1. おふろの はなしは、だれが かいたの?
1. 「お風呂でひらめいた」話は、だれが書き残したのか
1. 王冠の逸話の出どころ ── 記録されたのは約200年後
むかし、王さまが かんむりを つくらせました。「ほんとうに ぜんぶ 金かな? 銀が まざって いないかな?」と うたがった 王さまは、アルキメデスに しらべて もらった、と つたえられて います。
おふろに はいった とき、お湯が あふれて ひらめいた、という はなしも あります。でも これを さいしょに かいたのは、ずっと あとの ローマの ひとです。アルキメデスが 生きた ときから、200ねん ぐらい あとの ことです[1]。
ほんとうに あった できごとか、まだ はっきり しません。いっぽう アルキメデスの かんがえは、「ふたいに ついて」と いう ほんに のこって いる、と いわれます[3]。
では、かんむりは どうやって しらべるのでしょう。
王冠の逸話はこう伝わっています。王が職人に金の王冠を作らせたところ、金に銀が混ぜられているのではと疑った。そこでアルキメデスが調べることになり、お風呂に入ったときにひらめいた、という話です。
ただ、この話が最初に文章に現れるのは、紀元前1世紀のローマの建築家で技術者のウィトルウィウスの本です。アルキメデスが生きた時代から数えて約200年後にあたります[1]。本人が書いた話ではなく、「伝えられる」話だと考えておくのがよさそうです。
一方、原理そのものは、アルキメデス(紀元前287年ごろ〜前212年)の著作『浮体について』にまとめられているとされます。液体の中の物体は、押しのけた液体の重さと同じ大きさの浮力を受ける、という内容で、この本は流体静力学の最初の著作と呼ばれます。この本のギリシャ語の写本は、「アルキメデス・パリンプセスト」という1冊だけが知られています[3]。
お風呂の場面が事実かどうかは決着していません。それでも、王冠の疑いを晴らすには、どんな方法があったと伝わるのでしょうか。
アルキメデスが風呂でひらめいたという逸話は、広く知られている。ところがこの話の最初の記録は、紀元前1世紀のローマの建築家・技術者ウィトルウィウスの著作で、出来事とされる時代から約200年後にあたる[1]。だから、本人の言葉として読むのは誤りで、「と伝えられる」逸話として扱うのが妥当である。史実かどうかは決着していない。
では、原理そのものは何に残っているのか。アルキメデス(紀元前287年ごろ〜前212年)の『浮体について』は、液体中の物体が、排除した流体の重さと等しい浮力を受けるという原理を扱う著作とされ、流体静力学の最初の著作と位置づけられる。この著作のギリシャ語の写本で知られているのは、アルキメデス・パリンプセストだけである[3]。逸話が後世の記録である一方、原理は著作として別に残っている、という二重の構造になっている。
この原理は、王冠の真偽を調べる方法として、どのように伝わっているのか。
2. こわさずに、どうやって しらべたの?
2. 王冠をこわさず調べる方法 ── てんびんごと水に沈める
2. 王冠の真偽を調べる方法 ── てんびんごと水中に入れ、体積の差を浮力で見る
かんむりを こわしたら、王さまは おこります。そこで つたわるのが、てんびんを つかう ほうほうです。
まず、かんむりと おなじ おもさの 本ものの 金を、てんびんの りょうがわに のせて、つりあわせます。それから てんびんごと 水の なかへ しずめます[2]。
もし 銀が まざって いたら、おなじ おもさでも、かんむりの ほうが 大きく ふくらんで います。その ぶん、水が うえに おし上げる 力、つまり 浮力が 大きく なり、かんむりの がわが 上へ かたむきます[2]。
おもさは おなじでも、大きさが ちがうと、水の なかでは ちがって みえるのです。この かんがえは、日本にも 来ます。
王冠を壊さずに調べる方法として伝わるのは、てんびんを使うやり方です。まず、王冠と同じ重さの純金を用意し、てんびんの両側にのせて空気中でつり合わせます。次に、てんびんごと水の中に沈めます[2]。
もし王冠に銀が混じっていれば、同じ重さでも体積は純金より大きくなります。体積が大きいと、水から受ける浮力も大きくなるため、王冠側が上に傾く、というのが説明です[2]。
ポイントは、「重さが同じ」でも「体積が同じ」とは限らない点です。金と銀では、同じ重さで比べたときに占める大きさがちがいます。空気中では見えなかったその差が、水の中に入れた瞬間に、浮力のちがいとして現れます。
