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ここにあるのは、だれかが実際に調べ、考え、作ってきたことを集めたメモです。気になったら、ページの下の「参考にした情報源」から、もとの本や記事、それを生み出した人たちに、直接ふれてみてください。このメモには書ききれないおもしろさが、そこにあります。

にても しなない ボツリヌス菌きんの ねむる すがたは、なぜ あつさに つよいの?

100℃で6時間煮ても残る、ボツリヌス菌の眠る姿:芽胞がほうはなぜ熱に強いのか

ボツリヌス菌の芽胞がほうは、なぜ湿熱に耐えるのか:コアの水・DPA・DNA保護タンパク質と、残る謎

分野:生きもの

ボツリヌス菌きんの なかまには、100℃で 6じかん にても、しなない すがたが あります。ところが、この 菌きんが つくる どくは、80℃で 30ぷん ほど あたためると こわれる、といわれます。

つよいのは どくでは なく、菌きんが ねむって いる すがた、芽胞がほうです。どうして そんなに あつさに つよいのでしょう。この きじを よむと、わかって いる ことと、まだ けんきゅう中の ことが わかります。

ボツリヌス菌の芽胞がほうは、100℃で6時間加熱しても、完全には死なないとされています。ところが、この菌が作る毒素そのものは、80℃で30分ほどの加熱でこわれるといわれます。強いのは毒ではなく、菌が眠っている姿のほうなのです。

なぜ、小さな芽胞が、そこまで熱に耐えられるのでしょうか。この記事を読むと、芽胞の中身についてこれまでに分かっていることと、まだ研究が続いていることが分かります。

ボツリヌス菌の芽胞がほうは、120℃で4分間、または100℃で6時間以上の加熱をしないと完全には死なないとされる。一方、この菌がつくる毒素は、80℃・30分ほどの加熱で失活するという。熱に強いのは毒素ではなく、休眠状態の芽胞である。

では、芽胞の何が熱を防いでいるのか。この記事を読むと、コアの脱水、ジピコリン酸(DPA)、DNAを守るタンパク質といった要因と、それだけでは説明しきれない残された謎が分かる。

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1. にても しなないのに、どくは こわれるって ほんとう?

1. 100℃で煮ても死なないのに、毒はこわれる

1. 煮ても残る芽胞と、加熱で壊れる毒素

ボツリヌス菌きんは、土や 川、うみの そこなど、しぜんの なかに ひろく いる 菌きんです[1]。くうきの すくない ところに なると、ねむって いた 芽胞がほうが めを さまして ふえ、どくを つくる ことが あります。

この 芽胞がほうは、とても あつさに つよいのです。120℃で 4ふん、または 100℃で 6じかん あたためないと、ぜんぶは しなない、と いわれます[1]。ふつうの りょうりで にた くらいでは、のこって しまいます[3]。

でも、どく そのものは あつさに よわいのです。80℃で 30ぷん ほど あたためると、はたらきが なくなると いわれます[3]。

つまり、つよいのは「ねむって いる すがた」です。ここから、「その すがたの なかは どう なって いるの?」という なぞが うまれます。

ボツリヌス菌は、土壌や川、海など自然界に広くいる菌です。酸素の少ない環境になると、休眠していた芽胞が発芽して増え、毒素を作ることがあります[1]。

この芽胞は、120℃で4分間、または100℃で6時間以上加熱しないと完全には死なないとされます[1][2]。ふつうの加熱調理では、芽胞は残ってしまいます[3]。

一方で、毒素のほうは熱に弱く、80℃で30分ほどの加熱で働きを失うとされます[3]。資料によって「80℃で20分」「100℃で数分」など、数字に幅があります。ここでは「加熱でこわせる」という点が大事です。

強いのは毒ではなく、眠っている姿の芽胞です。では、芽胞の中はふつうの細胞と何がちがうのでしょうか。

ボツリヌス菌は土壌・河川・海など自然界に広く分布し、酸素の少ない環境で芽胞が発芽・増殖して毒素を産生する[1]。この芽胞を完全に殺すには、120℃で4分間、または100℃で6時間以上の加熱が必要とされる[1][2]。通常の加熱調理では死なない[3]。

ところが毒素は熱に弱い。80℃・30分(100℃なら数分以上)の加熱で失活すると説明される[3]。ただし条件は資料により80℃20分、100℃1〜2分などと幅があり、確定した一つの値ではない。

だから、問題は「毒が強い」ことではなく、「毒を作る菌が、熱に耐える姿で残る」ことにある。では、芽胞の中はふつうの細胞と何がちがうのか。

2. ねむる すがたの ちゅうしんは、どうして みずが すくないの?

