1. 紅茶は、どんな ふうに つくるの?
1. 紅茶は、緑茶と同じ葉を、4つの工程で作る
1. 同じチャノキの葉を、4つの工程で酸化させる
紅茶も 緑茶も、おなじ チャノキの 葉から つくります[1]。ちがうのは、つくり かたです。
紅茶は、まず 葉を しおれさせます。つぎに もみます。それから 空気に ふれさせて、茶色に かえます。さいごに ねつを くわえて、かわかします[2]。
緑茶は、はじめに ねつを くわえて、色の かわるのを とめます。紅茶は、さいごに ねつを くわえます。ねつを つかう ところが、はんたいです。
色を かえて いるのは、葉の 中に ある 酵素という ものです。酵素は、ものを べつの ものに かえる はたらきを します。
緑茶、烏龍茶、紅茶は、どれも同じチャノキの葉から作られます。違いは、葉の中の酵素をどこまで働かせるかです。緑茶は働かせず、烏龍茶は途中で止め、紅茶は十分に働かせます[1]。
紅茶の標準的な作り方(オーソドックス製法)は、萎凋(しおれさせる)、揉捻(揉む)、発酵(酸化させる)、乾燥の4つです[2]。緑茶は初めに熱を使って酵素を止めますが、紅茶は製造の最後の段階まで加熱しません[1]。熱を使う順番が反対です。
ここでいう「発酵」は、納豆やヨーグルトのような微生物の働きではありません。葉に入っている酸化酵素の働きによる、酸化のことです[1]。英語の資料では、この言い方を正確でない呼び名とするものもあります[5]。
2. 葉を しおれさせるのは なぜ?
2. 葉をしおれさせる(萎凋)── 水分を減らし、香りのもとを増やす
2. 葉をしおれさせる(萎凋)── 水分を約7割から減らし、揮発性成分を増やす
とった ばかりの 葉は、水を たくさん ふくんで います。紅茶づくりでは、これを 長い 時間、おいて、しおれさせます。この しごとを「萎凋」と いいます。
ある 研究では、14〜18 時間ほどが よいと されて います[2]。しおれる あいだに、葉の 中の ものが こわれて、かおりの もとや、あまい ものが ふえます[2]。
ただし、時間は 研究や つくる 人によって ちがいます。
3. 葉を もむと、どう なるの?
3. 葉を揉む(揉捻)── 細胞をこわして、酵素とカテキンを出会わせる
3. 葉を揉む(揉捻)── 細胞の構造を壊し、酸化酵素とカテキンを接触させる
しおれた 葉を、手や きかいで つよく もみます。「揉捻」と いいます。
もむと、葉の 細ぼうの しくみが こわれます[2]。すると、ばらばらの ばしょに あった 酵素と、おちゃの 成分の カテキンが、であいます。さらに、葉の 空気に ふれる ところも ふえます[2]。
りんごを きって、しばらく おくと 茶色に なる ことが あります。あれも、きずついた ところの 成分が、空気で かわる ためです[4]。ただし 本当は、りんごと お茶では、かわる 成分も、できる ものも ちがいます。
萎凋した葉を、機械や手で強く揉みます。これが揉捻です。揉むと細胞の構造がこわれて、カテキンと酸化酵素が出会います。葉が空気にふれる面も広がります[2]。
紅茶の赤い色のもとになるテアフラビンの多くは、この揉捻の間にできます[2]。ある研究では、揉捻の温度を約20℃に保ったとき、酵素がよく働き、テアフラビンが増えて明るい色になりました[2]。
切ったりんごが茶色くなるのも、切り口でポリフェノールが酸化されるためです。すりおろして細胞をたくさん壊すほど、変色が強くなります[4]。ただし、りんごと茶葉では成分が違うので、できる色素は同じではありません。
揉捻前のカテキンと酸化酵素は、細胞内の別々の場所にある。揉捻によって細胞構造が壊れ、カテキン、ポリフェノールオキシダーゼ(PPO)、ペルオキシダーゼ(POD)が接触する。同時に、葉が空気にふれる表面積も増える[2]。
総説は、テアフラビンの大半が揉捻中に生成するとしている。揉捻温度を約20±2℃に保つとPPOとPODの活性が保たれ、テアフラビン量と明るさが高まった研究もある[2]。
似た現象として、りんごの切り口の褐変がある。ポリフェノールの酸化によるもので、すりおろしのように細胞破壊が大きいほど褐変が強い[4]。ただし、茶葉とりんごでは含まれるポリフェノールが異なり、生成する色素も同じではない。
4. 緑の 葉は、どうして 茶色に なるの?
