1. あるく とき、おしりの 大きな 筋肉は はたらいて いるの?
1. おしりでいちばん大きな筋肉は、歩くときにはほとんど働かない
1. 殿筋で最大の大殿筋は、平地や上り坂を歩くときにどれだけ働くのか
おしりには、筋肉が いくつか あります。その なかで いちばん 大きいのが、大殿筋です。いちばん そとがわに あって、ふとももを うしろへ ふる ときに はたらきます。
ところが、この 大きな 筋肉は、たいらな ところや のぼりざかを あるく ときには、ほとんど はたらいて いないと ほうこくした けんきゅうが あります。筋肉が はたらく とき、ちいさな 電気が でます。それを はかる きかいで しらべた けっかです。
たって いる ときも、大殿筋は はたらかないと かかれた 本が あります。では、あるく とき、からだを ささえて いるのは だれでしょう。
大殿筋は、おしりの筋肉(殿筋)の中でいちばん大きく、いちばん表面に近いところにあります[1]。主な働きは、股関節を伸ばすこと、つまり太ももを後ろへ振ることです。日本語の解説では、太ももを外へ回す動きも挙げられています[2]。「体でいちばん大きな筋肉」と紹介されることもありますが、測り方で変わるので、ここでは「おしりの筋肉の中で最大」にとどめます。
これほど大きな筋肉なら、歩くたびに大活躍していそうです。ところが、筋肉が働くときに出る電気を記録する筋電図で調べた研究では、平らな道と上り坂を歩くとき、大殿筋はほとんど活動していませんでした[3]。「ほとんど」であって、まったく働かないわけではありません。立っているときは働かず、歩いたり階段を上ったりするときに、とぎれとぎれに働くという解説もあります[1]。
歩くとき、おしりの大きな筋肉は控えめなのです。では、歩く動きの中で、体がふらつかないように支えているのは、おしりのどこなのでしょうか。
大殿筋は、殿筋(おしりの筋肉)の三つの中でもっとも大きく、いちばん表面に近い層にある[1]。主な作用は股関節の伸展、つまり太ももを後ろへ振ることで、日本語の解説は外旋も挙げる[2]。「体で最大の筋肉」と書かれることもあるが、出典によって扱いが割れるので、ここでは殿筋の中での最大にとどめる。
大殿筋は、おしりでいちばん大きい筋肉だ。歩くときには、どれほど活動するのだろうか。ところが、筋電図で調べたLiebermanらの研究は、平地を歩くときと上り坂を歩くときの大殿筋が、ほとんど活動していないと報告した[3]。「ほとんど」と書くのは、完全に停止しているのではないためだ。別の解説では、立っているときには働かず、歩行や階段の上りでは断続的に働くとされる[1]。ただしこれは単一の解説の記述なので、ここでは参考にとどめる。
大殿筋が目立たないなら、歩行中に体のぐらつきを抑えているのは別の筋肉のはずだ。次に、片足で体を支えるときに骨盤を支える筋肉を見てみる。
2. あるく とき、ふらふら しないのは だれの おかげ?