この方法は、「水中で重さを量ると、物のなかみが分かる」と言いかえられます。そして同じ考えは、海をへだてた日本の本にも出てきます。
王冠を傷つけずに調べるには、どうすればよいか。伝わる方法は、てんびんを使う。王冠と同じ重さの純金を用意して空気中でつり合わせ、そのまま水中に入れる[2]。
金より軽い銀が混じっていれば、同じ重さでも体積は純金より大きい。体積が大きいと、押しのける水の量が多くなり、浮力が大きくなる。だから水中では王冠の側が上に傾く[2]。空気中でつり合っていた二つの物が、水中でつり合わなくなる点が肝心で、浮力は体積に比例して増える。つまり、浮力のちがいから、同じ重さの物の体積の差を比べられる。
この方法は、秤の目盛りで「重さの差」を読む。てんびんの話も逸話として伝わるものなので、ここでは史実としてではなく、水中の比較で純度が判別できる理屈として読む。
この理屈は、地球の反対側の日本に、いつ、どんな形で入ってきたのか。
3. 江戸の ほんに、おうかんの はなしが あった
3. 1825年の『気海観瀾』は、アルキメデスの方法を紹介していた
3. 『気海観瀾』(1825年)── 水中で重さを量り、物の密度を知る「称水術」
江戸の 1825ねんに、あおき りんそうと いう ひとが かいた 『きかいかんらん』と いう ほんに、水の なかで ものの おもさを はかる ほうほうが のって います[4]。
その ほんは、アルキメデスが おうかんの 金を しらべた ほうほうだ、と しょうかいして いました[4]。
れいは、おなじ おもさの なまりと ぞうげです。水の なかへ 入れると、どちらも かるく なりますが、かるく なる ぶんは ちがいます。そこから、なかみの ちがいを よみとります。
でも、この かんがえは、日本の ふねづくりには ひろまりませんでした[4]。
では、水の なかで はかるのでは なく、うかべて はかる ほうほうは ないのでしょうか。
江戸時代の文政7年(1825年)に青木林宗が著した『気海観瀾』には、浮力の考え方がはっきり出てきます。物の密度を測るには、水中で重さを量ればよい、という内容で、「称水術」と呼ばれました。しかも、これをアルキメデスが王冠の純金を調べた方法として紹介しています[4]。
本の例では、同じ重さの鉛と象牙を水中で量ります。鉛はあまり軽くならず、象牙は大きく軽くなります。この差から、論文は当時の比重を鉛10.4、象牙2.07と読み取っています。今日の値は鉛11.35、象牙1.8〜1.9なので差はあるものの、原理は理解されていた、とその論文は述べます[4]。
面白いのは、この考えが、江戸の船づくりには届かなかったことです。同じ論文によると、この時代の船の積み荷は、長さ×肩幅×肩深さ÷10といった「大工間尺」と呼ばれる寸法の計算で見積もっていました。論文は、浮力の考えが造船に広まるには程遠かった、とまとめます[4]。
水中で量ることで物のなかみが分かるなら、逆に、液体のほうを測る道具も作れそうです。
日本で浮力の概念がはっきり現れるのは、文政7年(1825)に青木林宗が著した『気海観瀾』である。ここでは、物の密度を測るには水中での重さを量ればよいとされ、この手法が「称水術」の名で、アルキメデスが王冠の純金を調べた方法として紹介されている[4]。したがって、王冠の逸話は、江戸の蘭学書の中にすでに入っていたことになる。
具体例として、同じ重さ(1銭)の鉛と象牙を水中で量る。鉛はわずかに、象牙は大きく軽くなるので、その差から密度が読める。論文は、当時の記述から比重を鉛10.4、象牙2.07と読む。今日の一般的な値は鉛11.35、象牙1.8〜1.9であり、誤差は小さくない。それでも論文は、当時の人々がアルキメデスの原理を理解していたと評価する[4]。ここで注意したいのは、10.4や2.07は論文の読み取りであり、江戸の測定精度そのものを示す数字ではない点である。
一方、この知識が実用へ広がったわけではない。同論文は、文化文政の頃に、この考えが日本の造船技術へ波及するには程遠かったと述べる。船の積載量は、長さ×肩幅×肩深さ÷10で石数を見積もる「大工間尺」によっていた[4]。理屈が本に載ることと、現場の手法が変わることは別の問題だった。
では、水中で物を量るのではなく、液体のほうを浮力で測る道具は、どのように作られているのか。
4. うかべて、えきたいの こさを はかる
4. 沈む深さで液体の濃さが分かる ── 浮ひょう
