このサイトは、ほんの入り口です

ここにあるのは、だれかが実際に調べ、考え、作ってきたことを集めたメモです。気になったら、ページの下の「参考にした情報源」から、もとの本や記事、それを生み出した人たちに、直接ふれてみてください。このメモには書ききれないおもしろさが、そこにあります。

くろい こしょうの つぶは、とる ときは なにいろ?

黒こしょうと白こしょうは、同じ植物の実からどう作り分けるのか

黒・白・赤のこしょうは、同じ実のとり時と処理でどう分かれるのか

分野:生きもの

だいどころの くろこしょうは、まっくろな つぶです。でも、つるから とる ときは、まだ あおい みだと いわれます。

あおい みが、どうして くろく なるのでしょう。しろい こしょうは、なにが ちがうのでしょう。この ページでは、そのわけが わかります。

黒こしょうの粒は、つるから収穫するときは、まだ熟していない青い実だといわれます。しかも、白こしょうや赤こしょうも、同じ植物の実です。

では、青い実がなぜ黒くなり、白や赤はどこが違うのでしょうか。この記事を読むと、黒く変わる理由と、辛みのもとをめぐる二つの資料の食いちがいが分かります。

黒こしょうは、熟す前の青い実を房ごと収穫して干したものとされる[1]。白こしょうも赤こしょうも、同じ植物の実で、収穫の時期と処理が違うだけである[4]。

では、青い実はなぜ黒くなるのか。辛み成分は皮と芯のどちらに多いのか。このメモを読むと、黒変の主な要因と、百科事典と論文で食いちがう点が分かる。

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1. あおい みを とって、ほす

1. 台所の黒い粒は、青い実を干したもの

1. 黒こしょうの原料は、熟す前の青い実

こしょうは、木などに からまりながら のびる、つるの なかまです。ふるさとは、インドの みなみと いわれます。つるは、5メートルから 9メートルほどに なると 書いた しりょうも あります[2]。

つるには、たくさんの みが ふさに なって ならびます。くろこしょうを つくる ときは、まだ あおい うちに、ふさごと とります。

それを 2日ほど ひなたで ほすと、みに しわが よって、くろく なります。さいごに、あしで ふむ などして えを とると、つぶだけが のこります[1]。

あおい みが、そのまま ちぢんだだけで、ほんとうに まっくろに なるのでしょうか。その まえに、おなじ つるの みから しろい こしょうが できるのが ふしぎです。

つるにたくさんの実がつく植物

こしょうはコショウ科の常緑のつる植物で、原産はインド南部とされます。茎は数メートルに伸びて木のようにかたくなり、資料によって5〜9メートル、7〜8メートルと書き方が少し違います[2]。

青いうちに房ごと収穫する

黒こしょうを作るときは、熟す前の実を房ごと収穫します。百科事典には、2日ほど日に干すと実にしわがよって黒くなり、足で踏んで柄を取り除くと、粒だけが残ると書かれています[1]。

黒いこしょうの粒は、じつは熟す前の姿がもとになっているのです。では、同じつるの実から白いこしょうができるのはなぜでしょうか。

こしょうは、インド南部原産のコショウ科の常緑つる植物で、茎は数メートルに伸びて木質化する。長さは資料により5〜9m、7〜8mと幅がある[2]。

黒こしょうは、熟す前の果実を房ごと収穫し、日に干してしわを寄せ、足で踏むなどして柄を除いた粒である[1]。干す日数は、百科事典では2日ほどと書かれ、一方、後で触れるブランチングの実験では天日干しを5日続けている[3]。つまり日数は条件しだいで、決まった一つの手順があるわけではない。

ここで疑問が出る。黒こしょうが青い実からできるなら、白や赤のこしょうは、いったい別の植物なのか。次の章で、同じ植物の実だという根拠を確かめる。

2. しろや あかの こしょうも、おなじ つるから

2. 黒・白・赤を分けるのは、とる時期と手当て

2. 色の違いは、収穫の時期と処理の違い

くろ、しろ、あかの こしょうは、べつべつの きでは ありません。おなじ しょくぶつの みで、とる じきと、あつかい かたが ちがうだけです[4]。

くろは、あおい うちに とって ほした もの。あかは、すっかり うれた みを ほした ものです[4]。

しろは、うれた みを みずに つけて、かわと くだものの ような ぶぶんを はなします。のこった なかの たねを ほすと、はいいろがかった しろい つぶに なります[1]。つける にっすうは、しりょうに よって ちがうので、ここでは かきません。

