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ここにあるのは、だれかが実際に調べ、考え、作ってきたことを集めたメモです。気になったら、ページの下の「参考にした情報源」から、もとの本や記事、それを生み出した人たちに、直接ふれてみてください。このメモには書ききれないおもしろさが、そこにあります。

やまに かこまれた まちは、どうして あさに きりが でやすいの?

山にかこまれた盆地には、なぜ朝の霧が出やすいのか

盆地に霧が出やすい条件 ── 斜面を流れ下る冷気と、川沿いから広がる霧の観測

分野:自然

あさ、まちが まっ白な きりに うまり、山が 海に うかぶ しまのように 見える ことが あります。

ふしぎな ことに、ぎふの えなという ところの 観測かんそくでは、きりは いちばん ひえる 場所では なく、少し あたたかい 川の ほとりから 出はじめて、まわりに 広がって いました。

盆地ぼんちに きりが でやすい わけと、川の ほとりから きりが 出た 観測かんそくの れいを 見て いきます。

朝、盆地の町が真っ白な霧に埋まり、まわりの山が海に浮かぶ島のように見えることがあります。

ところが、岐阜県の恵那地方で行われた観測では、霧は盆地でいちばん冷える底の真ん中ではなく、相対的に気温の高い川沿いから出はじめ、まわりへ広がったと報告されています[7]。

冷えるはずの場所より、少し暖かい場所から出るのはなぜでしょうか。盆地に霧が出やすい理由と、川沿いから霧が出た観測例を見ていきます。

盆地の朝霧について、岐阜県恵那地方の観測は、霧が盆地でもっとも冷える底ではなく、相対的に気温の高い川沿いで発生し、周囲へ広がったと報告している[7]。冷えるほど霧ができやすいなら、いちばん冷える場所から出てもよさそうなのに、そうなっていない。

では、盆地に冷たい空気はどう集まり、そこへ何が足されて霧になるのか。斜面の冷気の流れ、風の影響、川沿いの発生、温度の異なる空気の混合という順に、資料ごとの確かさを区別しながら、盆地に霧が出やすい理由と、川沿いから霧が出た観測例を確かめる。

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1. あさ、まちが しろい うみに なるのは どんな よる?

1. 町を覆う霧の海は、どんな夜のあとに現れるのか

1. 三次の「霧の海」と、霧とは何か

三次みよしという 盆地ぼんちには、「きりの 海」と よばれる ながめが あります。JR西日本の よみものは、秋から はるの はじめの はれて 気温の さが 大きい 日に、よなかから あさに かけて、川の 水面から 水蒸気すいじょうきが たちのぼり、きりに なって 山の ななめの ところに そって 広がり、町を おおうと しょうかいして います[9]。朝日に そまる きりが、海のように 見えるそうです。

きりは、とても 小さな 水の つぶが 空気の 中に ういて、見とおせる きょりが 1キロ より みじかく なった ときの ことです。1キロ から 10キロ までは、きりでは なく「もや」と よびます[1]。

では、なぜ 盆地ぼんちなのでしょう。さきに こたえの もとを いうと、はれて 風の よわい よるに、山で ひえた つめたい 空気が 下へ ながれて そこに たまり、そこへ 川などの 水蒸気すいじょうきが くわわる、と せつめいされて います[4][5][6]。なぜ 川ぞいから 出るのかは、4つめの 章で 観測かんそくを 見ます。

まず、「つめたい 空気が 下へ ながれる」ところから 見て みましょう。

三次盆地の「霧の海」は、JR西日本の広報誌で紹介されています。秋から春先の晴れて寒暖差の大きい日の夜中から朝方、川の水面から水蒸気が立ちのぼって霧になり、山の斜面に沿って広がって町全体を覆う、という説明です。朝日に染まる霧が、海のように見えるといいます[9]。ただしこれは観光向けの広報誌の説明なので、仕組みは別の資料で確かめていきます。

気象庁の定義では、霧は無数の細かい水滴が空気中に浮かび、地表付近で水平方向に見通せる距離(視程)が1km未満になる現象です。1km以上10km未満なら、霧ではなく「もや」と呼びます[1]。

