1. きまって いるのは、おもさ だけ?
1. 決まっているのは「1斤」の重さだけなのか
1. 規約があるのは重さで、厚さには定めがない
ふくろの 近くに、「1きん」と かいて あるのを 見たことは ありますか。これは、パンが 340グラム より おもい ときに つかう ことばです。パンの かいしゃが つくる ルールで、そう きまって います[1]。
では、何まい切りかは、どうでしょう。こちらには、何まいに 切るかを きめた きまりは みあたりません。4まい切りも 6まい切りも 8まい切りも、お店に 出して よい のです。パン売り場では、サンドイッチ用の 10まい切りや 14まい切りも 見かけます[3]。
つまり、おもさは ルールで きまり、あつさは つくる 人と えらぶ 人に まかされて いる、と いう ことです。
食パンの袋に「1斤」と書いてあるのは、パン業界の公正競争規約で、1個の重さが340グラム以上のものに使う表示と決められているからです[1]。この斤表示は、平成24年(2012年)5月31日から、つけてもよい表示ではなく、必ずつける表示に変わりました[2]。
では、「何枚切り」はどうでしょう。こちらは何枚に切るかを定めた規約や法律は見当たらず、売り場には4枚切りから8枚切り、サンドイッチ用の10枚切りや14枚切りまで並びます[3]。厚さは目安で、パンの大きさにも決まりはないと、パンの情報サイトも説明しています[3]。
重さは規約で決まり、何枚に切るかは作る側と選ぶ側にまかされている。これが、この記事の出発点です。では、まかされた結果、売り場はどうなっているのでしょうか。
食パンの「1斤」は、包装食パンの表示に関する公正競争規約により、包装1個の重量が340グラム以上のものに表示すると定められている[1]。この斤表示は、平成24年(2012年)5月31日に、任意表示から必要表示事項、つまり義務表示へ変わった[2]。
一方、何枚に切るかを定めた規約や法律は見当たらない。パンの情報サイトは、売り場に4枚切りから8枚切り、サンドイッチ用の10枚切り・14枚切りが並ぶことを紹介したうえで、パンのサイズに決まりはなく、示される厚さはあくまで目安だと述べている[3]。
すなわち、重量には規約という枠があり、切る枚数には枠がない。枠のない部分は、売り手の品ぞろえと買い手の選択が決める。ならば、その選択は全国で同じなのか。次に売り場を比べる。
2. 関西と 関東では、どの あつさが 多いの?
2. 関西と関東で、売り場の主役がちがう
2. 出荷の割合で見る、関西と関東の厚さのちがい
パンの じょうほうサイトでは、関東の 売り場は 6まい切りが 大きな ばしょを とって いると しょうかいして います[3]。関西では 5まい切りが 中心で、4まい切りも 売れて いて、8まい切りは 少ないそうです。
ある パンの かいしゃの ロイヤルブレッドと いう 食パンでは、関西で 4まい切りと 5まい切りを あわせると、半分より 多いそうです[4]。関東では 6まい切りと 8まい切りで、10の うち 8近くです[4]。
つまり、関西は あつい ほうへ、関東は うすい ほうへ かたよって います。これは、1つの かいしゃの 食パンの ばあいの 数字です。
パンの情報サイトは、関東の売り場では6枚切りが大きな面積を占め、関西では5枚切りが主力で、8枚切りは少なく、4枚切りが売れていると紹介しています[3]。全国の売り場を調べた結果ではなく、サイトの見立てです。
数字でも見てみましょう。山崎製パンの「ロイヤルブレッド」では、関西は4枚切りと5枚切りで5割以上、関東は6枚切りと8枚切りで8割近くを占めるそうです[4]。関西は厚いほうへ、関東は薄いほうへ寄っています。
ただし、これは1つの会社の1つの商品での数字です。日本中のすべての食パンの割合ではないので、「傾向がある」と受け取るのがちょうどよいでしょう。
とはいえ、5枚切りと6枚切りの厚さは、そんなにちがうのでしょうか。
パンの情報サイトは、関東の売り場では6枚切りが大きな面積を占め、関西では5枚切りが主力で、8枚切りが少なく4枚切りが売れている、と見立てている[3]。この見立てに近い数字が、出荷の割合にも出ている。テレビ朝日の報道によれば、山崎製パンの「ロイヤルブレッド」では、関西で4枚切り・5枚切りが5割以上を占め、関東では6枚切り・8枚切りが8割近い[4]。
注意したいのは、この割合が1社の1商品の例だという点である。全メーカー・全商品の統計ではないので、「関西は厚め、関東は薄め」という傾向を示す一例として読むのが妥当だ。逆に、一例でも傾向がはっきり見えることが、地域差の存在を考える手がかりになる。
ところで、傾向が分かれる境目の厚さは、実際にはどれほどなのか。ここに意外な数字がある。
3. 4ミリの ちがいで、なにが かわるの?