2. 芽胞の中心は、水が少なく、物質に守られている

2. 多重の殻に包まれたコアは、なぜ水が少ないのか

芽胞がほうは、たまごの ように なかみを なんそうもの 殻からで つつんで います。まん中の「コア」を、うす皮かわの まくと、あつい そう、たんぱくしつの 2まいの 殻からが くるんで います[5]。ただし、たまごの よう、と いうのは ざっくりした たとえです。

しらべた けんきゅうでは、コアの なかには みずが すくない、と わかって います。ここで やくに たつのが「ジピコリンさん」という ぶっしつです[4]。

ジピコリンさんが たくさん あると、コアの みずが へりました。ジピコリンさんの ない 芽胞がほうは、あつい みずに よわく なった、と ほうこくされて います[4]。

ここまでの けんきゅうは、おもに「こうそうきん」という べつの 菌きんで おこなわれました。ボツリヌス菌きんも にて いると かんがえられますが、まったく おなじ じっけんでは ありません。

芽胞は、中心の「コア」を、何重もの層が包んだ構造をしています。内側から、内膜、厚いペプチドグリカンの層(皮層)、そして2層のタンパク質の殻(コート)です[6]。内膜は物質を通しにくく、これも耐性に関わるとされます[5]。

注目されてきたのは、コアの水の少なさです。水を含んだ状態の熱(湿熱)への強さを決める主な要因は、コアの脱水だとされます。コアの水の量は、ジピコリン酸(DPA)とカルシウムイオンの量と反比例するという報告があります[4]。

DPAは、枯草菌の芽胞では乾燥重量の約10%、コアだけで見れば約20%にもなります。DPAがコアの水を押しのけるため、DPAのない芽胞は、あるものよりコアの水が多く、湿熱に弱くなりました[5]。

ただし、これらは主に枯草菌で調べられた結果です。ボツリヌス菌でも似たしくみだと考えられますが、同じ実験の結果ではありません。

芽胞は、中心のコアを、内膜、厚いペプチドグリカン層(皮層=コルテックス)、2層のタンパク質の殻(コート)が包む多重構造をもつ[6]。内膜は物質を通しにくく、これも耐性に関わる[5]。

耐熱性の説明として長く中心にあったのが、コアの脱水である。湿熱への耐性を決める主な要因はコアの脱水だとされ、コアの水分量はDPAとカルシウムイオンの量に反比例するという[4]。DPAは枯草菌の芽胞で乾燥重量の約10%、コアの乾燥重量では約20%に達する。DPAがコアの水と置き換わるため、DPAをもたない芽胞はコアの水が多く、湿熱耐性が下がる[5]。

水が少なければ、タンパク質などが熱で変性しにくくなる、というのが一般的な理解である。ただしこれらの実験は主に枯草菌で行われており、ボツリヌス菌にそのまま当てはまるとは限らない。

3. こわれやすい いでんしは、だれが まもって いるの?

3. 熱に傷つきやすいDNAを守るタンパク質

3. DNAに結合するα/β型SASPによる保護

菌きんの からだの「せっけいず」は、遺伝子いでんしに なる DNAです。これが あつさで きずつくと、菌きんは めを さませなく なります。

芽胞がほうの なかでは、とても ちいさな たんぱくしつが DNAに くっつきます。これが DNAを あつさや 乾燥かんそうから まもる、と いわれます[5]。

たとえば、だいじな てがみを かたい ふうとうに いれる ような ものです。ただし、芽胞がほうは しぜんに できた しくみで、だれかが つくった ものでは ありません。

熱で最も傷つくと困るのは、遺伝子をもつDNAです。芽胞の中では、α/β型とよばれる小さな酸可溶性タンパク質(SASP)がDNAに結びつきます。これが、湿熱・乾熱・乾燥・有害な化学物質によるDNAの傷から守ると報告されています[5]。