盆地でとくに多い理由を、先に短く言ってしまいます。晴れて風の弱い夜、山の斜面で冷えた重い空気が盆地の底へ流れ下ってたまり、そこへ川などから水蒸気が加わる、と説明されています[4][5][6]。霧が川沿いから出た観測例は第4章で見ます。まず、冷たい空気が下へ流れるところから見ていきます。

三次盆地の「霧の海」は、JR西日本の広報誌によれば、秋から春先の晴れて寒暖差の大きい日の夜中から朝方に、川の水面から水蒸気が立ちのぼって霧となり、山の斜面に沿って広がって町全体を覆う現象だ[9]。観光向けの紹介なので、仕組みの根拠は後の学術的な資料で補う。

霧は、気象庁の定義では、無数の微細な水滴または氷晶が浮遊し、地表面の水平視程が1km未満になる現象を指す。視程が1km以上10km未満ならもやである[1]。したがって、霧とは濃さの境目を数字で決めたものであり、「白く見える」だけで霧と呼ぶわけではない。

結論を先に言えば、盆地に多い放射霧は、晴れて風の弱い夜に斜面で冷えた重い空気が盆地底へ流れ下ってたまり、そこへ川などの水面から水蒸気が補われる、という流れで説明される[4][5][6]。以下、この流れを順に確かめる。まず問題になるのは、なぜ冷気が下へ集まるのかである。

2. つめたい 空気は、どうして 盆地ぼんちの そこに あつまるの?

2. 冷たい空気は重いから、斜面を下って盆地の底にたまる

2. 接地逆転と冷気湖 ── 重い冷気が斜面を流れ下る

ふつう、地面に 近い ほど あたたかく、空の たかい ところほど つめたく なります。でも、つめたい 空気は 重いので、地面の ちかくに たまる ことが あります[4]。

よく はれた よるは、地面の あたたかさが 空へ にげて いきます。これを放射冷却ほうしゃれいきゃくと いいます[2]。山の ななめの ところでも、おなじように 空気が ひえます。

ひえて 重く なった 空気は、ななめを ながれ下りて、盆地ぼんちの そこに あつまります。そこは、上に いくほど あたたかい、ふつうと ぎゃくの 空気の かさなりに なり、まわりの 平らな 土地より 強く ひえると いわれます[5]。この かさなりを逆転層ぎゃくてんそうと いいます。

水を 山の ななめに こぼすと、ひくい ところへ あつまりますね。それと 少し にて います。ただし 本当は、空気は 見えないので、水のように はっきりとは 見えません。

岐阜ぎふけんの てんきの ページも、つめたい 空気は 重く、下に たまりやすいので、盆地ぼんちには つめたい 空気が あつまりやすいと のせて います[6]。

では、風が ふいたら どうなるのでしょう。

ふつう、地面に近いほど暖かく、上空ほど冷たくなります。ところが、冷たい空気は重いため、地面付近にたまることがあります。気象庁はこの状態を「接地逆転」と説明しています[4]。

晴れた夜は放射冷却がはたらき、地面の熱が空へ逃げます[2]。山の斜面でも同じことが起き、冷えて重くなった空気は斜面を流れ下って、盆地の底にたまります。こうしてできる安定した冷たい空気の層を「冷気湖」と呼びます。盆地の底は、上ほど気温が高い逆転層になり、まわりの平地より強く冷えるといいます[5]。岐阜県の気象解説も、冷たい空気は重く下にたまりやすいので、盆地には冷たい空気が集まりやすいと説明しています[6]。

水を山の斜面にこぼすと低いところに集まる様子に、少し似ています。ただし空気は目に見えず、水より混ざりやすいので、実際はこれほどはっきりとは動きません。

冷気は集まっても、風が吹けば、また散ってしまうのではないでしょうか。

通常は地面に近いほど気温が高いが、冷たい空気は重いので地面付近にたまることがある。気象庁はこれを接地逆転として説明する。この冷気のかたまりは、風があると吹き払われる[4]。

盆地では、これが地形の力で強まる。晴れた夜、斜面で放射冷却によって冷えた空気は、重いために斜面を流れ下り、盆地底に集まって安定な冷気層を作る。これが冷気湖で、盆地底は上ほど気温の高い逆転層となり、平地より強く冷える[5]。つまり、盆地底が冷えやすいのは、その場所で冷えるだけでなく、周囲の斜面で冷えた空気が運びこまれるためである。岐阜県の気象解説も、盆地に冷たい空気が集まりやすいのは冷気が重く下にたまるからだ、と述べる[6]。

水が高い所から低い所へ流れて集まる様子にたとえられるが、空気は目に見えず、周囲の空気と混ざりもする。水の流れほど明確な境界を持つわけではない。

この冷気は、風に弱い。では、どのくらいの風で壊れるのか。

3. 風が ふく よるは、どうなるの?

