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ここにあるのは、だれかが実際に調べ、考え、作ってきたことを集めたメモです。気になったら、ページの下の「参考にした情報源」から、もとの本や記事、それを生み出した人たちに、直接ふれてみてください。このメモには書ききれないおもしろさが、そこにあります。

アイスを たべると、どうして あたまが キーンと するの?

冷やしたのは口なのに、痛むのはなぜ頭なのか ── アイスで頭がキーンとする理由

アイスクリーム頭痛 ── 冷刺激頭痛(ICHD-3 4.5.2)、脳血流の測定、血管説と三叉神経説

分野:からだ

かき氷を いそいで たべたら、あたまが キーンと いたく なった。そんな ことは ありませんか。

つめたく なったのは 口の 中なのに、いたいのは あたまです。どうして なのか、しらべた 人たちの 話を たどって みましょう。

かき氷やアイスを急いで食べると、こめかみや額のあたりがキーンと痛む。冷たくなったのは口の中なのに、痛みを感じるのは頭です。

この頭痛は医学の分類にも載っていて、脳の血流を測った実験もあります。それでも、なぜ起きるのかは、まだはっきり決まっていません。分かっていることと、分かっていないことを分けて見ていきます。

冷たいものを急いで食べたときの頭痛は、国際頭痛分類第3版(ICHD-3)に「冷刺激の摂取または吸入による頭痛」として載っている[2]。冷やされるのは口蓋や喉の奥で、痛みが出るのは前頭部や側頭部という、場所のずれが特徴だ。

このメモでは、分類の記述、脳血流を測った2つの実験[3][4]、血管説と三叉神経説[1][5]を突き合わせ、確かなことと仮説を分けて整理する。

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1. つめたいのは 口、いたいのは あたま

1. 冷えるのは口の上、痛むのは頭

1. 定義 ── 冷刺激が口蓋を通るときの短い頭痛

この あたまの いたみは、口の 上や、のどの おくが きゅうに ひえた ときに おきると いわれます[1]。

ひえるのは 口の 中です。でも いたく なるのは、おでこや、こめかみの あたりです[2]。ばしょが はなれて いるのが、ふしぎな ところです。

いたみは みじかく、つめたい ものを やめてから 10ぷん いない に おさまると、びょうきの きまりには 書かれて います[2]。ふつうは もっと はやく おさまる と 思います。

分類に載っている頭痛

冷たい物質が上あご(口蓋)や喉の奥の壁を通ったときに、額やこめかみに短い強い痛みが出ることがあり、国際頭痛分類第3版では「冷刺激の摂取・吸入による頭痛」として分類されています[2]。ハーバード大学の医療情報サイトも、口の上や喉の奥の温度が急に下がったときに起こると説明しています[1]。

10分という数字

分類の基準では、冷たい刺激をやめてから10分以内におさまることが条件です[2]。ただしこれは診断の上限の目安です。ハーバード大学の医療情報サイトは、ふつうは30秒以内に消えると説明しています[1]。冷やした場所と痛む場所がずれていることが、この頭痛のいちばんの特徴です。

ICHD-3の4.5.2は、固体・液体・気体を問わず、冷たいものが口蓋や咽頭後壁を通過することで、感受性のある人に誘発される前頭部または側頭部の短時間の痛みと定義する[2]。Harvard Healthも、口蓋と喉の奥の温度が急に下がったときに起こるとする[1]。

基準には、刺激の除去後10分以内に消えることが含まれる[2]。これは診断基準の上限であり、通常の持続時間を示すものではない。冷却部位(口蓋)と疼痛部位(前頭・側頭)が一致しない点が、以下の議論の出発点になる。

2. なる 人と、ならない 人

2. どんな人に、どんなときに起こるのか

2. 頻度と誘因 ── 学生で62%、食べる速さの影響

かならず なる わけでは ありません。ならない 人も います。

あるデータでは、けいけんした 人は 学生で 62%、大人で 22〜36%と 書かれて います[2]。子どもの ほうが なりやすいと いわれますが、国や しらべ かたで かずは かわります。

カナダの しらべでは、アイス 100ミリリットルを 5びょう いない で たべた グループの 27%、ゆっくり たべた グループの 13%に いたみが でました[6]。ゆっくり たべても、なる 人は います。

年齢や体質による差

国際頭痛分類には、この頭痛の有病率は学生で62%、大人では22〜36%と書かれています[2]。子どものほうが多いように見えますが、国や調べ方で数字は変わるとされ、「子どもなら全員」というわけではありません。また、一般の人に広くみられ、とくに片頭痛のある人に多いとも述べられています[2]。

食べる速さで変わる

日本の医学解説によると、カナダの調査では、100mLのアイスを5秒以内に食べたグループの27%、ゆっくり食べたグループの13%に頭痛が出ました[6]。速く食べると増えますが、ゆっくりでも起こる人はいます。台湾の中学生8,000人あまりの調査では、約40%が経験していたそうです[6]。