つまり、芽胞は水の少ないコアで熱に耐え、さらにDNAをタンパク質で包むことで、万一の傷も防いでいる、と整理できます。

こうして、いくつかのしくみが重なって芽胞の強さを作っている、と考えられています。では、水が少ないことだけで、強さは説明できるのでしょうか。

芽胞のDNAには、α/β型の小さな酸可溶性タンパク質(SASP)が結合する。これがDNAを、湿熱・乾熱・乾燥・遺伝毒性のある化学物質による損傷から保護する[5]。

したがって、芽胞の耐熱性は、コアの脱水とDPA、DNAに結合するSASP、物質を通しにくい内膜、外側の皮層とコートといった複数の要因が重なった結果と考えられる[5][6]。どれか一つで決まるとは書けない。

では、その中でも最も有名な「コアが乾いている」という説明は、どこまで通用するのか。

4. みずが すくないだけで、ぜんぶ せつめいできるの?

4. 「水が少ない」だけでは説明しきれない

4. 脱水説の限界:中性子散乱の測定が示したこと

コアの みずは、たんぱくしつ 1に たいして 0.6ほど、と すくない ことが しられて います[6]。

ところが、ちかごろの けんきゅうで、コアの みずや ぶんしの うごきを しらべると、ふつうの だいちょう菌きんと よく にて いました。そこで、「みずが すくないから あつさに つよい」だけでは せつめいしにくい、という けつろんも でて います[6]。

だから、芽胞がほうが なぜ ここまで つよいのかは、まだ ぜんぶ わかって いません。

コアの水の量は、乾燥したタンパク質1グラムあたり約0.6グラムと、少ないとされています[6]。

ところが、中性子散乱という方法でコアの水や分子の動きを調べた研究では、大腸菌と、とてもよく似ていました。この研究は、水が少ないことだけで芽胞の極端な強さを説明するのは難しそうだ、と結論しています[6]。

水の少なさも大事な一因ですが、それだけでは足りません。強さのしくみの全体像は、いまも研究が続いています。

では、この強い芽胞を相手に、私たちはどう食品を守っているのでしょうか。

コアの水は、乾燥タンパク質1gあたり約0.6gとされ、確かに少ない[6]。しかし中性子散乱でコアの水や分子の動きを測った研究では、その動きが大腸菌とよく似ていた。著者らは、水が少ないことだけで芽胞の極端な耐性を説明するのは「ありそうにない」と結論している[6]。

この結論は、脱水が無関係だと言っているのではない。前章までの実験が示すように、DPAとコアの水の関係は報告されている[4][5]。ただ、脱水に他の要因を重ねても全体像がまだ描けていないのが現状である。しかも実験は主に枯草菌で、ボツリヌス菌そのもののデータではない。

では、完全には分かっていないその強さに、食品の安全はどう対処しているのか。

5. かんづめの 120℃は、どう きまって いるの?

5. 缶詰の「120℃・4分」は、芽胞をどう見込んだ数字か

5. 12D加熱と日本の「120℃4分」:二つの物差し

芽胞がほうは ふつうの あつさでは のこるので、かんづめ などでは、もっと たかい 温度で あたためます。120℃で 4ふん、または それと おなじ くらい きく ほうほうが めやす、と せつめいされて います[1]。

さかなの かんづめを つくる せつめいには、「12D」という かんがえ方も あります。菌きんの かずを、10を 12かい かけた かずぶんの 1まで へらす、という ことです[7]。

121.1℃なら 2.8ふん くらいに あたります。でも、4ふんと 2.8ふんは、ものさしが ちがう かずです。

ちなみに、1さいより ちいさい あかちゃんには、はちみつを あげません。芽胞がほうが はらの なかで ふえる ことが あるからです[3]。

芽胞は通常の調理では残るため、缶詰やレトルトのような食品では、120℃で4分、またはそれと同等以上の加熱が目安として説明されます[1][2]。

魚の缶詰づくりの説明では、「12D」という考え方があります。D値とは、菌の数を10分の1に減らすのにかかる時間です。12桁、つまり1兆分の1まで減らす加熱を最低の安全目標とします。121.1℃でD値が0.23分なら、0.23×12で約2.8分です[7]。