3. たった4ミリで、食べたときの感じは変わるのか
3. 4ミリの差と食感:厚さの目安から計算できること
新聞の きじでは、5まい切りの ふつうの あつさは 24ミリ、6まい切りは 20ミリ です[5]。ちがいは 4ミリ、えんぴつの しんの 太さの 2ばいくらいです。それでも ちいきの ちがいが はっきり 出ると 書かれて います。
あつく 切ると、トーストした とき、外がわは カリカリで、中は もっちりします。8まい切りは、カリカリの 食かんを たのしめます[3]。
ひとつ、けいさんして みましょう。目あんの あつさに まい数を かけます。4まい切りは 3センチ×4、5まい切りは 2.4センチ×5、6まい切りは 2センチ×6、8まい切りは 1.5センチ×8 です。どれも だいたい 12センチに なります[3]。あつさの めやすを まい数ぶん たした 計算です。パンの 長さが きまって いると いう ことでは ありません。
日本経済新聞は、5枚切りの標準を24ミリ、6枚切りを20ミリとしています。たった4ミリの違いなのに、地域差は鮮明だと伝えています[5]。
この4ミリは、食べたときの感じに関わるようです。パンの情報サイトによると、厚切りにすると、外側はカリッと、内側はもっちりした食感が楽しめます。8枚切りなら、トーストでカリカリの食感になります[3]。
同じ資料にある厚さの目安(4枚切りは約3cm、5枚切りは約2.4cm、6枚切りは約2cm、8枚切りは約1.5cm)に、枚数をかけてみましょう。どれも約12cmになります[3]。これは、厚さの目安を枚数分足した計算です。1斤の長さそのものを示す数字ではありません。
熱量でも同じことが見えます。山崎製パンの「ロイヤルブレッド」では、1斤(6枚)の1枚あたりが169kcal、1斤(8枚)の1枚あたりが127kcalです[7]。それぞれ枚数をかけると、6枚で約1014kcal、8枚で約1016kcalで、ほぼ同じになります(筆者の計算)。厚さが変わっても、1斤ぶんの熱量はほぼ同じです。
日本経済新聞は、5枚切りの標準を24ミリ、6枚切りを20ミリとし、「たった4ミリの違いだが地域差は鮮明」と報じた[5]。4ミリは、厚さの比で見れば約2割にあたる(24÷20=1.2、筆者の計算)。厚さが変わると、焼いたときの食感にも違いが出る。
パンの情報サイトは、厚切りにすると外側はカリッと、内側はもっちりした食感が楽しめるとし、8枚切りではトーストでカリカリの食感が際立つと述べている[3]。焼き面の割合が変わると、食べたときの印象が変わる、という説明と読める。
同じサイトの目安の厚さ(4枚切り約3cm、5枚切り約2.4cm、6枚切り約2cm、8枚切り約1.5cm)に枚数をかけると、どれも約12cmである(筆者の計算)。これは厚さの目安を枚数分足した値で、1斤の長さを示すものではない。それでも、「何枚切り」が、同じ大きさの食パンを何枚に分けるかという選択だと考える手がかりにはなる。
この見方は熱量でも確かめられる。山崎製パンの「ロイヤルブレッド」は、1斤(6枚)の1枚あたりが169kcal、1斤(8枚)の1枚あたりが127kcalで[7]、枚数をかけると約1014kcalと約1016kcalになり、ほぼ等しい(筆者の計算)。ただし、これは同一銘柄の公表値どうしの比較であり、他社や別の食パンにそのまま当てはまるとは限らない。
では、なぜ関西は厚いほうへ寄ったのか。理由はまだ定まっていない。いくつかの説を見ていく。
4. どうして 関西では あつい パンが 人気なの?