3. 風があると冷たい空気は散ってしまう

3. 風速と冷気湖 ── 例示された条件つきの数字

風が ふくと、地面の ちかくの つめたい 空気は、上の 空気と まざります。すると、ひえこみが 強く ならず、つめたい 空気は たまりにくく なります[3]。

東北大学の ページに のっている ばあいでは、山の てっぺんの 夜の 風が 秒速2メートル より 弱いと、つめたい 空気の かさなりは 盆地ぼんちの 深さほどにも なりました。でも 秒速5メートルを こえると、できませんでした[5]。秒速5メートルは、時速に すると 18キロです。自転車で ゆっくり はしる くらいの 風です。

ただし、この 数字は その ページの ばあいの はなしで、どの 盆地ぼんちでも 同じと いう わけでは ありません。

だから きりは、夜から あさに かけて、よく はれて 風が おだやかな 日に、盆地ぼんちで よく 見られます。とくに 秋に でやすいと いわれます[3]。

つめたい 空気が たまれば、それで きりに なるのでしょうか。じつは そこに、おもしろい はっけんが あります。

風が強いと、地表近くの空気と上空の空気がかき混ぜられ、冷え込みが強まりにくくなります[3]。気象庁の解説でも、地面付近の冷たい空気のかたまりは、風があると吹き払われるとされています[4]。

東北大学の解説にある例では、山頂付近の夜間の平均風速が毎秒2m未満のとき、冷気湖の深さは70mほどで、盆地の深さに近くなりました。毎秒5mをこえると、冷気湖はできませんでした[5]。毎秒5mは時速に直すと18kmで、自転車でゆっくり走るくらいの風です。

この70mや毎秒2m・5mは、その解説で挙げられた例の条件の数字です。どの盆地にもあてはまる決まった値ではありません。

だから放射霧は、夜から明け方によく晴れて風の穏やかな日に、盆地などでよく見られ、とくに秋に出やすいといわれます[3]。冷たい空気がたまれば、それで霧になるのでしょうか。観測では、少し意外なことが報告されています。

風が強いと地表付近と上空の空気が混合され、冷え込みが強まりにくい[3]。冷気湖の深さも風に左右される。東北大学の解説に付録として載る例では、最高峰の夜間平均風速が2m/s未満のとき、深さは70mで盆地の深さに近い値になり、5m/sを超えると冷気湖は形成されなかった[5]。5m/sは時速18kmに相当する。

ここで注意が要る。70mや2m/s、5m/sは、その解説が示した一例の条件つきの数字で、すべての盆地に共通する閾値ではない。盆地の深さや形、斜面の向きによって値は変わると考えられるが、資料はそこまで述べていないので、一般化は避ける。

こうした条件が重なる夜は、夜間から明け方によく晴れ、風が穏やかな日で、放射霧が盆地でよく見られる季節として秋が挙げられる[3]。風が弱く、斜面の冷気が集まる夜は、霧の材料が整う夜だと言える。

しかし、冷気が集まる場所と、霧が最初に出る場所は、同じとは限らない。観測はその点を示している。

4. きりは、いちばん ひえる 場所から 出るの?

