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ここにあるのは、だれかが実際に調べ、考え、作ってきたことを集めたメモです。気になったら、ページの下の「参考にした情報源」から、もとの本や記事、それを生み出した人たちに、直接ふれてみてください。このメモには書ききれないおもしろさが、そこにあります。

たかい 空の 上でも、ひこうきの 中は どうして くるしく ないの?

高い空を飛ぶ旅客機の中は、どうやって息のできる空気に保たれているのか

旅客機の客室は、上空1万mほどでどのように気圧を保っているのか

分野:技術

ひこうきの まどの 外は、富士山ふじさんの てっぺんよりも ずっと 高い 空です。それでも 中の 人は、ふつうに ごはんを たべて います。ひこうきの 中は、地面と まったく おなじ 気圧きあつでは なく、標高ひょうこう2000メートルから 2400メートルの 山の 上くらいに されて いると いわれます[1][5]。

どうやって その 気圧きあつに して いるのでしょう。じつは、空気を 入れる ほうよりも、出口の ほうが かぎです。その しくみと、新しい ひこうきの くふうが わかります。

窓の外は富士山の山頂よりずっと高い空なのに、旅客機の中では、ふつうに食事ができます。客室は、地上の気圧そのものではなく、標高2,000〜2,400mの山の上ほどの気圧に保たれているとされます[1][5]。

薄い空気の中で、どうやってその気圧を作っているのでしょうか。鍵は、空気を送りこむ量だけでなく、外へ逃がす量にあります。この記事では、そのつり合いの取り方と、新型機がさらに低い高度の客室を作れる理由が分かります。

上空1万mほどの外気は薄いのに、旅客機の客室は、標高にして2,000〜2,400m相当の気圧に保たれる。米国の耐空基準は、通常の運航で客室の気圧高度を8,000フィート(約2,438m)以下にするよう求めている[1]。JALの案内では、水平飛行中の機内は約0.8気圧、標高約2,000mと同じとされる[5]。

この気圧は、空気を入れる量だけでは決まらない。客室の圧力を左右するのは何か、なぜ地上と同じ気圧にしないのか、新型機はなぜもっと低い客室高度にできるのか。この3点に、基準と機体メーカーの説明から答えが分かる。

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1. そらの 上で、ひこうきの 中の 空気は どうなって いるの?

1. 外は薄い空気、中は山の上くらいの空気

1. 外気は薄く、客室は標高2,000m台相当 ── 気圧を「作る」という発想

高い ところほど、空気は うすく なります。山に のぼると、息が すこし くるしく なるのは その ためです。

ひこうきが とぶ 空は、山よりも ずっと 高い ところです。そのまま 外と おなじ 空気だったら、人は ながく いられません。だから ひこうきの 中には、気圧きあつを たもつ しくみが あります。これを「与圧よあつ」と いいます。

この しくみの おかげで、中の 気圧きあつは、標高ひょうこう2000メートルから 2400メートルの 山の 上くらいに なります。アメリカの きまりでは、ふつうに とんで いる ときは 8000フィート(だいたい 2400メートル)より 高い ところの 空気に しては いけない、と きめて います[1]。日本の ひこうき会社の あんないでは、中は 0.8気圧きあつぐらい、標高ひょうこう2000メートルくらいと 書かれて います[5]。

では、その 空気は、どこから 来るのでしょう。

高い山に登ると息が苦しくなるのは、高いところほど空気が薄いからです。旅客機が飛ぶ高さは山よりずっと上なので、外と同じ空気では、人は長く過ごせません。そこで、客室の気圧を地上に近づけて保つ装置があります。これが与圧よあつ装置です。

与圧された客室は、地上とまったく同じ気圧にするのではありません。米国の耐空基準は、通常の運航で客室の気圧高度を8,000フィート(約2,438m)以下にするよう求めています[1]。気圧高度とは、「この気圧は標高何mの場所の気圧と同じか」を表す言い方です。JALは、水平飛行中の機内の気圧を約0.8気圧、標高約2,000mと同じ環境と案内しています[5]。基準の約2,400mと案内の約2,000mで数字が違うのは、8,000フィートが上限で、実際の客室高度は飛行の状況で変わるからだと考えられます。