4. 関西で厚切りが売れる理由は、はっきりしているのか
4. 地域差の理由として語られる説と、その根拠の強さ
じつは、はっきりした りゆうは、まだ きまって いません。ただ、「こうでは ないか」という 話は いくつか あります。
ひとつは、食かんです。関西では もっちりした 食かんが すきな 人が 多く、あつく 切ると もっちりを 楽しめるから、と いう 考えが あります[3]。もうひとつは、関西が 「こな」を つかった 食べものの 文化だから、という 考えです[4]。
どちらも、そう かんがえる 人が いる、という 話です。はっきり しょうめいされた わけでは ありません。
むかしの ことを 話す 人も います。昭和60ねんごろ、神戸屋が 6まい切りを すすめる キャンペーンを して、うすい 8まい切りから あつい ほうへ うつる きっかけに なったと いわれます[5]。5まい切りは、お店と おきゃくさんの やりとりの 中で、しぜんに 広がったのでは ないかと、神戸屋の 人が 考えて います[5]。
関西で厚切りが売れる理由は、はっきりとは分かっていません。ただし、いくつかの説が語られています。
ひとつは食感の説です。もっちりした食感が好まれる関西で、外側がカリッと内側がもっちりする厚切りがよく売れるようになったのではないか、というものです[3]。もうひとつは、「関西は粉もの文化なので、ふっくらもっちりが好まれ、厚切りが人気なのではないか」という見方です[4]。どちらも、そう考える人がいるという段階の説明です。
流れを歴史で見ると、日本経済新聞は、薄い8枚切りから厚切りへの扉を開いたのは、昭和60年(1985年)ごろに始まった神戸屋の6枚切りキャンペーンだったと伝えています[5]。5枚切りについては、神戸屋の専務理事が、販売する店と客とのやりとりから自然に生まれ、広がったのではないかと推測しています[5]。
ここまでの話は、確かめられた原因ではなく、資料で紹介されている説や関係者の推測です。食感の好み、売り手の提案、店と客のやりとりが重なったのかもしれませんが、「一番の原因」と言い切れる段階ではありません。
関西で厚切りが売れる理由は、確定していない。示されているのは仮説である。第一に食感説。パンの情報サイトは、厚切りは外がカリッと中がもっちりするため、もっちりした食感が好まれる関西でよく売れるようになったのではないか、という説を紹介する[3]。第二に食文化説。テレビ朝日の報道は、関西は粉もの文化でふっくらもっちりが好まれるから厚切りが人気なのではないか、という関係者の見方を伝える[4]。いずれも「ではないか」という推測の域を出ず、検証された結論ではない。
これに対し、経緯の説明は少し具体的である。日本経済新聞は、薄い8枚切りから厚切りへの扉を開いたのが、昭和60年(1985年)ごろに始まった神戸屋の6枚切りキャンペーンだったと報じた[5]。ただしこれは、厚切りへの流れの「きっかけ」の一つであり、関西と関東の差そのものの説明ではない。
5枚切りの成り立ちについては、神戸屋の専務理事が、店と客とのやりとりから自然に生まれ広がったのではないかと推測している[5]。これも当事者の推測であり、裏づける記録が示されているわけではない。
以上から言えるのは、食感の好み、粉もの文化という見方、売り手の提案、店と客のやりとりという複数の要素が語られているが、単独の原因として確立したものはない、ということである。一つの説に寄りかからず、並べて受け取る姿勢が要る。
5. パンは、どうして さめてから 切るの?
5. 工場では、焼いたパンをなぜ冷ましてから切るのか
5. 切る前の1時間30分:スライスの工程が決めること
お店で 売っている 食パンは、はじめから 切って あります。工場では、やきあがった パンを かたから 出して、1時間30ぷんほど しぜんに さまして から 切ります[6]。
あつい まま 切ると、パンが ボロボロに なって しまうからです[6]。
まい数に ちがいが 出るのは、この 切る ところです。切る まえの パンを、4まいに 分けるか、8まいに 分けるか。その ちがいで、1まいの あつさが かわり、ふくろの 「何まい切り」に なります。
ここまで、売り場に並ぶ厚さの話をしてきました。作る側では、この厚さはどの場面で決まるのでしょうか。
パンの工場見学の記事によると、焼き上がった食パンは、型から出して、自然に1時間30分ほど冷まします。冷ましてからスライスするのは、熱いまま切るとボロボロになってしまうからです[6]。
切る厚さは、この最後の工程で決まります。同じサイズの食パンでも、切る厚さを変えれば枚数が変わります。枚数は生地の種類ではなく、切り方で決まる部分が大きいということです。
切る厚さを変えられる工程があるので、売り場の割合が地域ごとにちがえば、地域向けに切る枚数を変えることはできます。ただ、メーカーが地域ごとに枚数をどう分けているかは、資料からは分かりません。出荷の割合の地域差は、そうした切り分けの結果かもしれない、という程度の道すじです。
厚さはどの工程で決まるのか。パンの工場見学の記事によれば、焼き上がった食パンは型から出し、自然に1時間30分ほど冷ましてからスライスされる。熱いまま切るとボロボロになるためだ[6]。
