1. 「つの」は、ぜんぶ おなじ つくりなの?
1. 「角」と呼ばれるものは、中身が4通りに分かれる
1. 「角」は一つの構造ではなく、骨とケラチンの組み合わせで型が分かれる
どうぶつ園で つのを 見ると、どれも 同じ ように 見えます。でも 中身は、ずいぶん ちがいます。
ウシの なかまの つのは、骨の 芯に、かたい さやが かぶさって います。さやは、わたしたちの かみの毛や つめと 同じ ものでできて います。一生 とれず、のびつづける ものも 多いそうです。
シカの なかまの つのは、かたく なると ぜんぶ 骨です。えだのように 分かれて、毎年 おちます。
サイの つのは、骨が ありません。かみの毛や つめと 同じ ものだけで できて います。
キリンの つのは、皮膚と 毛に おおわれた 骨の こぶです。
つまり「つの」は、4つの つくりに わかれます。では、まいとし おちて 生えかわる シカの つのから、見て いきましょう。
動物園でウシ、シカ、サイ、キリンを順に見ていくと、どれにも頭から突き出たものがあります。けれども中身は同じではありません。
ウシの仲間の角は、骨の芯をケラチンのさやがおおう二層の作りです。ケラチンは人の髪の毛や爪と同じ物質で、この角は一生ついたままで、多くの種では伸び続けます。枝分かれはしません[1]。
シカの仲間の角は、硬くなると全部が骨でできていて、枝分かれし、毎年落ちます。トナカイ以外では、基本的にオスだけにあります[1]。サイの角には骨の芯がなく、ケラチンだけでできています[6]。キリンの角は皮膚と毛におおわれた骨のこぶで、ケラチンのさやはありません[7]。
つまり「角」は、骨とケラチンをどう組み合わせるかで少なくとも4通りに分かれます。中でもシカの角は、骨でできた大きな角を毎年落とし、また伸ばします。1年のうちに何が起きるのか、エゾシカで見てみましょう。
動物園で有蹄類を順に見ると、どれも頭に突起をもつが、構造は一様ではない。ウシ科などの角は、骨の芯をケラチンのさやがおおう二層構造で、ケラチンは人の髪や爪と同じ物質である。この角は一生ついたままで、多くの種では伸び続け、枝分かれしない[1]。ただし「伸び続ける」は多くの種の話で、すべてではない。
シカ科の角は、硬くなった状態では全体が骨でできた枝分かれ構造で、毎年落ちる。トナカイ以外では基本的にオスだけがもつ[1]。サイの角は、細いケラチンの管がケラチンの土台に埋まったもので、骨の芯がない[6]。キリンの角は、皮膚と毛におおわれた骨のこぶで、ケラチンのさやをもたない[7]。
したがって「角」は、骨とケラチンをどう使うかで、少なくとも4つの型に分かれる。では、骨でできた大きな角を毎年捨てて作り直すシカでは、1年のうちに何が起きるのか。
2. シカの つのは、1年の うちに どう かわるの?
2. エゾシカの角は、春に落ちて、皮膚をまとって伸び、秋に硬くなる
2. エゾシカの角は、春に落ち、皮膚をまとって伸び、秋口に硬い骨だけが残る
北海道に すむ エゾシカで 見て みましょう。さっぽろの 円山どうぶつ園の せつめいに よると、かたい つのは、毎年 4月から 5月ごろ、根元から ぽろっと おちます。
そのあとに 生えて くるのは、皮膚と みじかい 毛に つつまれた、やわらかい つのです。「ふくろづの」と よばれます。
秋の はじめごろには、この 皮膚が うすく なり、さいごには かたい ところだけが のこります[2]。
つまり シカは、毎年 つのを 新しく 作りなおして いるのです。それなら、つのは どうやって あんなに 早く 大きく なれるのでしょう。
北海道にすむエゾシカは、札幌市円山動物園の説明によると、硬い角が毎年4〜5月ごろに根元から外れ落ちます(落角)。そのあとに、皮膚と短い毛でおおわれたやわらかい角が生えはじめます(袋角)。秋口になると皮膚がうすくなり、最後に硬い部分だけが残ります[2]。
つまり、角は「ずっとついているもの」ではなく、1年かけて作り直される器官です。春に落ちた角の跡から、すぐ次の角が伸びはじめます。
ここで疑問が出ます。骨でできた大きな角を、1年足らずで作り直せるのはなぜでしょうか。手がかりは、成長中の角が、血管の多い皮膚に包まれていることです。
北海道のエゾシカでは、札幌市円山動物園の説明によると、硬い角は毎年4〜5月ごろに根元(角座)から外れ落ちる(落角)。その後、皮膚と短い毛におおわれた柔らかい角(袋角)が生えはじめ、秋口には皮膚がうすくなって、最終的には硬い部分だけが残る[2]。
つまり、シカの角は恒久的な器官ではなく、1年周期で作り直される。春に落ちた跡から次の角が始まるため、骨でできた大きな構造を、年内に新しく完成させなければならない。それが可能なのはなぜか。成長の速さと、成長中の角が血管の多い皮膚に包まれている点が鍵になる。
3. つのは、どうして そんなに 早く のびるの?
