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ここにあるのは、だれかが実際に調べ、考え、作ってきたことを集めたメモです。気になったら、ページの下の「参考にした情報源」から、もとの本や記事、それを生み出した人たちに、直接ふれてみてください。このメモには書ききれないおもしろさが、そこにあります。

がけは、けずられて できるの? それとも、せりあがって できるの?

崖は削られてできるだけなのか ── 年50〜100cm下がった屏風ヶ浦と、一度に6m現れた断層崖

崖はどう生まれるのか ── 海に削られる崖と、断層でせり上がる崖を比べる

分野:自然

ちばけんの びょうぶがうらは、高さ だいたい 60メートルの がけです。この がけは、むかし 1年に 50センチから 1メートルも、うしろへ さがって いたそうです。

ところが、ぎふけんには、いちどの 地震じしんで 6メートルの がけが あらわれた ばしょが あります。がけは、けずられて できるのでしょうか。それとも、せりあがって できるのでしょうか。がけの 三つの うまれかたと、見わけかたが わかります。

千葉県の屏風ヶ浦は、落差約60mの崖です。この崖は年に50〜100cmずつ後ろへ下がっていたと、国の資料に書かれています[1]。

ところが岐阜県には、1891年の地震で、一度に落差6mの崖が現れた場所もあります[4]。崖は、削られて後退するものなのでしょうか。それとも、せり上がるものなのでしょうか。崖の主な生まれ方と、近くの地形から見分ける目印が分かります。

千葉県の屏風ヶ浦は、落差約60m、約10kmにわたって続く海食崖である。侵食速度は年50〜100cmと急激だったと、文化遺産オンラインは記す[1]。ところが岐阜県の水鳥では、1891年の濃尾地震で落差6mの断層崖が一度に現れた[4]。

崖は、削られて後退するのか、ずれて成長するのか。海食崖・断層崖・差別侵食の崖という主な三つの成因を比べ、近くの地形から成因を読み分ける手がかりが分かる。

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1. 60メートルの がけは、どう さがるの?

1. 高さ60mの崖が、1年に50〜100cm下がる

1. 屏風ヶ浦 ── 落差60mの海食崖は、なぜ年50〜100cmも後退したのか

びょうぶがうらは、ちばけんの いぬぼうさきの ちかくから、だいたい 10キロメートルも つづく がけです。高さは 60メートルほど あります。

この がけは、むかし 1年に 50センチから 1メートルも、うしろへ さがって いました。ただし これは、むかしの きろくで、いまの はやさでは ありません[1]。

100年 たったら どうなるでしょう。1年に 50センチなら、100年で 50メートルです。1メートルなら 100メートルです。この けいさんは、おなじ はやさが ずっと つづくと かんがえた ときの もので、本当に こう なるとは かぎりません。

では、かたい 岩で できた がけを、だれが けずって いるのでしょう。

ヒントは、がけの 下の 海です。

屏風ヶ浦は、千葉県の犬吠埼の近くにある銚子市から、旭市の刑部岬まで、約10kmにわたって続く海食崖です。落差は約60mあり、犬吠層群という古い地層の上に、香取層や関東ロームの層がのっています[1]。

国の資料によると、この崖の侵食速度は年50〜100cmと、とても速いものでした。ただし、これは過去の記述で、いまも同じ速さで下がっているという意味ではありません[1]。

数字を実感に変えてみます。年50cmの速さが100年続くと50m、年100cmなら100mです。もちろん、この計算は同じ速さが続いたと仮定した目安にすぎず、実際の後退は年や場所で変わります。

2016年3月、屏風ヶ浦は国の名勝及び天然記念物に指定されました[1]。では、固い岩の崖を、いったい何が削っているのでしょうか。

屏風ヶ浦は、銚子市から旭市の刑部岬まで約10kmにわたる落差約60mの海食崖で、犬吠層群を基盤に、不整合面をはさんで香取層・関東ローム層が重なる[1]。名前の通り、屏風を立てたような壁が海沿いに続く地形である。

文化遺産オンラインは、侵食速度を年50〜100cmと急激であったと記し、2016年3月に国の名勝及び天然記念物に指定されたことを伝える[1]。この数字は過去形の記述であり、現在の後退速度を示すものではない。

数字を使った検算をしておく。年50cmが100年続けば50m、年100cmなら100mである。ただしこれは、年50〜100cmという速度が100年続いたと仮定した計算上の目安で、実際の後退は嵐や場所で変動するはずだから、100年後の位置を予言する計算ではない。

それにしても、落差60mの崖を年に数十cmも後退させる力とは何か。次の章で、崖の足もとを見る。

2. なみは、がけの どこを けずるの?