4. 酸化(発酵)── 緑から銅色へ。色をつくる2つの成分
4. 酸化(発酵)── テアフラビンとテアルビジンの生成
もんだ 葉を、空気に ふれさせて おきます。この あいだに、酵素が カテキンを べつの ものに かえて いきます[2]。
できる ものは、おもに 2しゅるいです。ひとつは、あかるい オレンジ色の「テアフラビン」です。もうひとつは、こい あかちゃ色の「テアルビジン」です[2]。あわさって、紅茶の 色に なります。
この あいだが 長く なりすぎると、テアフラビンは へって、テアルビジンが ふえる ことが あります[2]。
じつは、紅茶の 色の もとに なる 大きな 成分の かたちは、長い あいだ 分かって いませんでした[3]。
揉んだ葉を、温度と湿度を整えた場所に広げて置きます。この間に、酵素がカテキンを次々に酸化して、テアフラビンとテアルビジンという2種類の色素に変えていきます[2]。ほどよく進むと、葉は緑から銅のような茶色になります[2]。
テアフラビンは紅茶の明るい色と、きりっとした味に関わります。テアルビジンは、味の濃さ(こく)と、橙褐色の液の色に関わります[2]。酸化の時間を長くすると、テアルビジンは増え、テアフラビンは減るという報告があります[2]。
テアルビジンなどの大きな成分について、日本農芸化学会の雑誌の解説は、発酵茶の高分子ポリフェノールがカテキンからできることは知られていても、化学構造は長い間不明のままだったと書いています[3]。毎日飲まれているお茶に、まだ分かっていない部分が残っています。
PPOとPODがカテキンを酸化し、テアフラビン(TF)とテアルビジン(TR)が生じる。酸化の進み方は、温度・湿度・時間・pH・酸素の供給に左右される。通気がよいとTFとTRは増え、高温ではTFの生成が減る[2]。
TFは紅茶の明るさと爽やかな収れん味に、TRは濃さ、味、橙褐色の液の色に寄与する。総説は、酸化時間を延ばすとTRは増えてTFは減ると述べる[2]。適切に酸化した葉は、緑から銅褐色になる[2]。
柳瀬笑子の解説(2022年)は、発酵茶の高分子ポリフェノールが加工中にカテキン類から生じることは知られているが、化学構造は長い間不明のままだったと述べ、有機化学の立場から解明を目指した研究を紹介している[3]。
5. さいごに ねつを くわえるのは なぜ?
5. 乾燥 ── 熱で酵素を止め、色と香りを決める
5. 乾燥 ── 加熱による酵素の失活と、水分の除去
ちょうど いい 色に なったら、あつい 風で かわかします。ねつを くわえると、酵素が はたらけなく なって、色の へんかが とまります[2]。
緑茶は、はじめに ねつで 酵素を とめて、緑を のこします。紅茶は、さいごに ねつで とめて、茶色に します。酵素を どこで とめるかが、2つの おちゃの ちがいです。
6. 日本でも、紅茶を つくって いるの?