3. 成長中の角は血管の多い皮膚に包まれ、先端から伸びる
3. 成長中の角は血管の多いベルベットに包まれ、先端から伸びる
のびはじめの つのを おおう 皮膚は、やわらかい 毛が はえて いて、「ベルベット」と よばれます。アメリカの ワイオミングしゅうの 役所は、シカの つのを「どうぶつの 中で、いちばん 早く 大きく なる ものの ひとつ」と せつめいして います[3]。
夏の あいだは、1日に 2センチ ちかく のびる ことも あるそうです。ただし、これは いちばん 早い ときの 数字で、どの シカも 毎日 2センチ のびる わけでは ありません[4]。
この 皮膚には 血管が たくさん あって、血液が 酸素や 栄養を はこびます。つのは、先の ほうから のびます[5]。
次は、骨が まったく ない つのを 見て みましょう。
伸びはじめの角をおおうやわらかい毛つきの皮膚は、「ベルベット」と呼ばれます。米国ワイオミング州の狩猟漁業局は、シカの角を、動物界でもっとも速く育つ組織の一つだと説明しています[3]。
スタンフォード大学の記事には、夏のあいだ、角は1日に最大2cm伸びることがあるとあります[4]。これは最大値で、どのシカも毎日2cmずつ伸びるわけではありません。仮に10日続けば20cmになりますが、あくまで最大値を使った計算です。
なぜ速く伸びられるのでしょうか。成長中の角は、血管の多いベルベットに包まれていて、血液が酸素と栄養を運びます。伸びるのは先端です[5]。ウィキペディアは、他のどの哺乳類の骨よりも速く成長するとしています。
骨を毎年作り直す離れわざです。では、骨をまったくもたない角は、どうやってできているのでしょうか。
伸びはじめの角をおおう、柔らかい毛つきの皮膚が「ベルベット」である。ワイオミング州狩猟漁業局は、シカの角を、動物界でもっとも速く育つ構造・組織の一つと説明する[3]。スタンフォード大の記事は、夏のあいだ角は1日に最大2cm伸びるとする[4]。これは最大値であり、どのシカも毎日2cm伸びるわけではない。仮に10日続けば20cmだが、それは最大値を使った計算にすぎない。
そのため、速さの理由が気になる。ウィキペディアによると、成長は先端で起こる。ベルベットは血管が多く、血液が酸素と栄養を運ぶ。そこで、他のどの哺乳類の骨よりも速く成長するとされる[5]。血流の多い皮膚で包み、先端で成長させる、という組み合わせである。ただし、1日あたりの伸びは種や条件で差があり、大型の種ほど速いとされるにとどまる。
骨を毎年作り直す離れわざである。これに対し、骨そのものをもたない角が、サイにある。
4. 骨が ない つのって、ほんとうに あるの?