4. 浮ひょうの原理 ── 重さと浮力のつり合う深さが、密度を示す
うきばかり、または うきひょうと いう どうぐが あります。ほそい ぼうの したに おもりが ついて いて、えきたいに うかべます。
おもりは、じぶんの おもさと、えきたいが おし上げる 浮力が つりあう ところまで しずみます。えきたいが かるい ほど、ふかく しずみます[5]。
ぼうの どこまで しずんだかを みれば、えきたいの こさが わかります。おもさを はかる のでは なく、どこまで しずむかを よむ どうぐです。
では、水の なかへ もぐる のりものは、どう おもさを かえるのでしょう。
浮ひょう(浮秤)は、浮力を使って液体の濃さ、つまり密度を測る器具です。細長い棒の下におもりが付いていて、液体に浮かべると、自分の重さと浮力がつり合うところまで沈みます[5]。
浮力は、押しのけた液体の重さに等しいのでした。軽い液体は同じ体積でも軽いため、同じ重さを支えるには、より深く沈んでたくさん押しのけなければなりません。だから、液体が軽い(密度が小さい)ほど、浮ひょうは深く沈みます[5]。棒の目盛りを読めば、密度がすぐに分かるのです。
重さを量る道具ではなく、「どこまで沈むか」を読む道具、というところが面白い点です。
ここまでは、物の重さと液体の密度を測る話でした。では、重さや体積そのものを変えて、浮いたり沈んだりする乗り物はあるのでしょうか。
浮ひょう(浮秤)は、浮力を使って液体の密度を測る器具である。おもりが自身の重さと浮力のつり合う位置まで液体中に入り、液体の密度が小さいほど、それだけ深く入る[5]。理由は、浮力が押しのけた液体の重さに等しいことにある。同じ重さの浮ひょうを支えるには、密度の小さい液体ほど、より大きな体積を押しのけなければならない。
この装置が読むのは重さではなく、「どこまで沈むか」である。前の章の称水術が「物を水中で量る」方法だったのに対し、浮ひょうは「液体のほうを、浮かべて測る」方法である。同じ原理を、測る対象を入れかえて使っている。
測る道具の次は、重さそのものを自在に変えて、浮いたり潜ったりする乗り物である。
5. 水を 入れて おもく、おし出して かるく
5. 水を出し入れして重さを変える ── 深く潜る船のバラストタンク
5. バラストタンクの注排水 ── 体積を変えず、重さだけを調整する
潜水艦には、ふねの なかに 海の 水を 入れる タンクが あります。ここに 海水を 入れると おもく なって、しずんで いきます[7]。
うかびたい ときは、あつく おし ちぢめた くうきを タンクに おくって、海水を おし出します。すると かるく なって、うかんで きます[7]。
ふねの 大きさは かわらないのに、おもさだけを かえて、うくか しずむかを きめて いるのです。では、いきものの 中にも こんな しくみは あるのでしょうか。
潜水艦は、「メインバラストタンク」というタンクに海水を入れて重くなり、潜ります。浮き上がるときは、貯めておいた圧縮空気をタンクに送り込み、中の海水を押し出します(ブロー)[7]。その分だけ船が軽くなるので、浮上できます。
船の体積は変わりません。変わるのは重さだけです。重さが、押しのけた水の重さ(浮力)より大きければ沈み、小さければ浮く。アルキメデスの原理を、「水の出し入れ」で操作しているのです。
ここで使った記事はITと技術を扱う連載ですが、本記事では、タンクの水で重さを変える仕組みだけを使っています。
人が作った乗り物が水の出し入れで浮き沈みしているなら、水の中で暮らす魚はどうしているのでしょうか。
潜水艦は、メインバラストタンクへ海水を入れて重くなり、潜航する。浮上時は、気蓄器に貯めた圧縮空気をタンクへ注入し、中の海水を強制的に排出する(ブロー)ことで軽くなる。
この仕組みで注目すべきは、艦の体積がほとんど変わらないまま、重さだけが変わる点である。浮力は押しのけた海水の重さで決まるので、艦の重さが浮力を上回れば沈み、下回れば浮く。バラストは、「重さを調整して、浮力とのつり合いを動かす」ためのしくみといえる。前章の浮ひょうが、重さを固定して密度を読んだのとは逆に、ここでは、重さのほうを動かしている。
なお、この資料は技術を扱う連載記事であり、ここでは注排水の原理の説明だけを使った。
もし、体積のほうを変えて浮き沈みを調整する生き物がいるなら、水の中に暮らす魚は、どんな方法を使っているのか。
6. さかなの おなかの ふくろは、なにを して いるの?