冷却を挟んでから切る工程があるということは、厚さは生地の配合ではなく、最後の切断の設定で決まる、と考えられる。同じサイズの食パンでも、切る厚さを変えれば枚数が変わる。先に見た約12cmも、厚さの目安を枚数分足した計算値であり、1斤の長さそのものではない。ただ、切る前のパンを何枚に分けるかで1枚の厚さが決まる、という見方とは合う。
この構造は、地域差の読み方にも関わる。出荷の割合が関西と関東でちがうのは、パンそのものが別物なのではなく、切る枚数の配分に地域差が表れている可能性がある。
6. 家の 食パンで、たしかめて みよう
6. 家の食パンで、厚さの計算を確かめる
6. 袋の表示と厚さから、1斤の中身を計算で確かめる
おうちに 食パンが あったら、ふくろを 見て みましょう。
1つめ。「何まい切り」かと、「1きん」の ひょうじが あるかを 見ます。
2つめ。パンの 1まいの あつさを、じょうぎで はかります。それに まい数を かけると、なん センチに なりましたか。この ページの 「めやすの あつさを たすと 12センチ」と、どれくらい ちがうか 見て みましょう。
パンを 切るときは、おうちの 人と いっしょに、あぶなく ない やりかたで しましょう。お店で 見かけた 食パンの まい数も、メモして くらべると おもしろいです。
家に食パンがあれば、袋をまず見てください。「何枚切り」か、「1斤」の表示があるか、その重さの表示はどうなっているかを読み取ります。
次に、パン1枚の厚さを定規で測り、枚数をかけてみます。この記事では目安の厚さを枚数分足して約12cmになる計算をしましたが、実測の数字がどれくらいちがうか見てみましょう。ちがいは、商品や測り方によるものかもしれません。
スーパーに行く機会があれば、パン売り場で、枚数ごとの棚の広さを見比べてみましょう。この記事の例と似ているでしょうか。この記事の数字は、あくまで1社の例です。自分の目で見た売り場が、新しい材料になります。
さらに読むなら、日本経済新聞の記事(出典[5])に、神戸屋の話が載っています。ほかの出典も合わせて読むと、「何枚切り」の背景が立体的に見えてきます。
袋の「何枚切り」「1斤」の表示を読む。1枚の厚さを定規で測り、枚数をかけて、目安の厚さを枚数分足した約12cmと比べる。数字がずれたら、商品や測り方によるちがいかもしれない。この記事の目安がすべての食パンに当てはまるわけではない。
売り場では、枚数ごとの棚の広さ、売り切れる順番を見る。1社の出荷割合から傾向が見える(出典[4])のだから、自分の住む地域の売り場にも、何らかの傾向が見られるかもしれない。近くの売り場で棚の広さや並ぶ種類を見て、この記事の例と似ているか比べてみよう。
読み進めるなら、日本経済新聞の記事(出典[5])で神戸屋の6枚切りキャンペーンに触れた箇所と、パンの情報サイト(出典[3])の厚さの目安を、並べて読むとよい。1斤の規約(出典[1])の本文と合わせると、「重さは決まり、厚さは決まらない」という構造が、一次資料から二次資料まで通して確認できる。
しらべた もとの じょうほう
参考にした情報源
参考にした情報源と、その使い方
本文の[ ]の番号は、下の出典の番号です。数字や説は、それぞれの資料が述べている範囲で書いています。
- 全国包装食パン公正取引協議会「包装食パンの表示に関する公正競争規約」 https://www.pan-koutorikyo.jp/rules.html (1斤を340g以上とする定義)
- 同協議会「包装食パンの斤表示(保証内容重量の表示)の義務化」 https://www.pan-koutorikyo.jp/display.html (義務表示になった日付)
- パンのはなし「Q4 東西で食パンの好みも違う?」 https://www.panstory.jp/secret/secret04.html (厚さの種類・目安・東西の売り場・食感の説)
- テレビ朝日「食パンは関東と関西で違う? 売り場を見ると“明確な違い” 関西出身者に聞いてみた」 https://news.tv-asahi.co.jp/news_society/articles/900005571.html (1社の出荷割合と、粉もの文化の見方)
- 日本経済新聞「食パン、関西なぜ厚切り?(謎解きクルーズ)」 https://www.nikkei.com/article/DGXLAS09ABD01_U4A900C1AA1P00/ (5枚切りと6枚切りの標準の厚さ、神戸屋の話)
- パンのはなし「パンの工場見学」 https://www.panstory.jp/pankojo/pankojo.html (冷ましてからスライスする工程)
- 山崎製パン「ロイヤルブレッド」 https://www.yamazakipan.co.jp/brand/royalbread/ (6枚・8枚の1枚あたりの熱量)
なおした ところ
更新履歴
更新履歴(改版の記録)
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