2. 歩くときに片足で立つ一瞬を、中殿筋が支えている
2. 歩行中の片足立ちの時期に、中殿筋は骨盤をどう安定させるのか
あるく とき、かたほうの 足が 地めんから はなれて、もう かたほうの 足だけで からだを ささえる いっしゅんが あります。これが、左右で こうたいに くりかえされます。
ここで がんばるのが、中殿筋です。おしりの 筋肉の なかまで、骨盤が かたむかないように ささえます。わかい 男の人 11人の あるく うごきを もとに、コンピュータで しらべた けんきゅうでは、かたあしで ささえる あいだ、中殿筋が いちばん 大きく かかわって いました。
もし 中殿筋が よわると、はんたいがわの 骨盤が さがる ことが あると されて います。つまり あるく ときの おしりは、すすむ ちからより、ぐらつかない ちからを だして いるのです。
歩くときには、右足と左足が交互に地面を離れます。片足が宙に浮いているあいだ、体は反対側の足だけで支えられています。この「片足で立つ時期」を立脚相といい、骨盤が傾かないように保つ必要があります。
この時期に、股関節を安定させるのにもっとも大きく関わるのが中殿筋だと、筋骨格モデルを使った研究が示しています。健康な若い男性11名の歩く動きをもとにしたシミュレーションの結果です[5]。中殿筋が弱ると、反対側の骨盤が下がる「トレンデレンブルグ現象」が起きるとも説明されます。なお、中殿筋の下にある小殿筋との役割分担は、研究によって結論が分かれています[5]。
歩くときのおしりの筋肉は、前へ進む力を出すというより、骨盤をぐらつかせない支えに回っているようです。大殿筋の活動が小さいあいだ、中殿筋が働いているわけです。では、動きが走りに変わったとき、大殿筋の活動はどうなるのでしょうか。
歩行では、片足が地面を離れている間、もう一方の脚だけで体重を受ける。この立脚相に骨盤が傾けば、上半身がぐらついてしまう。そこで安定化の役を担うのが中殿筋である。川田らの筋骨格モデル研究は、健常な若年男性11名の歩行をもとにしたシミュレーションで、立脚相の股関節の安定化に最も大きく関与するのは中殿筋だと示した[5]。
この筋肉が弱ると、反対側の骨盤が下がるトレンデレンブルグ現象が起きると説明される。ただし、この現象については今回別の資料を取っていないので、上の研究の枠内で理解しておく。小殿筋との役割分担も、研究によって結論が分かれている[5]。しかもこれは11名のシミュレーションにすぎず、走る場合や子どもにそのまま当てはまるとは限らない。
この結果からは、歩くときのおしりの筋肉は「前へ進める」役より「骨盤をぐらつかせない」役に回っていると読める。大殿筋の出番が少ないことと、つじつまが合う。それなら、歩きが走りに変わると大殿筋はどうなるのか。
3. はしると、おしりの 筋肉は どうなるの?
3. 走りはじめると、大殿筋の活動が大きくなる
3. 走ると大殿筋の活動が大きく増えるのは、何を抑えるためか
こんどは はしって みましょう。同じ けんきゅうで しらべると、大殿筋は あるく ときより、はしる ときに、ずっと 大きく はたらいて いました。
はしると、うわ半身が まえに たおれそうに なります。ふりだした 足にも いきおいが つきます。大殿筋は、まえに たおれるのを おさえたり、ふりだした 足に ブレーキを かけたり する、と まとめられて います。
じてんしゃで さかを くだる とき、ブレーキを かけるのに にて います。ただし、これは たとえです。からだの ブレーキは、じてんしゃとは しくみが ちがいます。
同じ研究で、走るときの大殿筋を調べると、歩くときよりずっと大きく活動していました[3]。
走るときの体は、歩くときよりも前に倒れやすく、振り出した脚にも勢いがつきます。研究の抄録は、大殿筋がこの二つを抑える役をしていると述べています。上半身が前に倒れすぎないようにすることと、振り出した脚にブレーキをかけることです[3]。自転車で坂を下るとき、ブレーキを握って勢いを抑えるのに似ています。ただし、体のブレーキは自転車のブレーキとは仕組みがちがう、たとえ話にすぎません。
歩くときは静かで、走ると活動が大きくなる。大殿筋はそんな性質の筋肉です。もうひとつ、まだ登場していない場面があります。椅子に座っているとき、おしりでは何が起きているのでしょうか。
走る場合、同じ研究では大殿筋の活動が歩行よりはるかに大きかった[3]。抄録によれば、その役割は、上半身が前へ倒れ込むのを抑えることと、振り出した脚に制動をかけることである。走ると身体は歩行より前へ倒れやすく、脚の振りにも勢いがつくため、その両方を受け止める筋肉が必要になる、という筋道で理解できる。ただし、これは抄録の要約を整理した読み方であり、各動作の力の大きさまでは書かれていない。
つまり大殿筋は、歩行ではあまり使われず、走行で大きく動員される筋肉という、はっきりした二面性を持つ。この性質が、のちに述べる進化の議論の出発点にもなる。
ここまでは動いているときの話だった。動きを止めて椅子に座ったとき、おしりの筋肉と骨は何をしているのか。
4. すわる とき、体の おもさは どこで うけて いるの?