みの そとがわを とる か どうかで、いろが かわるのですね。では、のこした そとがわは、ほすと どうして くろく なるのでしょう。

同じ実を、いつ・どう扱うか

カンボジアのカンポット産の赤こしょうを調べた論文は、黒こしょうを熟す前(黄色から緑色)に収穫した粒を乾かしたもの、赤こしょうを熟した粒を乾かしたものと説明しています[4]。

白こしょうは、熟した実を水に漬けたり流水にさらしたりして、果皮と果肉を取り除き、灰白色の種子だけにしてから乾かしたものです[1]。漬ける日数は出典によって違うため、この記事では数字を書きません。

皮があるかないかで、色が変わる

黒は皮つきで、白は皮を取った種子です。では、皮つきの実は、干すとどうして黒くなるのでしょうか。

黒・白・赤を分けるのは、植物の種類ではなく、収穫の時期と処理である。カンボジア・カンポット産の赤こしょうの乾燥を調べた論文は、黒こしょうを未成熟(黄〜緑色)で収穫した粒の乾燥品、赤こしょうを完熟粒の乾燥品として定義している[4]。

白こしょうは、完熟果を水に漬けて果皮と果肉を柔らかくし、取り除いて灰白色の種子だけにして乾かしたものである[1]。漬ける日数は資料ごとに異なるため、日数は採らない。

この分け方から、色は果皮の有無と収穫時期の組み合わせで決まる、と読める。では、皮つきのまま干した実が黒くなるのは、どのような変化によるのか。

3. ほすと、どうして くろく なるの?

3. 実が傷つくと、黒くなる反応が進む

3. 黒変を起こす酵素と、湯通しの役割

りんごを きって おくと、ちゃいろく なるのを みた ことは ありませんか。こしょうの みも、にた はたらきで くろく なると いわれます[3]。

みが きずつくと、なかに ある 酵素こうそが はたらいて、ポリフェノールと いう ものを かえます。それで いろが くろっぽく なります。みどりの いろの もとが こわれる ことも、かかわると 書かれて います。

さんちに よっては、ほす まえに、80どぐらいの おゆに 2ふんほど くぐらせます。こうその はたらきが よわまり、ほす じかんも みじかく なって、つやの ある くろに しあがりやすい そうです。おゆを つかわず、ひなたで ほすだけの ところも あります[3]。

ところで、こしょうと いえば からさです。からさの もとは、かわに あるのでしょうか。

りんごが茶色くなるのと同じ型の反応

黒く変わる主な理由は、実の細胞が傷つくと酵素(ポリフェノールオキシダーゼ)がはたらき、ポリフェノールが酸化されることだと報告されています[3]。リンゴの切り口が茶色くなるのと似た型の反応です。

ただし、理由は一つではありません。葉緑素(みどり色のもと)やビタミンCが分解されることも関わると、同じ論文は述べています。

湯通しをする産地もある

この論文の実験では、乾かす前に約80℃の湯に2分ほどくぐらせています。酵素のはたらきを弱め、乾燥を早め、つやのある黒に仕上がりやすいといいます。ただし全ての産地の標準的な手順ではなく、天日干しだけで仕上げる方法もあります[3]。

色の話はここまでです。次は、こしょうの一番の特ちょうである辛みを見ます。

黒変の主因は、細胞が傷つくことで酵素が基質に触れ、ポリフェノールが酸化されることである。この論文は、ポリフェノールオキシダーゼ(PPO)とペルオキシダーゼ(POD)が褐変を起こす主な酵素で、とくにPPOが重要だと述べている[3]。リンゴの切り口が茶色くなるのと同じ型の反応である。

ただし要因は一つに絞れない。クロロフィル(葉緑素)やビタミンCの分解も、黒変に関わるとされる[3]。

この酵素のはたらきを利用するのが、湯通し(ブランチング)である。実験では、乾燥前に約80℃の湯に2分入れ、酵素のはたらきを弱めて乾燥を早め、つやのある黒に仕上げた[3]。ただし、これは実験と一部の産地の条件であり、全産地の標準ではない。比べるために、湯通しをせず天日干しを5日続ける方法も同じ論文に載っている。

では、黒と白で味も変わるのか。こしょうの辛みはどこに潜んでいるのか。

4. からさは、かわに ある? しんに ある?