4. 霧が最初に出るのは、いちばん冷える場所ではなかった

4. 恵那地方の観測 ── 川沿いで発生し、周囲へ広がる

ぎふの えな地方で、きりの 出かたを しらべた 観測かんそくが あります。その 研究に よると、ぼんちの きりは、前の 日も 当日の あさも はれた 日に 多く、きそがわの そばを 中心に、ぼんちの そこに 出ました[7]。

おどろくのは、そのあとです。きりは、いちばん ひえる ぼんちの そこの まん中では なく、気温が すこし 高い 川ぞいで 出はじめ、まわりに 広がったと ほうこくされて います[7]。

三次の 「きりの 海」でも、きりの もとは 川の 水面から のぼる 水蒸気すいじょうきだと しょうかいされて いました[9]。この ふたつを あわせると、川が 水蒸気すいじょうきを おくりこむ 場所に なっている から、と 考えられます。ただし、これは ふたつの よみものを つなげた 見かたで、研究が そう 言っている わけでは ありません。

つめたい 空気が 川の うえで 水蒸気すいじょうきと であう。それだけで きりに なるのかどうか、研究は もう 少し 先まで 調べて います。

岐阜県の恵那地方で行われた観測(小気候団体研究会、1994年の報告)では、典型的な盆地霧は、前日が晴れで当日の朝も晴れた日に多く、木曽川沿いを中心に盆地の底に現れました[7]。

意外なのは、その出方です。霧は、盆地でいちばん冷える底の真ん中ではなく、相対的に気温の高い川沿いで発生し、そこから周囲へ広がったと報告されています[7]。

三次の「霧の海」でも、霧のもとは川の水面から立ちのぼる水蒸気だと紹介されていました[9]。2つの資料を並べると、川は水蒸気を空気に供給する場所だから、霧が川沿いから出はじめるのではないか、と考えたくなります。ただしこれは2つの資料を結びつけた見方で、恵那の報告そのものが述べている理由ではありません。

報告には、霧の一生を発生期・変化期・発達期・消滅期の4段階に分けたことも書かれています[7]。冷えるだけが理由ではないとすると、何が足されているのでしょうか。

恵那地方の観測(小気候団体研究会、1994)によれば、典型的な盆地霧は、前日が晴れで当日朝も晴れた日に多く、木曽川沿いを中心に盆地の底に出る。注目すべきは発生位置で、霧は最も冷える盆地底ではなく、相対的に気温の高い川沿いで発生し、周囲へ広がっていった[7]。放射冷却だけで説明するなら最低気温の場所から出るはずだが、そうなっていない点が、この観測の核心である。

一方、三次盆地では川の水面から水蒸気が立ちのぼることが霧の始まりとして紹介されている[9]。この2つから、川が水蒸気の供給源となり、霧の出発点になるという解釈は自然だが、これは本稿が両者をつないだ見方であり、恵那の報告が述べる理由とは限らない。この報告の本文は図版が多く、ここで扱えるのは要旨にあたる部分に限られるため、気温差や発生時刻の数値には触れない。

この研究は、霧の一生を発生期・変化期・発達期・消滅期の4段階に分けて整理している[7]。では、冷え方だけで説明できない部分は、後の研究でどう扱われたのか。

5. きりの もとは、「ひえる」だけ?

5. 冷えるだけでなく、空気が混ざることも大切だった

5. 混合過程 ── 放射冷却だけでは足りない、という報告

おなじ 研究の グループは、そのあと 2022年にも ほうこくを して います。きそがわ ぞいの 広い ぼんちと、ダムの 下の せまい ぼんちを しらべました[8]。

まとめは、こうです。きりが できるのは 放射冷却ほうしゃれいきゃくで ひえる だけでは なく、温度の ちがう 空気が まざる ことも、大きな やくわりを しているようだ、というのです[8]。

たとえば、ストーブの そばの 空気と、まどの そばの 空気を まぜたような ものです。ただし 本当に 山の そばで おきている ことは、もっと ふくざつです。

「まざる」と 言っても、どんな 空気が どこで まざるのかは、この 記事では ふれません。もとの ぶんしょうを 読むと 見えてきます。

同じ研究グループの2022年の報告(『天気』69巻8号)は、木曽川沿いの広い盆地と、阿木川ダムの下流にある狭い盆地を観測しました。J-GLOBALに載る抄録では、放射冷却だけでなく、温度の異なる空気が混ざる過程が、盆地霧の形成に主要な役割を担っている、とまとめられています[8]。

それまでの「冷えて霧になる」という説明に、「混ざる」が加わりました。たとえば、ストーブのそばの空気と窓のそばの空気をかき混ぜたような場面を思い浮かべると、イメージしやすいかもしれません。ただし山あいの空気の動きは、部屋の中よりずっと複雑です。

