1. 牛は 1日に、どれだけ 食べるの?
1. 牛は1日に、人ひとり分ほどの草を食べる
1. 乳牛の1日の摂取量 青草50〜60kgが意味すること
牛乳を 出す 牛は、1日に 青草なら 50〜60kg 食べます[1]。体重が 50kgの 人ひとりぶんと 同じくらいか、それより 重い 草です。水も 60〜80リットル のみます。1リットルの ペットボトルなら、60〜80本ぶんです。
そうして 出る 牛乳は、1日に 20〜30リットルです[1]。たくさん 食べて、たくさん のんで、たくさん 出す。牛の 1日は 大いそがしです。
ただし、50〜60kgは、水を たくさん ふくんだ 青草の 重さです。かわかした 草なら、およそ 15kgと 書かれています[1]。草の ようすで 重さは かわるので、1つの 数字だけでは いえません。では、牛は 草を 山もりに 食べて いるだけなのでしょうか。
牛乳を出すホルスタインのような乳牛は、1日に青草なら50〜60kgを食べ、60〜80Lの水を飲み、20〜30Lの生乳を出す、とJミルクの冊子にあります[1]。水は1Lのペットボトルで60〜80本分です。ふんは20〜40kg、尿は6〜12Lと書かれています。
50〜60kgという数字は、水分の多い青草の重さです。干した草なら、同じ冊子で約15kgとされています[1]。青草の重さをそのまま「栄養の量」として受け取らないほうがよさそうです。草の状態で数字が大きく変わるので、「牛は1日に○○kg食べる」と1つに決めて言うのは難しいのです。それでは、牛は草だけを山のように食べているのでしょうか。
Jミルクの冊子によると、乳牛は1日に青草なら50〜60kg、乾燥した草なら約15kgを食べ、水60〜80Lを飲み、生乳20〜30Lを出す。排せつは糞20〜40kg、尿6〜12Lである[1]。体の大きさの割に、出入りする量が桁外れに多い。
ここで注意したいのは、青草の50〜60kgが乾燥重量ではない点である。青草は水分が多いため、乾燥した草の約15kgとは別の状態の重さであり、この二つを単純に割って水分率を出すことはしない。資料は二つの数字を並べるだけで、換算は示していない。草の状態で数字が変わる以上、「1日○○kg」を一つに決めて言うことはできない。では、牛のえさは草だけなのか。
3. この ごはんは、どこから 来るの?
3. 草は日本の畑や牧場から、穀物は多くが海外から
3. 飼料自給率の内訳 粗飼料と濃厚飼料の差
日本の 牛の えさに なる 草は、およそ 8わりが 日本で とれた ものです[4]。ところが、とうもろこしなどの ほうは、日本で できた ものが 100のうち 13くらいです。どちらも 栄養で はかった 数字で、重さの わりあいでは ありません。
牛や ぶた、にわとりなど 家ちくの えさに つかわれた こくもつは、1年で 1424万トン。そのうち 1113万トンは、輸入した とうもろこしです。10のうち 8くらいです。日本で とれた とうもろこしは 1.3万トンで、1000に 1つほどしか ありません[4]。
お米も、牛の えさに なります。とうもろこしと ほとんど 同じ 栄養が ある、と 農林水産省の 資料に あります[4]。でも えさに なった お米は、こくもつ ぜんたいの 5%くらいです。
こくもつを 輸入に たよると、外国で ねだんが かわれば、日本の えさの 値段も かわります[3]。それなら、ほかに えさに なる ものは ないのでしょうか。
農林水産省の資料では、日本の飼料自給率は全体で27%(令和5年度の概算)です。ところが中身を分けると、粗飼料(草など)は約8割が国産、濃厚飼料は13%にとどまります[4]。草は国産、穀物は輸入が中心、という形です。これらは栄養(TDN)をもとにした割合で、重さの割合ではありません。
穀物の内訳も見てみます。令和5年度に飼料として使われた穀物は、牛だけでなく家畜全体で1,424万トンです。うち輸入トウモロコシが1,113万トン(78.2%)、飼料用米が74万トン(5.2%)、国産の子実トウモロコシが1.3万トン(0.1%)です。このほか政府所有米穀などの米も別の項目にあります[4]。輸入トウモロコシは、飼料用米の約15倍、国産の子実トウモロコシの約850倍にあたります。米はトウモロコシとほぼ同じ栄養価があるとされますが[4]、えさとして使われる量はまだ少ないのです。
輸入に頼ると、海外の穀物相場が動くたびに、配合飼料の値段も動きます。肉用牛(黒毛和牛)では、えさ代が生産費の約3割を占める、と2013年の記事にあります[3]。今の割合ではありませんが、えさの値段が経営を左右することは分かります。それなら、ほかに使えるえさはないのでしょうか。
農林水産省の資料(令和6年11月)では、飼料自給率は25%強で推移し、令和5年度の概算で全体27%である。内訳は、粗飼料が約8割の国産、濃厚飼料が13%で、差がはっきりしている[4]。ただしこれは重さでなくTDN(可消化養分総量)ベースの割合であり、「えさの重さの13%が国産」という意味ではない。
穀物の内訳を見ると、令和5年度に飼料向けに使われた穀物1,424万トンのうち、輸入トウモロコシが1,113万トンで78.2%を占める(1,113÷1,424で確認できる)。飼料用米は74万トン(5.2%)、国産の子実トウモロコシは1.3万トン(0.1%)で(政府所有米穀などの米は別項目)、輸入トウモロコシは飼料用米の約15倍、子実トウモロコシの約850倍になる[4]。この穀物は牛に限らず家畜全体の数字で、乳牛だけの内訳ではない。米は家畜にとってトウモロコシとほぼ同等の栄養価があるとされるので[4]、量が少ない理由は栄養の差だけでは説明できない。
輸入への依存は、価格の面にも表れる。農畜産業振興機構の記事は、肉用牛のえさの原料であるトウモロコシや大豆かすの多くが輸入で、配合飼料の値段が海外の穀物相場に左右されると説明する。黒毛和牛の肥育では、えさ代が生産費の約3割を占めるという[3]。これは2013年の記事の数字で、現在の割合とは限らない。では、輸入の穀物以外に、えさとして使える資源はないのか。
4. 人が 食べた あとの ものも、ごはんに なるの?