4. 辛みのもとは、皮と芯のどちらに多いのか

4. ピペリンの在りかをめぐる、二つの資料の食いちがい

こしょうの からさの もとは、ピペリンと いう ものです。くろこしょうの なかに、5から 13パーセントほど ふくまれると 書いた ひゃっかじてんが あります[1]。

その ひゃっかじてんには、ピペリンの 4ぶんの 3は かわに あるので、においと からさは くろの ほうが つよい、とも あります[1]。

ところが、カンボジアの けんきゅうでは、ピペリンは かわより、つぶの まんなかの しんに おおいと ほうこくされました[4]。

ふたつの しりょうが、わかれて います。ですから、ここでは、どちらが ただしいと いいきりません。

百科事典の説明

辛みのもとはピペリンです。日本大百科全書には、黒こしょうに5〜13%含まれ、その4分の3は果皮にあるので、香りと辛みは黒こしょうのほうが強い、という説明があります[1]。

論文は別の場所を指している

ところが、カンボジアのカンポット産の研究では、ピペリンは果皮ではなく、粒の内側の芯に多く、乾燥でも減りにくいと報告されています。乾いた粒1gあたりの平均で約38.5mgでした[4]。

百科事典は黒こしょうの成分、論文は産地の完熟粒の測定で、対象も数字の基準も同じではありません。そのため、ピペリンが皮に多いか芯に多いかは、言い切らないほうがよさそうです。

ここまで、色と辛みを見てきました。最後に、お店で見かけるこしょうと、世界の産地に目を向けます。

辛み成分はピペリンである。日本大百科全書は、黒こしょうに5〜13%含まれ、その4分の3が果皮にあるため、香りと辛みは黒こしょうのほうが強いと説明する[1]。

これに対し、カンボジア・カンポット産の完熟粒を調べた研究は、ピペリンは果皮よりも粒の内側の芯に多く、乾燥でも減りにくいと報告している。乾物1gあたりの平均は約38.5mgだった[4]。

二つの説明は食いちがう。しかも、片方は黒こしょう中の割合、もう片方は乾物1gあたりの量で、基準が違うため、数字をそのまま並べて比べることはできない。百科事典は黒こしょう全般、論文は一つの産地の完熟粒と、調べた対象も違うので、どちらかが誤りとは決められない。そのため、ピペリンの在りかは言い切らず、「といわれる」の範囲にとどめる。

辛みの正体は一つの成分でも、その在りかは未解決のようだ。では、私たちがお店で買うこしょうは、世界のどこで作られているのか。

5. はいいろの こなは、なに?

5. 灰色の粉こしょうと、こしょうの主な産地

5. 灰色の粉こしょうと、こしょうの主な産地

にほんの おみせには、はいいろの こなの こしょうが うって います。くろと しろを まぜた もので、にほん どくとくと いわれます[5]。

むかし、ローマでは、こしょうの つぶが おなじ おもさの ぎんと おなじ ねだんと いわれる ほど、たいせつに されたと いいます[1]。

いまの いちばんの さんちは ベトナムです。2024ねんの FAOの とうけいを のせた サイトでは、ベトナムが 262,230トン、インドが 126,038トンで、くろと しろの ごうけいです。ベトナムは インドの 2ばいほど つくって います[6]。

ふるさとの インドより、ベトナムの ほうが おおいのです。

日本ならではの灰色

粉末のこしょうに、灰色のものがあります。黒と白を混ぜ合わせたもので、日本独特だといわれます[5]。

主な産地は、インドからベトナムへ

古代ローマでは、こしょうの粒が同量の銀と等価といわれるほど貴重だったと伝えられます[1]。

産地は、かつてはインドが主でしたが、2000年以降はベトナムが増えました。globalnoteが載せるFAO統計(2024年)では、ベトナムが262,230トン、インドが126,038トンで、黒と白の合計です。割り算すると、ベトナムはインドの約2倍になります[6]。