4. サイの角には骨がなく、髪や爪と同じケラチンだけでできている
4. サイの角は骨の芯をもたず、ケラチンの管と土台だけで組み立てられている
あります。サイの つのです。サイの つのには、骨の 芯が ありません。ほそい くだのような ものが たくさん あつまり、同じ ざいりょうの 土台に うまって できて います。その ざいりょうは、かみの毛や つめと 同じ「ケラチン」です[6]。
さらに、サイの つのの まん中の ほうには、カルシウムと 黒い色の もとが 入って いて、そこが しっかり して いると いわれます。
ウシの なかまの つのは、骨の芯を ケラチンの さやが おおって います[1]。サイは、その 骨の芯が ない のです。
では、キリンの つのは どうでしょう。
サイの角は、細いケラチンの管がケラチンの土台に埋まったもので、骨の芯がありません。オハイオ大学の研究チームがCT画像で調べたところ、中心部にはカルシウムとメラニンで補強された密な部分がありました[6]。
髪や爪と同じ材料だけで、大きな角ができているわけです。細い管が集まった作りに加えて、中心にはカルシウムなどで補強された部分がある、と報告されています。
この研究では、野生のサイでは年ごとの成長に対応するとみられる濃い帯も見つかりました。ただし、これは「とみられる」という段階の示唆で、断定はされていません[6]。
ウシの仲間は、骨の芯にケラチンのさやをかぶせます[1]。サイは、その芯をなくしてケラチンだけで作ります。ケラチンの使い方にも幅があるのです。では、骨はあるのにケラチンがない角は、どうでしょうか。
サイの角は、細いケラチンの管がケラチンの基質に埋まった構造で、骨の芯をもたない。オハイオ大学のWitmerらのCT画像による研究では、中心部にカルシウムとメラニンで補強された密な領域が確認されている[6]。同じ髪や爪の材料だけで強度を出すために、管の配列と鉱物による補強が組み合わされている、と読める。
この研究には、野生のサイで年ごとの成長に対応するとみられる濃い帯も報告されている。ただし「対応するとみられる」という段階で、年輪のように読めると断定できるわけではない[6]。
比べると、ウシ科は骨の芯の上にケラチンのさやをかぶせ[1]、サイは芯そのものをもたない。ケラチンの使い方にも幅がある。では、逆に骨があってケラチンがない角はどうか。
5. キリンの つのは、どうやって できるの?
5. キリンの角は、骨のこぶとして始まり、成長とともに頭の骨と融合する
5. キリンの角(オシコーン)は、頭蓋とは別の骨のこぶとして始まり、のちに融合する
キリンの つのは、「オシコーン」と よばれます。皮膚と 毛に おおわれて いて、ケラチンの さやは ありません[7]。
この つのは、小さな 骨の こぶとして、皮膚の 下から はじまります。大きく なるにつれて、頭の 骨と くっついて いくと いわれます[7]。
オスにも メスにも あります。そして おれても、また 生えては きません[7]。
シカは 毎年 生えかわり、キリンは 一度おれたら もどりません。同じ「つの」でも、こんなに ちがうのです。
6. えだ分かれして、さやが 毎年 生えかわる つのを もつ どうぶつは いるの?
6. プロングホーンの角は、枝分かれするのに、さやが毎年生えかわる
6. プロングホーンの角は、枝分かれするが、さやが毎年生えかわる例外である
北アメリカに すむ プロングホーンは、えだ分かれした つのを もって います。ウシの なかまは ふつう、えだ分かれしません。
けれども 中には 骨の 芯が あり、外がわの ケラチンの さやだけが 毎年 生えかわります[3]。
つまり、えだ分かれする ところは シカに にて いますが、さやが 毎年 生えかわる ところは ふつうの ウシの なかまと ちがいます。
京都大学の 研究では、ちがう しゅるいの シカどうしで、つのの えだを くらべる やり方が しょうかいされました[8]。つのは、まだまだ 調べられて いる ところです。
北アメリカのプロングホーン(エダツノレイヨウ)は、枝分かれした角をもちます。ウシの仲間の角は枝分かれしないのが普通です。ところが、角の骨の芯は残ったまま、外側のケラチンのさやだけが毎年生えかわります[3]。4つの型にきれいには収まらない例です。
角の研究はいまも進んでいます。京都大学の2020年の研究は、シカの枝角の各枝が、種のちがいをこえて「同じ枝」かどうか(相同)を、角溝とダイヤグラムで決める方法を示しました。それまでは、枝の対応を解剖学的に決める方法がありませんでした[8]。
型の分け方は覚えやすい目安ですが、動物には当てはまらないこともあります。では、実物を見るとき、何に注目すればよいでしょうか。
7. じぶんの つめと つのを くらべて みよう
7. 動物園や図鑑で、角の「枝」と「おおい」を見分けてみる