ICHD-3は有病率を学生で62%、成人で22〜36%とし、一般人口に多く、とくに片頭痛の既往のある者で多いとする[2]。台湾の中学生8,359人の調査(解説では約9,000人と紹介)では約40%が経験しており、この調査でも片頭痛のある者に多かったと紹介されている[6]。調査ごとに集団と定義が異なるため、数値の直接比較はできない。

カナダの調査では、100mLを5秒以内に摂取した群で27%、ゆっくり摂取した群で13%に頭痛が生じた[6]。速度が誘因になりうるが、ゆっくりでも起こる(ICHD-3も同様の記述)[2]。なお、これらの数値は二次的な解説を経ており、原著での確認が望ましい。

3. あたまの 中で、ちが ふえていた

3. 実験で見えた、脳の血流の急な増加

3. 脳血流の測定 ── 2012年の学会報告と2019年の研究

2012ねん、アメリカの 大学の 人たちが、げんきな 大人 13人に きょうりょく して もらいました。こおりみずを ストローで 口の 上に あてて のんで もらい、あたまの 中の ちの ながれを はかりました[3]。

すると、いたいと かんじた ころに、あたまの 中の ある けっかんが きゅうに ひろがり、ちが たくさん ながれていました。けっかんが また ちぢむと、いたみも ひいて いきました[3]。

ふえた ちの ながれが、いたみと かんけいが あるかも しれません。ただ、ひとの かずが すくない じっけんなので、これだけで げんいんと きめる ことは できません。

13人の実験

2012年、ハーバード大学医学部の研究者らは、健康な成人13人に協力してもらいました。氷水をストローで上あごに当てながら飲み、脳の動脈の血流を、頭の外から測る装置で調べています[3]。すると、前大脳動脈が急に広がって血流が増えた時期と、痛みを感じた時期が重なり、動脈が縮むと痛みはひいたそうです[3]。

2019年のドイツの研究

2019年のドイツの研究でも、氷水を飲むと全員で中大脳動脈の血流の速さが上がりました。頭痛が起きた人は、起きなかった人よりその速さが有意に高かったと報告されています[4]。血流の変化は全員に起きて、痛む人のほうがその程度が大きかった、という結果です。

ただし2012年の報告は学会の要旨で、人数も少なく、痛みの原因を証明したとまでは言えません。

Serradorらは2012年の学会(Experimental Biology)で、健康な成人13人に氷水をストローで上あごに当てて飲ませ、経頭蓋ドップラーで脳動脈の血流を測った結果を報告した。前大脳動脈が急速に拡張して血流が増え、その時期が自覚した痛みと一致し、動脈が収縮すると痛みも消えた[3]。学会要旨であり、この報告のみでは因果は示せない。

Hensel らの2019年の研究(Front Neurol 10:677)では、氷水の摂取で全被験者に血管抵抗の低下と中大脳動脈の平均血流速度の上昇がみられた。頭痛が誘発された群では、非誘発群より血流速度が有意に高かった[4]。血流変化は痛みの有無にかかわらず生じ、程度が痛みと関連するという構図になる。

4. なぜ いたく なるの? ふたつの 考え

4. 血管が原因か、神経が原因か

4. 仮説 ── 血管拡張説と三叉神経による関連痛説

いたみの わけには、ふたつの 考えが あります[5]。

ひとつめは、ひえた 口や のどを あたためようと して、あたまに つながる けっかんが ひろがる、という 考えです。

ふたつめは、「さんさしんけい」という、かおや あたまの かんじを のうに つたえる しんけいの 話です。口や のどで つめたさを うけとった しんけいが、あたまの いたみと まちがえて つたえて しまうのでは、という 考えが あります[5]。

どちらが 正しいのか、まだ きまって いません。りょうほう かもしれません。

血管説

冷えた口や喉を温めようとして、頭につながる血管が広がり、それが痛みのもとになるという考え方があります[5]。先の実験で血流が急に増えていたことは、この説と合います。

神経説(関連痛)

もう一つは、口の上や喉にある三叉神経が冷たさで刺激され、脳が痛みを頭のものと勘違いする、という考え方です[5]。三叉神経は、顔や頭の感覚を脳に伝える神経です。ハーバード大学の医療情報サイトは、血管が急に広がることが三叉神経を刺激するのだろう、と説明しています[1]。この場合は、2つの説がつながっていることになります。

日本の解説では、どちらか、または両方とされていて、決着はついていません[5]。

日本の医療機関・企業の解説では、原因として2つが挙げられる。①冷えた口腔・咽頭を温めるために頭部の血管が拡張する(血管拡張説)。②口蓋・咽頭の三叉神経が刺激され、脳が冷刺激を頭部の痛みと誤認する関連痛(三叉神経説)[5]。どちらか、または両方とされ、決着はついていない。

Harvard Healthは、動脈壁の急な拡張が三叉神経を活性化するのだろう(likely)と述べる[1]。これは二つの説を連続した過程として結ぶ見方だが、推測にとどまる。三叉神経は顔面と頭部の感覚を中枢に伝える神経で、口蓋の冷刺激と前頭部の痛みという部位のずれは、関連痛の考え方と整合する。