2. 波は崖の上ではなく、根もとをえぐる

2. 海食崖のしくみ ── ノッチ・崩壊・波食棚、そして岩の強さ

がけを けずって いるのは、海の 波です。波は、ふだん 海に ちかい がけの ねもとを、つよく けずります。

そこに、まず ちいさな くぼみが できます。くぼみは 少しずつ ふかく なります。すると 上の 岩が ささえを うしなって、どさっと くずれます。のこった かべが、たかい がけです[2]。

がけの 下の 海がわには、たいらな 岩の だいも できます。これを はしょくだなと いいます。

この 岩の だいの 高さは、岩の かたさで かわる ことが あります。しずおかけんの しもだに ある えびすじまでは、かたい 岩の ほうが、やわらかい 岩よりも、だいの 高さが 高かったと ほうこくされて います[3]。

けずられる がけも あれば、ぎゃくに、いちどの じしんで あらわれる がけも あります。

海食崖は、波の力でできる海岸の崖です。まず、海面に近い高さの岩に、波がくぼみを刻みます。これをノッチと呼びます。ノッチが深くなると、上の岩が支えを失って崩れ落ち、切り立った高い崖が残ります[2]。崖の上を波が削るのではなく、足もとをえぐられて、上が落ちてくる形です。

崖の根もとの海側には、波食棚という平らな岩の棚もできます。海食崖や波食棚の形には、波の強さと岩の抵抗力が関係すると説明されています[2]。

岩の強さの違いが形に出た例も報告されています。静岡県下田の恵比須島では、強度の大きい火山角礫岩のほうが、砂岩よりも波食棚ができる高さが高かったという、日本地質学会の講演要旨があります[3]。同じ海岸でも、岩の種類で削られ方が変わるのです。

ここまでは、波に削られて、崖が少しずつ後ろへ下がる話でした。反対に、崖が一晩で現れることはあるのでしょうか。

海食崖は、波の侵食でできる。海面付近の岩盤にまずノッチ(波が刻むくぼみ)ができ、それが深くなると上部の岩が支えを失って崩壊し、切り立った高い崖が残る[2]。つまり崖が後退するのは、波が崖面を上から削るからではなく、足もとをえぐられた上部が崩れ落ちるためである。

崖の根もとの海側には、削り残された平らな岩棚である波食棚が広がる。海食崖や波食棚の形には、波の強さと岩の抵抗力が関係する[2]。

岩の強さが形を変える例として、日本地質学会2017年の講演要旨は、静岡県下田市の恵比須島で、力学的強度が大きい火山角礫岩のほうが、砂岩よりも波食棚の形成高度が高かったと報告している[3]。ただしこれは一地点の報告で、すべての海岸に当てはまると読むのは行きすぎである。

屏風ヶ浦の年50〜100cmという速さも、この「足もとのえぐれと崩落」の繰り返しの結果として読める。だが、削られるばかりが崖の生まれ方ではない。地面がずれて、一度に崖が立ち上がることがある。

3. いちどの じしんで あらわれる がけって?

3. 一度の地震で、落差6mの崖が現れた

3. 断層崖 ── 水鳥の6mと、繰り返しで育つ崖

ぎふけんの ねおだにに、「みどりの だんそうがけ」が あります。1891年の のうび地震じしんで、地面が たてに ずれて、高さ 6メートルの がけが あらわれました[4]。

まるで、じめんが 大きな だんさに なったようです。

かつだんそうは、さいきんの じだいに くりかえし うごき、これからも うごくと かんがえられて いる 地面の われめです。日本には、うみの 中も ふくめて 2000ほど あると されて います[5]。

おなじ ところが なんども ずれると、がけは すこしずつ 高く なります。大きな がけでは、数百メートルも ある ものが あるそうです。ただし ふつうは、数メートルから 数十メートルの がけが 多いようです[6]。

けずられる がけと、せりあがる がけ。もう ひとつ、岩の かたさで のこる がけも あります。

岐阜県の根尾谷にある水鳥の断層崖は、1891年10月28日の濃尾地震で現れた、落差6mの崖です。1927年6月14日に天然記念物に指定され、のちに特別天然記念物になりました[4]。指定の文書は、この地表に現れた断層を「頗る稀有」なものと記しています。

断層は、岩盤がずれた面のことです。そのうち、最近の地質時代に繰り返し活動し、将来も活動を続けると考えられるものを活断層と呼び、日本には約2,000あるとされています[5]。

断層崖は、このずれのうち垂直方向の食い違いでできる、ほぼ直線状に続く急な斜面です。千年から数千年おきの断層運動のたびに崖は育つとされますが、同時に侵食も受けるため、崖の下には崩れた土砂が積もっていきます[6]。