どんな空気がどこで、どのくらい混ざるのかという細かい部分を詳しく知りたくなったら、原典の本文に当たる価値があります。

こうして生まれた霧は、いつまで盆地にいるのでしょうか。

同じ研究グループの2022年の報告(『天気』69巻8号、481-487頁)は、木曽川沿いの広い盆地と、阿木川ダム下流の狭い盆地を観測し、J-GLOBALの抄録では、放射冷却だけでなく温度の異なる空気が混合する過程が盆地霧の形成に主要な役割を担う、と要約されている[8]。盆地の広さが違っても、混合が関わるという点で結論が共通している。

これは、第3章までの放射冷却による説明を否定するものではない。冷気が斜面を流れ下って盆地底にたまることで、温度の異なる空気が出会う条件が整う、と読むのが自然だが、これは本稿の読み方で、報告の記述そのものではない。

この抄録は混合の詳しい仕組みまでは説明していない。霧がどの過程でどの程度混合に依存するのかは、報告の本文で確かめる必要がある。

こうして生まれた霧は、盆地にどれくらいとどまり、どう消えていくのか。

6. あさの きりは、いつ きえるの?

6. 朝の霧は、日が昇って気温が上がるころに消える

6. 霧の一生 ── 日の出ごろに最も濃く、気温の上昇で消える

神戸市の ホームページでは、ほうしゃぎりという きりは 日の出の ころに いちばん こく なり、太陽が 出て 気温が 上がると きえて しまうと あります[2]。

えなの 研究は、盆地ぼんちの きりを、生まれる 時期、かわる 時期、広がる 時期、きえる 時期の 4つに 分けて います[7]。

つまり、ひえて 重くなった 空気が そこに たまり、川の そばで きりが うまれ、広がって、朝の 日ざしで きえる。これが、盆地ぼんちの 朝の ながれです。

次に、じぶんの 目で たしかめる ほうほうを 考えて みましょう。

神戸市の防災解説によれば、放射霧は日の出のころに最も濃くなり、太陽が出て気温が上がると消えます[2]。

恵那の観測は、盆地霧の一生を発生期、変化期、発達期、消滅期の4段階に分けています[7]。各段階の時刻や気温の数字は、ここでは扱いません。

ここまでの流れをつなぐと、晴れて風の弱い夜に斜面で冷えた空気が盆地の底に集まり、川沿いなどで霧が生まれて広がり、朝の日ざしで消えていく、という盆地の一晩の物語になります。

最後に、この流れを自分の目で確かめる方法を考えてみます。

放射霧は日の出ごろに最も濃くなり、太陽が出て気温が上がると消える[2]。冷却の最大期と霧の最盛期が重なるため、夜明け直前がもっとも濃いのは理屈に合う。

恵那の観測は、霧の一生を発生期・変化期・発達期・消滅期の4段階に分けた[7]。各段階の時刻や気温の変化の数値は、ここでは扱わない。

第2章から第6章までをつなぐと、晴れて風の弱い夜に斜面の冷気が盆地底にたまり、川沿いなど相対的に気温の高い場所で霧が生まれ、温度の異なる空気の混合も働きながら広がり、日の出後の気温上昇で消えていく、という一晩の流れになる。ただし、混合の詳しい仕組みまでは、この報告の要旨では説明されていない。

7. きりの 朝に、まどから 白い 場所を さがして みよう

7. 霧の朝は、窓から「白い場所」と川や低い土地を見比べる

7. 出口 ── 白い場所と地形を重ねる/恵那の原典に当たる

きりの 朝に、おうちの 窓まどから 外を 見て みましょう。どこが とくに 白いでしょうか。川の ちかくや、ひくい 場所が 白く なって いないか、おうちの 人と いっしょに 見て みます。

地図で 川や 山の 場所を たしかめて、白い ところと くらべても いいでしょう。ただし、きりの 朝は 見えにくいので、川や 水の ちかくへは 近づかないで ください。

きりが でない 朝も、はれて 風の よわい 日の 夜あけまえは、ひるまより さむく なる ことが あります。朝の 気温を おうちの 温度計で 見て、ひるの 気温と くらべて みましょう。