7. 実物と図鑑で、角が枝分かれか、おおわれているかを見分ける
まず、自分の つめを 見て みましょう。切っても、また のびて きます。ウシの なかまの つのは、同じ ケラチンで できた さやを もち、のびつづける ものも 多いそうです[1]。
つぎに、どうぶつ園か ずかんで、つのを 見て みます。見る ところは、2つです。
1つめは、えだ分かれして いるか どうか。2つめは、毛や 皮膚に つつまれて いるか どうか。
これで、シカの なかまか、ウシの なかまか、キリンかの めやすに なります。とちゅうで 手を出したり、さわったり しないで、さくの 外から 見て くださいね。
まず、自分の爪を見てみましょう。切ってもまた伸びてきます。ウシの仲間の角は、これと同じ材料のさやをもち、多くの種で伸び続けます[1]。
動物園や図鑑で角を見るときは、二つの目印があります。一つは、枝分かれしているか。もう一つは、毛や皮膚におおわれているか、硬い鞘になっているかです。
枝分かれしていればシカの仲間の可能性が高く、枝分かれしないでさやをもつならウシの仲間の可能性があります。毛つきの皮膚におおわれた短い角は、キリンです。プロングホーンのような例外もあるので、あくまで目安として使ってください。動物園では柵の外から観察し、手を出さずに見ます。
ほかの動物は、骨やケラチンを体のどこに使っているのでしょうか。たとえばサイの角と同じケラチンが、ほかの動物のどこに使われているかを図鑑で探すのも、次の一歩になります。
実物を見る機会があれば、まず枝分かれの有無と、表面が毛つきの皮膚か硬いさやかを確かめるとよい。枝分かれして秋に硬くなるのはシカ科の可能性が高く[2]、枝分かれしない鞘つきはウシ科の可能性がある[1]。プロングホーンのような例外もあるので、あくまで目安にとどまる。動物園では柵の外から観察し、手を出さない。
出典は、動物園や自治体の公式説明([2])、州の狩猟漁業局([3])、大学の研究ページ([6])、京都大学の研究成果([8])など、性格の異なるものを組み合わせた。ウィキペディア([5])は入口として使い、細かい数値は他の資料と照らし合わせたい。
とくに京都大学の研究([8])は、シカの角の各枝を種のあいだで対応づける方法を示しており、「角の枝」をどう比べるかという問いを広げる。原典を読むと、本記事で割愛した解剖学的な根拠に触れられる。
しらべた もとの じょうほう
参考にした情報源
参考にした情報源と、その使い方
各情報は、下の資料にもとづいて書いた。数値は条件つきの最大値や概算を含む。
- Discover Wildlife「What's the difference between horns and antlers?」 https://www.discoverwildlife.com/animal-facts/mammals/whats-the-difference-between-horns-and-antlers/ (ウシ科の角とシカの角の作りの比較)
- 札幌市円山動物園「エゾシカ」 https://www.city.sapporo.jp/zoo/020-c.html (エゾシカの落角と袋角の流れ)
- Wyoming Game and Fish Department「Ask Game and Fish」 https://wgfd.wyo.gov/Ask-Game-and-Fish/Mark%2C-what-is-the-difference-between-horns-and-ant (ベルベット、成長の速さ、プロングホーン)
- Stanford Medicine magazine https://stanmed.stanford.edu/?p=838 (夏の角の伸びの最大値)
- Wikipedia「Antler」 https://en.wikipedia.org/wiki/Antler (先端での成長と血管の多い皮膚)
- Witmer, L. (Ohio University) rhino horn research https://people.ohio.edu/witmerl/2006_rhino_horn.htm (サイの角の構造)
- Giraffe ossicones (Rogue Scholar record) https://rogue-scholar.org/records/wf06d-ndn74 (キリンの角の始まりと特徴)
- 京都大学 研究成果(2020年6月4日) https://www.kyoto-u.ac.jp/ja/research-news/2020-06-04-3 (シカの枝角の各枝の対応づけ)
なおした ところ
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