薄い空気の中に、地上に近い気圧の部屋を作るには、まず空気が要ります。その空気は、どこから来るのでしょうか。

気圧は高度とともに下がるため、巡航高度の外気は人が長く過ごせるほど濃くない。そこで旅客機は、客室だけを外より高い気圧に保つ。これが与圧である。ただし地上と同じ1気圧にするのではない。米国の耐空基準(14 CFR 25.841)は、与圧された客室が通常の運航状態で、客室の気圧高度を8,000フィート以下にするよう求めている[1]。8,000フィートは約2,438mにあたる。気圧高度とは、その気圧が標高何mの場所の気圧と同じかで表した値である。

一方、JALは水平飛行中の機内を約0.8気圧、標高約2,000mと同じ環境と案内している[5]。基準の約2,400mと案内の約2,000mとで数字が食いちがうが、基準の8,000フィートは上限であり、実際の客室高度は飛行状態によって動く。このため、本稿では「標高2,000〜2,400m相当」と幅をつけて書く。なお米国の規則と日本の案内は、別の出どころの数字であり、そのままつなげて同じ基準とは言えない。

では、その客室の空気は、どこから来て、どう保たれているのか。

2. 空気は、どこから 入って、どこから 出て いくの?

2. 空気を入れるのはエンジン、気圧を決めるのは出口の弁

2. 入る空気と出る空気のつり合い ── ブリードエアと出口弁

ひこうきの 中の 空気は、エンジンから もらって います。エンジンは、まわりの 空気を ぎゅっと おしこんで つかいます。その 一部を、ひこうきの 中へ 送るのです。この 空気を、ブリードエアと いいます[2]。

でも、空気を 送るだけでは、気圧きあつは きまりません。ひこうきの 中の 空気は、出口の 弁べん(アウトフローバルブ)からも 外へ 出て いきます[2]。

おふろの 水で かんがえて みましょう。水道の 水を 出しながら、そこの せんを すこし あけると、水の かさは あるところで とまります。入る 水と 出る 水が おなじに なるからです。

ひこうきも 同じで、入る 空気が 出る 空気より 多いと、中の 気圧きあつは 上がります[2]。出口の 弁べんで 空気の 出て いく ぶんを へらしたり ふやしたり して、ちょうど いい 気圧きあつに します[2]。ただし ほんとうは、水と ちがって 空気は 目に 見えません。

旅客機は、タービンエンジンから取り出した高圧の空気で、客室を加圧します。この空気をブリードエアと呼びます。客室の空気は、出口弁(アウトフローバルブ)から外へ出ます[2]。

空気を送りこむ装置だけを見ていると、見落とすことがあります。圧力を決めているのは、入る量と出る量のつり合いです。入る空気が出る空気より多ければ客室の圧力は上がり、少なければ下がります。その出口を通る空気の流れを、客室圧力調節器という装置が制御して、圧力を増やしたり減らしたりします[2]。

家のお風呂で言えば、蛇口から水を出しながら栓を少しゆるめたとき、水の高さがある位置で止まるのと似ています。入る水と出る水が同じになったところで、水位が落ち着くからです。ただし、空気は縮んだり広がったりするので、実際の旅客機はもう少し複雑です。

弁で調節するなら、旅客機は客室を地上と同じ気圧にもできそうです。なぜ、そうしないのでしょうか。

客室の空気は、タービンエンジンから取り出した高圧の空気で加圧され、出口弁(アウトフローバルブ)から外へ放出される[2]。この取り出した空気をブリードエアという。ここで気をつけたいのは、気圧を決めているのが送りこむ量だけではない点である。客室の圧力は、入る空気が出る空気より多いと上がり、少ないと下がる。出口弁を通る空気の流れを客室圧力調節器が制御して、圧力を上げ下げする[2]。

入る量が一定のとき、出口を絞れば圧力は上がり、開ければ下がる。蛇口を開けたまま排水の栓を加減すると水位が決まるのと同じ考え方である。ただし空気は圧縮性の気体なので、水の比喩は、つり合いの考え方を借りたものにすぎない。実際の制御は、飛行の段階に応じて圧力を変えていく。この点は次の章で扱う。

出口で調節できるなら、客室を地上と同じ気圧にもできそうである。それをしないのはなぜか。

3. どうして 地面と おなじ 気圧きあつに しないの?