4. 座るとき、体重の大部分を受けるのは座骨という骨
4. 座位で体重を受ける座骨結節と、大殿筋の補助的な役割
いすに すわると、おしりの おにくで うけて いる ような きが します。でも、ほんとうは、骨盤の したに ある 座骨と いう 骨が、からだの おもさの 大ぶぶんを うけて いると いわれます。
たいらで かたい ところに、まっすぐ すわった ときの はなしです。ふかふかの クッションや、ななめに すわった ときは、かわるかもしれません。
すわって いる ときは、大殿筋も しずかに ちぢんで、座骨に かかる おもさを やわらげる、と いう せつめいも あります。
座るときの話に移ります。椅子に座ると、おしりの肉で体を受けている気がします。しかし臨床の資料は、平らで硬い面にまっすぐ座ったとき、体重の大部分を受けるのは骨盤の底にある座骨(座骨結節)だと説明します[4]。座骨は、骨盤をつくる骨の一つで、日常の言葉では「おしりの骨」とも呼ばれます。
大殿筋もここに関わるといわれます。座っているとき、大殿筋は静かに縮んで、体幹の重さが座骨にかける圧力をやわらげるという解説があります[1]。この働きは一つの解説で紹介されています。座骨のまわりの脂肪が、クッションとして働くかどうかについては、今回の資料からは言えません。
歩く、走る、座る。おしりの筋肉と骨は、動きに合わせて役を替えています。そうだとすると、ヒトのおしりが大きいことには、意味があるのでしょうか。
座位では、体重の受け皿が筋肉から骨に切り替わる。臨床資料は、平らで硬い面に中立的な姿勢で座ったとき、体重の大部分を支えるのは座骨結節だと述べる[4]。座骨は寛骨を構成する骨の一つで、日常語では「おしりの骨」とも呼ばれる。条件は「平らで硬い面に、まっすぐ座ったとき」であり、柔らかいクッションや姿勢が崩れた状態に、そのまま当てはめることはできない。
大殿筋の位置づけは、立位とも座位とも違う。ある解説は、座位では大殿筋が静的に収縮して、体幹の重さが座骨にかける圧力を和らげるとし、立位では働かないとする[1]。ただしこの記述は一つの出典にしか見られないので、断定は避けたい。座骨のまわりの脂肪や皮下組織がクッションになるという話は、今回使った資料に書かれていないため扱わない。
歩行では中殿筋が骨盤を支え、走行では大殿筋の活動が増え、座位では座骨が体重の大部分を受けることを見てきた。この分担の中で、とくに大殿筋の「走る場面で働く」性質は、ヒトという種に特有なのだろうか。
5. ヒトの おしりが 大きいのは、はしる ことと かんけいが あるの?
5. ヒトのおしりが大きいことは、走る力と関わっているのか
5. 大殿筋と腸骨の進化:走る力と二足歩行は、どこまで分かっているのか
日本語の せつめいでは、ヒトは 二本の 足で あるくので、四本あしの サルなどより、大殿筋が はったつして いる と されます。
さらに、論文では、大殿筋が 大きく なった ことは、ヒトが はしる ちからを つけて いく うえで 大切だった かのうせいが 高い、と かかれて います。ただし、いつ 大きく なったのかの 証拠は、はっきり して いません。
2025ねんには、骨盤の うえの ひろがった 骨が、二つの だんかいで かたちを かえて、二本足で あるく からだの へんかに かかわった、と ほうこくする 論文も でました。
日本語の解説によれば、ヒトは直立二足歩行をするため、四足歩行のサルなどと比べて大殿筋が目立つとされます[2]。さきほどの論文は、さらに踏みこみます。ヒトの大殿筋は大きさ・形・働きに特徴があり、歩くときにあまり使われないことから、大殿筋が大きくなったことは、人類が走る力を得ていく上で重要だった可能性が高い、と述べます[3]。「走るためにおしりが大きくなった」と言い切っているのではなく、「可能性が高い」と書かれている点に注意が必要です。いつ大きくなったかの証拠は、はっきりしないとも書かれています。
筋肉がつく骨にも、変化がありました。骨盤の上の広がった部分である腸骨は、直立姿勢を保つ殿筋がつく場所で、類人猿とは形が違います。2025年に発表されたNature論文は、腸骨が二段階の構造の変化を経て、二足歩行を可能にしたと報告しています[6]。
おしりは、筋肉と骨がそろって、立って歩き、走るヒトの体を作ってきたようです。この見方は、自分の体でも少し確かめられます。