高さは、数十m以下の低いものから、数百〜数千mに及ぶものまであります。ただ、数百mを超えるのは大規模な例で、ふつうは数m〜数十mのものが多いと考えられます。

削られて下がる崖と、ずれて育つ崖。では、岩の種類のちがいだけで残る崖はあるのでしょうか。

岐阜県根尾谷の水鳥の断層崖は、1891年(明治24年)10月28日の濃尾地震で地表に現れた落差6mの崖で、1927年6月14日に天然記念物に指定された[4]。のちに特別天然記念物となったが、その年は資料によって異なり、1952年とするものもある。

断層崖は、断層の垂直方向のずれによる食い違いで生じる、ほぼ直線状に連続する急斜面である[6]。内閣府は、最近の地質時代に繰り返し活動し将来も活動を続けると考えられる断層を活断層とし、日本に約2,000あるとする[5]。つまり、断層崖は、一度の出来事の記念碑でありながら、繰り返しの履歴でもある。

同じ断層が千年〜数千年おきに動くたび、崖は高さを増す。一方で、侵食を受けるので崖の下に崖錐や扇状地ができ、崖の高さは単純には増えない[6]。高さの範囲は数十m以下から数百〜数千mに及ぶが、後者は大規模な例にとどまる。水鳥の6mは、断層崖の高さの一例である。

ここまでの二つは、いずれも「何かが崖を作る力」を外から受ける話だった。では、力のかかり方が同じなら、崖はどこにできるのか。次の章は、岩そのものの違いを見る。

4. かたい 岩と やわらかい 岩は、どう ちがう?

4. やわらかい岩だけが先に削られて、崖が取り残される

4. 岩の硬さの違いで、崖が残る ── ケスタとドーバーの白い崖

かたい 岩と やわらかい 岩が、かさなって、ゆるく かたむいて いる ところが あります。雨や 川の 水で けずられると、やわらかい ほうが さきに なくなります。

のこった かたい 岩が、がけに なります。このような おかを、ケスタと いいます。かたがわは きゅうな がけ、もう かたがわは ゆるやかな さかに なります[7]。

イギリスの ドーバーには、白い がけが あります。むかしの 海の そこに、とても ちいさな 生きものの からが つもって、かたまって できた、白い チョークの 岩だと されて います[8]。

さわって たしかめたく なりますが、がけの 下は あぶないので、とおくから 見るだけに しましょう。

岩の硬さの差が崖を残すこともあります。硬い層と軟らかい層が交互に重なり、ゆるく傾いている地域では、軟らかい層が先に削られ、硬い層が取り残されます。こうしてできる、一方が急な崖、もう一方がゆるい斜面になった非対称の丘を、ケスタと呼びます[7]。

岩の種類が崖の姿を決めた例に、イギリスのドーバーの白い崖があります。約1億年前の海底に、円石藻という微小な藻のカルシウムの殻が降り積もり、押し固められた白亜(チョーク)の層が、隆起して現れたものと説明されています[8]。

屏風ヶ浦も、犬吠層群という古い地層の上に、香取層などの別の層がのっています。崖は、岩の種類の違いを、地層の重なりとして見せてくれる場所でもあります。

では、削る力が波でも断層でもない崖はあるのでしょうか。川のそばを見てみます。

崖の成因には、岩の硬さの差もある。硬い岩と軟らかい岩が交互に重なり、ゆるく傾く地域では、軟らかい層が先に侵食され、硬い層が取り残される差別侵食が進む。その結果、一方が急崖、他方がゆるい斜面の非対称の丘陵ができ、これをケスタと呼ぶ[7]。

岩の種類が崖の姿そのものを決める例が、イギリスのドーバーの白い崖である。約1億年前の海底で、円石藻の炭酸カルシウムの微小な殻が堆積し、押し固められて白亜となり、のちに隆起して崖になったと説明される。[8]。

ここで、一つ注意が要る。前章までの二つが「力で崖を作る」話だったのに対し、ケスタは「作られた岩の並びを、侵食が選り分ける」話である。ドーバーも、白亜という材料がまず海底で作られ、その後の隆起と侵食で崖として現れた。

ところで、岩の違いだけでなく、川が時間をかけて階段状の崖を作ることもある。

5. かわの そばの だんだんは、なに?