3. 客室高度は上限があり、上昇中はゆっくり変わる

3. 客室の気圧高度と差圧の上限 ── 上昇中に何が起きているか

ひこうきの 中と 外では、気圧きあつが ちがいます。この ちがいを 差圧さあつと いいます。ひこうきが 高く のぼる ほど、外の 気圧きあつは 下がるので、差圧さあつは 大きく なって いきます。

のぼって いる とき、ひこうきは 中の 気圧きあつを ゆっくり 少しずつ 下げ、同時に 差圧さあつも 少しずつ 上げて いきます。差圧さあつが いちばん 大きく なる ところまで 来たら、その 大きさを たもちます。それより 高く のぼる ときは、中の 空気も すこしずつ うすく なります[2]。

だから 中の 気圧きあつは、ずっと 同じ ではありません。のぼる ときも、おりる ときも、すこしずつ かわって います。

もしもの ときの ことも きめられて います。気圧きあつを たもつ しくみが こわれても、ひこうきの 中が とても うすい 空気に ならないように、つくる きまりです[1]。

ゆっくり かわる ものなら、体は それを 感じるのでしょうか。

客室の気圧を地上と同じにしない理由を、飛行機の上昇の途中から見てみます。上昇中、与圧装置は客室の気圧高度と、客室の内と外の圧力の差(差圧)を、同時に少しずつ上げていきます。差圧が最大値に達すると、その値が保たれます。そこからさらに上昇すると、客室の気圧高度は上がっていきます[2]。

差圧には上限があるので、機体ごとに飛べる高さにも限りがあります。しかも通常の運航では、客室の気圧高度を8,000フィート以下に保つ必要があります[2]。客室の気圧は一定ではなく、上昇や降下に合わせてゆっくり変わります。

万一に備えた決まりもあります。米国の基準は、与圧が故障しても、客室の気圧高度が25,000フィートを2分より長く超えたり、40,000フィートを一瞬でも超えたりしないよう、設計することを求めています[1]。

ゆっくり変わる気圧を、体は感じ取っているのでしょうか。飛行機で耳が痛くなるのは、その表れかもしれません。

客室の気圧が地上と同じにならない理由は、上昇中の制御の仕方に現れる。上昇中、与圧装置は客室の気圧高度と、内外の圧力差である差圧を、同時に少しずつ上げる。差圧が最大値に達するとそれを保ち、以後の上昇では客室の気圧高度が上がっていく[2]。つまり、機体が耐えられる差圧に上限がある以上、外がさらに薄くなれば、客室も外に引きずられて薄くなる。そのため機体ごとの最大運用高度には制約がある。さらに通常の運航では、客室の気圧高度を8,000フィート以下に保つ必要がある[2]。

ここで、数字の置き方に注意が要る。8,000フィート(約2,438m)は上限であって、常にその値を意味しない。上昇・降下に合わせて、客室高度はゆっくり変わる。

基準は故障時にも条項を置く。与圧に不具合があっても、客室の気圧高度が25,000フィートを2分より長く、また40,000フィートを一瞬でも超えない設計が求められる[1]。これは故障が起きたときの上限であり、通常運航の数字(8,000フィート)と混ぜて読まないほうがよい。

上昇・降下で客室の気圧高度が動くなら、乗客の体はそれを感じるはずである。耳の痛みは、その一例ではないか。

4. ひこうきで 耳が いたく なるのは、どうして?