6. 魚はうきぶくろのガスで、体の比重を水に合わせる
6. うきぶくろ ── ガスの量で体の比重を調節し、1.0前後に保つ
さかなの からだは、多くの ばあい、水より おもい ほうです。それなのに、どうして 水の なかで ういて いられるのでしょう。
おなかの なかに、うきぶくろと いう ふくろが あります。この ふくろの なかの ガスを ふやしたり へらしたり して、からだ ぜんたいの おもさを 水に あわせます[8]。
ガスで ふくらませれば、からだは 大きく なって、うかびやすく なります。ぎゃくに ガスを へらせば、しずみやすく なります。うみの さかなでは からだの 5パーセント ほど、かわの さかなでは 7パーセント ほどが、うきぶくろだ と いわれます[8]。
ガスの 出し入れは、さかなに よって ちがいます。イワシや コイは くちから、マダイや スズキは からだの なかの ばしょで やります[8]。
ここまで 見て くれば、ストローを つかって、じぶんでも 作れそうです。
多くの魚は、うきぶくろがないと沈みやすくなります。そこで、うきぶくろにガスを出し入れして、体の比重を調節します。体容積に占める割合は、海水魚で約5%、淡水魚で約7%が目安とされ、これで比重を1.0前後にします[8]。魚の種類によって差があります。
体積が増えるほど押しのける水の重さが増え、浮力も大きくなります。潜水艦が「重さ」を変えていたのに対し、魚は、うきぶくろのガスを増減させて、体全体の「体積」を変えています。どちらも、重さと浮力をつり合わせる点では、同じ原理です。
ガスの出し入れの方法は、魚によって二通りあります。イワシ・アユ・コイなどは気道が残っていて、口からガスを出し入れできます。マダイ・スズキなどは、大人になると気道がなくなり、前のほうのガス腺で血液からガスを出し、後ろのほうの卵円体で吸収します[8]。
この記事で追いかけてきた考えは、体積と重さと密度の関係にまとめられます。では、それを自分の手でたしかめる方法はあるでしょうか。
魚の体は、骨や筋肉を含めると多くの場合、水より重い。そこで多くの魚は、うきぶくろ(鰾)のガスを増減させて体の比重を調節し、1.0前後にする。うきぶくろが体容積に占める割合は、海水魚で約5%、淡水魚で約7%とされるが、これは目安で、魚種によって差がある[8]。
この調節は、潜水艦とは操作する量が逆である。潜水艦は体積をほぼ固定して重さを変えたが、魚は重さをほぼ固定して体積を変える。うきぶくろのガスを増減させ、体全体の体積を調節するのである。ガスを増やせば体積が増え、押しのける水の重さ、つまり浮力が増す。同じ原理を、別の変数で動かしている点が興味深い。
ガスの出し入れには二通りある。イワシ・アユ・コイなどの有気管鰾の魚は、気道が残っていて、口からガスを出し入れできる。マダイ・スズキなどの無気管鰾の魚は、成魚になると気道が消え、前部のガス腺の毛細血管の血液からガスを出し、後部の卵円体で吸収する[8]。
ここまでで見てきた原理は、水中の重さ、浮かぶ深さ、タンクの水、ガスの量と、すべて「重さ・体積・密度」の組み合わせの話だった。これを、家にあるものでたしかめることはできるのか。
7. ストローで うきひょうを 作って みよう
7. ストローとねんどで、自分だけの浮ひょうを作る
7. ストロー浮ひょう ── 生徒の研究例から、自作の考え方と限界を読む
ストローと ねんどが あれば、うきひょうに にた ものが 作れます。ストローの 下の はしに、ねんどを すこし つけて、水に うかべます。うまく まっすぐ 立つ ように、ねんどの おおさを ととのえて みましょう。
まず ふつうの 水に うかべて、水面の ところに ペンで しるしを つけます。つぎに、水に しょくえんを とかして、こい しおみずを 作ります。おなじ ストローを うかべると、しるしの ばしょが かわります。しおみずの ほうが あさく しずむ はずです。しるしの ばしょが、水の ときより 上に なるか、くらべて みましょう。
しおみずは のみません。さいごは 大人の ひとに 水を すてて もらって、手を あらって ください。
ならじょし大ふぞくの せいとさんたちも、ストローで うきひょうを 作る けんきゅうを して います。水では ストローの したから 水面までが へいきんで 126.2ミリ、しおみずでは へいきんで 73.4ミリでした。ただし、まだ せいどは しらべきれて いない、と かいて います[6]。
家にあるもので、浮ひょうに近いものを作れます。ストローの片方の先に、ねんどを少し付けて、水に立てて浮かべます。まっすぐ立つように、ねんどの量を調整してください。
まず、ふつうの水に浮かべて、水面の位置にペンで印を付けます。次に、水に食塩を溶かして濃い塩水を作り、同じストローを浮かべます。印の位置はどう変わるでしょうか。予想してから試してみてください。塩水は飲まず、終わったら大人に捨ててもらい、手を洗います。