5. まだ わからない ことも ある

5. 「なぜ血が増えるのか」は、まだ推測

5. 未解決の問い ── 血流増加の意味と個人差

ちが ふえるのは、なぜでしょう。じっけんを した 人たちは、こんな 考えを 出しています[3]。

ひとつは、あたまが ひえないように、あたたかい ちを おくる はたらきかも しれない、という 考えです。もうひとつは、きゅうに ちが ふえて、あたまの 中の おしあう ちからが 上がり、いたく なるのかも しれない、という 考えです。

どちらも すいそくで、たしかめられては いません。なる 人と ならない 人が いる わけも、まだ わかって いません。

研究者が考えたこと

2012年の実験を行った研究者は、血管の拡張は、脳が冷えないように温かい血を送る仕組みかもしれない、と推測しました。また、血が急に増えて頭の中の圧力が上がり、それが痛みを起こすのかもしれない、とも述べています[3]。

これらは推測で、確かめられたわけではありません。

残っている問い

ならない人がいる理由や、片頭痛のある人に多い理由も、はっきりとは分かっていません。この頭痛が、体を守るしくみの副作用なのか、別の理由があるのかは、これからの研究しだいです。

2012年の報告の研究者は、血管拡張が脳を冷やさないための温血の輸送である可能性と、急な血流増加が頭蓋内圧を高めて痛みを生じさせる可能性を挙げている[3]。いずれも推測であり、確定した機序ではない。

個人差の理由(なぜ人によって出方が違うか、なぜ片頭痛のある人に多いか)も未解明である。血管説と神経説の関係、血流変化が原因か結果かの区別、この頭痛の生物学的な意味は、いずれも今後の研究に委ねられている。

自分でも しらべて みたく なったら

自分でも調べてみたくなったら

自分でも調べてみたくなったら

つぎに つめたい ものを たべる ときは、じぶんの ペースで ゆっくり たべて みましょう。いたく なった ときと ならない ときで、なにが ちがうか、きが ついた ことを おぼえて おきましょう。もし いたく なったら、すぐに やめて、あたためて ください。いそいで たべて わざと いたく する ひつようは ありません。

いたく なった とき、したを 口の 上に おしつけて あたためると いい、という 話も あります[1]。ただし、ほんとうに きくのかは、はっきり していません。

今日できること:次に冷たいものを食べるとき、自分のペースでゆっくり食べて、痛くなる日とならない日で何がちがうか、気づいたことをメモしてみます。痛みが出たらすぐにやめ、わざと急いで食べて痛くする必要はありません。ハーバード大学の医療情報サイトは、舌を口の上に押し当てて温める、ゆっくり食べる、温かい飲み物を用意する、という対処を挙げています[1]。効果ははっきりしていません。

この記事は医療の助言ではありません。頭痛が強い、何度も起こるなどの場合は、医師に相談してください。

原資料のうち、Serrador らの報告は[3]、学会要旨の紹介記事であり、要旨そのもの(FASEB J 26 suppl 685.4)を探して読むと、測定条件が確かめられる。Hensel らの論文[4]は、血流速度の測定方法と、頭痛の有無による群分けが具体的に書かれている。ICHD-3の該当項目[2]は、診断基準の文言を確認できる。これらは英語の資料である。

日本語では、羊土社の解説[6]や江崎グリコの解説[5]が読める。翼口蓋神経節の関与を述べる解説もあるが、本稿では医学の一次資料で確認できなかったため扱っていない。また、この記事は医療上の助言ではない。

しらべた もとの じょうほう

参考にした情報源

参考にした情報源と、その使い方

出典について:頭痛の国際分類、医療情報サイト、実験の紹介記事と論文、日本語の医療解説を使った。何に使ったかは各項目の( )に書いた。

  1. Harvard Health「What causes brain freeze?」。https://www.health.harvard.edu/diseases-and-conditions/what-causes-brain-freeze (起きる場所、三叉神経、対処の紹介)
  2. 国際頭痛分類第3版(ICHD-3)4.5.2。https://ichd-3.org/other-primary-headache-disorders/4-5-cold-stimulus-headache/4-5-2-headache-attributed-to-ingestion-or-inhalation-of-a-cold-stimulus/ (定義、持続時間、有病率、片頭痛との関係)
  3. ScienceDaily「Brain freeze」(2012年4月、Experimental Biology での発表の紹介)。https://www.sciencedaily.com/releases/2012/04/120422231742.htm (13人の血流測定と研究者の推測)
  4. Hensel et al. (2019) Frontiers in Neurology 10:677。https://www.frontiersin.org/journals/neurology/articles/10.3389/fneur.2019.00677/pdf (中大脳動脈の血流速度の研究)
  5. 江崎グリコ「アイスクリーム頭痛」。https://www.glico.com/jp/health/contents/bokujoshibori12/ (血管説と三叉神経説の日本語の解説)
  6. 羊土社 レジデントノート「アイスクリーム頭痛」。https://www.yodosha.co.jp/rnote/trivia/trivia_9784758115728.html (台湾・カナダの調査の紹介)

なおした ところ

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