4. 離陸と着陸で耳が痛くなるのは、気圧が変わるから

4. 中耳と耳管 ── 気圧の変化が耳に出るしくみ

ひこうきで、耳が きーんと したり、いたく なったり した ことは ありませんか。

おもに、のぼる ときと おりる ときに おこります。ひこうきの 中の 気圧きあつが かわると、鼓膜こまくの おくに ある 空気が ふくらんだり、ちぢんだり しようと するからです[6]。

耳の おくは、細い みちで 鼻と つながって います。その みちが ひらくと、外と 耳の おくの 気圧きあつが おなじに なります[6]。つばを のんだり あくびを したり すると 耳が ぬけた ように なるのは、その ためだと いわれます。

これは、ひこうきの 中の 気圧きあつが ほんとうに かわって いる、体で わかる しるしです。

この「中の 空気を たもつ」しくみは、いつから あるのでしょう。

飛行機で耳が痛くなるのは、おもに上昇と下降のときだといわれます。機内の気圧が変わると、鼓膜の奥にある中耳の空気が、膨らんだり縮んだりしようとするからです[6]。

中耳は、耳管という細い通り道で鼻の奥とつながっています。耳管が開くと、外の気圧と中耳の気圧が等しくなります[6]。つばを飲んだりあくびをしたりして耳が抜けたように感じるのは、この通り道が開いた合図だと考えられます。

耳が気圧の変化を感じるのは、客室の気圧高度が実際に動いているからです。前の章の「客室高度は一定ではない」ことを、体が教えてくれるわけです。

客室の気圧を保つこの方法は、いつ、どの飛行機で始まったのでしょうか。

飛行機での耳の痛みは、おもに上昇・下降時に起こる。機内の気圧が変化すると、鼓膜の奥の中耳にある空気が膨張・収縮しようとするためだ[6]。中耳は耳管で鼻とつながり、耳管が開くと外と中耳の圧が等しくなる[6]。唾液を飲み込む、あくびをするなどで耳が抜ける感覚は、その通路が開いた合図と読める。ただし、耳の痛みの出やすさには個人差があり、ここで使った資料は一般的な説明にとどまる。

前章の差圧の話とつなげると、耳が感じているのは、客室の気圧高度が上昇中に下がり、降下中に戻っていく変化である。耳の詰まりは、客室の気圧が変わることを体で感じる一例になる。与圧は気圧を「保つ」だけでなく、「ゆっくり動かす」仕組みでもある。

では、気圧を人工的に保つ客室は、いつ、どの機体で実現されたのか。

5. 空気を たもつ ひこうきは、いつ できたの?

5. 1938年の33人乗り ── 初の与圧旅客機

5. ボーイング307ストラトライナー ── 与圧胴体を持つ最初の旅客機

1938ねんの ごろに、はじめて 空気を たもつ ひこうきが とびました。ボーイング307ストラトライナーと いう、33人のりの ひこうきです。アメリカの はくぶつかんの しらべでは、胴体どうたいに 与圧よあつを した、さいしょの 大きな ひこうきと されて います[3]。

この ひこうきは、6100メートルくらい(2万フィート)の 高さを とびながら、中は 2400メートルくらい(8000フィート)の 気圧きあつに たもちました[3]。外は 山の ずっと 上、中は 山の 上くらい、という わけです。

つくられたのは、10きだけでした[3]。それでも、高い 空を とぶ ひこうきの さきがけに なった ひこうきです。

いまの ひこうきも、中の 高さを 8000フィートより 高く しない、という 数が きまりに のって います[1]。では、いまの 新しい ひこうきは どうなって いるのでしょう。

与圧された胴体を持つ最初の旅客機は、1938年後半に初めて飛んだボーイング307ストラトライナーです。スミソニアン博物館の国立航空宇宙博物館の資料によると、約6,096m(20,000フィート)を巡航しながら、客室は約2,438m(8,000フィート)の気圧に保ちました[3]。

外の気圧と客室の気圧を、高さに直して比べてみましょう。6,096mから2,438mを引くと、約3,658mです。窓の外とは、標高にして3,600mあまりの差があったことになります。これは両方の数字を単純に引いた計算です。

33人乗りで、作られたのは10機です[3]。数は少なくても、この機体の客室の気圧高度は、現在の基準にある「8,000フィート以下」の上限と同じ数字です[1]。

同じ8,000フィートが、いまも基準の上限になっています。では、新しい旅客機はどうなっているのでしょうか。

初めて与圧胴体を採用した旅客機は、1938年後半に初飛行したボーイング307ストラトライナーである。国立航空宇宙博物館(スミソニアン)の収蔵品情報では、約6,096m(20,000フィート)を巡航しながら、客室を約2,438m(8,000フィート)の気圧に保った。33人乗りで、製造は10機だった[3]。

