1. 120ねん まえの げんこうが、どうして いま 見つかったの?
1. 約120年前の『坊っちゃん』の原稿は、どこから現れたのか
1. 『坊っちゃん』の直筆原稿は、いつ、どこで確認されたのか
『ぼっちゃん』は、なつめ そうせきが 書いた ものがたりです。およそ 120ねん まえに、雑誌に のりました。その 手書きの げんこうは、1995ねんの 本に のった あと、どこに あるのか わからなく なって いました。
ところが 2019ねんに、てんり大学の 図書館が、古書店から この げんこうを 買いました。しらべて みると、そうせき ほんにんの 字だと わかり、2025ねんに 発表されました。げんこうは ぜんぶで 150まいです。
手書きの げんこうには、書いた 人が 考えた あとが のります。展覧会の しょうかいでは、なおした あとや、編集者の 書きこみが 見られる ことが ある、と せつめいされて います。作家は、1回で 書きあげる わけでは ないようです。
では、この げんこうを 書いた そうせきは、どんな ところで はたらいて いたのでしょう。
『坊っちゃん』は、1905〜1906年に俳句雑誌『ホトトギス』に発表された小説です。その手書きの原稿は、1995年の展示会図録に載ったあと、行方が分からなくなっていました。報道によると、天理大学附属天理図書館が2019年に古書店から購入し、鑑定で漱石の自筆と確認されて、2025年に公表されました[1]。作品全体にあたる150枚で、ペン書きです。
注意したいのは、購入が2019年で、公表が2025年という点です。「2025年に見つかった」と読まれがちですが、図書館が手に入れたのは公表の6年前でした。
手書きの原稿が大切にされるのは、書いた人の頭の動きが残るからです。天理図書館の展覧会を紹介する文章は、作家自筆の原稿を、作家や作品を研究するうえでもっとも重い部類の資料と位置づけ、推敲の跡や編集者の書き入れが残ると説明しています[2]。書いては直しながら進むのが、作家の普通の姿なのだと分かります。
では、この原稿を書いた漱石は、どんな職場で小説を書いていたのでしょうか。
夏目漱石『坊っちゃん』の直筆原稿は、1995年の展示会図録に載ったあと、行方が分からなくなっていた。報道によれば、それを天理大学附属天理図書館が2019年に古書店から購入し、鑑定で漱石の自筆と確認して、2025年に公表した[1]。「2025年に発見された」と書かれることもあるが、図書館が手にしたのは公表の6年前である。「発見」という言葉が何を指すのかは、日付を分けて読む必要がある。
原稿は作品全体で150枚、ペン書きで、作品そのものは1905〜1906年に俳句雑誌『ホトトギス』に発表された[1]。発表から公表までは約120年になる。ところで、活字になった本が手元にあるのに、手書きの原稿を探す意味はどこにあるのか。
天理図書館の展覧会を紹介する文章は、作家自筆の原稿を作家・作品研究の第一級の資料とし、推敲の跡や編集者の書き入れが残る点を挙げている[2]。推敲とは、文章を練り直すことである。印刷された本には最後の形しか載らないが、原稿には途中の迷いが残りうる。ただし、この原稿に具体的にどんな直しがあるかは、公表された資料を自分で見て確かめたい。
2. げんこう用紙の ますめには、新聞の なごりが あるの?
2. 漱石の原稿用紙は、なぜ1段19文字なのか
2. 漱石の原稿用紙は、なぜ1段19文字なのか:新聞社員としての働き方
なつめ そうせきは、新聞の 会社で はたらいて、ものがたりを 新聞に 少しずつ のせて いました。
その ころの 新聞の なごりで、そうせきが つかった げんこう用紙は、1行が 19もじに なって いるのが とくちょうだ、と しょうかいされて います。新聞に のせる ことを 考えた ますめの かたちが、紙に のこった という わけです。
19は 1行の もじの かずで、1まいに ぜんぶで 19もじ という ことでは ありません。
ところで、紙に 書きはじめる まえに、作家は どんな ことを して いるのでしょう。
漱石は朝日新聞に勤め、新聞に小説を連載していた作家でした[3]。その時の新聞のつくりの名残から、漱石の原稿用紙は1段が19文字になっているのが特徴だと、美術館関係者の報告記事で紹介されています[3]。
数字の読み方には注意が要ります。19は1段の文字数で、1枚の総文字数ではありません。新聞の紙面に由来する形が、原稿用紙の升目に残ったわけです。
作家というと、静かな部屋で思いつくまま書く姿を思い浮かべるかもしれません。けれど漱石の原稿用紙は、新聞社の社員として連載を抱えていたという、働き方まで映しています。
では、紙に向かう前に、作家はどんな準備をしているのでしょうか。
漱石の原稿用紙は、1段が19文字なのが特徴だという。その理由として、漱石は朝日新聞に勤めて小説を連載していたため、その時の新聞の名残が用紙の形に残ったと紹介されている[3]。
数字の読み方には注意したい。19は1段の文字数であり、1枚の総字数ではない。また、この紹介は美術館関係者の報告記事であり、用紙の設計経緯を一次資料でたどったものではない。「新聞の名残」は、紹介者の説明として受け取るのがよい。
それでも、作家が新聞社の社員として連載を抱えていたという働き方が、道具の細部に表れるという見方は成り立つ。作家の仕事を知るには、本文だけでなく、紙や筆記具、ノートといった周辺の物も手がかりになる。次に問うのは、その紙に向かう前に作家が何をしているかである。
3. 書きはじめる まえに、作家は なにを して いるの?