6. 日本の紅茶(和紅茶)── 緑茶用の葉を、別の工程で
6. 国産紅茶(和紅茶)── 一番茶のあとの葉と、2つの製法
つくって います。日本の おちゃの 葉で つくった 紅茶を、「和紅茶」と よぶ ことが あります[1]。
緑茶の 一ばんちゃを とった あとの 葉を つかう ことが 多いと いわれます[1]。
むかしにも、日本で 紅茶を 作ろうと した 人が います。多田元吉は、1875ねんに 国から、中国や インドの おちゃを 見に いくように いわれました。もちかえった 紅茶の 木は、いまの 静岡市の 丸子で そだてられました[6]。
日本の茶葉で作る紅茶は、国産紅茶、和紅茶、地紅茶などと呼ばれます。小規模で作る人が多く、地域ごとの特色を出したものもあります。緑茶の一番茶を摘んだあとの葉を使うことが多く、近年は紅茶用に品種改良された茶樹も栽培されています[1]。
紅茶の工程には、世界で2つの流れがあります。葉の形を残して揉む「オーソドックス製法」と、葉を砕き、引きちぎり、丸める「CTC製法」です。CTCは1930年に開発されたとされ、ティーバッグ用の細かい茶葉に使われます[5]。ある総説は、CTCの紅茶はテアフラビンとテアルビジンが多く、花のような香りの成分は少ないと報告しています[2]。
日本の紅茶づくりに関わった人物として、多田元吉がいます。富津市の資料によると、1875年に政府から中国・インドの視察を命じられ、1876年にインドのアッサム、ダージリン、セイロン島へ向かい、1877年に帰国しました。帰国後は各地で製茶の指導をし、アッサムから持ち帰った紅茶の木は丸子(静岡市)で栽培されました[6]。
国産紅茶(和紅茶・地紅茶)は、日本産の茶葉を使って国内で作られる。小規模生産や産地直売が多く、緑茶の一番茶を摘んだあとの葉を使うことが多い。近年は紅茶用に品種改良された茶樹も栽培される[1]。
製法は、葉の形を保つオーソドックス製法と、葉を砕いて引きちぎり丸めるCTC製法がある。CTCは1930年にウィリアム・マッカーカーが考案したとされ、ティーバッグ向けの細かな等級に用いられる[5]。総説は、CTCはTFとTRが多い一方、リナロールなどの花の香り成分は少ないとする[2]。
日本の紅茶づくりに関わった人物に、多田元吉(1829〜1896)がいる。富津市の資料によれば、1875年に政府から中国・インドの視察を命じられ、1876年にインドのアッサム、ダージリン、セイロン島へ向かい、1877年に帰国した。帰国後は各地で製茶の指導にあたり、アッサムから持ち帰った紅茶の原木は丸子(静岡市)で栽培された[6]。
7. じぶんでも しらべて みたくなったら
7. 自分でも調べてみたくなったら
7. 自分でも調べてみたくなったら
緑茶の ティーバッグと、紅茶の ティーバッグを、1つずつ 用意して、中の 葉を 見くらべて みましょう。大人に、お湯を いれて もらって、色も くらべます。
おなじ チャノキの 葉なのに、見た目も 色も ちがうのには、酵素を とめる ところの ちがいが かかわって います。やけどに 気を つけて ください。
緑茶と紅茶のティーバッグを1つずつ用意して、中の茶葉を比べてみてください。同じ重さの湯を注いで、色の濃さと明るさがどう違うかも見られます。お湯を使うときは、大人といっしょに、やけどに気をつけてください。
お店で国産紅茶を見つけたら、袋の裏の原材料や産地を見てください。どの品種を使っているのか、一番茶のあとの葉なのかが書かれていることがあります。
しらべた もとの じょうほう
参考にした情報源
参考にした情報源と、その使い方
本文で使った資料です。
- 農林水産省 aff 2022年4月号 特集「お気に入りを見つけよう!味わいや香りもさまざまなお茶の種類」。 https://www.maff.go.jp/j/pr/aff/2204/spe1_03.html (紅茶・烏龍茶・緑茶が同じチャノキの葉であること、発酵の意味、紅茶は最終段階まで加熱しないこと、国産紅茶)
- Aaqil M. ほか「Tea Harvesting and Processing Techniques and Its Effect on Phytochemical Profile and Final Quality of Black Tea: A Review」、Foods 12(24), 4467(2023年)。DOI: 10.3390/foods12244467。 https://doi.org/10.3390/foods12244467 (英語の総説。萎凋・揉捻・酸化・乾燥の条件、テアフラビンとテアルビジン、CTC製法)
- 柳瀬笑子「発酵茶製造時におけるカテキン類の酸化重合反応に関する研究」、化学と生物 60(7), 346–351(2022年)。 https://www.jstage.jst.go.jp/article/kagakutoseibutsu/60/7/60_600710/_article/-char/ja (発酵茶の高分子ポリフェノールの化学構造が長く不明だったこと)
- ウェザーニュース「りんごが茶色くなると食味や栄養はどう変わる?」(青森県産業技術センターりんご研究所への取材、2022年12月7日)。 https://weathernews.jp/s/topics/202212/020135/ (切ったりんごの褐変がポリフェノールの酸化であること、すりおろすと強くなること)
- Wikipedia「Black tea」(英語版)。 https://en.wikipedia.org/wiki/Black_tea (CTC製法の開発年、「fermentation」という呼び名について。百科事典の記述なので、補足として使った)
- 富津市「多田元吉」。 https://www.city.futtsu.lg.jp/0000002685.html (多田元吉の生没年、中国・インドの視察と帰国の年、紅茶の原木が丸子で栽培されていること)
なおした ところ
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