日本で見かける灰色の粉末こしょうは、黒と白を混ぜたもので、日本独特といわれる[5]。

産地は大きく動いた。かつてはインドが主産地だったが、2000年以降はベトナムが増え、世界の約3分の1を生産するとされる[1]。globalnoteが載せるFAO統計(2024年、黒・白の合計)では、ベトナム262,230トン、インド126,038トンで、262,230÷126,038は約2.08となり、ベトナムはインドの約2倍である[6]。「約3分の1」は百科事典の説明で、FAOの数字は別の統計であり、年も違うため、そのまま照らし合わせることはしない。

歴史を一つだけ挙げれば、古代ローマではこしょうの粒が同量の銀と等価といわれるほど貴重で、15世紀からの大航海時代には、その利益をめぐって欧州の東方進出が進んだとされる[1]。値打ちを支えた背景の一つに、遠い産地でしか育たないことがあったと想像できるが、資料はそこまで述べていない。

6. いえの こしょうの つぶを、ようく みよう

6. 家のこしょうの粒を、じっくり見てみる

6. 家のこしょうを観察し、論文を読み比べる

いえに、つぶの くろこしょうが あれば、1つぶ、てのひらに のせて みましょう。しわが よって いますか。しろこしょうが あれば、ならべて、いろを くらべます。

しろい ほうには、しわが すくないかも しれません。つぶを かおに ちかづけすぎると、こなが はなや めに はいる ことが あります。かおから はなして みましょう。

こしょうの ふくろの うらに、げんさんこくが 書いて あれば、さがして みて ください。この ページに 出てきた くにの なまえが、あるかも しれません。

粒を手のひらで見る

家に黒こしょうの粒があれば、1粒を手のひらにのせて、表面のしわを見てみましょう。白こしょうがあれば、並べて色と表面を比べます。

目や鼻に粉が入らないよう、においを嗅ぐときは少し離してください。

袋のうらの原産国

こしょうの袋のうらに原産国が書かれていれば、この記事の産地の話と見比べてみましょう。ピペリンの在りかが皮か芯かという問いは、この記事でも言い切れずに残りました。

家に黒こしょうの粒があれば、表面のしわを観察する。白こしょうがあれば並べて、色と表面の違いを比べる。目や鼻に粉が入らないよう、においは少し離して確かめる。

産地表示にも注目したい。ベトナムとインドの2024年の数字(262,230トンと126,038トン)を思い出して、袋の原産国と照らし合わせるのも一つの手である。

辛みのもとの在りかは、どちらの資料の側に立つかで説明が変わるため、原典を読み比べる価値がある。二つの論文はMDPIのFoods誌(2020年)とMolecules誌(2018年)に載っており、出典欄のURLから無料で読める。実験条件の違いを自分の目で確かめられる。

しらべた もとの じょうほう

参考にした情報源

参考にした情報源と、その使い方

こしょうの原産地や色の分け方は、百科事典と論文を突き合わせて書きました。

  1. 「コショウ(胡椒)」改訂新版 世界大百科事典・日本大百科全書(コトバンク) https://kotobank.jp/word/%E3%82%B3%E3%82%B7%E3%83%A7%E3%82%A6%28%E8%83%A1%E6%A4%92%29-64787 (黒・白の作り方、ピペリン、歴史、産地)
  2. 「こしょう」世界大百科事典(コトバンク) https://kotobank.jp/word/%E3%81%93%E3%81%97%E3%82%87%E3%81%86-2814261 (植物としてのこしょう)
  3. Blackening of Piper nigrum(Molecules 2018) https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC6017850/ (黒くなる理由、湯通し)
  4. Kampot Red Pepper drying(Foods 2020) https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC7692854 (黒・赤の定義、ピペリンの在りか)
  5. コショウ(botanic.jp) https://botanic.jp/plants-ka/kosho.htm (灰色の粉末こしょう)
  6. こしょうの生産量(globalnote、FAO統計) https://www.globalnote.jp/post-5751.html (2024年の生産量)

なおした ところ

更新履歴

更新履歴(改版の記録)

  •  初版を公開。
  •  導入・1章・2章の題で、こしょうを「木」と書いていた箇所を、つる植物の言い方に直した。理由: こしょうは木ではなく、木質化する常緑のつる植物のため。

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