数値を高さの差に直すと、6,096mから2,438mを引いて約3,658mになる。窓の外の気圧と客室の気圧は、標高で3,600mあまりも開いていたことになる。この計算は気圧高度どうしの単純な引き算であり、圧力差(Pa)そのものではない。

この機体が採った客室の気圧高度の値は、現行の米国の基準にある上限8,000フィートと同じだ[1]。ただし、基準の数字が最初の旅客機の設計値をもとに決まったという記述は、ここで使った資料にはなく、同じ数字であるという事実だけを述べておく。

80年以上たっても、上限は同じ数字のままなのか。次の章では、新型機の説明を見る。

6. 新しい ひこうきは、もっと ひくい 高さに できるの?

6. ボーイング787は、客室を標高1,800m台の気圧に保つという

6. 複合材と客室の気圧高度 ── 787が6,000フィートを掲げる理由

ボーイングという 会社の せつめいでは、新しい 787という ひこうきは、中の 気圧きあつを 6000フィートの 高さに たもてる そうです。これまでの ひこうきより 2000フィート(600メートルくらい)ひくい 高さです[4]。

6000フィートは、1800メートルくらいです。すこしだけ、空気が こい 山の 上、と いう ことに なります。

どうして できるのでしょう。ボーイングは、ひこうきの からだに 複合材ふくごうざいという ざいりょうを つかって いる おかげだと せつめいして います[4]。

この ひこうきは、長く のると つかれたり、時さが 出たり するのを やわらげる ことを ねらって います。しつ気も 高めて います[4]。ただし これは 会社の せつめいで、人が 実さいに どう 感じるかは 人に よって ちがいます。

ひこうきの 中の 空気は、見えない ところで、いろいろな くふうで たもたれて います。

ボーイングは、787では複合材のおかげで、客室の気圧を6,000フィートに保てると説明しています。従来の旅客機より2,000フィート低い値です[4]。

換算してみます。6,000フィートは約1,829m、2,000フィートは約610mです。2,000〜2,400mの山の上くらいだった客室が、約1,800mの山の上くらいになる計算です。

低い客室高度に保てれば、空気がやや濃くなります。ボーイングは、これが長時間飛行での疲れや時差ぼけを軽くすることにつながると説明し、湿度も高めていると述べています[4]。

ただし、これはメーカーの説明であり、6,000フィートは設計上の目標値です。常にその値になるとは限りません。疲れ方や時差ぼけの感じ方にも、個人差があります。

では、この記事で見てきた旅客機の気圧は、どうすれば自分の目や耳で確かめられるでしょうか。

機体の側が変われば、客室の気圧高度の目標も変わる。ボーイングは787について、複合材のおかげで客室の与圧を6,000フィートに保てると説明し、従来機より2,000フィート低いとする。同社はこれが長時間飛行での疲労や時差ぼけの軽減につながるとし、湿度も高めているとする[4]。

換算すると、6,000フィートは約1,829m、2,000フィートは約610mである。8,000フィート(約2,438m)との差は約610m。第1章の幅(約2,000〜2,400m)に当てはめると、787の約1,800mは、その低い側よりさらに低い値にあたる。

ここには条件がある。第一に、これはメーカーが公表している設計上の説明であり、6,000フィートがいつも実現される値とは限らない。第二に、疲労や時差ぼけへの効果は、メーカーが「つながる」とする主張であり、ここで使った資料は効果の大きさまで示していない。個人差も大きい。第三に、他の新型機の客室高度については、この記事は数字を載せない。

ボーイングは、787では複合材を使うことで、より低い客室高度を実現できると説明している。この発想を、自分の体験とつなげて確かめることはできるか。

7. こんど のるときに、見て みよう

7. 次に飛行機に乗るとき、耳と窓で確かめたいこと

7. 体験と資料で確かめられること

ひこうきに のる ときに、耳に きを つけて みましょう。のぼる ときと おりる ときに、耳が かわる ことが あります。ちがう 日に のったら、耳の ようすも くらべて みましょう。