5. 川のそばの階段状の地形も、崖を作る

5. 河岸段丘 ── 川の下刻が残した段丘崖

かわの そばには、たいらな ところと きゅうな がけが、階段かいだんのように ならぶ ところが あります。これを かがんだんきゅうと いいます[9]。

川が 下へ 下へと そこを けずると、むかしの 川の そこが、たかい ところに のこります。その まえの きゅうな ところが、がけに なります[9]。

おなじ けずられる がけでも、海で できる ものと、川で できる ものが あるのです。

川に沿って、平らな台地面と急な崖が階段のように並ぶ地形を、河岸段丘といいます。平らな面を段丘面、急な崖を段丘崖と呼びます[9]。

できかたは、川が底を深く削る下刻にあります。昔の川底や氾濫原が高い位置に取り残され、その手前の急斜面が段丘崖になります[9]。海の波が崖を作るなら、ここでは川の流れが、崖を作っているわけです。

この階段が何段になるかは、川の削る力が何度変わったかとつながっているようです。

河岸段丘は、川に沿って、平坦な段丘面と急傾斜の段丘崖が階段状に並ぶ地形である[9]。川の下刻(川底を深く削ること)が進むと、かつての川底や氾濫原が高い位置に取り残され、その前の急斜面が段丘崖となる。

ここで見えてくるのは、「削る」と「残す」の組み合わせである。海食崖は波が足もとを削り、河岸段丘は川が底を削って昔の面を残す。侵食の向きが違うだけで、どちらも削る営みの結果だ。

近所の段差がどの成因なのかは、次の章で、見る順番を決めて考える。

6. ちかくの だんさを、見に いって みよう

6. 近所の段差から、崖の生まれ方を考える

6. 近所の段差を、成因から読み分ける

ちかくの おかや 川の そばに、たいらな ところが 一だん 高く なって いる ばしょは ありませんか。上は たいらで、前は きゅうな 場合は、川が けずった 後かも しれません。

海ぞいなら、がけの 下に、たいらな 岩の だいが ないか 見て みましょう。がけの 下や ふちには、ぜったいに ちかづかないで ください。はなれた ばしょから 見るだけです。

近くに川や海がある人は、崖や段差を一つ探してみてください。上は平らで前が急なら河岸段丘、海に面して根もとに平らな岩の棚があれば海食崖、まっすぐ長く続くなら断層の可能性もあります。ただし、見た目だけで成因を決めることはできません。

調べる手がかりは、公的な資料にあります。屏風ヶ浦や水鳥の断層崖は、文化遺産オンラインに解説があります。活断層は、内閣府の防災情報が基本から説明しています。崖の下や縁には近づかず、離れた場所から観察してください。

近所の崖や段差を成因で読み分けると、地形が資料と結びつく。上が平らで前が急なら段丘崖、根もとに平らな岩棚があれば海食崖、直線的に長く続くなら断層崖の可能性を考える。ただし、見た目だけでは断定できず、地質図や自治体の資料との照合が必要になる。

資料としては、屏風ヶ浦・根尾谷断層は文化遺産オンライン[1][4]、活断層の定義と数は内閣府防災情報[5]、侵食地形の用語は地学事典系の辞典[2][7]が出発点になる。崖の縁や直下には立ち入らず、離れた場所から観察する。

しらべた もとの じょうほう

参考にした情報源

参考にした情報源と、その使い方

本文で使った事実の出典です。

  1. 文化遺産オンライン「屏風ケ浦」 https://online.bunka.go.jp/heritages/detail/284776 (落差・長さ・地層・侵食速度・指定)
  2. コトバンク「海食崖」 https://kotobank.jp/word/海食崖 (ノッチ・崩壊・波食棚)
  3. 日本地質学会2017年講演要旨(J-STAGE) https://www.jstage.jst.go.jp/article/ajg/2017s/0/2017s_100210/_article/-char/ja/ (恵比須島の波食棚と岩の強さ)
  4. 文化遺産オンライン「根尾谷断層」 https://online.bunka.go.jp/heritages/detail/138374 (水鳥の断層崖・落差6m・指定)
  5. 内閣府防災情報「活断層」 https://www.bousai.go.jp/jishin/sonota/katsudanso.html (活断層の定義・数)
  6. コトバンク「断層地形」 https://kotobank.jp/word/断層地形 (断層崖の特徴・高さ・成長)
  7. コトバンク「ケスタ」 https://kotobank.jp/word/ケスタ-59426 (ケスタと差別侵食)
  8. AGU Press Release「Giant algal bloom sheds light on formation of White Cliffs of Dover」 https://news.agu.org/press-release/giant-algal-bloom-sheds-light-on-formation-of-white-cliffs-of-dover/ (ドーバーの白亜の崖のでき方・海外資料)
  9. コトバンク「河岸段丘」 https://kotobank.jp/word/河岸段丘 (河岸段丘と段丘崖)

なおした ところ

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