霧の出た朝、家の窓から外を見て、とくに白い場所を探してみましょう。川に近い場所や、低い土地が白くなっていないでしょうか。地図で川や山の位置を確かめて、白い場所と見比べるのもおもしろい方法です。

霧の朝は視界が悪いので、川や水辺には近づかず、安全な場所から見てください。

霧が出ない朝でも、晴れて風の弱い日の夜明け前は、昼間より気温が低くなっていることがあります。天気予報の最低気温と、実際の朝の空気の冷たさを比べてみるのも手がかりになります。

恵那の観測は、日本語で書かれた学会誌『天気』に載っています[7][8]。本文が図版だった号もありますが、読みたくなったら図書館で探してみるのも手です。

霧の朝に、窓から見て白い場所を地図に重ね、川や低地と一致するかを見る方法がある。第4章の観測は、霧が最低気温の場所より川沿いから出ることを報告していた。身近な盆地や谷でも、そうなっているかを確かめるのはひとつの手がかりになる。観察の際は、川や水辺に近づかず、安全な場所から行うこと。

霧が出ない朝でも、晴れて風の弱い日の夜明け前は、昼間より冷える。天気予報の最低気温と実際の体感を比べてもよい。

原典に当たるなら、まず日本気象学会の『天気』に載った1994年の恵那地方の盆地霧の報告[7]と、2022年のメカニズムの報告(69巻8号481-487頁)[8]が日本語で読める。冷気湖については東北大学の解説[5]が、風速の例を載せている。ただし1994年の報告のPDFは、図版が多く本文が文字として読みにくい場合がある。

残る問いは、冷気の流れと川からの水蒸気、温度の異なる空気の混合が、実際の盆地でどの割合で霧に効いているのか、である。この問いに自分で答えを出すには、観測データと原典の本文を突き合わせる必要がある。

しらべた もとの じょうほう

参考にした情報源

参考にした情報源と、その使い方

出典について:気象庁の霧の定義と子ども向け解説、神戸市・tenki.jp・東北大学・岐阜県の解説、恵那地方の盆地霧の研究(1994年・2022年)、JR西日本の広報誌を使いました。

  1. 気象庁「予報用語解説」(霧の定義)。 https://www.jma.go.jp/jma/kishou/books/yohkens/22/chapter6.pdf (霧の定義と、霧ともやの違いについて)
  2. 神戸市 危機管理室「トピックス 霧」。 https://www.city.kobe.lg.jp/z/kikikanrishitsu/topikkusu23.html (放射霧の種類と、日の出ごろに最も濃くなること、気温が上がると消えることについて)
  3. tenki.jp「放射霧」の解説。 https://tenki.jp/suppl/m_seta/2025/05/06/32635.html (放射霧が出やすい夜の条件と、風の影響について)
  4. 気象庁 こども向けよくある質問「気温が下がると風がなくなるの?」。 https://www.jma.go.jp/jma/kids/kids/faq/a3_10.html (冷たい空気が地面付近にたまる接地逆転と、風で吹き払われることについて)
  5. 東北大学「気象解説 冷気湖」。 https://wind.gp.tohoku.ac.jp/personal/rk7j-kndu/kisho/kisho104.html (斜面を流れ下る冷気と冷気湖、風速による違いの例について)
  6. 岐阜県「e-気象台 霧の話」。 https://gakuen.gifu-net.ed.jp/kishou/wadai/kiri.html (盆地に冷たい空気が集まりやすいことと、盆地に多い霧について)
  7. 小気候団体研究会「恵那地方の盆地霧の特性について」『天気』1994年。 https://www.metsoc.jp/tenki/pdf/1994/1994_01_0023.pdf (川沿いで霧が発生すること、霧の一生の4段階について)
  8. 「恵那地方の盆地霧のメカニズムについて」『天気』69巻8号 (2022)、J-GLOBAL。 https://jglobal.jst.go.jp/detail?JGLOBAL_ID=202202227131641469 (温度の異なる空気が混ざる過程の役割について)
  9. JR西日本「Blue Signal 三次駅」。 https://www.westjr.co.jp/company/info/issue/bsignal/05_vol_103/station.html (三次の「霧の海」と、川の水面から立ちのぼる水蒸気について)

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