のらなくても できる ことも あります。おうちの 人と いっしょに、あらい場で せんを して、水を ほそく 出しましょう。それから せんを すこしだけ あけて みて ください。水の かさが とまる ところが あるでしょうか。それが 「入る 水と 出る 水が おなじ」ですね。ひこうきの 弁べんも、同じ かんがえ方で 空気の 出て いく ぶんを かえて います。

出る 水を ふやすと、水の かさは どう かわるでしょう。

次に飛行機に乗る機会があれば、離陸のときと着陸前の耳の感じを覚えておきます。耳が詰まった感じが、いつ、どれくらい続いたか。乗る日が変わったら、また比べてみましょう。そのとき、客室の気圧高度が上昇や降下に合わせてゆっくり動いていることを、思い出せるかもしれません。

家でもできます。家の人と一緒に、洗面所で洗面器の栓をして、水を細く出します。水を出したまま栓を少しだけゆるめると、水の高さが止まる位置があるはずです。入る水と出る水が同じになる位置が、見つかります。栓をゆるめる量を変えると、止まる高さがどう変わるかも見られます。出口を絞れば高く、開ければ低くなる、という関係が、手の中で確かめられます。

資料を読むなら、日本語で書かれた2つがあります。JALの健康に関するページ(機内環境)には、機内の気圧の案内があります[5]。乗りものニュースの記事には、耳の痛みの説明があります[6]。この2つだけで、気圧の数字と体の感覚がつながります。

787の6,000フィートがほかの新型機にも広がるかどうかは、この記事の資料では分かりません。次に調べるなら、機体の素材と客室の気圧の関係が手がかりになります。

確かめられることを、体験と資料に分けて挙げる。

体験としては、搭乗時の耳の感覚がある。離陸後と着陸前の耳の詰まりを記録し、日を変えて比べれば、客室の気圧高度が上昇・降下で動くという第3章の説明と照らせる。個人差があるため、他人の感覚との単純な比較は避けたい。家では、洗面器に栓をして細く水を出し、栓をゆるめる量を変えて、水位が止まる高さがどう変わるかを見ればよい。入る量を一定にして出口を変える、という客室の制御の考え方が、水位という形で見える。

資料としては、米国の耐空基準14 CFR 25.841が、客室の気圧高度の上限と故障時の条件を定めている[1]。英語だが、一次資料にあたる。SKYbraryの解説は、ブリードエアと出口弁、差圧の制御を整理している[2]。メーカーの説明としてはボーイングの787のページがあり[4]、日本語ではJALの案内が機内環境の見方を与える[5]。基準・解説・メーカー・航空会社の4つを読み比べれば、「上限」と「実際の値」の区別がつく。

次の問いも残しておく。客室の気圧高度が低いほど、本当に疲労は減るのか。この点を示す研究は、ここで使った資料にはなく、検証の余地がある。

しらべた もとの じょうほう

参考にした情報源

参考にした情報源と、その使い方

旅客機の与圧のしくみは、米国の規則、航空安全の解説サイト、博物館の収蔵品情報、メーカーの説明、航空会社の案内、解説記事による。数値の多くは上限・目標値や一例であり、機体や飛行の状況で変わる。

  1. 14 CFR 25.841 Pressurized cabins(Cornell Law School, Legal Information Institute) https://www.law.cornell.edu/cfr/text/14/25.841 (客室の気圧高度の上限、故障時の条件)
  2. SKYbrary「Aircraft Pressurisation Systems」 https://www.skybrary.aero/articles/aircraft-pressurisation-systems (ブリードエアと出口弁、差圧と上昇中の制御)
  3. Smithsonian National Air and Space Museum「Boeing 307 Stratoliner」 https://airandspace.si.edu/collection-objects/boeing-307-stratoliner-clipper-flying-cloud/nasm_A19730267000 (初の与圧旅客機の巡航高度と客室の気圧)
  4. Boeing「787 Dreamliner By Design」 https://www.boeing.com/commercial/787/by-design (787の客室の気圧高度の説明)
  5. JAL「機内環境」 https://www.jal.co.jp/health/before/environment.html (水平飛行中の機内の気圧の案内)
  6. 乗りものニュース「飛行機での耳の痛み」 https://trafficnews.jp/post/71443 (耳の痛みと気圧変化の説明)

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