奈良女子大学附属中等教育学校の生徒の研究では、ストロー・方眼紙・銅線のおもりで浮ひょうを作っています。純水(1.00 g/cm3)では底から液面まで平均126.2mm、食塩水(密度1.10 g/cm3、14.1%)では平均73.4mmでした。この差52.8mmを10等分して、1目盛りを密度0.010 g/cm3としています。ただし、精度の検定はこれからだと、本人たちが書いています[6]。
江戸の『気海観瀾』を読んだ人は、鉛や象牙を水中で量りました。いま私たちは、ストローで同じ原理を試せます。『気海観瀾』の原文や、小嶋良一さんの論文を、図書館やインターネットで探してみるのも次の一歩になります。
浮力と密度の関係は、家にあるもので試せる。ストローの下端に粘土を付けて直立するよう調整し、水と濃い食塩水に浮かべ、水面の位置に印を付けて比べる。食塩水のほうが密度が大きいので、浮ひょうは浅く沈むはずだ。塩水は飲まず、実験後は大人に捨ててもらい、手を洗うこと。
実際の研究例として、奈良女子大学附属中等教育学校の生徒が、ストロー・方眼紙・銅線のおもりで比重浮ひょうを製作している。純水(1.00 g/cm3)では底から液面まで平均126.2 mm、食塩水(密度1.10 g/cm3、14.1%)では平均73.4 mmだった。この差52.8 mmを10等分し、1目盛り5.28 mmを密度0.010 g/cm3に相当すると定めた[6]。
だが、本人たちは精度の検定が未了だと書いている[6]。目盛りが等間隔だと仮定した点も含めて、この手作りの目盛りは、正確な測定器の代わりになるとは言えない。自作の例として読むのが妥当である。
江戸の称水術から生徒の自作まで、同じ原理が形を変えて使われている。資料を読むときは、①『気海観瀾』の記述を扱う小嶋良一の論文[4]が、江戸の船づくりとの距離まで述べている点、②王冠の逸話の出どころが約200年後の記録だと示す資料[1]、③生徒の研究が精度未検定と明記している点、に注目してみよう。数字が論文の読み取りなのか、精度が確かめられているのかを、自分の目で見分けられる。
しらべた もとの じょうほう
参考にした情報源
参考にした情報源と、その使い方
出典について:大学・博物館・学会の資料、事典、生徒の研究報告を使った。何に使ったかは、それぞれの項目の最後に書いている。
- McGill Office for Science and Society「Is it true that Archimedes formulated his famous principle based on an observation he made as he immersed himself in a bathtub?」。https://www.mcgill.ca/oss/article/history/it-true-archimedes-formulated-his-famous-principle-based-observation-he-made-he-immersed-himself (王冠の逸話が約200年後のウィトルウィウスの記録であることについて)
- 同志社中学校 博物館 vol.36。https://jhs.js.doshisha.ac.jp/museum/vol36/ (てんびんを水中に入れる方法と、浮力の説明について)
- Wikipedia「On Floating Bodies」。https://en.wikipedia.org/wiki/On_Floating_Bodies (著作『浮体について』と唯一のギリシャ語写本について。百科事典の記事)
- 小嶋良一「我が国の船舶算法と復原性に関する小史」2017S-OS3-11(日本船舶海洋工学会)。https://zousen-shiryoukan.jasnaoe.or.jp/wp/wp-content/uploads/column/2017S-OS3-11.pdf (『気海観瀾』の称水術、鉛と象牙の比重、大工間尺について。論文)
- Weblio辞書「液体比重計」。https://www.weblio.jp/content/%E6%B6%B2%E4%BD%93%E6%AF%94%E9%87%8D%E8%A8%88 (浮ひょうが沈む深さと液体の密度について。用語辞典)
- 奈良女子大学附属中等教育学校 生徒研究「ストローを用いた比重浮ひょうの製作」。https://nwuss.nara-wu.ac.jp/media/sites/11/20_27.pdf (ストロー浮ひょうの寸法と目盛りの決め方について。生徒の研究報告)
- コトバンク「うきぶくろ」。https://kotobank.jp/word/%E3%81%86%E3%81%8D%E3%81%B6%E3%81%8F%E3%82%8D-1507787 (うきぶくろとガスの出し入れ、体の比重について。事典の記述)
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