大殿筋が大きいのは、ヒトが直立二足歩行をするからだ、と日本語の解説は説明する。四足歩行のサルなどと比べても目立つという[2]。しかし、歩行中の大殿筋はほとんど活動していなかった。歩くときの活動だけでは、大殿筋が大きい理由を説明しきれないように見える。
Liebermanらの研究は、走る能力との関係を提案している。ヒトの大殿筋は大きさ・解剖・機能の点で特徴的で、歩行ではあまり使われない。そのため、大殿筋の拡大は、ヒト族の走る能力の進化において重要だった可能性が高い、と述べる[3]。言い切りではなく「可能性が高い」であること、さらに、大殿筋がいつ大きくなったのかを示す化石の証拠は曖昧とも書かれていることに注意したい。
骨の側からの研究もある。腸骨は骨盤の上部で大きく広がった部分で、直立姿勢を保つ殿筋の付着部であり、類人猿とは形が異なる。2025年のNature論文(Senevirathneら)は、腸骨が二段階の構造変化を経て二足歩行を可能にしたと報告した。日本語ハイライトに基づく紹介のため、詳しい中身は原典で確かめる必要がある[6]。
こうして見ると、大殿筋の大きさと歩行・走行の関係は、筋肉と骨の研究からそれぞれ考えられている。この記事の最後に、自分の体で確かめられる範囲を示す。
6. じぶんの おしりを たしかめて みよう
6. 座骨を探し、歩くときのおしりの横の動きを手で感じてみる
6. 座骨の位置を自分で探し、歩行中のおしりの横の動きを手で感じる
すわって さがす
かたい いすに すわって、手を おしりの したに そっと いれて みましょう。ごつごつした 骨の ところが、あるでしょうか。それが 座骨です。かんじ かたは 人に よって ちがうので、わからなくても だいじょうぶです。
あるいて くらべる
たいらで あんぜんな ところで、おしりの よこに 手を あてて、ゆっくり あるいて みます。あしを ついた ときに、よこの 筋肉が どう うごくか、かんじて みましょう。手で わかる かたさは、きかいで はかる はたらきと おなじでは ありません。
しらべた もとの じょうほう
参考にした情報源
参考にした情報源と、その使い方
本文で使った資料です。
- Kenhub, Gluteus maximus muscle. https://www.kenhub.com/en/library/anatomy/gluteus-maximus-muscle (大殿筋の大きさと主な働き、座位・立位での働き)
- Wikipedia日本語版「大殿筋」. https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A4%A7%E6%AE%BF%E7%AD%8B (作用と、ヒトでの発達の説明)
- Lieberman et al., The human gluteus maximus and its role in running, J Exp Biol 209:2143 (2006)(抄録). https://experts.arizona.edu/en/publications/the-human-gluteus-maximus-and-its-role-in-running/ (歩行と走行での大殿筋の活動、走る力との関係)
- Queensland Spinal Cord Injuries Service, Ischial tuberosity. https://qscis.health.qld.gov.au/resources/skin/ischial-tuberosity/ (座骨結節が座位で体重を受けること)
- 川田ほか, 理学療法学 Supplement 44 (2016)(筋骨格モデル研究). https://www.jstage.jst.go.jp/article/cjpt/2016/0/2016_0492/_article/-char/ja (歩行の片足立ちの時期と中殿筋)
- Nature Asia 日本語ハイライト(Senevirathne et al., Nature 2025). https://www.natureasia.com/ja-jp/research/highlight/15320 (腸骨の構造変化と二足歩行)
なおした ところ
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