ただし、D値は菌株や条件で0.1〜0.23分ほどの幅があります。2.8分は121.1℃・D値0.23分での計算で、日本の「120℃で4分」とは別の物差しです。

はちみつに「1歳未満には与えない」と書かれているのも、芽胞が残る例のひとつです。1歳未満の乳児が芽胞を口にすると腸の中で菌が増え、毒素が吸収されることがあるためです[3]。

芽胞は通常の加熱調理では残るため、容器包装詰めの食品などでは、中心部を120℃で4分、またはそれと同等以上の効力で加熱する方法が目安として説明される[1][2]。ただし増殖は一般にpH4.6以上で起きるとされ、この条件は食品のpHにも左右される。タンパク質の多い大豆や肉では、pH4.2や4.36でも発育した例が報告されている[2]。

FAOの魚缶詰加工の説明では「12D」が使われる。D値は菌数を10分の1にする加熱時間で、12桁(10の12乗分の1)の減少を最低目標とする。121.1℃でD値0.23分なら、0.23×12=2.76≒2.8分となる[7]。D値は菌株・条件で0.1〜0.23分ほどの幅がある。

この2.8分は日本の「120℃・4分」と同じ物差しではない。温度が1.1℃ちがい、前提も異なる。ここでは二つの数字を同一視せず、「それぞれ根拠のちがう安全の見積もり」として扱う。

また、1歳未満の乳児は芽胞を摂取すると腸管内で菌が増え、毒素が吸収されることがあり、はちみつは1歳未満に与えないとされる[3]。加熱しても芽胞が残る身近な例である。

6. しょくひんの うらを よんで みよう

6. 食品の表示から、芽胞を思い出してみる

6. 表示と原典で、芽胞の話をたしかめる

きょう できる こと

おうちの ひとと、はちみつの びんの ラベルを さがして みましょう。「1さいに ならない 子には あげない」ような ちゅういが かいて あれば、この きじの 芽胞がほうの はなしと つながります。かんづめや レトルトの うらの 「ほぞんほうほう」も よんで みましょう。

しらべる とき

おおさかふや 港区、しがけんの ボツリヌス菌きんの ページを、おうちの ひとと いっしょに よんで みましょう。

今日できること

家にあるはちみつの瓶のラベルに、「1歳未満には与えない」という注意が書かれているか探してみます。缶詰やレトルトの裏の「保存方法」「殺菌」の表示も読んでみると、この記事の話と重なって見えてきます。

資料を読むなら

大阪府、港区、滋賀県のボツリヌス菌のページ[1][2][3]は日本語で読めます。芽胞の中身を詳しく知りたいときは、論文[4][5][6]に挑戦する手もあります(英語です)。

今日できること

はちみつの瓶のラベルに、1歳未満への注意が書かれているか探す。缶詰やレトルトの裏の保存方法や殺菌の表示も読むと、本文の話が身近な表示と結びつく。

資料を読むなら

日本語では大阪府・港区・滋賀県のページ[1][2][3]。英語では、コアの脱水とDPA[4]、DPAのない芽胞とSASP[5]、コアの水の動きを測った研究[6]、缶詰の12D[7]が原典にあたる。実験は主に枯草菌なので、ボツリヌス菌に当てはめる際は注意が要る。

しらべた もとの じょうほう

参考にした情報源

参考にした情報源と、その使い方

本文で使った資料です。

  1. 大阪府「ボツリヌス食中毒」. https://www.pref.osaka.lg.jp/o100110/shokuhin/shokutyuudoku/botulinum.html (分布・加熱条件)
  2. 滋賀県「ボツリヌス菌」. https://www.pref.shiga.lg.jp/el00/1893.html (加熱条件・増殖pH)
  3. 港区「ボツリヌス菌」. https://www.city.minato.tokyo.jp/shokuhinkouiki/kurashi/shokuhin/anzen/fukyukeihatsu/botsurinusu.html (毒素の失活・乳児)
  4. Frontiers in Microbiology(2016), spore Ca/DPA study. https://www.frontiersin.org/journals/microbiology/articles/10.3389/fmicb.2016.01791/full (コアの脱水)
  5. Setlow et al. (2006) J Bacteriol. https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC1482921/ (DPA・SASP)
  6. Sci Rep(2020), molecular dynamics of spore core. https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC7237433 (層構造・水の動き)
  7. FAO, Fish canning guide: Canning principles. http://www.fao.org/4/R6918E/R6918E02.htm (12D)

なおした ところ

更新履歴

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