たしかめて みよう
6. 冬の夜の外灯の下で、日付を変えて見比べる
6. 日付を記録して、出現の入れかわりを自分で確かめる
きょう できる こと
かならず おとなと いっしょに、いえの げんかんや にわの あかりの そばで 見て みましょう。あたたかい ふくを きて、くらい みちや 車の とおる ところには 出ません。
ガが きたら、さわらずに 見ます。はねは ありますか。おおきさや いろは どうですか。あしたも、おなじ じかんに 見て、かずを メモして みましょう。ガの かずや しゅるいが かわるか、わかるかも しれません。
しらべる とき
ずかんで、ウスバフユシャクを しらべて みましょう。めすの すがたも、さがして みてください。
外灯の下で記録する
保護者と一緒に、家の玄関先や庭の明かりのそばで観察します。暖かい服装で、暗い道や車の通る場所には出ません。飛んできた蛾には触らず、翅があるか、大きさや色はどうかを見ます。フユシャクの雌には翅がないので、明かりに来た蛾がフユシャクなら、翅がある個体は雄の可能性が高いといえます。
同じ明かりで、1週間おきに同じ時刻に見て、数・大きさ・色をメモしてください。見られる蛾が入れ替わるかどうかが、記録から読み取れます。
資料で確かめる
北海道立総合研究機構の林業試験場がウェブで公開している図鑑には、ウスバフユシャクの出現期などがまとまっています[5]。自分の記録と、図鑑の時期を見比べてみてください。
記録の取り方
保護者と一緒に、家の玄関先や庭の明かりのそばで観察する。暗い道や車の通る場所には出ない。飛んでくる蛾に触れず、翅の有無・大きさ・色を見る。明かりに来た個体に翅があれば、雌が飛べないという前提から、雄である可能性が高い。
1週間おきに同じ時刻に見て、日付・気温・数・特徴をメモしておくと、種の入れ替わりが記録から読み取れる。種名まで調べるなら、雄の翅の色や模様を図鑑と見比べる必要がある。
原典に当たる
北海道立総合研究機構の林業試験場がウェブで公開する図鑑には、ウスバフユシャクの出現期が載っている[5]。日本生態学会大会の要旨は、昼に飛ぶ種を扱った研究の入口になる[8]。自分の記録の時期と、これらの資料の記述を見比べると、どこまでが確かめられ、どこからが推測なのかが見えてくる。
しらべた もとの じょうほう
参考にした情報源
参考にした情報源と、その使い方
本文で使った資料です。
- 日本自然保護協会「【配布資料】今日から始める自然観察『冬の移ろいを告げるフユシャク類』」. https://www.nacsj.or.jp/magazine/13975/ (35種/雌の翅の退化/雄の耐寒/成虫は食べない/種の入れ替わり)
- 那須塩原市「ちっちゃな自然み~つけた(ナンバー153)」. https://www.city.nasushiobara.tochigi.jp/soshikikarasagasu/kikakuseisakuka/koho/2/2/11/4991.html (フェロモン/氷点下で動く/翅の退化の説)
- 知床自然センター「冬の蛾」. https://center.shiretoko.or.jp/natureblog/2014/11/5479.html (ライトに来るのは雄/チャバネフユエダシャクの雌)
- 栃木県立博物館「テーマ展『秋の虫・冬の虫』展示紹介 冬の虫 その1. フユシャクガ・キリガ」. https://www.muse.pref.tochigi.lg.jp/news/2013/12/-1-1.html (山から平地へ出始める)
- 北海道立総合研究機構 林業試験場「ウスバフユシャク」(昆虫図鑑). https://www.hro.or.jp/forest/research/fri/database/zukanf/00top/cho-ga/shakuga/usubafu/note.html (本州の平地での出現時期)
- 本田財団 ホンダの森「森の図書館」. https://global.honda/jp/philanthropy/hondawoods/forest/library/026/ (翅のない雌/コーリング/冬を選んだ可能性の推測)
- DIME「フユシャクの解説記事」. https://dime.jp/genre/2062251/ (耐寒性とエネルギー/天敵/食べない理由/約1か月)
- 日本生態学会大会 講演要旨「昼飛性フユシャクガにおける翅の退化と早春活動性の進化」. https://www.esj.ne.jp/meeting/abst/67/P2-PC-264.html (昼に飛ぶ2種)
なおした ところ
更新履歴
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