4. ビールかすや売れ残りのパンも、牛のごはんになる
4. エコフィード 食品の副産物がえさになるまで
あります。ビールを つくった あとの かす、さけの かす、とうふを つくった あとの かす、うれのこった パンや そうざい。こうした ものを えさに つかいなおした ものを、エコフィードと よびます[3]。
2013年の ある 山形の 牛の 農家は、ビールの かすや、ウイスキーを つくる ときに 出る すてる 水、落花生の うすい 皮を えさに まぜました。黒毛和牛 1頭に かかる えさ代は、およそ 30万円から 22〜23万円ほどに さがった、と 書かれています[3]。
いまは、エコフィードは 1年で およそ 101万トン(栄養で はかった 数字)。とうもろこしや 豆などの えさ ぜんたいの およそ 5%、20のうち 1つくらいです[4]。まだ 少ないけれど、すてる はずの ものが 牛の 力に なって いるのです。では、牛が 食べた あとは どうなるのでしょう。
食品をつくる工程で出る副産物を、えさとして再利用したものを「エコフィード」といいます。酒かす、豆腐かす、ビールかすのほか、売れ残りのパンや総菜も入ります[3]。人が食べるものをつくったあとの残りが、牛のえさに回るのです。
農畜産業振興機構が2013年に紹介した山形の肥育農家では、ビールかす、ウイスキー蒸留でできる廃液、落花生の薄皮をえさに配合しました。黒毛和牛1頭あたりのえさ代は、約30万円から22〜23万円ほどに下がったそうです[3]。1つの農家の例で、全国の標準ではありません。
全国の規模は、農林水産省の資料に出ています。エコフィードの製造量は令和5年度に約101万TDNトン(概算)で、濃厚飼料全体の約5%です。TDNトンは栄養の量を表す単位で、実際の重さのトンとは別物なので、他の数字と並べて比べてはいけません。令和4年度の食品廃棄物等1,525万トンのうち、再び利用されたのは1,121万トンで、そのうち飼料にされたのは863万トン(77%)で最も多い、とされています[4]。
エコフィードは、酒粕・豆腐粕などの食品製造の副産物や、売れ残りのパン・総菜などを、えさとして再利用したものである[3]。輸入穀物への依存を減らす手段として注目されるが、その効果は個々の事例で示されている。農畜産業振興機構の2013年の記事では、山形の肥育農家が、ビール粕、ウイスキー蒸留でできる廃液、落花生の薄皮を配合し、黒毛和牛1頭あたりのえさ代を約30万円から22〜23万円ほどに抑えた。ただし単一の農家の事例であり、全国に当てはまるとは限らない。
規模は農林水産省の資料で分かる。エコフィードの製造量は令和5年度で約101万TDNトン(概算)、濃厚飼料全体の約5%である。TDNトンは栄養量を表す単位であり、実重量のトンや、前章の穀物1,424万トンとは直接比べられない[4]。
食品廃棄物等の流れも示されている。令和4年度の食品廃棄物等1,525万トンのうち、再生利用は1,121万トンで、そのうち飼料化が863万トン(77%)と最多である。77%は再生利用された分に占める割合であり、1,525万トン全体の割合ではない(863÷1,121で確認できる)[4]。捨てられるはずの食品が牛の栄養になる流れは大きい。では、そのあと牛が出すものはどうなるのか。
5. 食べた あとは、どうなるの?