3. 書く前に、作家は何をしているのか
3. 書く前の下調べと、太宰治の構想ノート
小説家の しごとの 中心は、ものがたりを 考えて 書く ことです。でも、それだけでは ありません。資料を しらべたり、はなしを 聞きに いったり する、じみちな しごとも ひつようだ、と しごとを しょうかいする ページに 書かれて います。
むかしの ようすを 書く 小説では、その じだいの くらしや 文化を しらべる ことが もとめられる、と しょうかいされて います。
作家の だざい おさむは、書いた 作品の 記録や、これから 書きたい はなしの アイデア、ざいりょうを 書く ための ノートを つかって いたと しょうかいされて います。考えた ことを ノートに のこして おく、と いう つかい方です。
書きおわった げんこうは、まだ 本には なりません。つぎに 読む 人が います。
小説家の仕事の中心は、物語を考えて書くことです。ただ、職業を紹介する資料によれば、資料の下調べや取材といった地道な作業も欠かせません[4]。たとえば時代小説では、その時代の背景や文化を研究する力が求められる、と説明されています[4]。
準備のしかたは人によってちがいます。太宰治は、書いた作品の記録や、これから書こうとする作品の構想メモ、題材を書きとめるためのノートを使っていたと紹介されています[3]。頭の中の構想を、ノートに書き出して手元に置く使い方です。
こうした調べものやメモは、完成した本にはふつう見えない部分です。それでも、物語を書く仕事の一部として数えられています。
準備をして書き上げた原稿は、そのあと誰の目に触れるのでしょうか。
小説家の仕事の中心は物語の創作と執筆だが、職業紹介の資料は、資料の下調べや取材といった地道な作業も必要だと述べる[4]。例として時代小説では、時代背景や文化の研究が求められるという。また、構成は編集者と協力して進める場合もあるとされる[4]。
準備の仕方は個人によって異なる。太宰治は、執筆した作品の記録、構想中の作品のメモ、題材を書きとめるノートを使っていたと紹介されている[3]。頭の中の構想を書き出して手元に置く使い方といえる。
注意点は、職業紹介の資料が民間のサイトであり、公的機関の資料ではないことだ。そのため「小説家はこういう仕事だ」と固定的に読むのではなく、一つの見取り図として使いたい。
準備をして書き上げた原稿には、まだ関門が残っている。
4. 書きおわった げんこうを、だれが 見るの?
4. 書き終えた原稿を、編集者と校閲者はどう読むのか
4. 校正と校閲は何がちがうのか:雪の日付を確かめる仕事
作家は 本を ひとりで つくる わけでは ありません。ものがたりの 組み立てを、編集者と 力を あわせて 考える こともあります。
そして、こうせいや 校閲を する 人も います。こうせいは、まちがい字や ぬけた字、ことばの ばらつきなどを 見つける しごとです。校閲は、書いて ある ことが 本当か どうかまで しらべます。
たとえば、1934ねん 3月14日に 雪が 東京駅に つもった、と 書いた 小説が あったとします。その日に ほんとうに 雪が つもる ほど ふったのかを たしかめる、と しょうかいされて います。ものがたりの 中の ひづけ 1つでも、たしかめるのです。
本に なったら おわり、では ないようです。手書きの げんこうは、そのあと どう なるのでしょう。
書き上がった原稿は、まず編集者の手に渡ります。小説の構成を、作家が編集者と協力して固めていくこともあります[4]。ひとりで書く仕事に見えて、本になるまでには相談相手がいるのです。
そのあとに、校正と校閲の仕事があります。校正は誤字脱字や用語の不統一などを確かめる仕事、校閲はそれに加えて内容の事実関係まで確かめる仕事です[5]。たとえば、1934年3月14日に東京駅へ雪が積もったと書かれた小説があれば、その日に積もるほど降っていたかを調べる必要がある、という例が紹介されています[5]。
物語はつくり話でも、日付や天気は現実の記録と照らせます。食いちがいが残ると、読む人が引っかかるかもしれません。校閲は、作家の書いた一文を、読者の目で先に読む仕事ともいえます。
本ができたあと、原稿はもう用済みなのでしょうか。『坊っちゃん』の原稿は、古書店に残されていました。
書き上げた原稿は、編集者と校閲の目を通る。校正は誤字脱字や用語の不統一などを確かめる仕事で、校閲はさらに内容の事実関係まで確かめる仕事である[5]。違いは、おもに「字や表記」を見るか、「中身」まで見るかにある。
職業紹介の例はこうだ。小説に1934年3月14日、雪が東京駅に積もった、と書かれていれば、その日に積もるほど降っていたかを確認する必要がある[5]。作り話の中でも、日付と天気のように現実と照らせる情報は、照合の対象になる。
では、なぜそこまで確かめるのか。現実の記録と食いちがうと、読者が気づくことがある。だから、日付や天気のように確かめられることを調べる。つまり校閲は、作家の文章を読者の目で先に読む工程と整理できる。
ここまでを並べると、下調べ、執筆、編集者との構成、校正・校閲となる。作品は一人の作業に見えて、複数の目を通って形になる。残る問いは、その後の原稿の行方である。
5. 本に なった あとの げんこうは、どこへ いくの?
5. 本になったあとの原稿は、どこで守られているのか
5. 作家と研究者の有志が、原稿を集める文学館を作った経緯
作家の げんこうや 手紙を あつめて、まもって いる 日本近代文学館が あります。1962ねんに、作家や 研究する 人たちが つくろうと うごきだし、5月に 23人の なかまで じゅんびの 会を はじめました。
1967ねんに ひらいて、明治の じだいより あとの 文学の 資料を あつめて、保存したり、見られるように したり して います。げんこう、手紙、雑誌、本などです。
手書きの げんこうは、作家や 作品を しらべる ための だいじな 資料だと しょうかいされて いました。のこす ばしょを 作ろうと した 人たちが いた、と いうことです。
原稿を集めて残す場所として、日本近代文学館があります。1962年に作家や研究者ら有志の運動で設立が進み、5月2日には文壇・学界の有志23名で設立準備会が発足、31日に設立総会が開かれました[6]。開館は1967年4月13日です[6]。
ここで集められているのは、明治以降の文学資料です。原稿、手紙、雑誌、本などを集めて保存し、公開しています[6]。
手書きの原稿は、世界に一枚の現物です。印刷された本は何冊も残りますが、原稿は一枚しかない現物です。残す場所を作家や研究者自身が動いて作ったことは、原稿が大切にされてきたことの表れと読めます。
『坊っちゃん』の原稿は、古書店に残されていた。一方で、原稿を意図して集め、残す仕組みもある。日本近代文学館は、作家・研究者ら有志の運動で設立が進んだ。5月2日に文壇・学界有志23名による設立準備会が発足し、31日の設立総会を経て、1962年の運動が形になった[6]。開館は1967年4月13日である[6]。
同館は、明治以降の文学資料である原稿・手紙・雑誌・本を集め、保存・公開している[6]。作家自身の字で書かれた原稿は唯一の現物であり、刷られた本とは性質が違う。展覧会の紹介文が、作家自筆の原稿を研究のうえで第一級の資料と述べていたこと[2]と重ねると、集める場所を作ろうとした有志の動機を考える手がかりになる。
6. 自分の 作文に、なおした あとを のこして みよう
6. 自分の作文に「直した跡」を残してみる
6. 自分の下書きに、推敲の跡を残してみる
ひとばん おいて みる
作文や にっきを 書いたら、ひとばん おいてから 読みなおして みましょう。なおしたい ところに えんぴつで 線を ひき、となりに 書きなおします。けさずに のこすと、「なおした あと」が 見えます。
よみくらべて みる
なおした 作文は、はじめの 文と ならべて 読みくらべます。どこを なぜ なおしたのか、ひとこと メモを 書いて おくと、あとで 思い出せます。
下書きを一晩おく
作文や日記を書いたら、一晩おいて読み直します。直したい所に鉛筆で線を引き、横に書き直します。消さずに残すと、自分の「推敲の跡」が見えてきます。一週間後に読み返すと、どこで言葉を選び直したかが分かります。
直す前と後を読み比べる
直した作文を、最初の文と並べて読み比べます。どこを、なぜ直したのか、ひとこと書き添えておくと、あとで自分の考えの動きをたどれます。
手元でできる検証
自分の下書きを一晩おいて読み直し、直す所に線を引いて書き直す。消さずに残せば、自分の推敲の跡が資料になる。数日おいて読み返すと、言葉を選び直した理由まで思い出せるかを試せる。
直す前と後を読み比べる
直した文章を最初の文と並べ、どこをなぜ直したのか一言書き添える。印刷された本の裏には、こうした途中の跡があったはずだと想像しながら読むと、本の見え方が少し変わる。
しらべた もとの じょうほう
参考にした情報源
参考にした情報源と、その使い方
本文で使った資料です。
- 文芸公募ニュース(報道の引用まとめ). https://koubo.jp/article/38984 (原稿の購入・鑑定・枚数。報道に基づく)
- 国立新美術館 アートコモンズ(展覧会紹介). https://www.nact.jp/artcommons/user/detail/80897 (手書き原稿と推敲跡の説明)
- 全国美術館会議 報告記事. https://www.museum.or.jp/report/102504 (原稿用紙の特徴、構想ノート)
- 東進 未来の職業研究「小説家」. https://www.toshin.com/mirai/joblab/job/496/ (小説家の仕事の内容)
- 日本近代文学館 沿革. https://www.bungakukan.or.jp/about/history/ (設立と開館、収集する資料)
なおした ところ
更新履歴
更新履歴(改版の記録)
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