5. 牛が食べた草は、ふんになって田畑へ戻っていく
5. 飼料・家畜・堆肥の循環と、放牧という選び方
牛は 1日に、ふんを 20〜40kg 出します[1]。この ふんは 堆肥に なり、お米や 野菜を つくる ときに つかわれます。農林水産省の 資料は、牛を 育てる しごとを「えさ、牛、堆肥」の ぐるぐると 書いて います[4]。
この ぐるぐるでは、人が 食べられない ものが 役に 立ちます。草や いねの わら、食品の かすです。牛は それを 牛乳や 肉に かえる、と 書かれて います[4]。
牛は1日に20〜40kgのふんを出します[1]。農林水産省の資料は、畜産を「飼料、家畜、堆肥」という循環で成り立つ仕事と説明しています。堆肥は、米や野菜をつくる田畑でも使われます。人が食べられない資源を使えることも、畜産の特徴として挙げられています[4]。
草や稲わら、食品のかすは、そのままでは人の食べものになりにくいものです。牛を通すと、牛乳や肉に変わります。広い草地に牛を放して育てる放牧も、使われていない土地を生かす方法の一つです。長崎県平戸市では、耕作放棄地に放牧して、景観もよくなった例が紹介されています。肉用牛の繁殖経営での試算では、放牧でコストが約28%下がるとされます。繁殖雌牛で放牧6か月の場合という条件つきです[4]。
牛のごはんは、日本の草、輸入の穀物、食品のかすの三つでできています。三つの割合は、資料の数字でも、草は国産が約8割、濃厚飼料の自給率は13%と、はっきり分かれていました。
農林水産省の資料は、畜産業を「飼料、家畜、堆肥」の循環で成り立つ産業と位置づけ、人が食用にできない資源の利用や、条件不利な地域での草地利用を、地域活性への貢献として挙げる[4]。乳牛が1日に出す糞20〜40kg[1]は、この循環では堆肥の原料にあたる。
放牧は、この循環の一つの形である。同じ資料の試算では、肉用牛の繁殖経営(繁殖雌牛、放牧期間6か月)で、約28%、1頭あたり25.8万円のコスト低減が見込まれる。長崎県平戸市の取り組みでは、耕作放棄地に放牧して景観も改善した[4]。ただしこれは繁殖雌牛についての条件つきの試算であり、乳牛や肥育牛にそのまま当てはまるとは書かれていない。
こうして見ると、乳牛のえさは、国産が中心の粗飼料、輸入に頼る穀物、食品製造の副産物という、出どころの違う三つが重なってできている。それぞれの割合は、重さでなく栄養量で測られている場合が多い点にも、数字を読むときの注意がいる。
6. 台所で、牛の ごはんを さがして みよう
6. 台所のかすと、牛のごはんをつなげてみる
6. 食べ物をつくるときの「かす」と、資料の読み方
おうちの 人と いっしょに、スーパーの 牛乳の パックの うらを 見て、どこの 工場で つくられたか 書いて ある ところを さがして、ノートに 書いて みましょう。パックを 見ながら、「この 牛乳を 出した 牛は、なにを 食べたかな」と 考えて みます。
「この かすは、牛の ごはんに なる ことが あるかも」と 思いながら、売り場を 見て みましょう。牧場や 動物園で 牛を 見る ときは、係の 人に 「なにを 食べて いますか」と 聞いて みるのも おもしろいです。
家の台所や近所のスーパーで、つくるときにかすが出そうな食べ物を3つ探して、ノートに書いてみましょう。ヒントは、豆腐、日本酒、ビールです。酒かす・豆腐かす・ビールかすは、どれもエコフィードの例として資料に出てきます。
1Lのペットボトル60〜80本分の水が、乳牛が1日に飲む目安です。実際に並べる必要はありませんが、思い浮かべると、牛の1日の大きさが実感しやすくなります。牧場の見学ができるときは、係の人に「今日のえさに何が入っていますか」と聞いてみるのもよさそうです。
確かめられる数字から始めてみよう。農林水産省「飼料をめぐる情勢」(令和6年11月)の穀物の内訳(1,424万トンのうち輸入トウモロコシ1,113万トン)から、割合を自分で計算し、78.2%になるか確かめられる。同じ資料の、食品廃棄物等の再生利用の数字(1,121万トンのうち飼料化863万トン)も、77%になるか計算できる。
読んでみたい資料。
しらべた もとの じょうほう
参考にした情報源
参考にした情報源と、その使い方
出典について:業界団体の冊子、乳業メーカーの解説、農畜産業振興機構の記事、農林水産省の資料を使った。何に使ったかは、それぞれの項目の最後に書いている。
- Jミルク「牛乳が食卓に届くまで」冊子(PDF)。https://j-milk.jp/findnew/hk8j0u000000053t-att/milkchishiki2023_P009_020_chap1.pdf (乳牛の1日の食べる量・水・牛乳・ふんの量、第一胃のはたらきについて)
- 明治「牛乳ができるまで・乳牛」。https://www.meiji.co.jp/meiji-shokuiku/know/lovable-milk/milk/cow/ (粗飼料と濃厚飼料の組み合わせについて)
- 農畜産業振興機構 消費者コーナー(2013年6月25日更新)。https://www.alic.go.jp/koho/kikaku03_000489.html (輸入穀物とえさ代、エコフィード、山形の農家の例について)
- 農林水産省「飼料をめぐる情勢」(令和6年11月)(PDF)。https://www.maff.go.jp/j/council/seisaku/tikusan/attach/pdf/241113-42.pdf (飼料自給率、穀物の内訳、エコフィードの規模、循環と放牧について)
なおした ところ
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